前の記事のクーロンの法則では、電荷どうしが及ぼし合う力と、電荷のまわりの電界を学びました。ところが、電界は向きのある量なので、電荷が2個以上になると、矢印を合成する計算が重くなります。
そこで使うのが電位です。電位は向きのない量なので、複数の電荷があっても足し算だけで済みます。この記事では、電位と電位差の意味、点電荷の電位 V=kQ/r、等電位面と電気力線の関係、平行板の電界 E=V/d、仕事 W=qV の使い方を、例題で確かめます。
電位と電位差の全体像
- 電位とは
- 電位は、+1 C の電荷がもつ位置エネルギー。電位の差が電位差(電圧)
- 電荷を電位差 V の間で動かす仕事は W = qV
- 点電荷の電位
- V = kQ/r。電位は距離に反比例し、電界は距離の2乗に反比例する
- 複数の電荷の電位は、向きがないので足し算
- 等電位面と電気力線
- 等電位面と電気力線は直角に交わる
- 電界は、電位が下がる向きを向く
- 平行板の電界
- 例題
- 点電荷の V と E、中点の電位、平行板の力と仕事、電荷を運ぶ仕事
電位とは
電界の中で電荷を動かすと、静電力に逆らう仕事や、静電力がする仕事が出てきます。この「位置によって決まるエネルギーの高さ」を表すのが電位です。
電位とは、+1[C] の電荷がその点でもつ位置エネルギーのことで、単位はボルト [V](=[J/C])です。高さには基準の 0 が要るのと同じで、電位にも基準点が要ります。点電荷の電位では無限に遠い点を、回路では大地(アース)を、0 V にとります。2点の電位の差が電位差で、電気回路でいう電圧のことです。電位差は基準点をどこにとっても変わりません。
重力のたとえで考えると、物体は高い所から低い所へ落ちます。電気では、正の電荷が電位の高い所から低い所へ向かいます。
図1 電位は高さにあたる。正の電荷は、電位の高い所から低い所へ向かう
| 重力 | 電気 |
|---|
| 高さ | 電位 |
| 高さの差 | 電位差(電圧) |
| 位置エネルギー mgh | 位置エネルギー qV |
静電気を使った実験装置に、ヴァン・デ・グラーフ発電機があります。金属球に手を置くと、体も球と同じ電位になり、髪の毛は同じ符号の電荷を帯びて、互いに反発して逆立ちます。
1金属球2髪の毛3手- 金属球 電荷がたまる
- 髪の毛 同符号で反発
- 手 球と同じ電位
図2 ヴァン・デ・グラーフ発電機の金属球に手を置いた様子。髪の毛が、同じ符号の電荷どうしの反発で逆立つ(写真はイメージ)
電位差と仕事 W=qV
電位差 V[V] の2点間で、電荷 q[C] を動かすときの仕事(エネルギーの変化)は、次の式で表せます。
W=qV[J]
1 V の電位差のもとで 1 C を動かすと 1 J の仕事になる、というのが V = J/C の意味です。
電位の低い所から高い所へ正の電荷を運ぶには、静電力に逆らうので、外から W=qV の仕事が要ります。逆に、高い所から低い所へは静電力が仕事をして、そのぶん電荷の運動エネルギーが増えます。電子(電荷 −e、e は電気素量)が電位差 V で加速されると、運動エネルギーは eV になります。1[eV](電子ボルト)は 1.602×10−19[J] です。
冬にドアノブに触れて「バチッ」と感じるのは、帯電した体とドアノブの間の電位差が大きくなり、空気中で放電が起きるためです。
1火花2指先3ドアノブ- 火花 放電のあと
- 指先 帯電した体
- ドアノブ 金属の導体
図3 指先とドアノブの間の火花。電位差が大きくなると、空気中でも放電する(写真はイメージ)
点電荷の電位 V=kQ/r
点電荷 Q[C] から距離 r[m] の点の電位は、無限遠を 0 V として、次の式で表せます。
V=4πε0rQ=rkQ[V]
ここで k=4πε01≈9×109[N⋅m2/C2] です。Q が正なら電位は正、負なら負になります。距離 r に反比例するので、点電荷に近づくほど電位の大きさは大きくなります。電界は E=kQ/r2[V/m](導き方はクーロンの法則)で、距離の2乗に反比例します。
図4 点電荷からの距離と、電位 V・電界 E の大きさ(距離 1 のときを 1 とする)
電位と電界の関係は、言葉でも言えます。電位は、電界の強さを無限遠までの距離にわたって足し合わせたもので、図の E の曲線の下の面積が V にあたります。電界が距離の2乗に反比例するので、足し合わせた電位は距離に反比例します。
| 電界 E | 電位 V |
|---|
| 式 | kQ/r2 | kQ/r |
| 距離を2倍にすると | 1/4 | 1/2 |
| 向き | ある(ベクトル) | ない(スカラー) |
| 複数の電荷 | 矢印を合成 | 足し算 |
複数の電荷の電位は足し算
電位には向きがないので、複数の点電荷がつくる電位は、1個ずつの電位を符号つきで足すだけです。
V=V1+V2+⋯=k(r1Q1+r2Q2+⋯)
電界は、1個ずつの電界を矢印として合成します。2個の電荷の中点 P で比べると、違いがはっきりします。各電荷から P までの距離を r とします。
図5 中点 P の電界と電位。電界は向きがあるのでベクトルで合成し、電位は向きがないので足し算
同じ符号の2個の電荷では、中点の電界は向きが逆で打ち消し合って 0 になりますが、電位は同じ符号の足し算なので 0 になりません。異なる符号では、電界は同じ向きで強め合い、電位は正と負が打ち消し合って 0 になります。電界が 0 でも電位が 0 とは限らず、電位が 0 でも電界が 0 とは限りません。
等電位面と電気力線
電位が等しい点をつないだ面を、等電位面といいます。紙の上の図では線で表します。地図の等高線と同じで、電位が同じ高さの点を結んだものです。
点電荷のまわりの等電位面は、電荷を中心にした同心円(空間では球面)です。電気力線は電荷から放射状に出ているので、円と直角に交わります。
図6 点電荷(Q=5 nC)の等電位面と電気力線。円が等電位面で、放射状の矢印が電気力線
等電位面と電気力線には、次の性質があります。
- 電気力線と等電位面は、直角に交わる。等電位面に沿って電荷を動かしても電位は変わらず、静電力がする仕事は 0 になる。仕事が 0 になるのは、静電力が動く向きと直角のときだけなので、電界は面と直角を向く
- 電界の向きは、電位が下がる向き。電気力線は、電位の高い所から低い所へ向かう
- 等電位面どうしは交わらない。交わると、1つの点に電位が2つあることになってしまう
- 等電位面の間隔がせまい所ほど、電界は強い。等高線がこんでいる所が急な斜面であるのと同じ
- 静電気的につり合った導体は、内部も表面も同じ電位になる。導体の表面は等電位面で、電気力線は表面に直角に出入りする
電界の強さと電位の変化の関係は、次の式でまとめられます。距離 Δx だけ進むと電位が ΔV だけ変わるとき、
E=−ΔxΔV[V/m]
マイナスの符号は、電界が電位の下がる向きを向くことを表します。電界の強さは、電位が1mあたりにどれだけ下がるか(電位の傾き)に等しいのです。
平行板の電界 E=V/d
間隔 d[m] の2枚の金属板に電位差 V[V] を与えると、板の間には、どこでも向きと強さが同じ一様な電界ができます(板の大きさに比べて、間隔が十分せまいとき)。
E=dV[V/m]
電位は、高電位の板から低電位の板へ向かって、一定の割合で下がります。等電位面(図では線)は、板に平行で等間隔に並び、電気力線は板に垂直です。電界の向きは、高電位の板から低電位の板へ向かう向きです。
図7 平行板の間の電界。電気力線(青)は等電位線(緑の破線)と直角で、一様な電界ができる
この電界の中の電荷 q が受ける力は F=qE です。板の間を距離 d だけ動かすときの仕事は W=Fd=qEd=qV で、先の W=qV と一致します。
1左の板2右の板3すきま4絶縁台- 左の板 赤のリード線側
- 右の板 黒のリード線側
- すきま 一様な電界
- 絶縁台 板を床から絶縁
図8 平行板の実験。2枚の金属板に電位差を与えると、すきまに一様な電界ができる(写真はイメージ)
平行板コンデンサの電気容量や静電エネルギーは平行板コンデンサの静電容量で、つないだときの合成容量はコンデンサの接続と合成容量で扱います。
電界が強くなりすぎると、空気は絶縁を保てなくなり、火花放電が起きます。乾いた空気では、おおよそ 3×106[V/m] が目安で、板の間隔が 1 mm なら、約 3000 V で放電します。雷は、雲と地面の間の電位差が大きくなり、空気が電界に耐えられなくなって起きる放電です。
図9 雷は、雲と地面の間の大きな電位差が空気の絶縁を破って起きる放電(写真はイメージ)
電位の例題(点電荷・平行板・仕事)
計算に入る前に、問われ方と使う式を表にまとめます。
| 問われること | 使う式 | 注意 |
|---|
| 点電荷の電位・電界 | V=kQ/r、E=kQ/r2 | r は m にそろえる |
| 複数の電荷の電位 | 電位を符号つきで足す | 電界は矢印で合成 |
| 平行板の電界と力 | E=V/d、F=qE | d は m にそろえる |
| 電荷を運ぶ仕事 | W=qV | 向きで正負が変わる |
以下、k=9×109[N⋅m2/C2] とします。
点電荷の電位と電界
解答と解説を見る
(1) Q=5×10−9[C]、r=0.15[m] です。
V=rkQ=0.159×109×5×10−9=0.1545=300[V]E=r2kQ=0.15245=2000[V/m](2) 距離が2倍なので、電位は 1/2、電界は 1/4 になります。
VE=150[V]=500[V/m]
複数の電荷の電位
解答と解説を見る
(1) 中点は、どちらの電荷からも 0.2[m] です。電位は、正と負が打ち消し合います。
V=0.2kQ−0.2kQ=0[V]電界は、1個あたりの強さを求めます。
E1=r2kQ=0.229×109×4×10−9=900[V/m]向きは2個とも、−4[nC] の電荷に向かう向きで同じなので、足し算になります。
E=2×900=1800[V/m](2) P は +4[nC] から 0.1[m]、−4[nC] から 0.3[m] の点です。kQ=36[V⋅m] として、電位を足します。
V=0.136−0.336=360−120=240[V]
平行板の電界と仕事
解答と解説を見る
d=0.04[m] です。
E=dV=0.04200=5000[V/m]電荷が受ける力は、q=2×10−6[C] なので、
F=qE=2×10−6×5000=0.01[N]仕事は、力 × 距離でも、qV でも同じ値になります。
W=Fd=0.01×0.04=4×10−4[J]W=qV=2×10−6×200=4×10−4[J]
電荷を運ぶ仕事
解答と解説を見る
kQ=9×109×6×10−9=54[V⋅m] です。
VAVB=0.254=270[V]=0.654=90[V]B から A は、正の電荷を電位の低い所から高い所へ運ぶので、外力は静電力に逆らう仕事をします。
W=q(VA−VB)=5×10−9×180=9×10−7[J]逆に A から B へ運ぶときは、静電力が 9×10−7[J] の仕事をします。
よくある質問
電位と電圧は何が違う?
電位は、基準点(無限遠や大地)から見た、ある点の値です。電圧は、2点の間の電位の差で、電位差と同じ意味です。単位はどちらも V です。回路では、大地や回路の基準の点を 0 V にとると、各点の電位がそのまま基準点との電圧になります。回路の電位の読み方は、直列回路とオームの法則で確かめられます。
電位が 0 V の点では、電界も 0 になる?
なりません。電界は電位の値でなく、電位の傾きで決まります。例題2のように、正と負の電荷の中点では電位は 0 V ですが、電界は 0 ではありません。反対に、同じ符号の2個の電荷の中点では、電界は 0 でも電位は 0 ではありません。
電界と電位の関係は、どう覚える?
電位が1mあたりにどれだけ変わるか、が電界の強さです。E=−ΔV/Δx と書け、電位が下がる向きが電界の向きです。平行板では電位が一定の割合で下がるので、E=V/d になります。
電位は 1/r、電界は 1/r² の覚え方は?
力の式 F=kQq/r2 から、電界は r2 に反比例します。電位は、電界を距離にわたって足し合わせたものなので、r の次数が1つ下がって 1/r になります。点電荷では、電位 kQ/r を距離 r で割ると電界 kQ/r2 になる、と覚えておくと、2式のつながりを思い出せます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
電位とは、何のことですか。
+1[C] の電荷がその点でもつ位置エネルギーです。単位は V(=[J/C])で、2点の電位の差が電位差(電圧)です。
電位差 V の間で、電荷 q を動かす仕事は?
点電荷 Q から距離 r の点の電位は?
V=kQ/r です。電位は距離に反比例し、向きがありません。
複数の点電荷がつくる電位は、どう求めますか。
1個ずつの電位を、符号つきで足します。電界は、向きを見て矢印を合成します。
等電位面と電気力線は、どんな角度で交わりますか。
直角に交わります。電界の向きは、電位が下がる向きです。
平行板の電界の強さと、電荷が受ける力は?
E=V/d で、電荷が受ける力は F=qE です。
まとめ
- 電位は、+1[C] の電荷がもつ位置エネルギーで、単位は V。電位の差が電位差(電圧)で、電荷を動かす仕事は W=qV
- 点電荷の電位は V=kQ/r(距離に反比例)。向きがないので、複数の電荷の電位は、符号つきの足し算で求まる。電界は E=kQ/r2 で、矢印の合成になる
- 等電位面と電気力線は直角に交わり、電界は電位が下がる向きを向く。電界の強さは、電位の傾き E=−ΔV/Δx
- 平行板の間は一様な電界で、E=V/d。電荷が受ける力は F=qE、仕事は W=Fd=qV
電界や力の計算で迷ったらクーロンの法則を、コンデンサの容量や電気量の計算はコンデンサの接続と合成容量を、見直しましょう。