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電力発電所 / 火力発電19分で読めます

ランキンサイクルとは|T-s線図とエンタルピーで熱効率を求める

電験三種で出るランキンサイクルを、4つの過程と機器の対応、T-s線図、h-s線図で図解。エンタルピーで熱効率を求める式、タービン内部効率、再熱・再生サイクルの効果、例題4問まで解説します。

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広い建屋の中を、銀色の断熱カバーで覆われた太い配管が、手前から奥へ曲がりながら伸びている写真
この記事の目次
  1. ランキンサイクルとは(4つの過程と機器の対応)
  2. ランキンサイクルのT-s線図の読み方
  3. ランキンサイクルの熱効率とh-s線図(エンタルピーで求める)
  4. タービン内部効率と蒸気流量・出力の求め方
  5. ランキンサイクルの熱効率を上げる方法とカルノー効率との比較
  6. 再熱サイクルと再生サイクルをT-s線図で読む
  7. よくある質問
  8. カルノーサイクルとランキンサイクルは何が違いますか。
  9. T-s線図とh-s線図は、どう使い分けますか。
  10. ランキンサイクルで、ポンプ仕事を無視してよいのはなぜですか。
  11. 再熱と再生は、何のために行うのですか。
  12. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙電力を図解で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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水と蒸気が「ボイラ → 蒸気タービン → 復水器 → 給水ポンプ」を一巡するようすは、汽力発電の設備で見ました。その一巡を、熱の出入りと仕事の量で読むのがランキンサイクルです。この記事では、4つの過程と機器の対応、T-s線図とh-s線図の読み方、エンタルピーを使った熱効率の求め方、再熱・再生サイクルの効果を、例題と一緒に整理します。発電端効率や燃料消費量の計算は、火力発電の熱効率の記事で扱います。

ランキンサイクルの全体像
  • ランキンサイクルとは(4つの過程と機器の対応)
    • 等圧加熱 → 断熱膨張 → 等圧放熱 → 断熱圧縮の4過程が輪になる
  • ランキンサイクルのT-s線図の読み方
    • 面積が熱量や仕事を表す。仕事は囲まれた面積
  • ランキンサイクルの熱効率とh-s線図
    • η=(h1−h2)−(h4−h3)h1−h4\eta = \dfrac{(h_1 - h_2) - (h_4 - h_3)}{h_1 - h_4} をエンタルピーの差で求める
  • タービン内部効率と蒸気流量・出力の求め方
    • 実際の膨張は点2′で終わる。出力は P=G (h1−h2′)P = G\,(h_1 - h_2')
  • ランキンサイクルの熱効率を上げる方法とカルノー効率との比較
    • 初圧・初温を上げ、復水器の圧力を下げる。上限はカルノー効率
  • 再熱サイクルと再生サイクルをT-s線図で読む
    • 再熱は排気の湿りを減らし、再生は捨てる熱を減らす

ランキンサイクルとは(4つの過程と機器の対応)

ランキンサイクルは、汽力発電の水と蒸気の変化を、いちばん単純な理想の形で表した熱サイクルです。水はボイラで熱を受け取って蒸気になり、蒸気タービンで仕事をし、復水器で熱を捨てて水に戻り、給水ポンプでボイラの圧力まで押し上げられます。この一巡が、4つの過程でできています。

図1は、ランキンサイクルを機器の並びで描いたものです。機器の間にある丸の数字が状態点で、その場所での水や蒸気の状態(圧力・温度・エンタルピーなど)を表します。

ボイラ 等圧加熱(4→1) 蒸気タービン 断熱膨張(1→2) 復水器 等圧放熱(2→3) 給水ポンプ 断熱圧縮(3→4) 1 2 3 4 蒸気 水 受熱(燃料の熱) 仕事 放熱(冷却水へ) ポンプ仕事
図1 ランキンサイクルは水と蒸気が4つの機器を一巡する。矢印の間の数字は状態点

4つの過程を、機器と「一定に保たれるもの」の組合せで整理すると、次の表のとおりです。

過程機器一定のもの
4→1 等圧加熱ボイラ圧力
1→2 断熱膨張蒸気タービン比エントロピー
2→3 等圧放熱復水器圧力
3→4 断熱圧縮給水ポンプ比エントロピー

等圧は圧力が変わらないこと、断熱は熱が外へ出入りしないことです。断熱で、さらに摩擦などの損失が無い理想の変化では、比エントロピー(次の節で説明します)が変わりません。ボイラと復水器は熱を出し入れする機器、タービンとポンプは仕事をやり取りする機器、と覚えると整理しやすくなります。

ボイラで水が蒸気になる変化は、やかんでお湯を沸かすのと同じです。図2は、やかんの湯気の写真です。やかんの水はコンロの熱を受け取って蒸気になります。注ぎ口から白く見える湯気は、蒸気が空気で冷やされてできた小さな水滴で、本当の水蒸気は透明で目に見えません。ボイラは、この蒸気を逃がさずに高い圧力のまま閉じ込めて、タービンへ送ります。

ガスコンロの青い炎の上に置かれたステンレスのやかんの注ぎ口から、白い湯気が右上へ立ちのぼる写真
図2 やかんの湯気(写真はイメージ)

各機器のつくりは、汽力発電の設備で確認できます。

ランキンサイクルのT-s線図の読み方

T-s線図は、縦軸に温度 TT [K]、横軸に比エントロピー ss [kJ/(kg·K)] をとった図です。比エントロピーは、1 kg あたりのエントロピーです。熱を受け取ると増え、熱を捨てると減ります。T-s線図では、線の下の面積が 1 kg あたりの熱量を表します。そこから、次のことが読み取れます。

  • 熱を加える過程は、右へ進む線になる。線の下の面積が、受け取る熱量
  • 熱を捨てる過程は、左へ進む線になる。線の下の面積が、捨てる熱量
  • 断熱で損失の無い過程(理想のタービンとポンプ)は、熱の出入りが無いので縦の線になる

図3は、ボイラの圧力 10 MPa、蒸気の温度 520℃、復水器の圧力 5 kPa の例です。灰色の破線は水と蒸気の境の飽和線で、山の左側が飽和液線、右側が飽和蒸気線です。山の内側は水と蒸気が混ざった湿り蒸気、右側は過熱蒸気の領域で、山の頂点を臨界点(約 22 MPa、374℃)といいます。

0 2 4 6 8 0 200 400 600 800 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 温度 T [K] 臨界点 湿り蒸気 蒸発(温度一定) 予熱 過熱 過熱蒸気 断熱膨張 等圧放熱 1 2 3 4 灰色の破線:飽和液線と飽和蒸気線(水と蒸気の境) 点3と点4は実際にはほぼ重なる(ポンプは水温をほぼ上げない)
図3 ランキンサイクルの T-s 線図。10 MPa・520℃・5 kPa の例

4つの過程を、図3の線に沿って読んでみます。

  • 4→1(ボイラ): 水の温度を上げる予熱、温度が一定のまま水が蒸気になる蒸発、飽和蒸気を 520℃(793 K)まで温める過熱の3段階で、右上へ進みます。10 MPa の蒸発の温度は約 311℃(584 K)です
  • 1→2(蒸気タービン): 断熱膨張なので縦の線で下がります。温度は復水器の圧力 5 kPa の飽和温度、約 33℃(306 K)まで下がり、湿り蒸気の領域で終わります
  • 2→3(復水器): 湿り蒸気が水に戻る等圧放熱です。圧力一定で凝縮するので、温度も 306 K で一定の横線になります
  • 3→4(給水ポンプ): 断熱圧縮で、縦の短い線です。ポンプは水の温度をほとんど上げないので、点3と点4はほぼ重なります

図4は、同じサイクルを面積で読むための図です。縦軸は 0 K から描いています。縦軸の TT は絶対温度なので、面積がそのまま熱量になるのは、温度を K で測り、0 K を基準にしたときだけです。

0 2 4 6 8 0 200 400 600 800 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 温度 T [K] 仕事 w (囲まれた面積) 放熱 qout (復水器で捨てる熱) 1 2 3 青い面積:サイクルが出す仕事 w 緑の面積:復水器で捨てる熱 qout 青 + 緑:ボイラで受け取る熱 qin(4→1 の下の面積)
図4 T-s 線図では、面積が熱量や仕事を表す。縦軸は 0 K から描いている

図4の面積を式にすると、次のとおりです。

  • 青と緑を合わせた面積が、ボイラで受け取る熱 qinq_{\mathrm{in}}(4→1 の線の下の面積)
  • 緑の面積が、復水器で捨てる熱 qoutq_{\mathrm{out}}。復水器の過程は温度 TLT_{\mathrm{L}} の横線なので、長方形になり、qout=TL (s2−s3)q_{\mathrm{out}} = T_{\mathrm{L}}\,(s_2 - s_3)
  • 青の面積が、サイクルが取り出す正味の仕事 ww
w=qin−qoutη=wqin\begin{aligned} w &= q_{\mathrm{in}} - q_{\mathrm{out}} \\ \eta &= \frac{w}{q_{\mathrm{in}}} \end{aligned}

熱効率 η\eta は、受け取った熱のうち仕事になった割合です。T-s線図では、青の面積を青と緑を合わせた面積で割ったものです。図3の例で、緑の長方形の面積を確かめると、306×6.19≒1894 kJ/kg306 \times 6.19 \fallingdotseq 1894\ \mathrm{kJ/kg} です。これは、後で使う h2−h3h_2 - h_3 と一致します。

ランキンサイクルの圧力や温度は、実際の発電所では圧力計や温度計などで常に監視しています。図5は、断熱材で覆った蒸気配管と計器のイメージです。

銀色のしわのある保温材で覆われた太い配管の上に、丸い圧力計と細いガラス管、黒い弁が付いている写真
  1. 圧力計 蒸気の圧力を読む
  2. 大きな弁 蒸気の流れを開閉する
  3. 小さな弁 計器への流れを開閉する
  4. 断熱配管 保温材で熱を逃がさない
図5 断熱された蒸気配管と計器のイメージ(写真はイメージ)

ランキンサイクルの熱効率とh-s線図(エンタルピーで求める)

T-s線図は、面積で考えるのに向いています。数値を求めるときは、蒸気表にある比エンタルピー hh [kJ/kg] を使います。エンタルピーには、サイクルの計算に便利な性質が2つあります。

  • 圧力一定で熱を出し入れする過程(ボイラ・復水器)では、熱量が hh の差に等しい
  • 断熱の過程(タービン・ポンプ)では、仕事が hh の差に等しい

図6は、縦軸に hh、横軸に ss をとったh-s線図(モリエ線図)で、同じサイクルを描いたものです。T-s線図では面積だった量が、h-s線図では縦の長さで読めます。とくに、タービンの断熱膨張は縦の線になり、その長さ h1−h2h_1 - h_2 がそのままタービンの仕事です。

0 2 4 6 8 1000 2000 3000 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 比エンタルピー h [kJ/kg] 10 MPa 5 kPa 1 2 3 4 h1−h2 タービン仕事 h2−h3 復水器の放熱 h1−h4 ボイラ の受熱 灰色の破線:飽和線(この内側が湿り蒸気) 点3と点4(ポンプ仕事)は差が小さく、ほぼ重なる
図6 ランキンサイクルの h-s 線図(モリエ線図)。仕事や熱を縦の長さで読む

4つの機器の熱や仕事は、hh の差で次のように表されます。

量機器式
受ける熱 qinq_{\mathrm{in}}ボイラh1−h4h_1 - h_4
タービン仕事 wtw_{\mathrm{t}}蒸気タービンh1−h2h_1 - h_2
捨てる熱 qoutq_{\mathrm{out}}復水器h2−h3h_2 - h_3
ポンプ仕事 wpw_{\mathrm{p}}給水ポンプh4−h3h_4 - h_3

サイクルの正味の仕事は、タービン仕事からポンプ仕事を引いたものです。熱効率は、これを受ける熱で割って求めます。

η=(h1−h2)−(h4−h3)h1−h4\eta = \frac{(h_1 - h_2) - (h_4 - h_3)}{h_1 - h_4}

ポンプが送る水は、圧縮しても体積がほとんど変わりません。そのため、ポンプ仕事は水の比体積 v [m3/kg]v\ \mathrm{[m^3/kg]} と圧力差から、次のように近似できます。圧力を kPa で入れると、答えは kJ/kg になります。

h4−h3≒v (p1−p2)h_4 - h_3 \fallingdotseq v\,(p_1 - p_2)

ポンプ仕事はタービン仕事に比べてごく小さいので、h4≒h3h_4 \fallingdotseq h_3 とみなして無視すると、次の簡単な式になります。

η≒h1−h2h1−h3\eta \fallingdotseq \frac{h_1 - h_2}{h_1 - h_3}

各点のエンタルピーは、次のように求めます。計算問題では、これらの値が問題文に与えられる形が多いです。

点状態hh の求め方
1過熱蒸気蒸気表(10 MPa・520℃)
2湿り蒸気点1と同じ ss で 5 kPa
3飽和水5 kPa の飽和水の hh
4圧縮水h3h_3 にポンプ仕事を足す
解答と解説を見る

(1) 圧力を kPa にして、ポンプ仕事を求めます。

wp=v (p1−p2)=0.00100×(10000−5)≒10.0 kJ/kg\begin{aligned} w_{\mathrm{p}} &= v\,(p_1 - p_2) \\ &= 0.00100 \times (10000 - 5) \\ &\fallingdotseq 10.0\ \mathrm{kJ/kg} \end{aligned}

ポンプ出口は h4=138+10.0=148.0 kJ/kgh_4 = 138 + 10.0 = 148.0\ \mathrm{kJ/kg} です。

(2) ポンプ仕事を含めた熱効率です。

η=(h1−h2)−wph1−h4=(3430−2030)−10.03430−148.0=13903282≒0.424\begin{aligned} \eta &= \frac{(h_1 - h_2) - w_{\mathrm{p}}}{h_1 - h_4} \\ &= \frac{(3430 - 2030) - 10.0}{3430 - 148.0} \\ &= \frac{1390}{3282} \\ &\fallingdotseq 0.424 \end{aligned}

(3) ポンプ仕事を無視した熱効率です。

η=h1−h2h1−h3=14003430−138≒0.425\begin{aligned} \eta &= \frac{h_1 - h_2}{h_1 - h_3} \\ &= \frac{1400}{3430 - 138} \\ &\fallingdotseq 0.425 \end{aligned}

答えは (1) 約 10 kJ/kg、(2) 約 42.4%、(3) 約 42.5% です。ポンプ仕事はタービン仕事の 1% 未満なので、無視しても効率は約 0.2 ポイントしか変わりません。

タービン内部効率と蒸気流量・出力の求め方

ここまでは、タービンの中で損失が無い理想の膨張を考えました。実際のタービンでは、蒸気が動翼と静翼の間を通るときに、摩擦や渦による損失が出ます。図7は、蒸気を受けて回る動翼のイメージです。

金属光沢のある多数のタービン動翼が円弧状に並び、根元が円周状のリングに植え込まれた接写写真
  1. 動翼 蒸気を受けて回る
  2. 翼の根元 リングに植え込む
  3. ロータ 動翼を取り付けて回る
図7 蒸気タービンの動翼の接写イメージ(写真はイメージ)

損失があると、蒸気が仕事に変えられるエネルギーが減り、出口の蒸気は理想よりエンタルピーが高い状態で出ていきます。図8は、その違いを h-s線図に描いたものです。理想の膨張は縦の線で点2に、実際の膨張は右へずれて**点2′**に達します。

6 7 8 2000 2500 3000 3500 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 比エンタルピー h [kJ/kg] 飽和蒸気線 10 MPa 5 kPa 1 2 2′ 理想の膨張 (断熱・可逆) 実際の膨張 h1−h2 h1−h2′ 実際は摩擦などの損失があり、蒸気のエンタルピーが 理想より高いまま出ていく(点2′は点2より右)
図8 h-s 線図でみる実際の膨張。理想の点2より右の点2′で出る

実際のタービン仕事 h1−h2′h_1 - h_2' が、理想のタービン仕事 h1−h2h_1 - h_2 の何割にあたるかを表す値が、タービン内部効率 ηti\eta_{\mathrm{ti}} です。タービン効率や断熱効率と呼ぶ本もあります。

ηti=h1−h2′h1−h2\eta_{\mathrm{ti}} = \frac{h_1 - h_2'}{h_1 - h_2}

内部効率が分かれば、実際の仕事は h1−h2′=ηti (h1−h2)h_1 - h_2' = \eta_{\mathrm{ti}}\,(h_1 - h_2) で求まります。実際の熱効率は、タービン仕事を h1−h2′h_1 - h_2' に置き換えます。

η=(h1−h2′)−(h4−h3)h1−h4\eta = \frac{(h_1 - h_2') - (h_4 - h_3)}{h_1 - h_4}

蒸気が 1 秒間に G [kg/s]G\ \mathrm{[kg/s]} 流れるとき、タービンの出力 P [kW]P\ \mathrm{[kW]} は、1 kg あたりの仕事に流量を掛けて求めます。1 kW=1 kJ/s1\ \mathrm{kW} = 1\ \mathrm{kJ/s} なので、単位がそのままつながります。

P=G (h1−h2′)P = G\,(h_1 - h_2')

蒸気流量は、t/h で与えられることもあります。1 t/h=10003600 kg/s1\ \mathrm{t/h} = \dfrac{1000}{3600}\ \mathrm{kg/s} です。タービン出力から発電機出力や燃料消費量を求める方法は、火力発電の熱効率で扱います。

解答と解説を見る

実際のタービン仕事は、内部効率を掛けて求めます。

h1−h2′=ηti (h1−h2)=0.86×1400=1204 kJ/kg\begin{aligned} h_1 - h_2' &= \eta_{\mathrm{ti}}\,(h_1 - h_2) \\ &= 0.86 \times 1400 \\ &= 1204\ \mathrm{kJ/kg} \end{aligned}

ポンプ仕事を無視した熱効率は次のとおりです。

η=h1−h2′h1−h3=12043430−138≒0.366\begin{aligned} \eta &= \frac{h_1 - h_2'}{h_1 - h_3} \\ &= \frac{1204}{3430 - 138} \\ &\fallingdotseq 0.366 \end{aligned}

答えは約 36.6% です。理想の約 42.5% に内部効率 0.86 を掛けた値と一致します。タービン内部の損失で、熱効率が約 6 ポイント下がります。

解答と解説を見る

P=G (h1−h2′)P = G\,(h_1 - h_2') から、流量 GG を求めます。P=250 MW=250×103 kWP = 250\ \mathrm{MW} = 250 \times 10^{3}\ \mathrm{kW} です。

G=Ph1−h2′=250×1033430−2226≒207.64 kg/s\begin{aligned} G &= \frac{P}{h_1 - h_2'} \\ &= \frac{250 \times 10^{3}}{3430 - 2226} \\ &\fallingdotseq 207.64\ \mathrm{kg/s} \end{aligned}

t/h に直します。

G≒207.64×3600≒7.475×105 kg/h\begin{aligned} G &\fallingdotseq 207.64 \times 3600 \\ &\fallingdotseq 7.475 \times 10^{5}\ \mathrm{kg/h} \end{aligned}

答えは約 748 t/h です。蒸気 1 kg が 1204 kJ の仕事をするので、250 MW を出すには、毎秒約 208 kg の蒸気が必要になります。

ランキンサイクルの熱効率を上げる方法とカルノー効率との比較

高温の熱源の温度 THT_{\mathrm{H}} と、低温の熱源の温度 TLT_{\mathrm{L}} の間で動く熱機関のうち、効率が最大になる理想のサイクルがカルノーサイクルです。その効率 ηC\eta_{\mathrm{C}} は、温度だけで決まります。温度は絶対温度 [K] を使います。

ηC=1−TLTH\eta_{\mathrm{C}} = 1 - \frac{T_{\mathrm{L}}}{T_{\mathrm{H}}}

図9は、図3の例(THT_{\mathrm{H}} = 793 K、TLT_{\mathrm{L}} = 306 K)のランキンサイクルを、同じ温度の間のカルノーサイクルと重ねたものです。カルノー効率は 1−306÷793≒0.611 - 306 \div 793 \fallingdotseq 0.61 で、ランキンサイクルの約 42% を大きく上回ります。

0 2 4 6 8 0 200 400 600 800 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 温度 T [K] 届かない部分 (低い温度で加熱する分) ランキンサイクル の仕事 Thigh = 793 K(520℃) Tlow = 306 K(33℃) 1 2 3 オレンジ + 青:同じ温度の間で動くカルノーサイクルの仕事 ランキンサイクルの仕事(ポンプ仕事を含めて効率 約 42%) カルノー効率 = 1 − 306 ÷ 793 ≒ 61%
図9 カルノーサイクルとの比較。T-s 線図の長方形からはみ出ない分だけ効率が低い

ランキンサイクルの効率が低いのは、ボイラで水を温める予熱の間、低い温度から熱を受け取るためです。図9の「届かない部分」が、カルノーサイクルの長方形からはみ出している分にあたります。受熱の温度の平均を平均受熱温度 TmT_{\mathrm{m}} とします。TmT_{\mathrm{m}} は、受け取る熱量 qinq_{\mathrm{in}} を、受熱中に増える比エントロピー s1−s4s_1 - s_4 で割った値です。理想のランキンサイクルの熱効率は、次の式でも表せます。

η=1−TLTm\eta = 1 - \frac{T_{\mathrm{L}}}{T_{\mathrm{m}}}

図3の例では TmT_{\mathrm{m}} は約 530 K(約 257℃)で、η=1−306÷530≒0.42\eta = 1 - 306 \div 530 \fallingdotseq 0.42 です。この式から、熱効率を上げる方法は、平均受熱温度 TmT_{\mathrm{m}} を上げるか、放熱の温度 TLT_{\mathrm{L}} を下げるかの2つに整理できます。

方法T-s線図での変化注意点
初圧を上げる蒸発の温度が上がる排気が湿りやすい
初温を上げる過熱の温度が上がる材料の耐熱に限度
復水器の圧力を下げる放熱の温度が下がる冷却水の温度が下限

初圧はタービン入口の蒸気の圧力、初温は温度のことです。初圧を上げると、点1が左へ寄り、縦の膨張線が湿り蒸気の領域の深くへ入ります。排気に含まれる水滴が増えると、低圧タービンの翼を傷めるので、乾き度(湿り蒸気の中の蒸気の質量の割合)が下がりすぎないようにします。

図3の例(10 MPa・520℃・5 kPa)から、1つだけ条件を変えて蒸気表で計算すると、ポンプ仕事を含めた理想の熱効率は、約 42.2% から次のように変わります。

  • 初圧を 15 MPa にする: 約 43.4%(排気の乾き度は約 0.78 から約 0.75 に下がる)
  • 初温を 560℃ にする: 約 42.8%
  • 復水器の圧力を 4 kPa にする: 約 42.8%

ガスタービンと組み合わせるコンバインドサイクルは、火力発電の熱効率の記事で扱います。

再熱サイクルと再生サイクルをT-s線図で読む

再熱サイクルは、高圧タービンで膨張した蒸気をボイラの再熱器へ戻し、もう一度加熱してから低圧タービンで膨張させる方式です。図10は、2 MPa まで膨張させた蒸気を、520℃まで再加熱した例です。

0 2 4 6 8 0 200 400 600 800 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 温度 T [K] 1 a b c 2 3 4 1→a 高圧タービンで膨張(断熱) a→b 再熱器で2 MPaのまま再び加熱 b→c 低圧タービンで膨張(断熱) 灰色の破線 再熱しないときの膨張(出口は2)
図10 再熱サイクルの T-s 線図。出口の点cは、再熱しない点2より右にくる

図10では、点1から点aまで高圧タービンで膨張し、点aから点bまで再熱器で等圧加熱し、点bから点cまで低圧タービンで膨張します。灰色の破線が、再熱しないときの膨張です。

  • 再熱後の出口の点cは、再熱しない点2より右にくる。飽和蒸気線に近くなり、排気の乾き度が約 0.78 から約 0.89 に上がる(湿りが減る)
  • 再熱で加える熱は、約 550 K 以上の高い温度で加えるので、平均受熱温度が上がる。熱効率は約 42.2% から約 43.9% に、約 1.7 ポイント上がる

再生サイクルは、タービンの途中から蒸気の一部を取り出し(抽気)、その熱でボイラへ送る給水を温める方式です。図11は、その T-s線図です。給水が点4から点5まで抽気の熱で温められ、ボイラでの加熱が、低い温度の点4ではなく、高い温度の点5から始まります。灰色の破線は、再生しないときの加熱です。

0 2 4 6 8 0 200 400 600 800 比エントロピー s [kJ/(kg·K)] 温度 T [K] 1 2 3 4 5 4→5 給水加熱器で加熱(抽気の熱) 5→1 ボイラで加熱(燃料の熱)。ここから受熱が始まる 灰色の破線 再生しないときの加熱(4→1)
図11 再生サイクルの T-s 線図。ボイラの加熱が点4でなく、温めた給水の点5から始まる

再生サイクルで熱効率が上がる理由は、2つあります。ボイラで燃料の熱を受け取る過程が高い温度から始まるので、平均受熱温度が上がることです。また、抽気した蒸気は復水器へ行かないので、復水器で捨てる熱が減ることです。図11は、蒸気 1 kg あたりを描いた代表的な図です。抽気した分だけ後ろのタービンを流れる蒸気が減る点は、省略しています。

給水を抽気で温める装置が、給水加熱器です。図12は、その管束のイメージです。細い管の中を給水が流れ、管の外側に抽気蒸気を当てて、給水を温めます。

工場の床に横たわる円筒形の熱交換器。左端に管の穴が並ぶ円形の管板があり、右へ細い管の束が伸びて支え板で支えられている写真
  1. 管板 管の端を固定する
  2. 管の束 中を給水が流れる
  3. 支え板 管の束を支える
  4. 折り返し 管がU字に曲がる
図12 給水加熱器の管束のイメージ(写真はイメージ)

再熱と再生の違いを、T-s線図の見方で整理します。

項目再熱サイクル再生サイクル
温めるものタービン途中の蒸気ボイラへ入る給水
T-s線図で変わる所膨張の途中加熱の始まり
排気の湿り減る減らない

実際の大容量の汽力発電所は、再熱と再生を両方使う再熱再生サイクルが一般的です。系統図は、火力発電の熱効率の記事にあります。

解答と解説を見る

(1) は正しい記述です。タービンは、断熱膨張で蒸気のエンタルピーを減らし、その分を仕事にします。

(2) は正しい記述です。復水器は等圧放熱の過程です。

(3) は正しい記述です。再熱すると、点cが飽和蒸気線に近づき、排気の湿りが減ります。

(4) は正しい記述です。抽気した蒸気は復水器へ行かないので、捨てる熱が減ります。

(5) が誤りです。給水ポンプは、水を断熱圧縮して、復水器の圧力からボイラの圧力まで上げます。圧力を下げる過程ではありません。

答えは (5) です。

よくある質問

カルノーサイクルとランキンサイクルは何が違いますか。

カルノーサイクルは、2つの温度の間で動く熱機関の効率の上限を表す理想のサイクルで、T-s線図では長方形になります。ランキンサイクルは、水と蒸気の実際の性質に合わせたサイクルです。ボイラで予熱する間、低い温度から熱を受け取るので、同じ温度の間で動くカルノーサイクルより効率が低くなります。

T-s線図とh-s線図は、どう使い分けますか。

T-s線図は、面積が熱量や仕事を表すので、サイクルの形や、効率が上がる理由を考えるときに向いています。h-s線図は、タービンの膨張が縦の線になり、その長さ h1−h2h_1 - h_2 がそのまま仕事になるので、数値を求める計算に向いています。計算問題では、h-s線図や蒸気表のエンタルピーを使うことが多いです。

ランキンサイクルで、ポンプ仕事を無視してよいのはなぜですか。

水は圧縮してもほとんど体積が変わらず、ポンプ仕事 v (p1−p2)v\,(p_1 - p_2) がタービン仕事に比べて小さいからです。例題1では、ポンプ仕事は約 10 kJ/kg で、タービン仕事の 1% 未満でした。無視しても効率は約 0.2 ポイントしか変わりません。ただし、問題文でポンプ仕事が与えられたときは、式に入れて計算します。

再熱と再生は、何のために行うのですか。

再熱は、高圧タービンの排気を温め直して、低圧タービンの出口の湿りを減らすために行います。平均受熱温度が上がるので、熱効率も上がります。再生は、抽気の熱で給水を温め、ボイラの受熱を高い温度から始めて、復水器で捨てる熱を減らすために行います。目的が違うので、試験では組合せを問われます。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

ランキンサイクルの4つの過程と、対応する機器は?

4→1 等圧加熱はボイラ、1→2 断熱膨張は蒸気タービン、2→3 等圧放熱は復水器、3→4 断熱圧縮は給水ポンプです。

T-s線図では、熱量や仕事を何で読みますか?

面積で読みます。線の下の面積が熱量、サイクルに囲まれた面積が仕事です。

h-s線図で、タービン仕事は何で読みますか?

点1と点2を結ぶ縦の線の長さ h1−h2h_1 - h_2 です。

ポンプ仕事を無視したときの、熱効率の式は?

η≒h1−h2h1−h3\eta \fallingdotseq \dfrac{h_1 - h_2}{h_1 - h_3} です。

タービン内部効率の式と、蒸気流量から出力を求める式は?

ηti=h1−h2′h1−h2\eta_{\mathrm{ti}} = \dfrac{h_1 - h_2'}{h_1 - h_2}、P=G (h1−h2′)P = G\,(h_1 - h_2') です。

再熱と再生のねらいは、それぞれ何ですか?

再熱は排気の湿りを減らし、再生は抽気で給水を温めて、捨てる熱を減らします。

まとめ

  • ランキンサイクルは、等圧加熱(ボイラ)、断熱膨張(蒸気タービン)、等圧放熱(復水器)、断熱圧縮(給水ポンプ)の4過程でできる
  • T-s線図では面積が熱量や仕事を表し、h-s線図では縦の長さがタービン仕事や熱を表す。温度は K で読む
  • 熱効率は η=(h1−h2)−(h4−h3)h1−h4\eta = \dfrac{(h_1 - h_2) - (h_4 - h_3)}{h_1 - h_4}。ポンプ仕事を無視すると h1−h2h1−h3\dfrac{h_1 - h_2}{h_1 - h_3}
  • 実際の膨張は点2′で終わる。内部効率は ηti=h1−h2′h1−h2\eta_{\mathrm{ti}} = \dfrac{h_1 - h_2'}{h_1 - h_2}、タービン出力は P=G (h1−h2′)P = G\,(h_1 - h_2')
  • 熱効率は、初圧・初温を上げるか、復水器の圧力を下げると上がる。上限はカルノー効率 1−TLTH1 - \dfrac{T_{\mathrm{L}}}{T_{\mathrm{H}}}
  • 再熱は排気の湿りを減らし、再生は抽気で給水を温めて捨てる熱を減らす。どちらも熱効率が上がる

ランキンサイクルの考え方がつかめたら、次は 汽力発電の設備 と 火力発電の熱効率 で、各機器のつくりと、発電端効率・送電端効率、燃料消費量の計算を確認しましょう。

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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