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直流発電機の誘導起電力|起電力の式と重ね巻・波巻の違いを図解

電験三種の直流発電機の誘導起電力を、導体1本の e=Bℓv から E=pZφN/(60a) まで導きます。重ね巻と波巻の並列回路数 a の違い、比で解く例題4問を図解で確かめます。

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作業台に分解された小型の直流モーターが並び、銅色の整流子のついた電機子、黒い炭素ブラシ、磁石を収めた筒状のフレームが見える写真
この記事の目次
  1. 直流発電機の誘導起電力とは
  2. 導体1本の起電力 e = Bℓv
  3. 起電力の式 E = pZφN/(60a) の導き方
  4. 重ね巻と波巻の違いと並列回路数 a
  5. 起電力は磁束と回転速度に比例する(比で解く)
  6. よくある質問
  7. 直流発電機の誘導起電力は、何で決まりますか。
  8. 重ね巻と波巻は、どちらの起電力が大きいですか。
  9. 回転速度は rad/s で代入してもよいですか。
  10. 電動機のときも、同じ式が使えますか。
  11. まとめ
図解でわかる 電験三種 機械 1 直流機 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 機械 1
直流機
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直流発電機は、電機子を回して導体に磁束を横切らせ、起電力を取り出す機械です。この誘導起電力は E=pZϕN60aE = \dfrac{pZ\phi N}{60a} と表され、電験三種の機械では、式の記号を読むことと、重ね巻と波巻で並列回路数 aa を使い分けることが基本になります。この記事は直流機の入口として、導体1本の e=Bℓve = B\ell v から全体の式までを一歩ずつ導き、比で解く例題まで確かめます。

直流発電機の誘導起電力の全体像
  • 直流発電機の誘導起電力とは
    • 発電機と電動機は同じ構造。回すと起電力が生まれる
  • 導体1本の起電力
    • e=Bℓve = B\ell v
  • 起電力の式
    • E=pZϕN/(60a)E = pZ\phi N/(60a) の導き方と記号
  • 重ね巻と波巻
    • 重ね巻 a=pa = p、波巻 a=2a = 2
  • 比で解く
    • EE は ϕ\phi と NN に比例する

直流発電機の誘導起電力とは

直流機は、電気を入れれば回り(電動機)、軸を回せば電気を出す(発電機)、1つの構造です。静止して電圧を変える変圧器の巻数比とは対照的に、回転して電気と力を変換するのが回転機で、直流機はその最初の単元です。構造は4つの部品でできています(図1、表)。

NS回転界磁(磁極)電機子(回転子)導体(全部で Z 本)磁束 φ
図1 直流機の断面(略図)。磁束の中を電機子の導体が回る
部品はたらき動くか
界磁磁束 ϕ\phi をつくる止まっている
電機子導体を巻いた回転子回る
整流子交流を直流にそろえる回る
ブラシ外の回路へ電流を渡す止まっている
作業台に分解された小型の直流モーターが並び、銅色の整流子のついた電機子、黒い炭素ブラシ、磁石を収めた筒状のフレームが見える写真
  1. 界磁(磁石) 磁束φをつくる。止まっている
  2. 電機子 導体を巻いた鉄心。回転する
  3. 整流子 銅の片が並び、ブラシと触れる
  4. 炭素ブラシ 整流子に押し当てて電流を渡す
図2 分解した小型の直流モーター。部品の役割を探す(写真はイメージ)

電機子が回ると、その導体が界磁の磁束を横切り、導体に電圧が生まれます。これが誘導起電力 EE です。電気を入れていなくても、軸を回せば端子に電圧が出ます。この電圧の大きさが何で決まるかを、次の節から式にしていきます。

導体1本の起電力 e = Bℓv

出発点は、磁束の中を動く導体1本です。磁束密度 BB [T] の磁束を、長さ ℓ\ell [m] の導体が速さ vv [m/s] で直角に横切ると、導体に次の起電力が生まれます(図3)。

e=Bℓv [V]e = B\ell v\ \mathrm{[V]}
NS速さ v磁束密度 B導体(長さ ℓ)e = Bℓv長さ ℓ は紙面に垂直(手前から奥へ)
図3 磁束を横切る導体。起電力 e は B・ℓ・v の積

起電力の向きは、フレミングの右手の法則で決まります。右手の親指を運動の向き、人差し指を磁束の向きにすると、中指が起電力の向きです。導体が磁束と平行に動くときは、磁束を横切らないので起電力は0です。1本の導体の起電力 e=Blve = Blv の考え方は、電磁誘導とファラデーの法則で図解しています。

解答と解説を見る

e=Bℓve = B\ell v に代入します。

e=0.9×0.2×12=2.16 [V]e = 0.9 \times 0.2 \times 12 = 2.16\ \mathrm{[V]}

答え:2.16 V

導体1本ではこの程度の小さな電圧です。実際の発電機では、多数の導体の電圧を足し合わせて、実用的な電圧にします。

起電力の式 E = pZφN/(60a) の導き方

全導体の電圧の足し方は、2段階です。

手順1:導体1本の平均の起電力を、ϕ\phi と NN で表す。 導体は1回転のあいだに、全部の磁極の磁束を1回ずつ横切ります。1極の磁束が ϕ\phi [Wb]、極数が pp なら、横切る磁束の合計は pϕp\phi です(図4)。回転速度 NN [min⁻¹] のとき、1回転にかかる時間は 60/N60/N 秒なので、起電力は次のとおりです。

e=pϕ60/N=pϕN60e = \dfrac{p\phi}{60/N} = \dfrac{p\phi N}{60}
N 極φS 極φN 極φS 極φ磁極 p = 4 の例(1 極の磁束は φ)1 回転で横切る磁束の合計 = p × φかかる時間は 60/N [s]
図4 導体は1回転で p 個の磁極の磁束を1回ずつ横切る

手順2:導体を並列な道に分ける。 電機子の導体は、ブラシから見ると aa 本の道に分かれてつながっています。全導体数 ZZ 本を等分すると、1本の道には Z/aZ/a 本の導体が直列に並びます(図5)。直列の導体の電圧は足し算になるので、ブラシの間の電圧は、ee の Z/aZ/a 倍です。道どうしは並列なので、電圧は道の数では増えず、電流が aa 本ぶんになります(キルヒホッフの法則の並列の電圧、直列回路の電圧の足し算と同じ考え方です)。

並列回路数 a = 4 の例+ブラシ-ブラシ1 本の道に導体が Z/a 本、直列a 本の道が並列 → 電圧は 1 本の道ぶん
図5 全導体 Z 本を a 本の道に分ける。道どうしは並列

2つを合わせると、誘導起電力の式が得られます。

E=Za×pϕN60E=pZϕN60a [V]\begin{gathered} E = \dfrac{Z}{a} \times \dfrac{p\phi N}{60} \\[4pt] E = \dfrac{pZ\phi N}{60a}\ \mathrm{[V]} \end{gathered}
記号意味単位
pp極数(個)
ZZ電機子の全導体数(本)
aa並列回路数(本)
ϕ\phi1極あたりの磁束Wb
NN回転速度min⁻¹

pp、ZZ、aa は機械の構造で決まるので、KE=pZ60aK_E = \dfrac{pZ}{60a} とまとめて、E=KE ϕNE = K_E\,\phi N と書くこともあります。

解答と解説を見る

(1) 重ね巻なので a=p=4a = p = 4 です。

E=4×500×0.02×120060×4=48000240=200 [V]\begin{aligned} E &= \dfrac{4 \times 500 \times 0.02 \times 1200}{60 \times 4} \\[4pt] &= \dfrac{48000}{240} = 200\ \mathrm{[V]} \end{aligned}

(2) 波巻なので a=2a = 2 です。分母だけが 60 × 2 = 120 になります。

E=48000120=400 [V]E = \dfrac{48000}{120} = 400\ \mathrm{[V]}

答え:(1) 200 V、(2) 400 V

重ね巻と波巻の違いと並列回路数 a

電機子の巻き方には重ね巻と波巻があります。電験三種では、1周のコイルを重ねて進める基本の巻き方(単重巻)で、並列回路数 aa を次のように覚えます。

巻き方並列回路数 aa向く用途
重ね巻a=pa = p大電流・低電圧
波巻a=2a = 2小電流・高電圧

重ね巻は、隣り合う磁極の下へコイルを順に重ねてつなぐので、極と同じ数の道ができます。波巻は、同じ極(N 極どうし)の下を波のように一周してつなぐので、極数に関係なく道は2本です。同じ導体の数でも、波巻のほうが1本の道に並ぶ導体が多くなり、起電力は大きく、電流は小さくなります(図6)。

重ね巻 a = p(4 極なら 4)起電力 E大電流向き波巻 a = 2起電力 2E高電圧向き導体の総数 Z は同じ(8 本の例)
図6 重ね巻と波巻。同じ導体の数でも道の数 a が違う

2極機では p=2p = 2 なので、重ね巻も a=2a = 2 で、波巻と同じになります。極数が増えるほど、重ね巻の aa は大きくなります。

実物の電機子では、鉄心のみぞに導体が収まり、整流子の片につながっています(図7、図8)。コイルのどの端をどの整流子片につなぐかで、重ね巻か波巻かが決まります。

電機子の鉄心に銅のコイルが巻かれ、右端に整流子がついた直流機の電機子の写真
  1. 電機子鉄心 薄い鋼板を重ねた鉄心
  2. コイル端 導体が整流子へ向かう
  3. 整流子 コイルの端がつながる
図7 電機子。鉄心のみぞにコイルの導体が収まる(写真はイメージ)
銅色の整流子に黒い炭素ブラシが接し、真鍮色のブラシホルダーに収まっている写真
  1. 整流子片 銅の片。片の間は絶縁
  2. 炭素ブラシ 整流子に押し当てる
  3. ブラシホルダー ブラシをばねで支える
図8 整流子とブラシ。片ごとに巻き方のつなぎ先が決まる(写真はイメージ)
解答と解説を見る

波巻なので a=2a = 2 です。式を ZZ について解きます。

Z=60aEpϕNZ = \dfrac{60aE}{p\phi N}

代入します。

Z=60×2×2406×0.03×1000=28800180=160 [本]\begin{aligned} Z &= \dfrac{60 \times 2 \times 240}{6 \times 0.03 \times 1000} \\[4pt] &= \dfrac{28800}{180} = 160\ [\text{本}] \end{aligned}

答え:160 本

起電力は磁束と回転速度に比例する(比で解く)

式の pp、ZZ、aa は構造で決まる定数なので、同じ機械なら E∝ϕNE \propto \phi N です。回転速度 NN を2倍にすれば EE も2倍、磁束 ϕ\phi を0.8倍にすれば EE も0.8倍です(図9)。

NEφ0.8φN に比例(φ 一定)φ に比例(N 一定)同じ N では、φ が 0.8 倍なら E も 0.8 倍
図9 E は N に比例し、傾きは φ に比例する

数値が足りない問題は、変化の前後の比で解けます。式を2回書き、割り算で定数を消します。

E2E1=ϕ2N2ϕ1N1\dfrac{E_2}{E_1} = \dfrac{\phi_2 N_2}{\phi_1 N_1}
解答と解説を見る

磁束の比は 0.9、回転速度の比は 1200/1500=0.81200/1500 = 0.8 です。

E2=220×0.9×0.8=158.4 [V]\begin{aligned} E_2 &= 220 \times 0.9 \times 0.8 \\[4pt] &= 158.4\ \mathrm{[V]} \end{aligned}

答え:約 158 V(158.4 V)

工場の床に据えられた緑色の大形直流機。ブラシを収めた窓と軸継手が見える写真
図10 実際の直流機の外観。ブラシは窓の中にある(写真はイメージ)

ここまでは、電機子に電流が流れていない(無負荷)状態で、磁束 ϕ\phi を一定とみなして考えてきました。実際に電流が流れると、電機子の電流がつくる磁界が ϕ\phi を変えます。次の記事の主題です。

よくある質問

直流発電機の誘導起電力は、何で決まりますか。

磁束 ϕ\phi と回転速度 NN に比例し、機械の構造(極数 pp、全導体数 ZZ、並列回路数 aa)で決まる定数 pZ/(60a)pZ/(60a) がかかります。出力の電圧を変えたいときは、界磁電流で ϕ\phi を、原動機で NN を変えます。

重ね巻と波巻は、どちらの起電力が大きいですか。

pp、ZZ、ϕ\phi、NN が同じなら、道の数 aa の小さい波巻のほうが大きくなります。4極なら、波巻は重ね巻の2倍です(例題2)。ただし2極機では aa が同じなので差がありません。

回転速度は rad/s で代入してもよいですか。

この式の NN は min⁻¹ です。角速度 ω\omega [rad/s] が与えられたら、N=60ω/(2π)N = 60\omega/(2\pi) に直すか、E=pZϕω2πaE = \dfrac{pZ\phi\omega}{2\pi a} の形を使います。

電動機のときも、同じ式が使えますか。

使えます。電動機でも電機子が回れば導体が磁束を横切るので、同じ大きさの起電力が生じます。電動機ではこれが電源の電圧に逆らう向きになるため、逆起電力と呼びます。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

磁束を横切る導体1本に生じる起電力の式は?

e=Bℓve = B\ell v です。磁束と平行に動くときは0です。

誘導起電力の式を、記号の意味も添えて書くと?

E=pZϕN/(60a)E = pZ\phi N/(60a)。pp は極数、ZZ は全導体数、aa は並列回路数、ϕ\phi は1極の磁束 [Wb]、NN は min⁻¹ です。

1本の道には導体が何本直列に並びますか?

Z/aZ/a 本です。道どうしは並列で、電圧は足されません。

重ね巻と波巻の並列回路数は?

重ね巻は a=pa = p、波巻は a=2a = 2 です。

磁束が0.8倍、回転速度が1.5倍になると、起電力は何倍ですか?

0.8×1.5=1.20.8 \times 1.5 = 1.2 倍です。

pp に代入するのは極数と極対数のどちらですか?

極数です(4極なら 4)。

まとめ

  • 直流機は、発電機と電動機が同じ構造。部品は界磁・電機子・整流子・ブラシ
  • 導体1本の起電力は e=Bℓve = B\ell v。1回転で pϕp\phi を横切るので e=pϕN/60e = p\phi N/60
  • 全導体 ZZ 本を aa 本の並列な道に分けるので、E=pZϕN60aE = \dfrac{pZ\phi N}{60a}
  • 重ね巻は a=pa = p、波巻は a=2a = 2。NN の単位は min⁻¹、pp は極数
  • 同じ機械では E∝ϕNE \propto \phi N。数値が足りない問題は比で解く

起電力の式は、直流機のすべての計算の土台です。次は、電流が流れたときに磁束が変わる電機子反作用を取り上げます。回転する機械と変圧器の考え方の違いを確かめたいときは、変圧器の巻数比にも戻ってみましょう。同じ式を電動機に当てはめた回転速度の求め方は、直流電動機の速度制御で扱います。

図解でわかる 電験三種 機械 1 直流機 の表紙この単元を1冊で通して読む図解でわかる 電験三種 機械 / 第1巻直流機磁界と電磁力から発電機・電動機の特性、速度制御・効率までこの記事と同じ図解で、例題と練習問題まで1冊にまとめた Kindle 本です。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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