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電力発電所 / その他の発電17分で読めます

風力発電の出力の求め方|風速の3乗に比例する理由・ベッツ限界・風車の制御

電験三種の風力発電を解説。風のエネルギーから出力の式を導く手順、出力が風速の3乗に比例する理由、ベッツ限界と出力係数、ピッチ制御とヨー制御、出力曲線、発電機と系統連系を図と例題で整理します。

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緑の丘の稜線に、白い3枚羽根の風車が5基ならんでいる
この記事の目次
  1. 風力発電とは
  2. 風のエネルギーと出力の式
  3. 出力は風速の3乗・直径の2乗に比例する
  4. ベッツ限界と出力係数
  5. 風車の種類と出力の制御
  6. 発電機と系統連系
  7. よくある質問
  8. 風力発電の出力は、なぜ風速の 3 乗に比例するのですか?
  9. ベッツ限界とは何ですか? 100 % 取り出せないのはなぜですか?
  10. 風速が定格風速をこえると、なぜ出力は増えないのですか?
  11. 風力発電と太陽光発電では、出力の変動にどんな違いがありますか?
  12. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙電力を図解で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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風が 2 倍の速さで吹くと、風車の出力は 8 倍になります。それが風力発電です。太陽光発電は光から直接電気をつくりましたが、風力発電は風の運動エネルギーで風車を回し、発電機を回します。燃料は要りませんが、出力は風速で大きく変わります。この記事では、風のエネルギーから出力の式を導く手順、出力が風速の 3 乗に比例する理由、ベッツ限界と出力係数、風車の制御、発電機と系統連系を、図と例題で整理します。電験三種の「電力」では、風力発電の出力の式と計算が問われます。

風力発電の全体像
  • 風力発電とは
    • 風の運動エネルギーで風車を回し、発電機で電気にする
  • 風のエネルギーと出力の式
    • 風が持つパワー P0=12ρAv3P_0=\dfrac{1}{2}\rho A v^{3}
  • 出力は風速の 3 乗に比例
    • 風速 2 倍で 8 倍、直径 2 倍で 4 倍
  • ベッツ限界と出力係数
    • 取り出せるのは最大 1627\dfrac{16}{27}(約 59 %)。P=Cp P0P=C_p\,P_0
  • 風車の種類と出力の制御
    • ピッチ制御とヨー制御。カットイン・定格・カットアウト
  • 発電機と系統連系
    • 誘導発電機は進相コンデンサで無効電力を補う
    • 出力が風まかせなのが課題

風力発電とは

風力発電は、風の持つ運動エネルギーを風車で回転の力に変え、発電機で電気にする発電方式です。火力・原子力のように、燃料を燃やして蒸気をつくる工程はありません。風が風車を回し、その回転が発電機に伝わります(図1)。

風 増速機 発電機 ブレード 風を受けて回る ピッチ制御 ブレードの角度を変える ナセル 増速機と発電機が入る ヨー制御 ナセルを風向きに向ける タワー 高いほど風が強い ハブ ブレードの根元
図1 風車の構造。ブレードとハブが風を受けて回り、ナセルの中の増速機と発電機が電気をつくる。タワーの上でナセルの向きを変えるのがヨー制御、ブレードの角度を変えるのがピッチ制御

風車は 4 つの部分でできています。

部分はたらき
ブレード(羽根)風を受けて回る
ハブブレードの根元をつなぐ。ブレードの角度を変える機構が入る
ナセル増速機と発電機などを収める箱
タワーナセルを高い所で支える

ブレードの回転は遅いので、増速機で速めてから発電機へ伝えます。ナセルはタワーの上で向きを変えられ、風の向きに合わせます。

遠くから見ると、風車はタワーの上に細長いブレードを 3 枚つけた形をしています。

夕焼けの空を背景に、丘の上に風車が1基、黒いシルエットで立っている。地平線の近くに太陽があり、遠くに小さな風車が2基見える
  1. タワー ナセルとブレードを高い所で支える
  2. ブレード 風を受けて回る羽根
  3. 太陽 地平線の近くにある
  4. 遠くの風車 ほかの風車も並んでいる
図2 夕焼けの空に立つ風車。タワーの上にブレードがつく(写真はイメージ)

風のエネルギーと出力の式

風力発電の出力は、風が持つ運動エネルギーから決まります。導き方は次の 3 段階です(図3)。

回転面の面積 A 長さ v [m] 1 秒間に風が進む距離 体積 = A × v [m3] ① 1 秒間に通る空気の体積 質量 m = ρ A v [kg] ② その質量(空気の密度 ρ) ½ × ρAv × v2 [W] ③ 運動エネルギー ½mv2(1 秒あたり) 出力 P = ½ρAv3 [W]
図3 風のエネルギーから出力の式を導く手順。回転面を通る 1 秒分の空気を、断面積 A・長さ v の円筒と考える

空気の密度を ρ [kg/m3]\rho\ \mathrm{[kg/m^{3}]}、風速を v [m/s]v\ \mathrm{[m/s]}、ブレードが回る円の面積(回転面積)を A [m2]A\ \mathrm{[m^{2}]} とします。

  1. 1 秒間に回転面を通る空気は、底面積 AA、長さ vv の円筒に入っている分です。体積は Av [m3]Av\ \mathrm{[m^{3}]} です。
  2. 質量は、体積に密度を掛けて ρAv [kg]\rho A v\ \mathrm{[kg]} です。
  3. この質量の運動エネルギー 12mv2\dfrac{1}{2}mv^{2} が 1 秒あたりの値なので、そのまま出力 [W]\mathrm{[W]} になります。
P0=12×(ρAv)×v2=12ρAv3 [W]\begin{aligned} P_0 &= \dfrac{1}{2}\times(\rho A v)\times v^{2} \\ &= \dfrac{1}{2}\rho A v^{3}\ \mathrm{[W]} \end{aligned}

これが、風が持っているパワーです。風車が電気にできるのは、このうちの一部です。回転面は円なので、直径を DD とすると A=πD24A=\dfrac{\pi D^{2}}{4} で、次のようにも書けます。

P0=π8ρD2v3P_0=\dfrac{\pi}{8}\rho D^{2}v^{3}

空気の密度は、海面付近・15℃ の標準大気で約 1.225 [kg/m3]1.225\ \mathrm{[kg/m^{3}]} です。計算問題では、1.2 [kg/m3]1.2\ \mathrm{[kg/m^{3}]} などの値が問題文で与えられます。

水力発電の出力は、落差と流量から決まりました。風力は、流体が水から空気に、エネルギーが位置から運動に変わります。

項目水力風力
流体水空気
密度約 1000 kg/m³約 1.2 kg/m³
使うエネルギー位置エネルギー運動エネルギー
出力を決めるもの流量と落差風速と回転面積

空気の密度は水の約 800 分の 1 しかありません。同じ出力を得るには、風を受ける面を大きくする必要があり、風車が大きくなる理由の 1 つです。

解答と解説を見る

回転面積を求めます。

A=π×402=5027 [m2]\begin{aligned} A &= \pi\times 40^{2} \\ &= 5027\ \mathrm{[m^{2}]} \end{aligned}

風が持つパワーは次のとおりです。

P0=12ρAv3=12×1.2×5027×103=3.02×106 [W]≈3.0 [MW]\begin{aligned} P_0 &= \dfrac{1}{2}\rho A v^{3} \\ &= \dfrac{1}{2}\times 1.2\times 5027\times 10^{3} \\ &= 3.02\times 10^{6}\ \mathrm{[W]} \\ &\approx 3.0\ \mathrm{[MW]} \end{aligned}

半径 40 [m]40\ \mathrm{[m]} を πr2\pi r^{2} に入れたので、直径 80 [m]80\ \mathrm{[m]} をそのまま 2 乗しないよう注意します。

出力は風速の3乗・直径の2乗に比例する

P0=12ρAv3P_0=\dfrac{1}{2}\rho A v^{3} を見ると、出力は風速 vv の 3 乗に比例します。回転面積 AA は直径 DD の 2 乗に比例するので、出力は直径の 2 乗にも比例します(図4)。

風速を変えると 出力の倍率(縦軸) 1 1 倍 8 2 倍 27 3 倍 出力は v3 に比例 直径を変えると 出力の倍率(縦軸) 1 1 倍 4 2 倍 9 3 倍 出力は D2 に比例 縦軸の目盛りは左右で同じ
図4 風速と直径を変えたときの出力の倍率。風速を 2 倍にすると出力は 8 倍、直径を 2 倍にすると 4 倍

風速が 3 乗で効く理由は、2 つの効果が重なるからです。

  • 風速が上がると、1 秒間に通る空気の質量が風速に比例して増える
  • 空気 1 kg あたりの運動エネルギーが、風速の 2 乗に比例して増える
風速 [m/s]10 m/s との比出力の比
50.50.125
1011
151.53.375
2028

風速がわずか 10 % 増えるだけで、出力は 1.13=1.3311.1^{3}=1.331 倍、約 33 % も増えます。逆に、風速が半分になると出力は 8 分の 1 に落ちます。風力発電の出力が、風の強さで大きく上下するのはこのためです。

風速は、地面から離れるほど強くなる傾向があります。そのため、タワーは高く、ブレードは長くします。ブレードが長いほど回転面積が大きくなり、出力は直径の 2 乗で増えます。

ブレードは 1 本が長く、運ぶときは専用の大型トレーラーに載せます。

山あいの曲がった道路を、長い白いブレードを積んだ大型トレーラーが走っている
  1. ブレード 長いほど回転面積が大きくなる
  2. トラック ブレードを載せて運ぶ車両
図5 ブレードを運ぶトレーラー。1 本がとても長い(写真はイメージ)
解答と解説を見る

(1) 風速が 96=1.5\dfrac{9}{6}=1.5 倍になるので、出力は 3 乗の倍率になります。

P=90×1.53=90×3.375≈304 [kW]\begin{aligned} P &= 90\times 1.5^{3} \\ &= 90\times 3.375 \\ &\approx 304\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(2) 直径が 1.5 倍なので、回転面積は 1.52=2.251.5^{2}=2.25 倍です。

P=90×1.52=202.5 [kW]\begin{aligned} P &= 90\times 1.5^{2} \\ &= 202.5\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

ベッツ限界と出力係数

風車は、風から運動エネルギーを取り出します。そのため、風車を通ったあとの風は遅くなります。風を完全に止めてしまうと、空気が詰まって次の風が流れ込めません。そのため、風のエネルギーを全部取り出すことはできません。

風車に向かう風速を v1v_1(これまでの vv)、通り抜けたあとの風速を v2v_2 とします。風は遅くなる分、通る道すじが広がります(図6)。

v1 v v2 風車の前(速い) 風車の位置 風車のあと(遅い) 運動エネルギーを取られて遅くなった風は、流管が広がる
図6 風車を通る空気の流れ。風車の前は速く、通り抜けたあとは遅くなり、流れの幅が広がる。風車の位置の風速 v は、前後の平均になる

空気の運動量の変化から、風車の位置での風速 vv は、前後の風速の平均になることが示せます。ここでは結果だけ使います。

v=v1+v22v=\dfrac{v_1+v_2}{2}

風車が取り出すパワーは、風が 1 秒あたりに失う運動エネルギーに等しくなります。

P=12 ρAv (v12−v22)=14 ρA (v1+v2)(v12−v22)\begin{aligned} P &= \dfrac{1}{2}\,\rho A v\,(v_1^{2}-v_2^{2}) \\ &= \dfrac{1}{4}\,\rho A\,(v_1+v_2)(v_1^{2}-v_2^{2}) \end{aligned}

ここで x=v2v1x=\dfrac{v_2}{v_1} とおくと、PP は次の形に整理できます。

P=12ρAv13×12(1+x)(1−x2)=Cp P0\begin{aligned} P &= \dfrac{1}{2}\rho A v_1^{3}\times\dfrac{1}{2}(1+x)(1-x^{2}) \\ &= C_p\,P_0 \end{aligned}

前半は、風車がないときに通る風のパワー P0P_0 です。後半の CpC_p が、そのうち風車が取り出せる割合で、出力係数(パワー係数)といいます。

Cp=12(1+x)(1−x2)C_p=\dfrac{1}{2}(1+x)(1-x^{2})

xx を変えると CpC_p は 図7のように変わります。CpC_p は x=13x=\dfrac{1}{3} のとき最大になります。

0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Cp ベッツ限界 16/27 ≈ 0.593 1/3 x = v2 / v1(風車を通ったあとの風速 ÷ 前の風速) 実際の風車の出力係数 約 0.4〜0.5(目安)
図7 出力係数 Cp と風速の比 x の関係。x が 1/3 のとき最大の 16/27 になる
Cp=12×43×89=1627≈0.593\begin{aligned} C_p &= \dfrac{1}{2}\times\dfrac{4}{3}\times\dfrac{8}{9} \\ &= \dfrac{16}{27}\approx 0.593 \end{aligned}

つまり、風から取り出せるエネルギーは、どれだけ理想的につくっても約 59 % までです。これをベッツ限界といいます。風車の出力は、次の式で表します。

P=Cp 12ρAv3P=C_p\,\dfrac{1}{2}\rho A v^{3}

実際の風車では、ブレードの形や空気との摩擦の影響で、CpC_p は約 0.4∼0.50.4\sim 0.5 が目安です。機種や運転状態で変わるので、計算問題では問題文の値を使います。発電機から出る電力は、さらに増速機や発電機の効率を掛けた値になります。

CpC_p は、ブレードの先端の速さと風速の比でも変わります。この比を周速比といい、ブレードの半径を R [m]R\ \mathrm{[m]}、角速度を ω [rad/s]\omega\ \mathrm{[rad/s]}、風速を v [m/s]v\ \mathrm{[m/s]} として次の式で表します。

λ=ωRv\lambda=\dfrac{\omega R}{v}

回転速度 n [min−1]n\ \mathrm{[min^{-1}]} のとき、ω=2πn60\omega=\dfrac{2\pi n}{60} です。3 枚羽根の風車では、周速比が約 6〜8 のときに CpC_p が最大になるのが目安です。

解答と解説を見る

まず、風が持つパワーを求めます。

A=π×302=2827 [m2]\begin{aligned} A &= \pi\times 30^{2} \\ &= 2827\ \mathrm{[m^{2}]} \end{aligned}P0=12×1.2×2827×103=1696 [kW]\begin{aligned} P_0 &= \dfrac{1}{2}\times 1.2\times 2827\times 10^{3} \\ &= 1696\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(1) CpC_p の最大値は 1627\dfrac{16}{27} です。

Pmax=1627×1696≈1005 [kW]\begin{aligned} P_{\mathrm{max}} &= \dfrac{16}{27}\times 1696 \\ &\approx 1005\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(2) ブレードが取り出す出力に、2 つの効率を掛けます。

P=1696×0.45×0.95×0.95=763×0.9025≈689 [kW]\begin{aligned} P &= 1696\times 0.45\times 0.95\times 0.95 \\ &= 763\times 0.9025 \\ &\approx 689\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}
解答と解説を見る

(1) 角速度を求めます。

ω=2π×1560=1.571 [rad/s]\begin{aligned} \omega &= \dfrac{2\pi\times 15}{60} \\ &= 1.571\ \mathrm{[rad/s]} \end{aligned}

先端の速さと周速比は次のとおりです。

u=ωR=1.571×40=62.8 [m/s]\begin{aligned} u &= \omega R \\ &= 1.571\times 40 \\ &= 62.8\ \mathrm{[m/s]} \end{aligned}λ=62.810≈6.3\begin{aligned} \lambda &= \dfrac{62.8}{10} \\ &\approx 6.3 \end{aligned}

(2) 4 極・50 Hz の同期速度は次のとおりです。

Ns=120×504=1500 [min−1]\begin{aligned} N_s &= \dfrac{120\times 50}{4} \\ &= 1500\ \mathrm{[min^{-1}]} \end{aligned}

増速比は、発電機の回転速度を風車の回転速度で割った値です。

150015=100\dfrac{1500}{15}=100

風車の種類と出力の制御

風車は、回転軸の向きで 2 種類に分けられます。

種類回転軸特徴
水平軸(プロペラ形)風と平行効率が高い。大型の発電用に使う
垂直軸(ダリウス形・サボニウス形)地面に垂直風向きを選ばない。効率は低め

プロペラ形は、ブレードの断面が飛行機の翼に似た形で、風を受けると生じる揚力で回ります。垂直軸のダリウス形も揚力を使い、サボニウス形は風に押される力(抗力)で回ります。発電用の大きな風車は、ほとんどが水平軸のプロペラ形です。水平軸の風車は、風向きに正面を向ける必要があります。

風車の出力を調節して守るために、次の制御を使います(図8)。

制御はたらき目的
ピッチ制御ブレードの角度を変える出力の調整・強風時の保護
ストール制御ブレードの形で失速を利用する角度を固定して出力を抑える
ヨー制御ナセルの向きを変える風車の正面を風向きに合わせる
ピッチ制御 ブレードの角度を変える 風 回転の向き 実線:風を受ける角度 点線:風を逃がす角度 ヨー制御 ナセルの向きを変える 風 真上から見た図 風の正面にそろえる
図8 ピッチ制御とヨー制御。ピッチ制御はブレードの角度を変え、ヨー制御はナセルごと向きを変える

ピッチ制御では、ブレードの根元をハブの中で回して、風を受ける角度を変えます。風を逃がす向きに回すと、受ける力が小さくなって出力が下がります。強風のときや停止するときは、ブレードを風と平行にして風をほとんど受けない状態にします。これをフェザリングといいます。

ストール制御は、角度を固定したまま、風が強くなるとブレードの背で空気の流れがはがれて揚力が減る性質を使います。出力が上がりすぎるのを自然に抑えます。

ヨー制御は、風向きの変化に合わせて、ナセル全体をタワーの上で回します。正面から風を受けると、出力が最も大きくなります。

青空を背景に、根元から見上げた風車。白いタワーの上部、箱形のナセル、丸いハブ、3枚のブレードの根元が写っている
  1. ハブ ブレードの根元。ここでピッチを変える
  2. ナセル 発電機などを収め、ヨー制御で向きを変える
  3. ブレード 風を受けて回る
  4. タワー ナセルを支える
図9 根元から見上げた風車。ハブにブレード、ナセルがつく(写真はイメージ)

出力は、風速に応じて次のように変わります(図10)。風速が低すぎると、風車は発電しません。

0 50 100 0 5 10 15 20 25 30 出力 [%] 風速 [m/s] カットイン 約 3 定格風速 約 12 カットアウト 約 25 風速の 3 乗に 比例して増える 定格出力で一定 (ピッチ制御で絞る) 停止 停止 数値は目安。機種によって異なる(計算問題は問題文の値を使う)
図10 風車の出力曲線。カットイン風速から発電し、定格風速までは風速の 3 乗に比例して増える。定格風速以上は定格出力で一定、カットアウト風速で停止する
風速風車のようす
カットイン風速より低い発電しない
カットイン〜定格風速風速の 3 乗に比例して出力が増える
定格〜カットアウト風速ピッチ制御などで定格出力に保つ
カットアウト風速より高い機器を守るため停止する

カットイン風速は約 3〜5 m/s、定格風速は約 10〜15 m/s、カットアウト風速は約 25 m/s が目安です。機種によって違うので、計算問題では問題文の値を使います。

定格風速をこえると、風が持つパワーは風速の 3 乗でさらに増え続けます。それでも出力が一定なのは、発電機などの機器に限度があるからです。ピッチ制御でブレードの角度を変え、風を逃がして、出力が定格をこえないようにしています。

解答と解説を見る

(1) 風速は定格の 612=0.5\dfrac{6}{12}=0.5 倍なので、出力は 0.530.5^{3} 倍です。

P=2000×0.53=250 [kW]\begin{aligned} P &= 2000\times 0.5^{3} \\ &= 250\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(2) 風速ごとの発電電力量を求めます。

  • 6 [m/s]6\ \mathrm{[m/s]}:250×10=2500 [kWh]250\times 10=2500\ \mathrm{[kWh]}
  • 15 [m/s]15\ \mathrm{[m/s]}:定格風速以上でカットアウト未満なので、定格出力 2000 [kW]2000\ \mathrm{[kW]} で 2000×8=16000 [kWh]2000\times 8=16000\ \mathrm{[kWh]}
  • 2 [m/s]2\ \mathrm{[m/s]}:カットイン未満なので発電しない

1 日の発電電力量は 2500+16000=18500 [kWh]2500+16000=18500\ \mathrm{[kWh]} です。設備利用率は、定格出力で 24 時間運転したときの電力量に対する割合です。

設備利用率=185002000×24=0.385=38.5 [%]\begin{aligned} \text{設備利用率} &= \dfrac{18500}{2000\times 24} \\ &= 0.385 \\ &= 38.5\ [\%] \end{aligned}

発電機と系統連系

風車のブレードは、毎分十数回転でゆっくり回ります。発電機は毎分 1500 回転前後で回るものが多いので、間に増速機を入れます。発電機には、次の 2 つの方式があります。

方式構成特徴
増速機つき増速機+誘導発電機構造が簡単
直接駆動多極の同期発電機増速機が要らない

増速機を使わない方式では、極数を多くした同期発電機を、ブレードの遅い回転でそのまま回します。

風速が変わると、ブレードの回転速度も変わります。回転速度が変わる運転では、発電機の周波数も変わるので、インバータで系統の周波数にそろえてから連系します。

誘導発電機を使う場合は、回転子を同期速度より少し速く回します。このとき、すべりが負になり、発電機として動きます。誘導機は、回転磁界をつくる励磁電流を系統から受ける必要があり、これが遅れの無効電力になります。そのままでは力率が下がるので、進相コンデンサをつないで無効電力を補います(図11)。力率改善と同じ考え方です。

ブレード 低速で回る 増速機 回転を速くする 誘導発電機 高速で回る 系統 交流 風のエネルギー → 電気エネルギー 進相コンデンサ 無効電力を補う 無効電力 誘導発電機は励磁のため、系統から遅れの無効電力を受ける そのままでは力率が下がるので、進相コンデンサで補う
図11 風力発電の電気の流れ。ブレードの回転を増速機で速め、誘導発電機で発電する。励磁に必要な遅れの無効電力は、進相コンデンサが補う

風力発電の長所と短所は、ここまでの仕組みから整理できます。

特徴理由
燃料が要らない風の運動エネルギーを使う
出力が風まかせ出力は風速の 3 乗に比例する
風況のよい場所が必要風が強く、安定した場所ほど有利
強風への備えが必要風が強すぎると、停止やフェザリングをする

太陽光発電は日中だけ発電しますが、風力発電は夜も風が吹けば発電します。ただし、どちらも天気まかせで、出力が上下します。その変動を支えるのが、揚水発電などの調整できる電源です。

海の上は障害物が少なく、風が安定しやすいので、海に風車を並べる方法もあります。

穏やかな青い海に、白い3枚羽根の風車が水平線の近くまで何基も並んでいる。中央の1基が大きく写っている
  1. ブレード 風を受けて回る
  2. タワー 海の上に立つ支柱
  3. 海面 穏やかな海の上に設置する
  4. 遠くの風車 水平線の近くまで並んでいる
図12 海に並ぶ風車。海上は風をさえぎるものが少ない(写真はイメージ)

よくある質問

風力発電の出力は、なぜ風速の 3 乗に比例するのですか?

風速が上がると、1 秒間に通る空気の質量が風速に比例して増え、空気 1 kg あたりの運動エネルギーも風速の 2 乗に比例して増えるからです。この 2 つを掛けると、風速の 3 乗になります。

ベッツ限界とは何ですか? 100 % 取り出せないのはなぜですか?

風車で取り出せる風のエネルギーの上限で、1627\dfrac{16}{27}、約 59 % です。風のエネルギーをすべて取り出すと、風車を通ったあとの風速が 0 になり、空気が詰まって次の風が入れないためです。風車の前後で風速が 13\dfrac{1}{3} になるとき、取り出せる量が最大になります。

風速が定格風速をこえると、なぜ出力は増えないのですか?

発電機などの機器に限度があるからです。ブレードの角度を変えるピッチ制御で風を逃がして、出力が定格をこえないようにします。

風力発電と太陽光発電では、出力の変動にどんな違いがありますか?

太陽光発電は、日射で決まるので昼に出力が大きく、夜は 0 です。風力発電は風速で決まり、夜でも風が吹けば発電します。どちらも天気まかせで、変動を補う電源が必要なのは同じです。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

風が持つパワーを表す式は何ですか?

P0=12ρAv3P_0=\dfrac{1}{2}\rho A v^{3} です。ρ\rho は空気の密度、AA は回転面積、vv は風速です。

風速が 2 倍、直径が 2 倍になると、出力はそれぞれ何倍になりますか?

風速 2 倍で 23=82^{3}=8 倍、直径 2 倍で回転面積が 4 倍になるので 4 倍です。

ベッツ限界の値と、その意味は何ですか?

1627\dfrac{16}{27}(約 0.593)です。風から取り出せるエネルギーの理論上の上限で、風車の前後で風速が 13\dfrac{1}{3} になるときに最大です。

ピッチ制御とヨー制御は、それぞれ何を変えますか?

ピッチ制御はブレードの角度、ヨー制御はナセルの向きを変えます。

カットイン風速、定格風速、カットアウト風速では、それぞれ風車はどうなりますか?

カットインで発電を始め、定格風速で定格出力になり、カットアウトをこえると機器を守るために停止します。

誘導発電機で進相コンデンサを使うのは、なぜですか?

励磁のために系統から遅れの無効電力を受けるので、それを補って力率を保つためです。

まとめ

  • 風力発電は、風の運動エネルギーで風車を回し、発電機で電気にする
  • 風が持つパワーは P0=12ρAv3P_0=\dfrac{1}{2}\rho A v^{3}。風速の 3 乗、直径の 2 乗に比例する
  • 風車の出力は P=Cp P0P=C_p\,P_0。出力係数 CpC_p の理論上の上限(ベッツ限界)は 1627\dfrac{16}{27}
  • ピッチ制御はブレードの角度を、ヨー制御はナセルの向きを変える
  • 出力はカットインで発電を始め、定格風速以上は一定、カットアウトで停止する
  • 誘導発電機は遅れの無効電力を受けるので、進相コンデンサで補う
  • 出力は風まかせ。変動は揚水発電などで支える
求めるもの式
風のパワーP0=12ρAv3P_0=\dfrac{1}{2}\rho A v^{3}
回転面積A=πD24A=\dfrac{\pi D^{2}}{4}
風車の出力P=Cp P0P=C_p\,P_0
ベッツ限界Cp=1627≈0.593C_p=\dfrac{16}{27}\approx 0.593
周速比λ=ωRv\lambda=\dfrac{\omega R}{v}

太陽光発電と風力発電は、どちらも出力が自然まかせです。その変動を支える揚水発電も合わせて読んでください。

図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙電験三種 電力を図解で通して読む図解でわかる 電験三種 電力 / 第1巻水力発電水の力と出力の式から水車・調速機・揚水発電まで電力の単元を、図と式で1冊ずつ通して読む Kindle 本のシリーズです。例題と練習問題まで入っています。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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