指示電気計器の種類|可動コイル形・可動鉄片形・整流形の違いと指示値を図解
電験三種の電気計測を図解で整理します。指示電気計器の3つのトルク、可動コイル形・可動鉄片形・整流形など種類ごとの指示値(平均値か実効値か)、波形率による換算、誤差率と補正率、精度階級を例題つきで確認できます。

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過渡現象では、電流や電圧の時間変化を学びました。その電流や電圧を測るのが、針の振れで値を示す指示電気計器です。
指示電気計器の種類は、針を振らせる駆動トルクの生み方で分かれます。この違いで、計器が示す値が平均値か実効値かも決まります。直流用は可動コイル形、交流の実効値を示すのは可動鉄片形、整流形は平均値を実効値の目盛に直した交流専用の計器です。この記事では、トルクのつり合い、可動コイル形の仕組み、種類ごとの違い、波形率による換算、誤差率と補正率を、例題で確認します。計器のつなぎ方や測定範囲の広げ方は、倍率器と分流器で確認できます。
- 指示電気計器とは
- 駆動トルク、制御トルク、制動トルクの 3 つ。駆動トルクと制御トルクがつり合う位置で針が止まる
- 可動コイル形の仕組み
- 磁界の中のコイルに電流を流して針を振らせる。振れは電流に比例し、等分目盛。直流用で平均値を示す
- 指示電気計器の種類と使い分け
- 可動鉄片形は実効値で交直両用。整流形は交流専用。電力は電流力計形、電力量は誘導形
- 波形率と指示値の換算
- 波形率は実効値を平均値で割った値。正弦波は約 1.11。整流形は正弦波以外で誤差が出る
- 誤差率・補正率・精度階級
- 誤差率は誤差を真の値で、補正率は補正を測定値で割る。階級は最大目盛値に対する許容誤差
指示電気計器とは
指示電気計器は、電流・電圧・電力などを、針(指針)が目盛板の上で振れた位置で示す計器です(図1)。針の位置から値を読み取るので、アナログ計器ともいいます。

- 針 目盛板の上を振れる
- 目盛 針の位置を読む線
- 端子 測る線をつなぐ金具
- ケース 黒い丸形の外枠
針を動かして止めるために、計器の中では次の 3 つのトルク(回転力)がはたらきます。
| トルク | 役割 | 生み出すもの |
|---|---|---|
| 駆動トルク | 針を振らせる | 測る電流や電圧 |
| 制御トルク | 針を止める位置を決める | うずまきばね |
| 制動トルク | 針の揺れを早く止める | 空気、渦電流 |
測る電流が流れると駆動トルク が生じ、針が振れ始めます。針が振れると、うずまきばねがねじれて、針を戻す向きの制御トルク が生じます。制御トルクは振れの角度 に比例して大きくなります。駆動トルクと制御トルクが等しくなったところで、針は止まります(図2)。
図2 は、駆動トルクが針の位置によらず電流に比例する可動コイル形の例です。電流が から になると、駆動トルクが 2 倍になり、つり合う角度も から に増えます。
制動トルクは、針が行きすぎたり揺れ続けたりするのを防ぐ力で、針が止まっているときは 0 です。そのため、指示値には影響しません。
可動コイル形の仕組み
可動コイル形は、永久磁石の磁界の中に置いたコイルに電流を流し、コイルが受ける力で針を振らせる計器です(図3)。
磁極と鉄心のすきまでは、磁界が円の中心に向かって放射状にそろいます(左側は内向き、右側は外向き)。コイルの 2 辺は、電流の向きが逆です(図では ● が手前向き、× が奥向き)。フレミングの左手の法則(磁界の強さの求め方)により、受ける力 も逆向きになります。2 つの力がコイルを回し、コイルに付いた針が振れます。実際の計器の内部は、次の写真のとおりです(図4)。

- 針 細くとがった棒
- コイル 銅色の線を巻いた部分
- ばね 渦巻き状の細い部品
- 端子 コイルの線がつながる金具
駆動トルクは電流に比例し、制御トルクは振れの角度に比例します。、 を比例定数とすると、つり合いから次の式が得られます。
針の振れ が電流 に比例するので、目盛は等間隔の等分目盛になります。感度が高く、精度の高い測定ができるので、直流の測定に広く使われます。
電流の向きが逆になると、コイルが受ける力も逆向きになります。そのため、端子の+と-を正しくつなぐ必要があります。交流を流すと、駆動トルクの向きが周期的に入れ替わり、平均が 0 になります。針は交流の平均値である 0 付近にとどまり、実効値は読み取れません。
指示電気計器の種類と使い分け
駆動トルクの生み方は、計器の形式ごとに違います。形式によって、示す値と使える電流の種類が決まります。
| 形式 | 示す値 | 電流の種類 |
|---|---|---|
| 可動コイル形 | 平均値 | 直流 |
| 可動鉄片形 | 実効値 | 交流・直流 |
| 整流形 | 平均値(実効値目盛) | 交流 |
| 熱電形 | 実効値 | 交流・直流 |
| 静電形 | 実効値 | 交流・直流 |
| 電流力計形 | 電流の積(電力) | 交流・直流 |
| 誘導形 | 電力量 | 交流 |
指針を使わず、数字で値を表示するディジタル式の計器もあります(図5)。

可動鉄片形と整流形
可動鉄片形は、コイルに電流を流すと、固定鉄片と可動鉄片が同じ極に磁化されて反発し(反発形の場合)、針が振れる計器です。駆動トルクは電流の 2 乗に比例します。電流の向きが変わっても反発の向きは変わらないので、交流も直流も測れます。交流では、2 乗の平均が実効値の 2 乗になるので、実効値を示します。
振れが に比例するので、目盛は初めが狭く終わりが広い二乗目盛になります(図6)。構造が簡単で丈夫なので、商用周波数の電流計や電圧計に使われます。
整流形は、可動コイル形に、交流を直流に直す整流器(ダイオード)を組み合わせた計器です。可動コイル形は平均値に比例して振れるので、整流後の平均値に比例して振れます。目盛は、正弦波の実効値で読めるように付けてあります。そのため、正弦波では実効値を示しますが、正弦波以外の波形では誤差が出ます。この換算は、次の節で確認します。
熱電形と静電形
熱電形は、測る電流を熱線に流し、その熱を熱電対で電圧に変えて、可動コイル形で測る計器です。発熱量は電流の 2 乗に比例するので、実効値を示し、二乗目盛になります。周波数の高い電流も測れますが、過電流には弱い計器です。
静電形は、2 枚の電極に電圧を加え、電極のあいだにはたらく静電力で針を振らせる計器です。静電力は電圧の 2 乗に比例するので、実効値を示します。電圧計専用で、入力インピーダンスが高く、電流をほとんど流さずに測れます。高電圧の測定に向き、交流・直流の両方に使えます。
電流力計形と誘導形
電流力計形は、固定コイルと可動コイルの両方に電流を流し、その間にはたらく力で針を振らせる計器です。トルクは 2 つの電流の積に比例します。固定コイルに負荷の電流、可動コイルに電圧に比例した電流を流すと、トルクが電力に比例するので、電力計として使えます。目盛は等分目盛で、交流・直流の両方に使えます。三相電力の測り方は、二電力計法で整理します。
誘導形は、交流の磁界で円板に渦電流を生じさせ、磁界と渦電流のあいだにはたらく力で円板を回す計器です。円板の回転数が電力量に比例するので、電力量計に使われます。交流専用です。
電線をはさむだけで電流を測れる計器もあります(図7)。回路を切り離さずに測れますが、測れる電流の種類は機種によって違います。

波形率と指示値の換算
交流の電流や電圧は、正と負が打ち消し合って平均が 0 になります。そこで、交流の平均値は、整流したあと(負の部分を正に折り返したあと)の平均で考えます。正弦波の最大値を とすると、次のとおりです。
実効値と平均値の比を波形率、最大値と実効値の比を波高率といいます。
正弦波の波形率は 、波高率は です。波形によって、最大値・実効値・平均値の比は変わります(図8と下の表)。
| 波形 | 波形率 | 波高率 |
|---|---|---|
| 正弦波 | 1.11 | 1.41 |
| 方形波 | 1.00 | 1.00 |
| 三角波 | 1.15 | 1.73 |
整流形は、平均値に比例して振れます。目盛は正弦波の波形率 1.11 で付けてあるので、指示値は次のとおりです。
正弦波なら、指示値が実効値と一致します。正弦波以外の波形では、指示値は実効値になりません。その波形の実効値は、次の式で求めます。
解答と解説を見る
(1) 可動鉄片形は実効値を示します。方形波は、電圧の大きさが常に なので、実効値は最大値と同じです。
(2) 整流形は整流後の平均値に比例して振れます。方形波を整流すると、常に なので、平均値は です。
実効値 より約 11% 大きく指示します。
(3) 可動コイル形は、電圧の平均に比例して振れます。正と負が打ち消し合うので、平均は 0 で、指示値はほぼ です。
解答と解説を見る
指示値は、平均値の 倍です。まず平均値に戻します。
三角波の実効値は、波形率をかけて求めます。
指示値 より、実際の実効値は少し大きくなります。
誤差率・補正率・精度階級
測定値を 、真の値を とします。測定値と真の値の差が誤差、誤差が真の値の何% にあたるかを表したものが誤差率です。補正は誤差と符号が逆で、測定値に加えると真の値になる量です。補正が測定値の何% にあたるかを表したものが補正率です。
誤差率は真の値で割り、補正率は測定値で割ります。分母が違うので、符号は逆でも、絶対値は少しだけ異なります。
計器の精度は階級で表します。階級は、誤差の許される限度を、最大目盛値(基底値)に対する百分率で示したものです。0.5 級、1.0 級、1.5 級などがあります。たとえば、1.5 級で最大目盛が の電圧計の許容誤差は、次のとおりです。
この は、目盛のどこを読んでも同じです。そのため、読みが小さくなるほど、読みに対する割合は大きくなります(図9)。
解答と解説を見る
(1)
(2) 真の値 で割ります。
(3) 測定値 で割ります。
(4) 補正率から、真の値は測定値の 倍です。
解答と解説を見る
(1) 最大目盛に対する割合で求めます。
許容誤差は です。
(2) 指示値に許容誤差を加減します。
真の値は の範囲にあります。
(3) 許容誤差は目盛のどこでも です。
のときは約 1.9% なので、小さい読みほど割合が大きくなります。
よくある質問
整流形の目盛は、なぜ平均値を 1.11 倍した値なの?
整流形は、整流後の平均値に比例して針が振れます。一方、私たちが知りたいのは、交流の実効値です。正弦波では、実効値が平均値の約 1.11 倍なので、平均値に 1.11 をかけた値で目盛を付けてあります。正弦波以外の波形では、この関係が成り立たないので、指示値と実効値がずれます。
可動鉄片形の目盛は、なぜ二乗目盛なの?
駆動トルクが電流の 2 乗に比例するので、針の振れ も に比例するからです。電流が小さいうちは振れが小さく、電流が大きくなるほど振れが大きくなるので、目盛の間隔は初めが狭く、終わりが広くなります。
誤差率と補正率は、どう違うの?
誤差率は、誤差を真の値で割った割合です。補正率は、補正(真の値-測定値)を測定値で割った割合です。補正は誤差と符号が逆で、分母が真の値か測定値かが違います。
可動コイル形で、なぜ交流は測れないの?
交流は電流の向きが周期的に入れ替わるので、駆動トルクの向きも入れ替わります。平均すると 0 になるので、針は 0 付近にとどまります。交流を測るときは、整流器を付けた整流形か、トルクが電流の 2 乗に比例する可動鉄片形などを使います。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
指示電気計器の 3 つのトルクは? 針はどこで止まる?
駆動トルク、制御トルク、制動トルクです。駆動トルクと制御トルクが等しい位置で止まります。制動トルクは、止まったときは 0 です。
可動コイル形の振れは、何に比例する? 目盛は?
電流に比例します。目盛は等分目盛で、直流用です。示すのは平均値です。
可動鉄片形と整流形が示す値は?
可動鉄片形は実効値で、交流・直流の両方に使えます。整流形は平均値を実効値の目盛に直して示し、交流専用です。
二乗目盛になる計器は? 電力計と電力量計は何形?
可動鉄片形、熱電形、静電形です。電力計は電流力計形、電力量計は誘導形です。
波形率と波高率の定義は? 正弦波の値は?
波形率は実効値÷平均値で約 1.11、波高率は最大値÷実効値で約 1.41 です。
誤差率と補正率の式は? 1.5 級・最大目盛 150 V の許容誤差は?
誤差率は (M-T)/T×100%、補正率は (T-M)/M×100% です。許容誤差は 150 V×1.5% で ±2.25 V です。
まとめ
- 指示電気計器には、駆動トルク・制御トルク・制動トルクがはたらく。駆動トルクと制御トルクがつり合う位置で針が止まる
- 可動コイル形は、振れが電流に比例する等分目盛の直流用。示すのは平均値
- 可動鉄片形は実効値を示す交直両用で二乗目盛。整流形は平均値を正弦波の実効値目盛に直した交流専用。電力は電流力計形、電力量は誘導形
- 波形率=実効値÷平均値で、正弦波は約 1.11。整流形の指示値は 1.11×平均値なので、正弦波以外では実効値と一致しない。実効値=その波形の波形率×平均値
- 誤差率=(M-T)/T×100%、補正率=(T-M)/M×100%。階級は最大目盛値に対する許容誤差で、読みが小さいほど読みに対する割合が大きい








