直流発電機の誘導起電力|起電力の式と重ね巻・波巻の違いを図解
電験三種の直流発電機の誘導起電力を、導体1本の e=Bℓv から E=pZφN/(60a) まで導きます。重ね巻と波巻の並列回路数 a の違い、比で解く例題4問を図解で確かめます。

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直流発電機は、電機子を回して導体に磁束を横切らせ、起電力を取り出す機械です。この誘導起電力は と表され、電験三種の機械では、式の記号を読むことと、重ね巻と波巻で並列回路数 を使い分けることが基本になります。この記事は直流機の入口として、導体1本の から全体の式までを一歩ずつ導き、比で解く例題まで確かめます。
- 直流発電機の誘導起電力とは
- 発電機と電動機は同じ構造。回すと起電力が生まれる
- 導体1本の起電力
- 起電力の式
- の導き方と記号
- 重ね巻と波巻
- 重ね巻 、波巻
- 比で解く
- は と に比例する
直流発電機の誘導起電力とは
直流機は、電気を入れれば回り(電動機)、軸を回せば電気を出す(発電機)、1つの構造です。静止して電圧を変える変圧器の巻数比とは対照的に、回転して電気と力を変換するのが回転機で、直流機はその最初の単元です。構造は4つの部品でできています(図1、表)。
| 部品 | はたらき | 動くか |
|---|---|---|
| 界磁 | 磁束 をつくる | 止まっている |
| 電機子 | 導体を巻いた回転子 | 回る |
| 整流子 | 交流を直流にそろえる | 回る |
| ブラシ | 外の回路へ電流を渡す | 止まっている |

- 界磁(磁石) 磁束φをつくる。止まっている
- 電機子 導体を巻いた鉄心。回転する
- 整流子 銅の片が並び、ブラシと触れる
- 炭素ブラシ 整流子に押し当てて電流を渡す
電機子が回ると、その導体が界磁の磁束を横切り、導体に電圧が生まれます。これが誘導起電力 です。電気を入れていなくても、軸を回せば端子に電圧が出ます。この電圧の大きさが何で決まるかを、次の節から式にしていきます。
導体1本の起電力 e = Bℓv
出発点は、磁束の中を動く導体1本です。磁束密度 [T] の磁束を、長さ [m] の導体が速さ [m/s] で直角に横切ると、導体に次の起電力が生まれます(図3)。
起電力の向きは、フレミングの右手の法則で決まります。右手の親指を運動の向き、人差し指を磁束の向きにすると、中指が起電力の向きです。導体が磁束と平行に動くときは、磁束を横切らないので起電力は0です。1本の導体の起電力 の考え方は、電磁誘導とファラデーの法則で図解しています。
解答と解説を見る
に代入します。
答え:2.16 V
導体1本ではこの程度の小さな電圧です。実際の発電機では、多数の導体の電圧を足し合わせて、実用的な電圧にします。
起電力の式 E = pZφN/(60a) の導き方
全導体の電圧の足し方は、2段階です。
手順1:導体1本の平均の起電力を、 と で表す。 導体は1回転のあいだに、全部の磁極の磁束を1回ずつ横切ります。1極の磁束が [Wb]、極数が なら、横切る磁束の合計は です(図4)。回転速度 [min⁻¹] のとき、1回転にかかる時間は 秒なので、起電力は次のとおりです。
手順2:導体を並列な道に分ける。 電機子の導体は、ブラシから見ると 本の道に分かれてつながっています。全導体数 本を等分すると、1本の道には 本の導体が直列に並びます(図5)。直列の導体の電圧は足し算になるので、ブラシの間の電圧は、 の 倍です。道どうしは並列なので、電圧は道の数では増えず、電流が 本ぶんになります(キルヒホッフの法則の並列の電圧、直列回路の電圧の足し算と同じ考え方です)。
2つを合わせると、誘導起電力の式が得られます。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 極数 | (個) | |
| 電機子の全導体数 | (本) | |
| 並列回路数 | (本) | |
| 1極あたりの磁束 | Wb | |
| 回転速度 | min⁻¹ |
、、 は機械の構造で決まるので、 とまとめて、 と書くこともあります。
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(1) 重ね巻なので です。
(2) 波巻なので です。分母だけが 60 × 2 = 120 になります。
答え:(1) 200 V、(2) 400 V
重ね巻と波巻の違いと並列回路数 a
電機子の巻き方には重ね巻と波巻があります。電験三種では、1周のコイルを重ねて進める基本の巻き方(単重巻)で、並列回路数 を次のように覚えます。
| 巻き方 | 並列回路数 | 向く用途 |
|---|---|---|
| 重ね巻 | 大電流・低電圧 | |
| 波巻 | 小電流・高電圧 |
重ね巻は、隣り合う磁極の下へコイルを順に重ねてつなぐので、極と同じ数の道ができます。波巻は、同じ極(N 極どうし)の下を波のように一周してつなぐので、極数に関係なく道は2本です。同じ導体の数でも、波巻のほうが1本の道に並ぶ導体が多くなり、起電力は大きく、電流は小さくなります(図6)。
2極機では なので、重ね巻も で、波巻と同じになります。極数が増えるほど、重ね巻の は大きくなります。
実物の電機子では、鉄心のみぞに導体が収まり、整流子の片につながっています(図7、図8)。コイルのどの端をどの整流子片につなぐかで、重ね巻か波巻かが決まります。

- 電機子鉄心 薄い鋼板を重ねた鉄心
- コイル端 導体が整流子へ向かう
- 整流子 コイルの端がつながる

- 整流子片 銅の片。片の間は絶縁
- 炭素ブラシ 整流子に押し当てる
- ブラシホルダー ブラシをばねで支える
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波巻なので です。式を について解きます。
代入します。
答え:160 本
起電力は磁束と回転速度に比例する(比で解く)
式の 、、 は構造で決まる定数なので、同じ機械なら です。回転速度 を2倍にすれば も2倍、磁束 を0.8倍にすれば も0.8倍です(図9)。
数値が足りない問題は、変化の前後の比で解けます。式を2回書き、割り算で定数を消します。
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磁束の比は 0.9、回転速度の比は です。
答え:約 158 V(158.4 V)

ここまでは、電機子に電流が流れていない(無負荷)状態で、磁束 を一定とみなして考えてきました。実際に電流が流れると、電機子の電流がつくる磁界が を変えます。次の記事の主題です。
よくある質問
直流発電機の誘導起電力は、何で決まりますか。
磁束 と回転速度 に比例し、機械の構造(極数 、全導体数 、並列回路数 )で決まる定数 がかかります。出力の電圧を変えたいときは、界磁電流で を、原動機で を変えます。
重ね巻と波巻は、どちらの起電力が大きいですか。
、、、 が同じなら、道の数 の小さい波巻のほうが大きくなります。4極なら、波巻は重ね巻の2倍です(例題2)。ただし2極機では が同じなので差がありません。
回転速度は rad/s で代入してもよいですか。
この式の は min⁻¹ です。角速度 [rad/s] が与えられたら、 に直すか、 の形を使います。
電動機のときも、同じ式が使えますか。
使えます。電動機でも電機子が回れば導体が磁束を横切るので、同じ大きさの起電力が生じます。電動機ではこれが電源の電圧に逆らう向きになるため、逆起電力と呼びます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
磁束を横切る導体1本に生じる起電力の式は?
です。磁束と平行に動くときは0です。
誘導起電力の式を、記号の意味も添えて書くと?
。 は極数、 は全導体数、 は並列回路数、 は1極の磁束 [Wb]、 は min⁻¹ です。
1本の道には導体が何本直列に並びますか?
本です。道どうしは並列で、電圧は足されません。
重ね巻と波巻の並列回路数は?
重ね巻は 、波巻は です。
磁束が0.8倍、回転速度が1.5倍になると、起電力は何倍ですか?
倍です。
に代入するのは極数と極対数のどちらですか?
極数です(4極なら 4)。
まとめ
- 直流機は、発電機と電動機が同じ構造。部品は界磁・電機子・整流子・ブラシ
- 導体1本の起電力は 。1回転で を横切るので
- 全導体 本を 本の並列な道に分けるので、
- 重ね巻は 、波巻は 。 の単位は min⁻¹、 は極数
- 同じ機械では 。数値が足りない問題は比で解く
起電力の式は、直流機のすべての計算の土台です。次は、電流が流れたときに磁束が変わる電機子反作用を取り上げます。回転する機械と変圧器の考え方の違いを確かめたいときは、変圧器の巻数比にも戻ってみましょう。同じ式を電動機に当てはめた回転速度の求め方は、直流電動機の速度制御で扱います。








