火力発電の仕組みと汽力発電の設備|ボイラ・タービン・復水器を図解
電験三種の汽力発電の設備を、ボイラ・蒸気タービン・復水器・給水加熱器の順に図解。水と蒸気の一巡、ボイラの種類、通風方式、熱の収支を整理し、冷却水の熱量やボイラ効率の例題4問も解けます。

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火力発電は、燃料を燃やした熱で水を蒸気に変え、その蒸気でタービンを回して発電する方式です。電験三種では、水と蒸気が「ボイラ → 蒸気タービン → 復水器 → ポンプ」を一巡する汽力発電が出題の中心になります。この記事では、火力発電の熱効率の計算に入る前に、汽力発電の設備の流れを 1 枚の系統図で押さえ、熱がどこへ逃げるかを例題で確かめます。
- 汽力発電とは(火力発電の仕組み)
- 燃料の熱で蒸気を作り、タービンと発電機を回す
- 汽力発電の設備と水・蒸気の流れ
- 復水器から始まる 12 の機器を水と蒸気が一巡する
- ボイラの種類と燃焼設備・排ガスの熱回収
- 自然循環・強制循環・貫流、通風 3 方式、節炭器と空気予熱器
- 蒸気タービンと復水器の役目
- 衝動と反動、復水器を真空にする理由
- 熱の収支と冷却水の熱量・ボイラ効率の求め方
- 冷却水の熱量は 、ボイラ効率は蒸気が受け取った熱 ÷ 燃料の熱
汽力発電とは(火力発電の仕組み)
汽力発電は、燃料を燃やして水を蒸気にし、その蒸気の力で蒸気タービンを回して発電する方式です。エネルギーの形は、図1のように「燃料の化学エネルギー → 蒸気の熱エネルギー → 回転の運動エネルギー → 電気エネルギー」の順に変わります。
火力発電は、燃料の種類で石炭火力・石油火力・LNG(液化天然ガス)火力に分けますが、蒸気を作ってタービンを回す部分はどれも同じです。水と蒸気は使い捨てにせず、タービンを出た蒸気を水に戻して、もう一度ボイラへ送ります。水を循環させずに川へ戻す水力発電のしくみと比べると、この「循環」が汽力発電の大きな特徴です。
蒸気タービンにつなぐ発電機は、高速で回る円筒形の同期発電機(タービン発電機)です。ガスタービンで発電する方式もありますが、この記事では電験三種で最も多く問われる汽力発電を扱います。
汽力発電の設備と水・蒸気の流れ
図2は、汽力発電の水と蒸気の流れを 1 枚にした系統図です。黄色の丸の番号は、水と蒸気が通る順です。復水器(1)を出た水が、給水系(2〜6)で圧力と温度を上げられ、ボイラ(7〜9)で蒸気になり、高圧タービン(10)、再熱器(11)、低圧タービン(12)の順に仕事をして、また復水器へ戻ります。
各機器の役割は、次の表のとおりです。番号は説明用に付けたもので、機器の数や配置は発電所ごとに異なります。
| 番号と機器 | 役割 |
|---|---|
| 1 復水器 | タービンの排気を冷やして水に戻す |
| 2 復水ポンプ | 復水器にたまった水を給水系へ送る |
| 3 低圧給水加熱器 | 抽気の熱で給水を温める(低圧側) |
| 4 脱気器 | 給水に溶けた酸素などを抜く |
| 5 給水ポンプ | 給水をボイラの圧力まで押し上げる |
| 6 高圧給水加熱器 | 抽気の熱で給水をさらに温める |
| 7 節炭器 | 排ガスの熱で、蒸発前の給水を温める |
| 8 蒸発管(ドラム) | 水を沸かして蒸気にする |
| 9 過熱器 | 飽和蒸気をさらに温めて過熱蒸気にする |
| 10 高圧タービン | 過熱蒸気で回る |
| 11 再熱器 | 高圧タービンの排気を温め直す |
| 12 低圧タービン | 再熱した蒸気で回り、排気を復水器へ送る |
| 発電機 | タービンの回転を電気に変える |
ボイラには、不純物を取り除いた純水を使います。水に不純物が混じっていると、蒸発管の内側にスケール(固い付着物)が付いて熱が伝わりにくくなり、管が過熱して傷みます。さらに、水に溶けている酸素は配管やボイラを腐食させます。そこで脱気器で給水を加熱し、溶けている酸素などの気体を追い出します。気体は水温が高いほど水に溶けにくいからです。
熱効率を上げるために、タービンの途中から蒸気の一部を取り出して(抽気)給水加熱器で給水を温め、高圧タービンを出た蒸気は再熱器で温め直してから低圧タービンへ送ります。これらで効率が上がる理由は、ランキンサイクルの記事で T-s 線図とエンタルピーを使って説明します。
図3は、タービン建屋の中のイメージです。大形のポンプは電動機で回し、断熱材で覆った太い配管で、水や蒸気をタービンやボイラへ送ります。

- 断熱配管 保温材で熱を逃がさない
- タービン車室 蒸気を受けて回る
- 電動機 ポンプを回す
- ポンプ 水を高い圧力で送る
ボイラの種類と燃焼設備・排ガスの熱回収
ボイラは、燃料を燃やす火炉と、水が通る蒸発管、蒸気を温める過熱器・再熱器、排ガスの熱を回収する節炭器・空気予熱器などを組み合わせた大きな熱交換器です。
ボイラの種類(自然循環・強制循環・貫流)
水を蒸発管にどう回すかで、ボイラは 3 種類に分かれます。
| 種類 | 水の回り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自然循環 | 水と蒸気の重さの差で回る | ポンプが不要。高圧には不向き |
| 強制循環 | 循環ポンプで回す | 高圧でも水を回せる |
| 貫流 | 一本道で水が蒸気になる | ドラムが無い。超臨界圧もこれだけ |
図4の左は、ドラムのある循環ボイラです。ドラムから降水管を下りた水は、火炉の壁にある上昇管で熱を受け、水と蒸気が混ざった状態でドラムへ戻ります。上昇管の中は蒸気の泡が混ざって軽く、降水管の水は重いので、その差で自然に水が回ります。これが自然循環です。圧力が高くなると水と蒸気の重さの差が小さくなるため、循環ポンプで回すのが強制循環です。ドラムは、水と蒸気を分ける円筒です。
図4の右は貫流ボイラです。ドラムが無く、給水ポンプで押し込まれた水が一本道の管を通りながら、水 → 湿り蒸気 → 過熱蒸気と変わって出ていきます。水の臨界圧力(約 22 MPa)を超える超臨界圧では、水と蒸気の区別がなくなってドラムで分けられないので、貫流ボイラだけが使えます。
燃焼設備と通風方式
石炭は、微粉炭機で粉のように細かくしてから、空気と一緒にバーナから炉へ吹き込んで燃やします。細かくするほど空気に触れる表面積が増え、よく燃えます。石油は霧状にして、LNG(液化天然ガス)は気体にしたまま、バーナから吹き込みます。
図5は、火炉の覗き窓から見たバーナの炎のイメージです。炉の壁は水の通る管でできていて、炎の熱を水が受け取ります。

- 水管 中の水が炎の熱を受ける
- バーナ 燃料と空気を吹き込む
- 覗き窓 炉内の燃焼を見る
- 炎 燃料が燃える
燃やすには大量の空気が必要で、燃えた後の排ガスは煙突へ流さなければなりません。この空気とガスの流れをつくるのが通風で、ファンの置き方で 3 方式あります。
| 方式 | ファン | 炉内の圧力 |
|---|---|---|
| 押込通風 | 押込ファン(空気を押し込む) | 大気圧より高い |
| 誘引通風 | 誘引ファン(排ガスを引く) | 大気圧より低い |
| 平衡通風 | 両方のファン | 大気圧に近い |
炉内が大気圧より高いと燃焼ガスが外へ漏れやすく、低いと外から空気が入りやすくなります。平衡通風は両方のファンで炉内を大気圧に近く保てるので、大容量の発電所で採用されます。
排ガスの熱回収(節炭器・空気予熱器)
火炉を出た排ガスは、まだ熱を持っています。そのまま煙突から捨てるともったいないので、図6のように温度の高い所から順に、蒸気や給水、空気へ熱を渡していきます。
節炭器は排ガスの熱で、蒸発する前の給水を温めます。空気予熱器は排ガスの熱で、燃焼用の空気を温めます。どちらもボイラ効率を上げる機器です。煙突の前では、窒素酸化物を除く脱硝装置、ばいじんを除く集じん装置、硫黄酸化物を除く脱硫装置を通して、排ガスをきれいにします(設備や順序は発電所ごとに異なります)。
蒸気タービンと復水器の役目
蒸気タービンは、蒸気の持つ熱エネルギーを回転の運動エネルギーに変える機械です。固定された静翼で蒸気を加速し、回転する動翼に当てて軸を回します。蒸気の圧力が下がる場所の違いで、2 つの形式に分かれます。
- 衝動タービン:圧力が下がるのは静翼だけ。動翼では圧力が変わらず、蒸気がぶつかる力で回す
- 反動タービン:静翼でも動翼でも圧力が下がる。動翼から蒸気が噴き出す反動の力でも回す
実際の大形機では、両方式を組み合わせたものも使われます。タービンは、排気の行き先と使い方で次のように分けます。
| 種類 | 排気の行き先 | 使い方 |
|---|---|---|
| 復水タービン | 復水器(真空) | 発電専用の大形機 |
| 背圧タービン | 大気圧以上のまま | 排気を工場の加熱などに使う |
| 抽気タービン | 途中で一部を取り出す | 抽気を加熱などに使う |
電気事業用の大形の火力発電所は、主に復水タービンです。タービンを出た蒸気は復水器へ入り、冷やされて水に戻ります。
図8のように、表面復水器では、冷却水(多くは海水)が管の中を流れ、管の外で蒸気が冷やされて水になります。蒸気と冷却水は混ざりません。復水器の中は、漏れ込んだ空気がたまると真空が悪くなるので、空気抽出器で空気を外へ出し続けます。
復水器の圧力は、絶対圧で 5 kPa 前後(大気圧 101.3 kPa の約 1/20)です。5 kPa の飽和蒸気 1 kg の体積は約 28 m³ですが、水になると約 0.001 m³ に縮み、体積は約 28 000 分の 1 になります。蒸気が水になるたびに体積が急に縮むので、復水器の中は真空に保たれます。このとき飽和温度は約 33℃ まで下がるので、海水で冷やせば蒸気は水に戻ります。
熱の収支と冷却水の熱量・ボイラ効率の求め方
燃料が持ち込んだ熱のうち、電気になるのは一部だけです。残りは、ボイラの損失(排ガスの持ち去る熱など)、タービン・発電機などの損失、そして復水器で捨てる熱になります。入った熱と出た熱の内訳を調べるのが熱の収支です。発電端効率・送電端効率や燃料消費量の計算は火力発電の熱効率で扱うので、ここでは、熱がどこへどれだけ逃げるかを例題で確かめます。
解答と解説を見る
燃料の熱は、出力を発電端効率で割って求めます。
ボイラの損失は 、タービン・発電機などの損失は です。残りが復水器で捨てる熱です。
割合は です。答えは 528 MW、燃料の熱の 44% です。電気になる 41% より、復水器で捨てる熱のほうが多くなります。
例題1の収支を図にすると、図9のとおりです。リボンの幅が熱の量を表します。
復水器で捨てる熱は、冷却水の温度上昇として運び去られます。冷却水の質量流量を 、比熱を 、復水器の出入口の温度上昇を とすると、1 秒間に運ぶ熱量は次の式です。
です。体積流量 で与えられたときは、密度 を掛けて にします。温度の差は、K で表しても ℃ で表しても同じ値です。
解答と解説を見る
まず、質量流量を求めます。
に代入します。
答えは約 509 MW です。例題1で求めた復水器の 528 MW に近い値で、捨てる熱を冷却水が運び去っていることが確かめられます。
図10は、復水器を通って温まった冷却水が海へ戻される放水口のイメージです。環境への影響を抑えるため、取水と放水の温度差は管理されます。

次に、ボイラの性能を表すボイラ効率です。ボイラ効率は、燃料の熱のうち、蒸気が受け取った熱の割合です。蒸気の流量を 、主蒸気の比エンタルピーを 、給水の比エンタルピーを 、燃料消費量を 、燃料の発熱量を とすると、次の式になります。
分子は、給水が主蒸気になるまでに受け取った熱で、分母は、燃料が持ち込んだ熱です。
解答と解説を見る
蒸気の流量は です。
答えは約 88.5% です。残りの約 11.5% は、排ガスが持ち去る熱などの損失です。
最後は、設備の名前と役目を組み合わせる問題です。
解答と解説を見る
(ア)排ガスの熱で給水を温めるのは節炭器です。(イ)排ガスの熱で燃焼用の空気を温めるのは空気予熱器です。(ウ)給水を加熱して溶けた酸素を追い出し、腐食を防ぐのは脱気器です。
答えは (3) です。過熱器は飽和蒸気を、再熱器は高圧タービンの排気を温める装置で、給水加熱器は抽気の熱で給水を温め、復水器は排気を水に戻します。
汽力発電所は、図11のような中央制御室で、ボイラやタービンの圧力・温度・流量などを見ながら運転します。窓の外に見える冷却塔は、海水を使えない場所で、温まった冷却水を冷やして使い回すための設備です。

- 冷却塔 温まった冷却水を冷やす
- 監視画面 運転の状態を表示する
- 操作卓 運転員が機器を操作する
よくある質問
火力発電と汽力発電は同じですか。
汽力発電は火力発電の一種です。火力発電は燃料を燃やした熱で発電する方式の総称で、ボイラと蒸気タービンを使う汽力発電のほか、燃焼ガスでガスタービンを回す方式、両者を組み合わせたコンバインドサイクル発電(火力発電の熱効率で扱います)、ディーゼル機関を使う内燃力発電があります。電験三種で単に火力発電といえば、汽力発電を指すことが多いです。
復水器で、なぜ多くの熱を捨てるのですか。
蒸気を水に戻さないと、ポンプでボイラへ送り返せないからです。蒸気を水に戻すには、蒸気が持つ凝縮の熱を冷却水に渡さなければなりません。復水器の圧力が 5 kPa のとき、蒸気 1 kg が水に戻る際に渡す熱は約 2 400 kJ です。この熱は温度が低くて発電に使えないので、冷却水に捨てることになります。
節炭器と空気予熱器の違いは何ですか。
どちらも排ガスの熱を回収する装置です。節炭器は給水を温め、空気予熱器は燃焼用の空気を温めます。排ガスの流れでは、節炭器のほうが温度の高い側に、空気予熱器が低い側に置かれます。熱を戻す先が違うだけで、どちらもボイラ効率を上げ、燃料を減らします。
自然循環・強制循環・貫流は、どう使い分けますか。
おもに圧力で使い分けます。圧力があまり高くなければ自然循環で水が回ります。圧力が高くなると水と蒸気の重さの差が小さくなるので、強制循環で循環ポンプの力を借ります。水の臨界圧力(約 22 MPa)を超える超臨界圧は、貫流ボイラだけです。大容量で高温・高圧の発電所では、貫流ボイラがよく使われます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
汽力発電で、水と蒸気が一巡する順序は?
復水器 → 復水ポンプ → 給水加熱器・脱気器 → 給水ポンプ → 節炭器 → 蒸発管 → 過熱器 → タービン(途中に再熱器)→ 復水器です。
節炭器・過熱器・再熱器は、それぞれ何を温めますか?
節炭器は給水、過熱器は飽和蒸気、再熱器は高圧タービンの排気です。空気を温めるのは空気予熱器です。
自然循環ボイラが回る理由と、貫流ボイラの特徴は?
降水管の水より、上昇管の水と蒸気の混合物が軽いので、重さの差で回ります。貫流ボイラはドラムが無く、水が一本道で蒸気になります。
通風の 3 方式と、炉内の圧力は?
押込通風は大気圧より高く、誘引通風は低く、平衡通風は両方のファンで大気圧に近くなります。
復水器の役目と、真空にする理由は?
タービンの排気を水に戻します。真空にすると、出口の圧力が下がって熱落差が増え、発電量が増えます。
熱を最も多く捨てる場所と、冷却水が運ぶ熱量の式は?
復水器です。冷却水が運ぶ熱量は です。
まとめ
- 汽力発電は、ボイラで作った蒸気で蒸気タービンと発電機を回す。水と蒸気は、復水器・ポンプ・ボイラ・タービンを一巡する
- 給水には純水を使い、脱気器で溶けた酸素を抜いて腐食を防ぐ。給水加熱器と節炭器で温めてから蒸発管へ送る
- ボイラは自然循環・強制循環・貫流の 3 種類。ドラムの無い貫流ボイラは超臨界圧にも使える。通風は押込・誘引・平衡の 3 方式
- 排ガスの熱は、節炭器(給水)と空気予熱器(燃焼用空気)で回収する
- 復水器は排気を水に戻して真空をつくる。熱の収支では、復水器が最も多く熱を捨てる場所で、冷却水の熱量は
- ボイラ効率は 。蒸気が受け取った熱を、燃料の熱で割る
設備の流れがつかめたら、次は水と蒸気の状態変化を熱力学で整理します。ランキンサイクルで T-s 線図とエンタルピーの扱いを学び、火力発電の熱効率で発電端効率・送電端効率と燃料消費量の計算を確認しましょう。ボイラを原子炉に置き換えた発電は、原子力発電の仕組みで扱います。








