前の記事で誘導電動機を終え、この記事から同期機に入ります。発電所の発電機の大部分は同期発電機で、周波数が回転速度で決まるのが特徴です。この記事では、回転界磁形のしくみ、誘導起電力、電機子反作用、同期リアクタンスと出力の式、短絡比、並行運転の条件を、図と例題で順に確認します。
同期発電機の全体像
- 回転界磁形のしくみ
- 固定子に電機子巻線、回転子に界磁。周波数は f=pN/120 で、回転速度 N で決まる
- 誘導起電力
- E=4.44fwΦkw。界磁電流で磁束 Φ を変えて、E を調整する
- 電機子反作用と同期リアクタンス
- 遅れ電流は減磁、進み電流は増磁。まとめて Xs で表し、E˙=V˙+jXsI˙
- 出力と短絡比
- P=3VEsinδ/Xs。短絡比 Ks=If0/Ifs は、パーセント同期インピーダンス Zs から Ks=100/Zs [%]
- 並行運転の条件
同期発電機とは?回転界磁形のしくみ
同期発電機とは、回転子の回転速度に比例した周波数の三相交流を発生する発電機です。回転する磁極がつくる磁束を固定子の巻線が横切ることで、三相交流の電圧が生じます。
電験三種で扱う同期発電機は、ほとんどが回転界磁形です。固定子(電機子)に三相巻線を置き、回転子には直流の界磁電流で N 極・S 極をつくって、原動機で回します(図1)。
図1 回転界磁形のしくみ。回転子に直流を流して磁極をつくり、固定子の巻線に起電力を誘導する
固定子の巻線の前を N 極と S 極が 1 組通り過ぎるたびに、交流が 1 周期進みます。回転子が 1 回転すると、p 極機では p/2 組が通り過ぎるので、2 極機なら 1 回転で 1 周期、p 極機なら 1 回転で p/2 周期の交流が生じます。回転速度を N [min−1] とすると、毎秒の回転数は N/60 なので、周波数は次のようになります。
f=2p×60N=120pN [Hz]
回転速度で書き直すと N=120f/p で、誘導電動機の同期速度と同じ式です。回転速度を決めれば周波数が決まります。
回転界磁形にする理由は 2 つあります。
- 電機子巻線は、大きな電流と高い電圧を扱います。動かない固定子に置くほうが、絶縁しやすく、外部への接続も簡単です
- 界磁に必要な直流電力は小さいので、回転子へはスリップリングとブラシなどで供給できます
回転子を回す原動機には、水車、蒸気タービン、ディーゼルエンジンなどが使われます(図2)。
1ラジエーター2エンジン3発電機4端子箱5共通台- ラジエーター エンジンを冷やす
- エンジン 原動機として回す
- 発電機 同期発電機
- 端子箱 電力を取り出す
- 共通台 全体を支える
図2 エンジンで同期発電機を回す発電装置(写真はイメージ)
回転子の形と極数:突極形と円筒形
回転子の形には、円筒形と突極形があります。どちらを使うかは、原動機の回転速度で決まります。
| 項目 | 円筒形 | 突極形 |
|---|
| 主な例 | タービン発電機 | 水車発電機など |
| 回転子の形 | 滑らかな円筒に溝を切り、巻線を入れる | 磁極が突き出し、磁極ごとに巻線を巻く |
| 回転速度 | 高速(極数は 2 や 4) | 比較的低速(極数が多い) |
| 軸の向き | 横軸 | 立軸が多い |
| 原動機 | 蒸気タービン | 水車、ディーゼルエンジンなど |
蒸気タービンのように高速で回る原動機には、遠心力に強い円筒形を使います。水車のように低速で回る原動機には、極数を多くしやすい突極形を使います。水力発電所の建屋には、大きな水車発電機が据えられています(図3)。構造の詳しいところは水車発電機とはで扱います。
1発電機の上部2放射状の梁3手すり4天井クレーン5窓- 発電機の上部 円形の覆い
- 放射状の梁 覆いを支える
- 手すり 通路の安全のため
- 天井クレーン 重い機器を吊る
- 窓 建屋の外が見える
図3 水力発電所の建屋に据えられた大きな発電機の上部(写真はイメージ)
極数と回転速度の関係は、N=120f/p から計算できます。
| 極数 p | 50 Hz [min−1] | 60 Hz [min−1] |
|---|
| 2 | 3000 | 3600 |
| 4 | 1500 | 1800 |
| 12 | 500 | 600 |
| 24 | 250 | 300 |
| 48 | 125 | 150 |
極数が多いほど、同じ周波数を得る回転速度は低くなります。
誘導起電力 E=4.44fwΦkw
回転子が回ると、固定子の巻線を貫く磁束が周期的に変わり、巻線に誘導起電力が生じます。1 相の誘導起電力の実効値 E は、次の式です。
E=4.44fwΦkw [V]
- f:周波数 [Hz]
- w:1 相の直列巻数。回転速度 N と区別するため w と書きます(N と書く本もあります)
- Φ:1 極の磁束 [Wb]
- kw:巻線係数。1 より少し小さい係数です
係数 4.44 は、2π≈4.443 です。磁束が Φcosωt で変わると、起電力の最大値は ωwΦ=2πfwΦ で、これを 2 で割って実効値にすると 2πfwΦ になります。巻線係数 kw は、分布巻や短節巻にしたために、コイルごとの起電力の位相が少しずれ、足し合わせた合計が小さくなる分を表します。
式から、E は周波数 f と磁束 Φ に比例することが分かります。磁束は界磁電流で変えられるので、界磁電流を調整すると、E を調整できます(磁気飽和が起こらない範囲では、E は界磁電流に比例します)。電機子巻線は、固定子の積層鉄心のスロットに収められています(図4)。
1コイル端2積層鉄心3外枠4脚- コイル端 電機子巻線の端
- 積層鉄心 巻線を入れる溝がある
- 外枠 鋼製の枠
- 脚 床に据える
図4 発電機の固定子。電機子巻線が積層鉄心のスロットに入る(写真はイメージ)
電機子反作用
発電機に負荷をつなぐと、電機子巻線に電流 I が流れます。この電流がつくる磁束 Φa が、界磁の磁束 Φf に影響することを、電機子反作用といいます。
影響の向きは、電機子電流 I が、誘導起電力 E に対して、どんな位相かで変わります。電流を、E と同相の成分と、E より 90° 遅れまたは 90° 進んだ成分に分けて考えると、次の 3 通りです(図5)。
| I の位相(E 基準) | 作用 | Φa と Φf |
|---|
| 90° 遅れ | 減磁作用 | Φa が Φf と逆向きで、弱める |
| 90° 進み | 増磁作用 | Φa が Φf と同じ向きで、強める |
| 同相 | 交さ磁化作用 | Φa が Φf と直角で、磁束の分布をゆがめる |
図5 電機子電流の位相と電機子反作用。E に対して I が遅れると減磁、進むと増磁、同相だと交さ磁化
実際の負荷は、遅れ力率のことが多く、遅れ電流の減磁作用で端子電圧が下がります。進み電流の負荷では、増磁作用で端子電圧が上がります。直流機の電機子反作用は、電機子反作用とはで整理しています。同期機では、電流の位相で作用が変わる点が違います。
同期リアクタンスと 1 相の等価回路
電機子反作用による電圧の変化は、電機子電流に比例します。そこで、電機子反作用による電圧の変化を、電流に比例するリアクタンスの電圧降下として扱い、このリアクタンスを電機子反作用リアクタンス Xa といいます。電機子巻線の漏れリアクタンス Xl を加えたものが、同期リアクタンス Xs です。
Xs=Xa+Xl [Ω]
電機子抵抗 ra は Xs に比べてごく小さいので、同期インピーダンスは Z˙s=ra+jXs≈jXs とみなします。1 相分の等価回路は、誘導起電力 E˙ の電源に jXs が直列につながった形です(図6)。
図6 1 相分の等価回路とフェーザ図。E は V より角 δ だけ進む
図6の関係は、次の式です。V は 1 相の端子電圧(相電圧)、E は 1 相の誘導起電力です。
E˙=V˙+jXsI˙
V を基準にすると、遅れ力率の電流 I は V より θ だけ遅れ、jXsI は I より 90° 進んだ向きになります。E は、V に jXsI を足したものです。E と V の位相差 δ を、負荷角といいます。
遅れ力率のときは E>V です。界磁電流を変えずに無負荷にすると、端子電圧は E まで上がるので、遅れ負荷では電圧変動率が大きくなります。
出力の式 P=3VEsinδ/Xs
図6のフェーザ図から、出力の式を導きます。E の、V と直角な成分 Esinδ は、jXsI の、V と直角な成分 XsIcosθ に等しくなります。
Esinδ=XsIcosθ
1 相の出力は VIcosθ なので、Icosθ=Esinδ/Xs を代入すると、三相の出力は次のようになります。
P=3VIcosθ=Xs3VEsinδ [W]
V、E は相電圧です。線間電圧 VL=3V、EL=3E で書くと、3VE=VLEL なので、係数の 3 が消えます。
P=XsVLELsinδ [W]
出力は sinδ に比例し、δ=90° のとき最大値 3VE/Xs になります(図7)。δ が 90° を超えると、出力は減るので、安定に運転できません(同期はずれ)。安定に運転できるのは、δ が 90° までの範囲です。
図7 P–δ 曲線(円筒形の場合)。δ が 90° で出力は最大になる
図7は、回転子が円筒形の場合です。突極形は、sin2δ に比例する項が加わるので、90° より小さい δ で出力が最大になります。
短絡比
短絡比は、同期発電機の性質を表す値で、2 つの試験の結果から決まります。
- 無負荷飽和曲線:無負荷で、界磁電流 If を変えたときの端子電圧
- 三相短絡曲線:三相短絡で、界磁電流 If を変えたときの短絡電流。直線になる
無負荷で定格電圧を発生する界磁電流を If0、三相短絡で定格電流を流す界磁電流を Ifs とすると、短絡比 Ks は次の式です(図8)。
Ks=IfsIf0
図8 無負荷飽和曲線と短絡曲線(概形)。短絡比 Ks は If0 と Ifs の比
短絡曲線は直線なので、If0 で三相短絡すると、短絡電流は定格電流 In の Ks 倍になります。一方、If0 のとき E は定格の相電圧 Vn なので、短絡電流は Vn/Zs と書けます(この Zs は、Vn を短絡電流で割った値)。この 2 つを等しいとおくと、次の関係が得られます。
KsIn=ZsVnKs=ZsInVn=Zs [%]100
Zs [%]=ZsIn/Vn×100 です。短絡比は、パーセント同期インピーダンスの逆数に 100 を掛けた値です。パーセントインピーダンスの考え方は、%インピーダンスと短絡電流の計算と同じです。Zs [Ω] に直すときは、定格の線間電圧を V、三相定格容量を S として、次の式を使います。
Zs [Ω]=100Zs [%]×SV2
短絡比の大小は、機械の性質を左右します。
| 項目 | 短絡比が大きい | 短絡比が小さい |
|---|
| 同期インピーダンス | 小さい | 大きい |
| 電圧変動率 | 小さい | 大きい |
| 安定度 | 高い | 低い |
| 三相短絡電流 | 大きい | 小さい |
| 自己励磁 | 起こしにくい | 起こしやすい |
| 機械の大きさ・重さ・価格 | 大きく、重く、高い | 小さく、軽く、安い |
短絡比を大きくするには、空隙を大きくして、同期リアクタンスを小さくします。短絡比の大きい機械は、巻線に比べて鉄心を大きくとるので「鉄機械」、小さい機械は、鉄心に比べて巻線を多く使うので「銅機械」と呼ばれます。水車発電機は短絡比が大きめ、タービン発電機は小さめにつくります。
並行運転の条件
発電機を、すでに電力系統につながっている発電機と、並列につなぐことを並行運転といいます(図9)。つなぐ前に、次の 5 つの条件を合わせます。
1鉄塔2電線3夕日4野原- 鉄塔 電線を支える
- 電線 電力を運ぶ
- 夕日 空が赤く染まる
- 野原 鉄塔の足もと
図9 送電線の鉄塔と電線。多くの発電機が同じ系統に並列につながる(写真はイメージ)
| 条件 | 合わないと | 合わせ方 |
|---|
| 電圧の大きさ | 無効の循環電流が流れる | 界磁電流で調整する |
| 周波数 | 位相差が変わり続け、うなりが生じる | 原動機の回転速度(調速機)で調整する |
| 位相 | つなぐ瞬間に横流が流れ、衝撃が生じる | 同期検定器で一致を確かめる |
| 相順 | 短絡と同じ状態になる | 結線を入れ替える |
| 波形 | 高調波の循環電流が流れる | 巻線の設計で決まる |
つないだあとは、有効電力の分担を原動機の入力で、無効電力の分担を界磁電流で調整します。
例題と間違えやすいところ
解答と解説を見る
(1) f=pN/120 より、
p=N120f=150120×50=40で、40 極です。
(2) E=4.44fwΦkw に代入すると、
E=4.44×50×100×0.06×0.9≈1199 [V]です。Y 結線なら、線間電圧は 3 倍の約 2076 [V] です。
解答と解説を見る
1 相の端子電圧は V=6600/3≈3810.5 [V]、XsI=12×100=1200 [V] です。
力率 1 のとき、I は V と同相で、jXsI は V と直角です。
E=3810.52+12002≈3995 [V]力率 0.8(遅れ)のとき、I˙=100(0.8−j0.6)=80−j60 [A] なので、
jXsI˙=j12(80−j60)=720+j960E˙=3810.5+720+j960=4530.5+j960∣E˙∣≈4631 [V]です。遅れ力率のほうが、同じ端子電圧を保つのに大きな E が必要です。
磁気飽和を無視して、界磁電流を変えずに無負荷にすると、端子電圧は E まで上がります。したがって、電圧変動率は (E−V)/V×100 [%] で、力率 1 のとき約 4.8 %、力率 0.8(遅れ)のとき約 21.5 % です。
解答と解説を見る
相電圧に直すと、V=6600/3≈3810.5 [V]、E=8000/3≈4618.8 [V] です。
P=Xs3VEsinδ=103×3810.5×4618.8×0.5≈2.64×106 [W]で、2.64 MW です。線間電圧のまま P=VLELsinδ/Xs で計算しても、6600×8000×0.5/10 で同じ値になります。
最大出力は δ=90° のときで、sin90°=1 なので、sin30°=0.5 のときの 2 倍です。
Pmax=2.64×2=5.28 [MW]
解答と解説を見る
短絡比は、
Ks=IfsIf0=120150=1.25です。パーセント同期インピーダンスは、
Zs [%]=Ks100=1.25100=80 [%]です。V を線間電圧、S を三相容量として、Zs [Ω] は、
Zs=10080×10×10666002≈3.48 [Ω]です。If0 のまま三相短絡すると、短絡電流は定格電流の Ks=1.25 倍になります。
間違えやすいところを表にまとめます。
| 間違い | 正しくは |
|---|
| 遅れ電流で増磁作用が起こる | 遅れは減磁、進みが増磁 |
| Xs=Xa とする | Xs=Xa+Xl(漏れリアクタンスも足す) |
| P=3VEsinδ/Xs に線間電圧を入れる | 3 を付けるなら相電圧。線間電圧なら P=VLELsinδ/Xs |
| 短絡比 Ks=Ifs/If0 | Ks=If0/Ifs。Zs が大きいほど Ks は小さい |
| 短絡比が大きい機械は小さく安い | 大きく、重く、高い。そのかわり電圧変動率は小さい |
| 周波数を界磁電流で合わせる | 周波数は原動機の回転速度、電圧は界磁電流で合わせる |
よくある質問
同期発電機の「同期」とは何ですか?
回転速度 N と周波数 f が、N=120f/p で決まることです。系統につながった同期発電機は、系統の周波数に対応した同期速度で回り、負荷が変わっても回転速度は同期速度のままです。
同期インピーダンスと同期リアクタンスの違いは何ですか?
同期インピーダンスは Z˙s=ra+jXs で、電機子抵抗 ra を含みます。ra は Xs に比べてごく小さいので、ふつうは ra を無視して、Zs≈Xs として計算します。
負荷角 δ とは何ですか?
誘導起電力 E と端子電圧 V の位相差です。出力は sinδ に比例するので、有効電力を多く出すほど δ は大きくなります。
並行運転中に、界磁電流だけを増やすとどうなりますか?
端子電圧は系統で決まっているので、有効電力は変わらず、発電機から系統へ出す遅れ無効電力が増えます。E が大きくなり、P=3VEsinδ/Xs が一定なので、δ は小さくなります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
4 極、60 Hz の同期発電機の回転速度は?
N=120f/p=120×60/4=1800 [min−1] です。
遅れ電流と進み電流で、電機子反作用はどう違いますか?
遅れは減磁作用、進みは増磁作用です。同相なら交さ磁化作用です。
同期リアクタンス Xs は何の和ですか?
電機子反作用リアクタンス Xa と漏れリアクタンス Xl の和です。
三相の出力の式と、最大になる負荷角は?
P=3VEsinδ/Xs で、円筒形は δ=90° のとき最大です。
短絡比 Ks は何で決まり、大きいとどうなりますか?
Ks=If0/Ifs=100/Zs [%] です。大きいと、Zs と電圧変動率は小さく、機械は大きく高価です。
並行運転の条件を 5 つ挙げると?
電圧の大きさ・周波数・位相・相順・波形が一致することです。
まとめ
- 同期発電機は、固定子に電機子巻線、回転子に界磁を置く回転界磁形。周波数は f=pN/120
- 1 相の誘導起電力は E=4.44fwΦkw。界磁電流で磁束を変えて調整する
- 電機子反作用は、遅れ電流で減磁、進み電流で増磁、同相で交さ磁化。同期リアクタンスは Xs=Xa+Xl
- 出力は P=3VEsinδ/Xs(V、E は相電圧)。円筒形は δ=90° で最大で、安定なのは 90° まで
- 短絡比は Ks=If0/Ifs=100/Zs [%]。並行運転は、電圧・周波数・位相・相順・波形を合わせる
| 量 | 式 |
|---|
| 回転速度と周波数 | N=120f/p |
| 誘導起電力(1 相) | E=4.44fwΦkw |
| 等価回路 | E˙=V˙+jXsI˙ |
| 出力(三相) | P=3VEsinδ/Xs=VLELsinδ/Xs |
| 短絡比 | Ks=If0/Ifs=100/Zs [%] |
同期機と誘導機の違いは三相誘導電動機とはで、水車発電機の構造は水車発電機とはで整理します。