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直流電動機の速度制御|逆起電力の式と始動抵抗・3つの方法を図解

電験三種の直流電動機を、逆起電力の式から読み解きます。始動抵抗が必要な理由、分巻と直巻の特性、電圧・抵抗・界磁による速度制御の3つの方法を、図解と例題で順番に確かめていきます。直流機の総まとめです。

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実験台に置かれた小形の直流電動機。2台のメーターと、つまみで動かす巻線形の可変抵抗器が導線でつながれている
この記事の目次
  1. 直流電動機の逆起電力とは
  2. 逆起電力と速度・トルクの式
  3. 始動抵抗が必要な理由
  4. 速度制御の3つの方法|電圧・抵抗・界磁
  5. よくある質問
  6. 逆起電力と、発電機の誘導起電力は別のものですか。
  7. 始動のとき、なぜ電流が大きくなるのですか。
  8. 分巻電動機の界磁が断線すると、どうなりますか。
  9. 直巻電動機を無負荷にしてはいけないのは、なぜですか。
  10. まとめ
図解でわかる 電験三種 機械 1 直流機 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 機械 1
直流機
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直流発電機の誘導起電力で導いた E=pZϕN60aE = \dfrac{pZ\phi N}{60a} は、電動機でも同じ式で成り立ちます。電動機の電機子も磁束を切って回るので、起電力が生じるからです。ただし電動機では、この起電力が電源に逆らう向きに現れるため、逆起電力と呼びます。この記事では、起電力の式を電動機の側から読み直し、始動抵抗が要る理由と、速度制御の3つの方法をまとめます。電機子反作用で扱った磁束の乱れは、ここでは無視します。

直流電動機の速度制御の全体像
  • 直流電動機の逆起電力
    • V = E + Ra Ia
  • 速度とトルクの式
    • N = E ÷ (Kφ)、トルクは φ と Ia に比例
  • 始動抵抗
    • 始動時は E = 0。電流を抑えるため抵抗を直列に入れる
  • 速度制御の3つの方法
    • 電圧制御・抵抗制御・界磁制御

直流電動機の逆起電力とは

電動機の電機子には、電源から電機子電流 IaI_a が流れ込みます。電機子が回ると、磁束を切って逆起電力 EE が生じ、電源電圧 VV に逆らいます。電機子抵抗を RaR_a とすると、電源電圧は、逆起電力と抵抗の電圧降下の和です(図1)。

VRa電機子抵抗IaME逆起電力V = E + RaIa
図1 電動機の電機子回路。電源電圧は、逆起電力と電圧降下の和になる
V=E+RaIaV = E + R_a I_a

式を変形すると、電機子電流が求まります。

Ia=V−ERaI_a = \dfrac{V - E}{R_a}

逆起電力 EE が大きい(速く回っている)ほど、IaI_a は小さくなります。電動機は、速度が上がると自然に電流が減るしくみです。

実験台に置かれた小形の直流電動機。2台のメーターと、つまみで動かす巻線形の可変抵抗器が導線でつながれている
  1. 電動機 直流電動機の本体
  2. メーター 電圧や電流を測る
  3. 可変抵抗器 つまみで抵抗を変える
図2 直流電動機の実験の例。電動機、メーター、可変抵抗器をつなぐ(写真はイメージ)

逆起電力と速度・トルクの式

発電機の式 E=pZϕN60aE = \dfrac{pZ\phi N}{60a} の係数をまとめて KEK_E とおくと、E=KE ϕNE = K_E\,\phi N です。これを V=E+RaIaV = E + R_a I_a に入れて、NN について解きます。

N=V−RaIaKE ϕN = \dfrac{V - R_a I_a}{K_E\,\phi}

回転速度は、電圧に比例し、磁束に反比例します。この式が、速度制御の出発点です。

トルクは、磁束と電機子電流の積に比例します。

T=KT ϕIaKT=pZ2πaT = K_T\,\phi I_a \qquad K_T = \dfrac{pZ}{2\pi a}

KTK_T と KEK_E は、回転速度を min⁻¹ で表すと KT/KE=60/(2π)≒9.55K_T / K_E = 60/(2\pi) \fallingdotseq 9.55 の関係にあります。

電動機の種類で、速度とトルクの出方が変わります(図3)。

回転速度 N分巻直巻負荷電流 Ia(大きいほど重い負荷)
図3 速度特性。分巻はほぼ一定、直巻は軽負荷で速度が高くなる
種類速度トルク
分巻ほぼ一定Ia にほぼ比例
直巻負荷で大きく変わるIa の2乗に比例

分巻電動機は、界磁が電源に直接つながれて ϕ\phi がほぼ一定なので、負荷が変わっても速度があまり変わりません。直巻電動機は、電機子電流が界磁電流でもあるので、軽負荷では磁束が小さくなり、速度が上がります。直巻電動機を無負荷にしてはいけないのは、このためです。

解答と解説を見る

負荷が変わる前後の逆起電力は、次のとおりです。

E1=200−0.5×20=190 VE2=200−0.5×40=180 V\begin{aligned} E_1 &= 200 - 0.5 \times 20 = 190\ \mathrm{V} \\ E_2 &= 200 - 0.5 \times 40 = 180\ \mathrm{V} \end{aligned}

磁束が一定なら、N∝EN \propto E です。

N2=1200×180190≒1137 [min−1]\begin{aligned} N_2 &= 1200 \times \dfrac{180}{190} \\[4pt] &\fallingdotseq 1137\ \mathrm{[min^{-1}]} \end{aligned}

答え:約 1137 min⁻¹

始動抵抗が必要な理由

止まっている電動機は回転速度が0なので、逆起電力も E=0E = 0 です。このとき電機子電流は、次の値になります。

Ia=VRaI_a = \dfrac{V}{R_a}

RaR_a は小さい(数分の1 Ω〜)ので、定格電流の数倍から数十倍の始動電流が流れ、電機子や整流子を傷めます。そこで、始動のときだけ電機子に直列に始動抵抗 RsR_s を入れて、電流を抑えます(図4)。回り始めて逆起電力が上がるにつれて、抵抗を減らしていきます。

V界磁界磁巻線Ia始動抵抗RsM電機子始動時は Rs を最大にして、速度が上がるにつれて減らす
図4 始動抵抗の回路。電機子にだけ直列に入れる

始動抵抗を入れるときは、電機子回路の抵抗の合計 Ra+RsR_a + R_s で考えます。必要な RsR_s は、合計から RaR_a を引いて求めます。

分巻電動機では、始動のとき界磁抵抗を最小にして磁束を最大にします。始動トルクを大きく取るためです。

木の台に置かれた、抵抗線を巻いた円筒と、つまみ付きの摺動子を備えた可変抵抗器の写真
  1. つまみ 摺動子の位置を固定する
  2. 摺動子 巻線に接して抵抗を決める
  3. 抵抗線の巻線 長さで抵抗が決まる
図5 巻線形の可変抵抗器。摺動子を動かして抵抗を変える(写真はイメージ)
解答と解説を見る

始動時は E=0E = 0 なので、抵抗の合計は次のとおりです。

Ra+Rs=22060≒3.667 ΩR_a + R_s = \dfrac{220}{60} \fallingdotseq 3.667\ \OmegaRs=3.667−0.4≒3.27 ΩR_s = 3.667 - 0.4 \fallingdotseq 3.27\ \Omega

始動抵抗なしでは、次のようになります。

Ia=2200.4=550 [A]I_a = \dfrac{220}{0.4} = 550\ \mathrm{[A]}

答え:約 3.27 Ω、始動抵抗なしでは 550 A

速度制御の3つの方法|電圧・抵抗・界磁

N=V−RaIaKE ϕN = \dfrac{V - R_a I_a}{K_E\,\phi} の右辺にある量のうち、VV、RaR_a(直列抵抗を足す)、ϕ\phi のどれを変えるかで、3つの方法に分かれます(図6)。

N = E ÷(K φ) E = V - RaIa電圧制御電源電圧 V を変えるN はほぼ V に比例する抵抗制御電機子に直列抵抗を入れる抵抗の損失が大きい界磁制御磁束 φ を変えるφ を弱めると N は上がる
図6 速度制御の3つの方法。式の V・Ra・φ のどれかを変える
方法変えるもの特徴
電圧制御V効率がよく広い範囲
抵抗制御Ra損失が大きい
界磁制御φ効率がよく範囲は狭い

電圧制御は、電機子に加える電圧を変えます。速度が電圧にほぼ比例して、滑らかに広い範囲で変えられます。ワードレオナード方式や、半導体を使った制御装置が代表例です。直流の電圧を半導体のスイッチで変える装置は、チョッパの記事で図解しています。

抵抗制御は、電機子に直列に抵抗を入れて、電圧降下で電機子の電圧を下げます。簡単ですが、抵抗で電力を消費するため、効率がよくありません。

界磁制御は、分巻電動機の界磁回路に抵抗を入れて、界磁電流を変え、磁束 ϕ\phi を変えます。磁束を弱めると、速度は上がります。損失が小さく手軽ですが、変えられるのは主に基底速度より高い側です。

金属の台の上に、直流電動機と軸継手、青い箱形の装置が一列に並ぶ試験台の写真
  1. 端子箱 電源のリード線をつなぐ
  2. 電動機 本体
  3. 軸継手 軸どうしをつなぐ
  4. 負荷の装置 トルクや回転を測る
図7 電動機を試験する台。軸継手で負荷の装置につなぐ(写真はイメージ)
解答と解説を見る

磁束が一定でトルクも一定なら、T=KTϕIaT = K_T\phi I_a より電機子電流は 20 A のままです。

E1=200−0.5×20=190 VE2=150−0.5×20=140 V\begin{aligned} E_1 &= 200 - 0.5 \times 20 = 190\ \mathrm{V} \\ E_2 &= 150 - 0.5 \times 20 = 140\ \mathrm{V} \end{aligned}

N∝EN \propto E なので、次のようになります。

N2=1200×140190≒884 [min−1]\begin{aligned} N_2 &= 1200 \times \dfrac{140}{190} \\[4pt] &\fallingdotseq 884\ \mathrm{[min^{-1}]} \end{aligned}

答え:約 884 min⁻¹

実際の設備では、これらの操作を盤のつまみで行います。電圧、界磁、始動の操作が並ぶ操作盤の例です。

灰色の操作盤に、大小のメーター5台と、大きな目盛り付きつまみ3個、ボタンやスイッチが並ぶ写真
図8 直流電動機の操作盤の例。つまみで電圧や界磁を調整する(写真はイメージ)

最後に、止めるときの制動にも種類があります。電動機を発電機として働かせる発電制動や回生制動などがあります。ここでは名前だけ押さえておけば十分です。

よくある質問

逆起電力と、発電機の誘導起電力は別のものですか。

同じ式で表される同じ現象です。電動機では、この起電力が電源に逆らう向きに現れるため、逆起電力と呼びます。電源電圧は、逆起電力と電機子抵抗の電圧降下の和になります。

始動のとき、なぜ電流が大きくなるのですか。

停止中は逆起電力が0なので、電源電圧がすべて電機子抵抗にかかるからです。回り始めると逆起電力が生じて電流が減るため、始動の間だけ始動抵抗で電流を抑えます。

分巻電動機の界磁が断線すると、どうなりますか。

磁束がほぼなくなるので、N∝1/ϕN \propto 1/\phi の関係から回転速度が危険なほど上がります。界磁回路は、始動前に必ず確かめるべき部分です。

直巻電動機を無負荷にしてはいけないのは、なぜですか。

軽負荷では電機子電流が小さく、界磁電流も小さいため磁束が弱まり、速度が非常に高くなるからです。ベルトなどが外れない直結の用途に使います。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

電動機の電源電圧 V は、何の和ですか?

逆起電力 E と電機子抵抗の電圧降下 Ra Ia の和です。

回転速度の式は?

N = (V - Ra Ia) ÷ (KE φ)。電圧に比例し、磁束に反比例します。

トルクは何に比例しますか?

磁束 φ と電機子電流 Ia の積に比例します。

始動抵抗が必要なのはなぜですか?

始動時は E = 0 で、大きな始動電流が流れるからです。

速度制御の3つの方法は?

電圧制御、抵抗制御、界磁制御です。

界磁を弱めると速度はどうなりますか?

磁束が減るので、速度は上がります。

まとめ

  • 電動機では、電機子の起電力が電源に逆らう逆起電力になる。V=E+RaIaV = E + R_a I_a
  • 回転速度 N=V−RaIaKE ϕN = \dfrac{V - R_a I_a}{K_E\,\phi}、トルク T=KT ϕIaT = K_T\,\phi I_a
  • 始動時は E=0E = 0 で電流が大きい。始動抵抗 RsR_s を直列に入れ、合計から RaR_a を引いて求める
  • 速度制御は、電圧(広い範囲)・抵抗(損失大)・界磁(磁束を弱めると速度上昇)の3つ
  • 直巻電動機は、無負荷にしない

この式の土台は、直流発電機の誘導起電力にあります。磁束が乱れたときの変化は、電機子反作用で確かめてください。

図解でわかる 電験三種 機械 1 直流機 の表紙この単元を1冊で通して読む図解でわかる 電験三種 機械 / 第1巻直流機磁界と電磁力から発電機・電動機の特性、速度制御・効率までこの記事と同じ図解で、例題と練習問題まで1冊にまとめた Kindle 本です。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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