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理論電気計測 / 誤差と補正15分で読めます

測定の誤差の計算|誤差の種類と、掛け算・割り算で誤差がどう伝わるかを図解

電験三種の測定の誤差を、図と例題で整理します。系統誤差と偶然誤差の違い、精度階級から出す誤差の幅、積・商・べき乗での誤差率の伝わり方、差を測るときの注意、ディジタル計器の確度まで順に確認できます。

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草の上に立てた白黒の同心円の的の中心に、赤い羽根の矢が3本、ほぼ同じ位置に刺さっている写真
この記事の目次
  1. 測定の誤差とは:系統誤差・偶然誤差・過失
  2. 系統誤差:原因が分かれば補正できる
  3. 偶然誤差と過失
  4. 精度階級から誤差の幅と真の値の範囲を出す
  5. 誤差の伝わり方:和・差・積・商・べき乗
  6. 和と差:誤差そのものが足し合わさる
  7. 積と商:誤差率が足し合わさる
  8. べき乗:誤差率が n 倍になる
  9. 電力の誤差率:P = VI と P = I²R
  10. 近い値の差を測ると、誤差率が大きくなる理由
  11. 偶然誤差は平均で小さくなる
  12. 有効数字と丸め
  13. ディジタル計器の誤差と確度
  14. よくある質問
  15. 誤差と誤差率は、どう違うの?
  16. 系統誤差と偶然誤差は、どう見分けるの?
  17. 何回も測れば、誤差はなくなる?
  18. 積や商の誤差率は、いつも足し算になる?
  19. まとめ
図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙理論を図解で読む図解でわかる 電験三種 理論 1
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測定には、必ず誤差があります。しかも、いくつかの値を掛けたり割ったりして答えを出すと、もとの値の誤差も一緒に伝わって、答えの誤差が変わります。

この記事では、誤差の種類から、精度階級で出す誤差の幅、和・差・積・商・べき乗での誤差の伝わり方、電力の誤差率、有効数字、ディジタル計器の確度までを、図と例題で順に確認します。誤差率と精度階級の定義は指示電気計器の種類で扱ったので、ここでは使い方に集中します。

測定の誤差の全体像
  • 測定の誤差とは
    • 誤差は測定値 − 真の値。系統誤差・偶然誤差・過失に分ける
  • 精度階級と誤差の幅
    • 許容誤差は最大目盛値の何 % か。真の値の範囲を出せる
  • 誤差の伝わり方
    • 和・差は誤差の大きさ、積・商は誤差率が足し合わさる。べき乗は n 倍
  • 差を測るとき
    • 近い値の差は、誤差率が大きくなる
  • 偶然誤差と平均
    • n 回の平均で、ばらつきは 1/√n になる
  • 有効数字とディジタル計器
    • 桁数をそろえる。確度は ±(読み値の a % + b digit)

測定の誤差とは:系統誤差・偶然誤差・過失

測定した値を測定値 MM、本当の値を真の値 TT とします。真の値は、測定では正確に知ることができません。そこで、より精密な計器で測った値などを、真の値の代わりに使います。

測定値と真の値の差が誤差で、誤差を真の値で割ったものが誤差率 ε\varepsilon です。

誤差=M−Tε=M−TT\begin{aligned} \text{誤差} &= M - T \\ \varepsilon &= \frac{M - T}{T} \end{aligned}

ε\varepsilon は小数でも % でも書きます。たとえば ε=0.02\varepsilon = 0.02 は 2 % です。ε\varepsilon が正なら大きく、負なら小さく測れています。この記事では、M=T(1+ε)M = T(1 + \varepsilon) の形でよく使います。

誤差は、現れ方で3つに分けます。

種類現れ方減らし方
系統誤差向きが毎回同じ校正・補正
偶然誤差向きがばらばら回数を増やす
過失ミスで大きくずれる確認・再測定

図1は、同じ的を何回も狙う様子です。毎回同じ向きにずれるのが系統誤差(かたより)で、毎回ちがう向きに散らばるのが偶然誤差(ばらつき)です。橙色の矢印は、的の中心から測定値の集まりまでのずれです。両方が小さいときだけ、真の値に近い測定になります。

かたより小・ばらつき小 どちらの誤差も小さい かたより大・ばらつき小 系統誤差が大きい かたより小・ばらつき大 偶然誤差が大きい かたより大・ばらつき大 どちらも大きい
図1 的当てで見る誤差。かたよりが系統誤差、ばらつきが偶然誤差にあたる(矢印は、点の集まりの中心が的の中心からずれた向き)

系統誤差:原因が分かれば補正できる

系統誤差は、同じ条件で測れば、同じ向き・同じ大きさで出る誤差です。原因で3つに分けます。

  • 計器誤差:目盛の狂いや零点のずれなど、計器そのものの不完全さによる誤差
  • 方法誤差:測り方そのものから出る誤差。電圧計や電流計の内部抵抗が回路に影響する場合などで、理論誤差ともいう(抵抗の測定で扱います)
  • 個人誤差:針を斜めから見る、目盛を読むときのくせなど、測る人による誤差

原因が分かれば、測定値を補正して取り除けます。計器は、基準になる計器と比べる校正で、誤差を調べておきます。

木の机の上に、金属の円柱をはさんだノギスと、目盛のついた金属の定規が置かれた写真
  1. 円柱 ノギスではさんで測る
  2. 本尺 目盛を読み取る
  3. ジョウ 円柱をはさむ部分
  4. 定規 目盛つきの長さの基準
図2 ノギスと定規。目盛を読むときのくせは個人誤差になる(写真はイメージ)

偶然誤差と過失

偶然誤差は、原因をつかめない小さな変動で、向きも大きさも測るたびにばらつきます。補正はできませんが、測定を重ねて平均すると小さくなります(あとの節で確認します)。

過失は、読み違い、記録のミス、つなぎ間違いなどの、まちがいによる誤差です。誤差の大きさが他と比べて極端なので、気づいたら測定値から除くか、測りなおします。

精度階級から誤差の幅と真の値の範囲を出す

指示電気計器の精度は、階級で表します。階級は、許容誤差を最大目盛値に対する % で示したものです(定義は指示電気計器の種類で確認しました)。許容誤差の幅 Δ\Delta は、最大目盛値に階級を掛けて求めます。

Δ=最大目盛値×階級100\Delta = \text{最大目盛値} \times \frac{\text{階級}}{100}

読み値を MM とすると、真の値 TT は次の範囲にあります。

M−Δ≦T≦M+ΔM - \Delta \leqq T \leqq M + \Delta

Δ\Delta は目盛のどこを読んでも同じなので、読み値が小さいほど、読み値に対する割合は大きくなります。針が目盛の小さい側で止まる測り方は、なるべく避けます。

銀色の金属の枠に入った丸いアナログメーターで、白い文字盤に目盛線があり、赤い針が真上を指している写真
  1. 針 指示値を示す
  2. 目盛 針の位置を読む
  3. 軸 針の回転の中心
  4. 枠 金属の枠
図3 指針形の計器。針の位置を目盛で読む(写真はイメージ)
解答と解説を見る

(1) 最大目盛値に階級を掛けます。

Δ=10×1.0100=0.10 A\Delta = 10 \times \frac{1.0}{100} = 0.10\,\mathrm{A}

(2) 読み値に ±Δ\pm\Delta を加減します。

4.0−0.10=3.9 A4.0+0.10=4.1 A\begin{aligned} 4.0 - 0.10 &= 3.9\,\mathrm{A} \\ 4.0 + 0.10 &= 4.1\,\mathrm{A} \end{aligned}

真の値は、3.9 A 以上 4.1 A 以下です。

(3) Δ\Delta は 0.10 A のままです。

0.101.0×100=10 %\frac{0.10}{1.0} \times 100 = 10\,\%

4.0 A のときは 0.10/4.0=2.5 %0.10/4.0 = 2.5\,\% でした。読み値が小さいと、割合が4倍になります。

誤差の伝わり方:和・差・積・商・べき乗

電圧と電流から電力を、電圧と電流から抵抗を求めるように、直接測った値から計算で答えを出すことを、間接測定といいます。測った値 x, yx,\ y に誤差があると、計算で出した答え zz にも誤差が伝わります。伝わり方は、計算の種類で決まります。

真の値を Tx, TyT_x,\ T_y、誤差を Δx, Δy\Delta x,\ \Delta y、誤差率を εx, εy\varepsilon_x,\ \varepsilon_y とします。測定値は、次のように表せます。

Mx=Tx+Δx=Tx(1+εx)My=Ty+Δy=Ty(1+εy)\begin{aligned} M_x &= T_x + \Delta x = T_x(1 + \varepsilon_x) \\ M_y &= T_y + \Delta y = T_y(1 + \varepsilon_y) \end{aligned}

和と差:誤差そのものが足し合わさる

和と差は、次のようになります。

Mx+My=(Tx+Ty)+(Δx+Δy)Mx−My=(Tx−Ty)+(Δx−Δy)\begin{aligned} M_x + M_y &= (T_x + T_y) + (\Delta x + \Delta y) \\ M_x - M_y &= (T_x - T_y) + (\Delta x - \Delta y) \end{aligned}

答えの誤差は、和では Δx+Δy\Delta x + \Delta y、差では Δx−Δy\Delta x - \Delta y です。誤差が逆向きなら打ち消し合いますが、最悪の場合は、和でも差でも ∣Δx∣+∣Δy∣|\Delta x| + |\Delta y| まで大きくなります。引き算をしても、誤差は引き算になりません。

積と商:誤差率が足し合わさる

積は、次のように変形できます。

MxMy=Tx(1+εx)⋅Ty(1+εy)=TxTy (1+εx+εy+εxεy)\begin{aligned} M_x M_y &= T_x(1 + \varepsilon_x) \cdot T_y(1 + \varepsilon_y) \\ &= T_x T_y\,(1 + \varepsilon_x + \varepsilon_y + \varepsilon_x \varepsilon_y) \end{aligned}

図4のように、縦と横の長さの誤差は、面積では右と上の細長い部分になります。右上のすみの εxεy\varepsilon_x \varepsilon_y は、ε\varepsilon が小さいとさらに小さいので、無視できます。

面積 xy (真の値) 横 x y 右の細長い部分 εx xy 上の細長い部分 εy xy すみの小さい部分 εx εy xy(無視)
図4 積の誤差を面積で見る。細長い2つの部分が誤差で、右上のすみの小さい部分は無視できる

したがって、ε\varepsilon が1に比べて十分小さいとき、次の近似が使えます。

(1+εx)(1+εy)≒1+εx+εy(1 + \varepsilon_x)(1 + \varepsilon_y) \fallingdotseq 1 + \varepsilon_x + \varepsilon_y

積の誤差率は、εx\varepsilon_x と εy\varepsilon_y の和です。商は、1/(1+εy)≒1−εy1/(1 + \varepsilon_y) \fallingdotseq 1 - \varepsilon_y を使います。

1+εx1+εy≒(1+εx)(1−εy)≒1+εx−εy\begin{aligned} \frac{1 + \varepsilon_x}{1 + \varepsilon_y} &\fallingdotseq (1 + \varepsilon_x)(1 - \varepsilon_y) \\ &\fallingdotseq 1 + \varepsilon_x - \varepsilon_y \end{aligned}

商の誤差率は、εx−εy\varepsilon_x - \varepsilon_y です。誤差が逆向きに出れば打ち消し合いますが、最悪の場合は、積も商も ∣εx∣+∣εy∣|\varepsilon_x| + |\varepsilon_y| まで大きくなります。

近似がどのくらい合うかを、εx=εy=ε\varepsilon_x = \varepsilon_y = \varepsilon の積で確かめます。近似値は 2ε2\varepsilon、厳密値は (1+ε)2−1(1 + \varepsilon)^2 - 1 です。

誤差率近似値厳密値
1 %2 %2.01 %
5 %10 %10.25 %
10 %20 %21 %

数 % までは、近似で十分です。

べき乗:誤差率が n 倍になる

z=xnz = x^n のように同じ値を nn 回掛けると、誤差率は nn 倍になります。

(1+εx)n≒1+nεx(1 + \varepsilon_x)^n \fallingdotseq 1 + n\varepsilon_x

たとえば、円の半径を測って面積 πr2\pi r^2 を求めると、半径の誤差率 1 % は、面積の誤差率 2 % になります。nn は負や分数でも使えます。1/x1/x は −εx-\varepsilon_x、x\sqrt{x} は εx/2\varepsilon_x/2 です。

ここまでを、表にまとめます。

計算足すもの最大の誤差
和・差誤差の大きさ∣Δx∣+∣Δy∣\lvert\Delta x\rvert + \lvert\Delta y\rvert
積・商誤差率の大きさ∣εx∣+∣εy∣\lvert\varepsilon_x\rvert + \lvert\varepsilon_y\rvert
べき乗誤差率の n 倍∣nεx∣\lvert n\varepsilon_x\rvert

電力の誤差率:P = VI と P = I²R

積とべき乗の使い道で多いのが、電力です。電力計を使わず、電圧計と電流計の指示から P=VIP = VI で求めると、電圧と電流の誤差率が足し合わさります(電力計で直接測る方法は、二電力計法の公式で扱いました)。電圧の誤差率を εV\varepsilon_V、電流を εI\varepsilon_I、抵抗を εR\varepsilon_R とすると、電力の誤差率 εP\varepsilon_P は、およそ次のとおりです。

電力の式誤差率 εP\varepsilon_P
P=VIP = VIεV+εI\varepsilon_V + \varepsilon_I
P=I2RP = I^2R2εI+εR2\varepsilon_I + \varepsilon_R
P=V2/RP = V^2/R2εV−εR2\varepsilon_V - \varepsilon_R

P=I2RP = I^2R では、電流が2乗なので、電流の誤差率が2倍で効きます。同じ大きさの誤差率なら、抵抗より電流のほうが、電力の誤差に大きく響きます。

解答と解説を見る

まず、電圧計と電流計の許容誤差の幅を出します。

ΔV=100×1.0100=1.0 VΔI=10×1.5100=0.15 A\begin{aligned} \Delta V &= 100 \times \frac{1.0}{100} = 1.0\,\mathrm{V} \\ \Delta I &= 10 \times \frac{1.5}{100} = 0.15\,\mathrm{A} \end{aligned}

読み値に対する割合は、次のとおりです。

εV=1.080=1.25 %εI=0.155.0=3.0 %\begin{aligned} \varepsilon_V &= \frac{1.0}{80} = 1.25\,\% \\ \varepsilon_I &= \frac{0.15}{5.0} = 3.0\,\% \end{aligned}

積の最大の誤差率は、両方の和です。

εP≒1.25+3.0=4.25 %\varepsilon_P \fallingdotseq 1.25 + 3.0 = 4.25\,\%

電力の読み値は 80×5.0=400 W80 \times 5.0 = 400\,\mathrm{W} なので、誤差の幅は次のとおりです。

400×0.0425=17 W400 \times 0.0425 = 17\,\mathrm{W}

電力の値は、およそ 383 W から 417 W の範囲です。厳密に (1.0125)(1.03)−1(1.0125)(1.03) - 1 を計算しても約 4.29 % で、ほぼ同じです。

解答と解説を見る

電流は2乗なので、誤差率が2倍で効きます。

εP≒2εI+εR=2×2+(−1)=+3 %\begin{aligned} \varepsilon_P &\fallingdotseq 2\varepsilon_I + \varepsilon_R \\ &= 2 \times 2 + (-1) \\ &= +3\,\% \end{aligned}

厳密には 1.022×0.99−1=0.0299961.02^2 \times 0.99 - 1 = 0.029996 で、約 3.0 % です。電力は、真の値より約 3 % 大きく求まります。

近い値の差を測ると、誤差率が大きくなる理由

差の誤差は、和と同じように、2つの誤差が足し合わさります。ところが、差そのものは小さくなるので、差に対する誤差の割合(誤差率)は大きくなります。

たとえば、送電端と受電端の電圧を別々に測って、その差の電圧降下を求める場合を考えます。100.0 V と 98.0 V を、どちらも最大 ±1 V\pm 1\,\mathrm{V}(読み値の 1 %)の誤差で測ったとします。

2つの電圧を測る(どちらも ±1 V) 100.0 V 98.0 V 96 98 100 102 V 差を求める(誤差は ±2 V に広がる) 差が 0 の可能性 差 2.0 V 0 1 2 3 4 V
図5 近い2つの値の差は、誤差の幅が差そのものに迫る。差 2.0 V に ±2.0 V の誤差が付く

図5のとおり、差は 2.0 V ですが、誤差は最大 ±2.0 V\pm 2.0\,\mathrm{V} まで広がります。誤差率は 2.0/2.0=100 %2.0/2.0 = 100\,\% で、差が 0 だったかもしれない、と言える状態です。測定値どうしの誤差率は 1 % でも、引き算をすると、誤差率が100倍になりました。

対策は、差を直接測ることです。2つの電圧の差を小さい範囲の計器で直接読めば、許容誤差の幅も小さくなります。たとえば、同じ 1.0 級でも、最大目盛 5 V の電圧計なら Δ=5×0.01=0.05 V\Delta = 5 \times 0.01 = 0.05\,\mathrm{V} です。

方法最大の誤差誤差率
測って引く±2.0 V±100 %
差を直接測る±0.05 V±2.5 %

偶然誤差は平均で小さくなる

偶然誤差は、プラスにもマイナスにも出ます。何回も測って平均すると、打ち消し合って小さくなります。たとえば、5回の測定値が 10.2、9.8、10.1、10.0、9.9 V なら、平均は (10.2+9.8+10.1+10.0+9.9)/5=10.0 V(10.2 + 9.8 + 10.1 + 10.0 + 9.9)/5 = 10.0\,\mathrm{V} です。

1回の測定のばらつきの大きさを、標準偏差 σ\sigma で表すと、nn 回の平均のばらつきは、一般に σ/n\sigma/\sqrt{n} になります。

回数 nn平均のばらつき
1σ\sigma
4σ/2\sigma/2
9σ/3\sigma/3
100σ/10\sigma/10
真の値 測定値 1回の測定 4回の平均 4回の平均のばらつき σ/2 1回のばらつき σ
図6 偶然誤差は、測定を重ねて平均すると小さくなる。4回の平均のばらつきは、1回の半分になる

図6のように、平均を取ると、同じ中心のまま山が細くなります。ばらつきを半分にするには、回数を4倍にする必要があります。100回測っても、ばらつきは 1/10 にしかなりません。回数を増やすほど、効きが鈍くなります。

木の机の上に、罫線だけの開いた白いノート、鉛筆1本、透明な定規、点と折れ線2本の描かれた方眼紙が置かれた写真
図7 ノートに測定値を記録し、方眼紙に点を打って見直す(写真はイメージ)

注意が2つあります。平均しても、系統誤差は小さくなりません。毎回同じ向きにずれているので、平均してもずれたままです。また、過失で外れた値が混じっていると、平均がそれに引きずられます。測定値を記録して、極端に外れた値がないか見直します。

有効数字と丸め

測定値は、何桁まで信用できるかを、桁数で表します。この信用できる桁の数を、有効数字といいます。数え方は次のとおりです。

  • 先頭の 0 は数えない。0.0123 は 3 桁
  • 小数の末尾の 0 は数える。1.20 は 3 桁

計算の結果は、計算の種類で、そろえる所が変わります。

計算そろえる所
積・商有効数字の桁数
和・差小数点以下の桁数

たとえば、次のようになります。

12.3×2.5=30.75≒3112.34+0.5=12.84≒12.8\begin{aligned} 12.3 \times 2.5 &= 30.75 \fallingdotseq 31 \\ 12.34 + 0.5 &= 12.84 \fallingdotseq 12.8 \end{aligned}

12.3 は3桁、2.5 は2桁なので、積は少ないほうの2桁にします。12.34 は小数点以下2桁、0.5 は1桁なので、和は少ないほうの1桁にします。

途中の計算では、答えより1〜2桁多く残し、最後に丸めます。途中で丸めると、丸めの誤差が積み重なります。問題で桁数や丸め方が指定されているときは、それに従います。

ディジタル計器の誤差と確度

ディジタル計器は、測定値を数字で表示します。確度は、±(読み値の a %+b digit)\pm(\text{読み値の } a\,\% + b\ \text{digit}) のように書きます。a %a\,\% の部分は読み値に比例する分、bb digit の部分は読み値によらず一定の分で、最小桁 bb 個分の大きさです。最小桁の大きさ(1 digit)は、表示の一番下の桁の値で、レンジごとに決まります。

許容誤差の幅 Δ\Delta は、次のとおりです。

Δ=読み値×a100+b×(最小桁の値)\begin{aligned} \Delta &= \text{読み値} \times \frac{a}{100} \\ &{}+ b \times (\text{最小桁の値}) \end{aligned}
左手で灰色のテスターを持ち、右手で赤と黒の測定棒を銀色の円筒の端に当てている写真
図8 テスターの測定棒を当てて測る様子(写真はイメージ)

たとえば、表示が 12.34 V で、確度が ±(0.5 %+2 digit)\pm(0.5\,\% + 2\ \text{digit}) のレンジを考えます。最小桁は 0.01 V です。

Δ=12.34×0.005+2×0.01=0.0617+0.02=0.0817 V\begin{aligned} \Delta &= 12.34 \times 0.005 + 2 \times 0.01 \\ &= 0.0617 + 0.02 \\ &= 0.0817\,\mathrm{V} \end{aligned}
表示 12.34 V 12.258 V 12.422 V 12.2 12.3 12.4 V 読み値の 0.5 %(±0.0617 V) 最小桁の 2 個分(±0.02 V)
図9 ディジタル計器の確度の幅。表示 12.34 V、確度 ±(0.5 % rdg + 2 digit) の例

図9のとおり、真の値は、12.258 V から 12.422 V の範囲にあります。読み値に対する割合は、約 0.66 % です。同じレンジで 0.50 V を測ると、Δ=0.50×0.005+0.02=0.0225 V\Delta = 0.50 \times 0.005 + 0.02 = 0.0225\,\mathrm{V} で、割合は 4.5 % まで大きくなります。最小桁の分は、読み値が小さいほど効きます。

解答と解説を見る

読み値に比例する分と、最小桁の分を、別々に出します。

7.650×0.002=0.0153 V3×0.001=0.003 V\begin{aligned} 7.650 \times 0.002 &= 0.0153\,\mathrm{V} \\ 3 \times 0.001 &= 0.003\,\mathrm{V} \end{aligned}

足して、許容誤差の幅が出ます。

Δ=0.0153+0.003=0.0183 V\Delta = 0.0153 + 0.003 = 0.0183\,\mathrm{V}

読み値に加減すると、真の値の範囲が出ます。

7.650−0.0183=7.6317 V7.650+0.0183=7.6683 V\begin{aligned} 7.650 - 0.0183 &= 7.6317\,\mathrm{V} \\ 7.650 + 0.0183 &= 7.6683\,\mathrm{V} \end{aligned}

真の値は、約 7.632 V から 7.668 V の範囲です。

よくある質問

誤差と誤差率は、どう違うの?

誤差は、測定値と真の値の差 M−TM - T で、電圧なら V のように単位がつきます。誤差率は、誤差を真の値で割った比で、単位がありません。同じ 0.1 V の誤差でも、100 V を測ったときと 1 V を測ったときでは、誤差率が大きく違います。

系統誤差と偶然誤差は、どう見分けるの?

同じ条件で何回も測って、測定値が毎回同じ向きにずれていれば系統誤差、向きも大きさもばらついていれば偶然誤差です。実際の測定では、両方が混ざっています。

何回も測れば、誤差はなくなる?

なくなりません。平均して小さくなるのは偶然誤差だけです。系統誤差は、毎回同じ向きに出るので、平均しても残ります。計器の校正や、測定値の補正で取り除きます。

積や商の誤差率は、いつも足し算になる?

ε\varepsilon が小さいときの近似です。数 % までは、ほぼ正確です。また、足し合わせた値は「最悪の場合」の大きさで、誤差が逆向きに出れば打ち消し合って、実際はもっと小さくなります。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

系統誤差と偶然誤差は、どう違いますか。

系統誤差は毎回同じ向きにずれる誤差で、補正できます。偶然誤差は向きがばらばらの誤差で、平均すると小さくなります。

1.0 級、最大目盛 10 A の電流計の許容誤差の幅は、いくつですか。

10×1.0/100=0.10 A10 \times 1.0/100 = 0.10\,\mathrm{A} です。目盛のどこでも同じ幅です。

積と商の誤差率は、どう伝わりますか。

近似では、積は εx+εy\varepsilon_x + \varepsilon_y、商は εx−εy\varepsilon_x - \varepsilon_y です。最悪の場合は、どちらも大きさを足します。

P=I2RP = I^2R の誤差率は、どう表せますか。

εP≒2εI+εR\varepsilon_P \fallingdotseq 2\varepsilon_I + \varepsilon_R です。電流の誤差率が2倍で効きます。

近い2つの値の差を求めると、誤差率が大きくなるのはなぜですか。

誤差の大きさは足し合わさるのに、差そのものが小さくなるからです。

ディジタル計器の確度 ±(a % rdg+b digit)\pm(a\,\%\ \text{rdg} + b\ \text{digit}) の幅は、どう求めますか。

読み値に a/100a/100 を掛けた値と、最小桁の値の bb 倍を足します。

まとめ

  • 誤差は、系統誤差(毎回同じ向き。補正できる)、偶然誤差(ばらばら。平均で小さくなる)、過失(まちがい)に分かれる
  • 許容誤差の幅は、最大目盛値 × 階級 / 100。真の値は、読み値 ± 許容誤差の範囲にある
  • 和・差は誤差の大きさが、積・商は誤差率が足し合わさる。べき乗 xnx^n は誤差率が nn 倍になる。P=I2RP = I^2R では εP≒2εI+εR\varepsilon_P \fallingdotseq 2\varepsilon_I + \varepsilon_R
  • 近い2つの値の差は、誤差率が大きくなる。差を直接測るくふうをする
  • nn 回の平均のばらつきは σ/n\sigma/\sqrt{n}。ディジタル計器の確度は ±(読み値の a %+b digit)\pm(\text{読み値の } a\,\% + b\ \text{digit})

計器の内部抵抗による誤差と、抵抗の測り方は抵抗の測定を、波形から値を読む方法はオシロスコープの読み方を、あわせて確認しましょう。

図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙電験三種 理論を図解で通して読む図解でわかる 電験三種 理論 / 第1巻直列回路電流・電圧・抵抗から内部抵抗・倍率器・コンデンサまで理論の単元を、図と式で1冊ずつ通して読む Kindle 本のシリーズです。例題と練習問題まで入っています。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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