電機子反作用とは|偏磁作用・減磁作用と補極・補償巻線を図解
電験三種の電機子反作用を、電機子電流がつくる磁束から説明します。偏磁作用と減磁作用の違い、補償巻線・補極・ブラシの移動の使い分け、整流と火花を、図解と例題で順に確かめていきます。直流機の基本です。

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直流発電機の誘導起電力では、磁束 を一定とみなして を導きました。ところが、電機子に電流が流れると、その電流自身が磁束をつくり、 を乱します。これが電機子反作用です。偏磁作用と減磁作用の違い、その対策の補償巻線・補極・ブラシの移動、そして火花が出る整流の問題までを、この記事で順に整理します。
- 電機子反作用とは
- 電機子電流の磁束が、主磁束を乱す
- 偏磁作用と減磁作用
- 片寄る(中性軸のずれ)と、全体が減る(飽和)
- 対策
- 補償巻線・補極・ブラシの移動
- 整流と火花
- 電流の反転が遅れると火花。補極と抵抗整流で抑える
電機子反作用とは
電機子の導体に電流が流れると、電流のまわりに磁束ができます。ブラシが中性軸にあるとき、この磁束は主磁束と直角の向きに生じます(図1)。主磁束とこの磁束が合わさって、磁束は斜めの合成磁束になります。
中性軸とは、導体が磁束を横切らず、起電力が0になる位置です。無負荷のときは主磁束に直角な線ですが、合成磁束が斜めになると、中性軸も合成磁束に直角な線へずれます。このように、電機子電流がつくる磁束が主磁束に及ぼす影響を電機子反作用といいます。

- 整流子 銅の片が並ぶ
- ブラシ ばねで整流子に押し当てる
- 軸 電機子を回す
電機子電流は負荷が重いほど大きくなるので、電機子反作用も負荷とともに大きくなります。無負荷では起こりません。
偏磁作用と減磁作用の違い
電機子反作用には、性質の違う2つの作用があります(図3)。
偏磁作用は、磁極の下の磁束密度の分布がゆがむ作用です。磁極の片側が強まり、反対側が弱まります。導体が磁束を切らない中性軸も、同時にずれます。中性軸は、発電機では回転方向へ、電動機では回転と逆の向きへずれます。
減磁作用は、磁極全体の磁束 が減る作用です。強まる側は鉄心が磁気飽和して、増える量が頭打ちになります。弱まる側は、そのまま減ります。増える量より減る量が大きいため、全体では磁束が減ります。
| 項目 | 偏磁作用 | 減磁作用 |
|---|---|---|
| 起こること | 分布がゆがむ | 全体が減る |
| 中性軸 | ずれる | (関係しない) |
| 原因 | 直角方向の磁束 | 磁気飽和 |
減磁作用で が減ると、 より、発電機の起電力は下がります。電動機では、 が に比例するので、回転速度が上がります(詳しくは直流電動機の速度制御で扱います)。
解答と解説を見る
なので、磁束が 0.94 倍なら も 0.94 倍です。
答え:225.6 V(約 226 V)
電機子反作用の対策|補償巻線・補極・ブラシの移動
対策は3つあります。
補償巻線は、主磁極の磁極面(電機子に向き合う面)のみぞに巻く巻線です(図4)。電機子と直列につなぎ、電機子電流と逆向きに電流を流します。電機子の磁束を打ち消すので、偏磁作用そのものを抑えられます。大形の機械で使います。
補極は、主磁極の間(中性軸の位置)に置く小さな磁極です。補極の巻線も、電機子と直列につなぎます。補極の極性は、発電機では回転方向の次の主磁極と同じ、電動機では回転方向の直前の主磁極と同じです。中性軸付近の電機子反作用を打ち消し、次の節の整流も助けます。
ブラシの移動は、ブラシをずれた中性軸の位置へ動かす方法です。発電機では回転方向へ、電動機では逆へ動かします。ただし、負荷が変わると中性軸の位置も変わるので、小形の機械の簡易な対策です。
| 項目 | 補償巻線 | 補極 |
|---|---|---|
| 置く場所 | 主磁極の面 | 主磁極の間 |
| 打ち消す範囲 | 磁極の下全体 | 中性軸の付近 |
| 整流への効果 | 間接的 | 直接助ける |

- 主磁極コイル 磁束をつくる大きな磁極
- 補極 主磁極の間に置く小さな磁極
- 磁極片 電機子に向き合う磁極の面
解答と解説を見る
(ア)偏磁、(イ)ずれる(発電機は回転方向へずれる)、(ウ)減磁、(エ)補償巻線です。
補極は、主磁極の間に置く磁極なので、(エ)には入りません。
整流とは|火花と補極・抵抗整流
回転する電機子のコイルは、ブラシの位置を通るたびに、電流の向きが入れ替わります。この切り替えが整流です。ブラシが隣り合う2つの整流子片をまたぐ短い間、そのあいだのコイルはブラシで短絡されます。この整流期間に、コイルの電流は から へ反転します(図6)。
電流が時間に比例して変わるのが理想の直線整流です。しかし、コイルにはインダクタンス があり、電流の変化を妨げる起電力が生じます。これをリアクタンス電圧といい、整流期間を とすると、おおよそ次のとおりです。
反転が遅れると、整流期間の終わりに電流が急に切り替わり、ブラシと整流子片の間に火花が出ます。
火花を抑える方法は2つです。抵抗整流は、接触抵抗の大きい炭素ブラシを使い、短絡電流を抑える方法です。電圧整流は、補極の磁束で整流コイルにリアクタンス電圧を打ち消す向きの起電力を誘導する方法です。補極は、この電圧整流のために置かれます。

- ブラシ支え環 ホルダーを円形に支える
- ホルダー ブラシをばねで押さえる
- 炭素ブラシ 接触抵抗が大きい
- 整流子 コイルの端がつながる
解答と解説を見る
電流の変化は です。
答え:4 V
よくある質問
偏磁作用と減磁作用は、同じものですか。
別のものです。偏磁作用は磁束の分布がゆがみ中性軸がずれること、減磁作用は磁気飽和で磁束の合計が減ることです。同時に起こりますが、名前と内容を入れ替えないようにします。
補償巻線と補極は、どう使い分けますか。
補償巻線は磁極の面で偏磁作用を打ち消し、補極は中性軸の付近で整流を助けます。どちらも電機子と直列につなぐので、電機子電流が変わっても同じ割合で効きます。
減磁作用が起きると、電動機の速度はどうなりますか。
磁束が減るので、回転速度は上がります。発電機なら起電力が下がります。同じ現象でも、機械によって現れ方が違う点が間違えやすいところです。
電機子反作用は無負荷でも起きますか。
起きません。電機子電流が流れないので、電機子の磁束ができないからです。負荷電流が大きいほど強く現れます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
電機子反作用とは何ですか?
電機子電流がつくる磁束が、主磁束に影響を及ぼすことです。
偏磁作用では、何が起こりますか?
磁束の分布がゆがみ、中性軸がずれます。
減磁作用の原因は何ですか?
強まる側の磁気飽和で、全体の磁束が減ることです。
補償巻線はどこに巻き、どうつなぎますか?
主磁極の面に巻き、電機子と直列につなぎます。
補極は何のために置きますか?
中性軸付近の反作用を打ち消し、整流を助けるためです。
火花を抑える抵抗整流とは?
接触抵抗の大きい炭素ブラシで短絡電流を抑える方法です。
まとめ
- 電機子反作用は、電機子電流の磁束が主磁束に及ぼす影響。負荷電流が大きいほど強い
- 偏磁作用は分布がゆがみ中性軸がずれる。減磁作用は飽和で が減る
- 対策は、補償巻線(磁極の面、電機子と直列)、補極(中性軸の位置)、ブラシの移動
- 整流の遅れは火花の原因。抵抗整流は炭素ブラシ、電圧整流は補極
- なので、減磁作用で発電機の は下がる
磁束 の乱れを押さえたうえで、次は電動機として使うときの逆起電力と速度制御を考えます。起電力の式をもう一度確かめたいときは、直流発電機の誘導起電力に戻ってみましょう。








