測定には、必ず誤差があります。しかも、いくつかの値を掛けたり割ったりして答えを出すと、もとの値の誤差も一緒に伝わって、答えの誤差が変わります。
この記事では、誤差の種類から、精度階級で出す誤差の幅、和・差・積・商・べき乗での誤差の伝わり方、電力の誤差率、有効数字、ディジタル計器の確度までを、図と例題で順に確認します。誤差率と精度階級の定義は指示電気計器の種類で扱ったので、ここでは使い方に集中します。
測定の誤差の全体像
- 測定の誤差とは
- 誤差は測定値 − 真の値。系統誤差・偶然誤差・過失に分ける
- 精度階級と誤差の幅
- 許容誤差は最大目盛値の何 % か。真の値の範囲を出せる
- 誤差の伝わり方
- 和・差は誤差の大きさ、積・商は誤差率が足し合わさる。べき乗は n 倍
- 差を測るとき
- 偶然誤差と平均
- 有効数字とディジタル計器
- 桁数をそろえる。確度は ±(読み値の a % + b digit)
測定の誤差とは:系統誤差・偶然誤差・過失
測定した値を測定値 M、本当の値を真の値 T とします。真の値は、測定では正確に知ることができません。そこで、より精密な計器で測った値などを、真の値の代わりに使います。
測定値と真の値の差が誤差で、誤差を真の値で割ったものが誤差率 ε です。
誤差ε=M−T=TM−T
ε は小数でも % でも書きます。たとえば ε=0.02 は 2 % です。ε が正なら大きく、負なら小さく測れています。この記事では、M=T(1+ε) の形でよく使います。
誤差は、現れ方で3つに分けます。
| 種類 | 現れ方 | 減らし方 |
|---|
| 系統誤差 | 向きが毎回同じ | 校正・補正 |
| 偶然誤差 | 向きがばらばら | 回数を増やす |
| 過失 | ミスで大きくずれる | 確認・再測定 |
図1は、同じ的を何回も狙う様子です。毎回同じ向きにずれるのが系統誤差(かたより)で、毎回ちがう向きに散らばるのが偶然誤差(ばらつき)です。橙色の矢印は、的の中心から測定値の集まりまでのずれです。両方が小さいときだけ、真の値に近い測定になります。
図1 的当てで見る誤差。かたよりが系統誤差、ばらつきが偶然誤差にあたる(矢印は、点の集まりの中心が的の中心からずれた向き)
系統誤差:原因が分かれば補正できる
系統誤差は、同じ条件で測れば、同じ向き・同じ大きさで出る誤差です。原因で3つに分けます。
- 計器誤差:目盛の狂いや零点のずれなど、計器そのものの不完全さによる誤差
- 方法誤差:測り方そのものから出る誤差。電圧計や電流計の内部抵抗が回路に影響する場合などで、理論誤差ともいう(抵抗の測定で扱います)
- 個人誤差:針を斜めから見る、目盛を読むときのくせなど、測る人による誤差
原因が分かれば、測定値を補正して取り除けます。計器は、基準になる計器と比べる校正で、誤差を調べておきます。
1円柱2本尺3ジョウ4定規- 円柱 ノギスではさんで測る
- 本尺 目盛を読み取る
- ジョウ 円柱をはさむ部分
- 定規 目盛つきの長さの基準
図2 ノギスと定規。目盛を読むときのくせは個人誤差になる(写真はイメージ)
偶然誤差と過失
偶然誤差は、原因をつかめない小さな変動で、向きも大きさも測るたびにばらつきます。補正はできませんが、測定を重ねて平均すると小さくなります(あとの節で確認します)。
過失は、読み違い、記録のミス、つなぎ間違いなどの、まちがいによる誤差です。誤差の大きさが他と比べて極端なので、気づいたら測定値から除くか、測りなおします。
精度階級から誤差の幅と真の値の範囲を出す
指示電気計器の精度は、階級で表します。階級は、許容誤差を最大目盛値に対する % で示したものです(定義は指示電気計器の種類で確認しました)。許容誤差の幅 Δ は、最大目盛値に階級を掛けて求めます。
Δ=最大目盛値×100階級
読み値を M とすると、真の値 T は次の範囲にあります。
M−Δ≦T≦M+Δ
Δ は目盛のどこを読んでも同じなので、読み値が小さいほど、読み値に対する割合は大きくなります。針が目盛の小さい側で止まる測り方は、なるべく避けます。
1針2目盛3軸4枠- 針 指示値を示す
- 目盛 針の位置を読む
- 軸 針の回転の中心
- 枠 金属の枠
図3 指針形の計器。針の位置を目盛で読む(写真はイメージ)
解答と解説を見る
(1) 最大目盛値に階級を掛けます。
Δ=10×1001.0=0.10A(2) 読み値に ±Δ を加減します。
4.0−0.104.0+0.10=3.9A=4.1A真の値は、3.9 A 以上 4.1 A 以下です。
(3) Δ は 0.10 A のままです。
1.00.10×100=10%4.0 A のときは 0.10/4.0=2.5% でした。読み値が小さいと、割合が4倍になります。
誤差の伝わり方:和・差・積・商・べき乗
電圧と電流から電力を、電圧と電流から抵抗を求めるように、直接測った値から計算で答えを出すことを、間接測定といいます。測った値 x, y に誤差があると、計算で出した答え z にも誤差が伝わります。伝わり方は、計算の種類で決まります。
真の値を Tx, Ty、誤差を Δx, Δy、誤差率を εx, εy とします。測定値は、次のように表せます。
MxMy=Tx+Δx=Tx(1+εx)=Ty+Δy=Ty(1+εy)
和と差:誤差そのものが足し合わさる
和と差は、次のようになります。
Mx+MyMx−My=(Tx+Ty)+(Δx+Δy)=(Tx−Ty)+(Δx−Δy)
答えの誤差は、和では Δx+Δy、差では Δx−Δy です。誤差が逆向きなら打ち消し合いますが、最悪の場合は、和でも差でも ∣Δx∣+∣Δy∣ まで大きくなります。引き算をしても、誤差は引き算になりません。
積と商:誤差率が足し合わさる
積は、次のように変形できます。
MxMy=Tx(1+εx)⋅Ty(1+εy)=TxTy(1+εx+εy+εxεy)
図4のように、縦と横の長さの誤差は、面積では右と上の細長い部分になります。右上のすみの εxεy は、ε が小さいとさらに小さいので、無視できます。
図4 積の誤差を面積で見る。細長い2つの部分が誤差で、右上のすみの小さい部分は無視できる
したがって、ε が1に比べて十分小さいとき、次の近似が使えます。
(1+εx)(1+εy)≒1+εx+εy
積の誤差率は、εx と εy の和です。商は、1/(1+εy)≒1−εy を使います。
1+εy1+εx≒(1+εx)(1−εy)≒1+εx−εy
商の誤差率は、εx−εy です。誤差が逆向きに出れば打ち消し合いますが、最悪の場合は、積も商も ∣εx∣+∣εy∣ まで大きくなります。
近似がどのくらい合うかを、εx=εy=ε の積で確かめます。近似値は 2ε、厳密値は (1+ε)2−1 です。
| 誤差率 | 近似値 | 厳密値 |
|---|
| 1 % | 2 % | 2.01 % |
| 5 % | 10 % | 10.25 % |
| 10 % | 20 % | 21 % |
数 % までは、近似で十分です。
べき乗:誤差率が n 倍になる
z=xn のように同じ値を n 回掛けると、誤差率は n 倍になります。
(1+εx)n≒1+nεx
たとえば、円の半径を測って面積 πr2 を求めると、半径の誤差率 1 % は、面積の誤差率 2 % になります。n は負や分数でも使えます。1/x は −εx、x は εx/2 です。
ここまでを、表にまとめます。
| 計算 | 足すもの | 最大の誤差 |
|---|
| 和・差 | 誤差の大きさ | ∣Δx∣+∣Δy∣ |
| 積・商 | 誤差率の大きさ | ∣εx∣+∣εy∣ |
| べき乗 | 誤差率の n 倍 | ∣nεx∣ |
電力の誤差率:P = VI と P = I²R
積とべき乗の使い道で多いのが、電力です。電力計を使わず、電圧計と電流計の指示から P=VI で求めると、電圧と電流の誤差率が足し合わさります(電力計で直接測る方法は、二電力計法の公式で扱いました)。電圧の誤差率を εV、電流を εI、抵抗を εR とすると、電力の誤差率 εP は、およそ次のとおりです。
| 電力の式 | 誤差率 εP |
|---|
| P=VI | εV+εI |
| P=I2R | 2εI+εR |
| P=V2/R | 2εV−εR |
P=I2R では、電流が2乗なので、電流の誤差率が2倍で効きます。同じ大きさの誤差率なら、抵抗より電流のほうが、電力の誤差に大きく響きます。
解答と解説を見る
まず、電圧計と電流計の許容誤差の幅を出します。
ΔVΔI=100×1001.0=1.0V=10×1001.5=0.15A読み値に対する割合は、次のとおりです。
εVεI=801.0=1.25%=5.00.15=3.0%積の最大の誤差率は、両方の和です。
εP≒1.25+3.0=4.25%電力の読み値は 80×5.0=400W なので、誤差の幅は次のとおりです。
400×0.0425=17W電力の値は、およそ 383 W から 417 W の範囲です。厳密に (1.0125)(1.03)−1 を計算しても約 4.29 % で、ほぼ同じです。
解答と解説を見る
電流は2乗なので、誤差率が2倍で効きます。
εP≒2εI+εR=2×2+(−1)=+3%厳密には 1.022×0.99−1=0.029996 で、約 3.0 % です。電力は、真の値より約 3 % 大きく求まります。
近い値の差を測ると、誤差率が大きくなる理由
差の誤差は、和と同じように、2つの誤差が足し合わさります。ところが、差そのものは小さくなるので、差に対する誤差の割合(誤差率)は大きくなります。
たとえば、送電端と受電端の電圧を別々に測って、その差の電圧降下を求める場合を考えます。100.0 V と 98.0 V を、どちらも最大 ±1V(読み値の 1 %)の誤差で測ったとします。
図5 近い2つの値の差は、誤差の幅が差そのものに迫る。差 2.0 V に ±2.0 V の誤差が付く
図5のとおり、差は 2.0 V ですが、誤差は最大 ±2.0V まで広がります。誤差率は 2.0/2.0=100% で、差が 0 だったかもしれない、と言える状態です。測定値どうしの誤差率は 1 % でも、引き算をすると、誤差率が100倍になりました。
対策は、差を直接測ることです。2つの電圧の差を小さい範囲の計器で直接読めば、許容誤差の幅も小さくなります。たとえば、同じ 1.0 級でも、最大目盛 5 V の電圧計なら Δ=5×0.01=0.05V です。
| 方法 | 最大の誤差 | 誤差率 |
|---|
| 測って引く | ±2.0 V | ±100 % |
| 差を直接測る | ±0.05 V | ±2.5 % |
偶然誤差は平均で小さくなる
偶然誤差は、プラスにもマイナスにも出ます。何回も測って平均すると、打ち消し合って小さくなります。たとえば、5回の測定値が 10.2、9.8、10.1、10.0、9.9 V なら、平均は (10.2+9.8+10.1+10.0+9.9)/5=10.0V です。
1回の測定のばらつきの大きさを、標準偏差 σ で表すと、n 回の平均のばらつきは、一般に σ/n になります。
| 回数 n | 平均のばらつき |
|---|
| 1 | σ |
| 4 | σ/2 |
| 9 | σ/3 |
| 100 | σ/10 |
図6 偶然誤差は、測定を重ねて平均すると小さくなる。4回の平均のばらつきは、1回の半分になる
図6のように、平均を取ると、同じ中心のまま山が細くなります。ばらつきを半分にするには、回数を4倍にする必要があります。100回測っても、ばらつきは 1/10 にしかなりません。回数を増やすほど、効きが鈍くなります。
図7 ノートに測定値を記録し、方眼紙に点を打って見直す(写真はイメージ)
注意が2つあります。平均しても、系統誤差は小さくなりません。毎回同じ向きにずれているので、平均してもずれたままです。また、過失で外れた値が混じっていると、平均がそれに引きずられます。測定値を記録して、極端に外れた値がないか見直します。
有効数字と丸め
測定値は、何桁まで信用できるかを、桁数で表します。この信用できる桁の数を、有効数字といいます。数え方は次のとおりです。
- 先頭の 0 は数えない。0.0123 は 3 桁
- 小数の末尾の 0 は数える。1.20 は 3 桁
計算の結果は、計算の種類で、そろえる所が変わります。
| 計算 | そろえる所 |
|---|
| 積・商 | 有効数字の桁数 |
| 和・差 | 小数点以下の桁数 |
たとえば、次のようになります。
12.3×2.512.34+0.5=30.75≒31=12.84≒12.8
12.3 は3桁、2.5 は2桁なので、積は少ないほうの2桁にします。12.34 は小数点以下2桁、0.5 は1桁なので、和は少ないほうの1桁にします。
途中の計算では、答えより1〜2桁多く残し、最後に丸めます。途中で丸めると、丸めの誤差が積み重なります。問題で桁数や丸め方が指定されているときは、それに従います。
ディジタル計器の誤差と確度
ディジタル計器は、測定値を数字で表示します。確度は、±(読み値の a%+b digit) のように書きます。a% の部分は読み値に比例する分、b digit の部分は読み値によらず一定の分で、最小桁 b 個分の大きさです。最小桁の大きさ(1 digit)は、表示の一番下の桁の値で、レンジごとに決まります。
許容誤差の幅 Δ は、次のとおりです。
Δ=読み値×100a+b×(最小桁の値)
図8 テスターの測定棒を当てて測る様子(写真はイメージ)
たとえば、表示が 12.34 V で、確度が ±(0.5%+2 digit) のレンジを考えます。最小桁は 0.01 V です。
Δ=12.34×0.005+2×0.01=0.0617+0.02=0.0817V
図9 ディジタル計器の確度の幅。表示 12.34 V、確度 ±(0.5 % rdg + 2 digit) の例
図9のとおり、真の値は、12.258 V から 12.422 V の範囲にあります。読み値に対する割合は、約 0.66 % です。同じレンジで 0.50 V を測ると、Δ=0.50×0.005+0.02=0.0225V で、割合は 4.5 % まで大きくなります。最小桁の分は、読み値が小さいほど効きます。
解答と解説を見る
読み値に比例する分と、最小桁の分を、別々に出します。
7.650×0.0023×0.001=0.0153V=0.003V足して、許容誤差の幅が出ます。
Δ=0.0153+0.003=0.0183V読み値に加減すると、真の値の範囲が出ます。
7.650−0.01837.650+0.0183=7.6317V=7.6683V真の値は、約 7.632 V から 7.668 V の範囲です。
よくある質問
誤差と誤差率は、どう違うの?
誤差は、測定値と真の値の差 M−T で、電圧なら V のように単位がつきます。誤差率は、誤差を真の値で割った比で、単位がありません。同じ 0.1 V の誤差でも、100 V を測ったときと 1 V を測ったときでは、誤差率が大きく違います。
系統誤差と偶然誤差は、どう見分けるの?
同じ条件で何回も測って、測定値が毎回同じ向きにずれていれば系統誤差、向きも大きさもばらついていれば偶然誤差です。実際の測定では、両方が混ざっています。
何回も測れば、誤差はなくなる?
なくなりません。平均して小さくなるのは偶然誤差だけです。系統誤差は、毎回同じ向きに出るので、平均しても残ります。計器の校正や、測定値の補正で取り除きます。
積や商の誤差率は、いつも足し算になる?
ε が小さいときの近似です。数 % までは、ほぼ正確です。また、足し合わせた値は「最悪の場合」の大きさで、誤差が逆向きに出れば打ち消し合って、実際はもっと小さくなります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
系統誤差と偶然誤差は、どう違いますか。
系統誤差は毎回同じ向きにずれる誤差で、補正できます。偶然誤差は向きがばらばらの誤差で、平均すると小さくなります。
1.0 級、最大目盛 10 A の電流計の許容誤差の幅は、いくつですか。
10×1.0/100=0.10A です。目盛のどこでも同じ幅です。
積と商の誤差率は、どう伝わりますか。
近似では、積は εx+εy、商は εx−εy です。最悪の場合は、どちらも大きさを足します。
P=I2R の誤差率は、どう表せますか。
εP≒2εI+εR です。電流の誤差率が2倍で効きます。
近い2つの値の差を求めると、誤差率が大きくなるのはなぜですか。
誤差の大きさは足し合わさるのに、差そのものが小さくなるからです。
ディジタル計器の確度 ±(a% rdg+b digit) の幅は、どう求めますか。
読み値に a/100 を掛けた値と、最小桁の値の b 倍を足します。
まとめ
- 誤差は、系統誤差(毎回同じ向き。補正できる)、偶然誤差(ばらばら。平均で小さくなる)、過失(まちがい)に分かれる
- 許容誤差の幅は、最大目盛値 × 階級 / 100。真の値は、読み値 ± 許容誤差の範囲にある
- 和・差は誤差の大きさが、積・商は誤差率が足し合わさる。べき乗 xn は誤差率が n 倍になる。P=I2R では εP≒2εI+εR
- 近い2つの値の差は、誤差率が大きくなる。差を直接測るくふうをする
- n 回の平均のばらつきは σ/n。ディジタル計器の確度は ±(読み値の a%+b digit)
計器の内部抵抗による誤差と、抵抗の測り方は抵抗の測定を、波形から値を読む方法はオシロスコープの読み方を、あわせて確認しましょう。