オシロスコープの読み方|周波数・位相差の求め方とリサジュー図形を図解
電験三種のオシロスコープを図解で整理します。画面の目盛から電圧・周期・周波数を読む方法、2現象の位相差、トリガ、10:1 プローブ、リサジュー図形の周波数比と位相差までを、例題つきで確認できます。

この記事の目次
- オシロスコープとは:電圧の時間変化を画面に描く計器
- 波形の読み取り:電圧は縦の div 数、周期は横の div 数
- 2現象の位相差:ずれ Δt から φ を求める
- トリガ:波形が止まって見える仕組み
- プローブ:10:1 プローブと補正
- リサジュー図形:周波数比と位相差
- 同じ周波数のとき:位相差で形が変わる
- 周波数がちがうとき:接する点の数の比が周波数比
- 楕円の形から位相差 φ を読む
- ディジタルオシロスコープ:サンプリングして波形を描く
- よくある質問
- オシロスコープと電圧計は、何が違うの?
- 波形が止まらずに流れるのは、なぜ?
- 10:1 プローブで、入力抵抗が大きくなるのはなぜ?
- リサジュー図形から、位相の進みと遅れは分かる?
- まとめ
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テスターが示すのは数字1つですが、オシロスコープは、電圧の時間変化を波形そのものとして画面に描きます。画面の目盛を数えれば、電圧の大きさも、周期も、周波数も、2つの波のずれ(位相差)も読めます。
この記事では、画面の見方から、波形の読み取り、位相差、トリガ、10:1 プローブ、リサジュー図形の周波数比と位相差、ディジタルオシロスコープのサンプリングまでを、図と例題で順に確認します。最大値と実効値の関係は正弦波交流と実効値で扱ったので、ここでは目盛の読み方に集中します。
- オシロスコープとは
- 縦軸が電圧、横軸が時間。波形そのものを画面に描く
- 波形の読み取り
- 電圧は縦の div 数 × V/div、周期は横の div 数 × 時間/div。f = 1/T
- 2現象の位相差
- ずれ Δt と周期 T から φ = 360° × Δt / T
- トリガ
- 毎回同じ点から描き始めて、波形を止めて見せる
- プローブ
- 10:1 は電圧が 1/10、入力抵抗は 10 MΩ。補正は方形波で合わせる
- リサジュー図形
- 周波数比は接する点の数の比。楕円から sinφ = b/a で位相差が出る
- ディジタルオシロスコープ
- 一定の間隔で電圧を記録し、点をつないで描く
オシロスコープとは:電圧の時間変化を画面に描く計器
オシロスコープは、電圧が時間とともにどう変わるかを、画面に波形として描く計器です。縦軸が電圧、横軸が時間です。電圧計が示すのは数字1つですが、オシロスコープでは、波形の大きさ、くり返しの周期、2つの信号のずれまで、画面の目盛を数えて読めます。
画面は、図1のように、縦 8 × 横 10 の格子に区切られていることが多く、格子の1マスを 1 div(ディビジョン、目盛)と呼びます。
波形の値は、div 数に、つまみで決めた設定の値を掛けて出します。
| 設定 | 単位 | 読めるもの |
|---|---|---|
| 縦軸の感度 | V/div | 電圧 |
| 横軸の掃引時間 | s/div | 時間 |
V/div は、縦に 1 div 進むと何 V か、s/div(ms/div や μs/div)は、横に 1 div 進むと何秒か、を表します。同じ波形でも、設定を変えると画面での大きさが変わります。div 数だけでは値が決まらないので、設定の値を必ず一緒に読みます。

- 黒い画面 表示部
- 端子 信号をつなぐ口
- 携帯型テスター 数字で値を示す
- つまみ 設定を変える
波形の読み取り:電圧は縦の div 数、周期は横の div 数
縦軸を 2 V/div、横軸を 5 ms/div に設定して、正弦波を映したのが図3です。中心線から山の頂上までが 2.5 div、山から次の山までが 4 div です。
電圧は縦の div 数に V/div を、周期は横の div 数に ms/div を掛けます。周波数は、周期の逆数です。
は最大値(中心線からの高さ)、 は山から谷までの高さ(ピークツーピーク値)、 は周期 [s]、 は周波数 [Hz] です。正弦波のように上下対称な波形では、 です。画面から直接読めるのは最大値などの大きさで、実効値は、正弦波なら で求めます(正弦波交流と実効値)。この例では、 です。直流の電圧は、水平な線として映り、中心線からのずれの div 数に V/div を掛けて読みます。
同じ 5 V の波でも、1 V/div なら山の高さは 5 div、5 V/div なら 1 div です。波形が画面いっぱいに映るように、つまみで設定を合わせてから読むと、読み取りの誤差が小さくなります。

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最大値は、縦の div 数に感度を掛けます。
周期は、横の div 数に掃引時間を掛けます。
周波数は、周期の逆数です。
実効値は、正弦波なので、最大値を で割ります。
最大値は 1.5 V、周期は 1.0 ms、周波数は 1 kHz、実効値は約 1.06 V です。
2現象の位相差:ずれ Δt から φ を求める
オシロスコープは、2つの入力を同時に映せます(2現象オシロスコープ)。2つの波が時間の向きにどれだけずれているかを測ると、位相差が分かります。位相差は、RLC直列回路のインピーダンスで扱った電圧と電流の位相角と同じ考え方で、1周期を 360° としたときの、ずれの割合です。
図5は、波 A(黄)と波 B(緑)を映した例です。どちらも下から上へ中心線を横切る点があり、その横の距離がずれ です。
1周期が 、ずれが なら、位相差 は、次のとおりです。
図では、 が 8 div、 が 1 div なので、位相差は 45° です。
と は、div 数の比で出せます。掃引時間の設定は、比の中で打ち消し合うので、位相差を求めるだけなら、読まなくても構いません。
進みと遅れは、時間が左から右へ進むことから決まります。右にずれた波が遅れで、左にある波が進みです。図では、波 B が波 A より 45° 遅れています。ずれと位相差の関係は、次のとおりです。
| ずれ | 位相差 |
|---|---|
| 周期の 1/8 | 45° |
| 周期の 1/4 | 90° |
| 周期の 1/2 | 180° |
実際の画面では、図6のように、2本の波形が重なって映ります。色で見分けます。この写真では、水色の波が黄色の波より右にずれているので、水色の波が遅れています。

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周期は、横の div 数に掃引時間を掛けます。
周波数は、周期の逆数です。
ずれは 2 − 1 = 1 div です。位相差は、div 数の比で出せます。
時間で計算しても同じです。 から、 になります。
波 B のほうが左(先)で中心線を横切っているので、波 B が波 A より 72° 進んでいます。
トリガ:波形が止まって見える仕組み
オシロスコープは、波形を画面の左から右へ掃引して描き、描き終えると、また左から描き直します。描き始める位置が毎回ちがうと、波形が毎回ずれて描かれ、流れるように見えます。
トリガは、入力電圧が設定した値(トリガレベル)を、設定した向き(立ち上がり、または立ち下がり)に横切った瞬間から、描き始める機能です。図7のとおり、トリガがあると、毎回同じ点から描くので、周期波形が重なって止まって見えます。
トリガは、次の3つで決めます。
| 設定 | 決めるもの |
|---|---|
| レベル | 何 V で描き始めるか |
| スロープ | 立ち上がりか、立ち下がりか |
| ソース | どの信号で判断するか |
2現象の位相差を読むときは、ふつう、片方の信号でトリガをかけて基準にし、もう片方のずれを読みます。
プローブ:10:1 プローブと補正
測りたい点とオシロスコープをつなぐのが、プローブです。図8は、測定棒の細い金属の先を、基板の1点に当てている様子です。プローブには、測定点に当てる先端と、基準側(接地側)につなぐクリップがあります。

- 測定棒の先 測りたい点に当てる
- クリップ 基板の縁の穴につながる
- 黒い部品 基板に載った IC
- 手 測定棒を持つ
10:1 プローブの中には、9 MΩ の抵抗が直列に入っています。オシロスコープの入力抵抗(ここでは 1 MΩ)と直列になって、電圧を分けます。
測定点の電圧を 、オシロスコープに入る電圧を とすると、分圧は、オームの法則と直列回路の分圧と同じです。
測定点から見た入力抵抗は、9 MΩ と 1 MΩ の直列で 10 MΩ です。プローブを使わずに直接つなぐと 1 MΩ なので、入力抵抗が10倍に大きくなり、測る回路から流れ出す電流が小さくなります。そのぶん、測る回路への影響が小さくなります。そのかわり、画面の電圧は 1/10 なので、測定点の電圧は、画面から読んだ値の10倍です。プローブの倍率を設定すると、表示を自動で10倍に直す機種もあります。
実際のプローブでは、9 MΩ の抵抗に並列に、調整用のコンデンサが入っています(図では省略しています)。コンデンサの値が合っていないと、周波数が高いほど分圧の比が変わって、波形がゆがみます。そこで、使う前に補正をします。
補正は、オシロスコープの補正用の方形波の端子(多くの機種にあります)にプローブをつなぎ、画面の方形波の角が直角になるように、プローブの調整ねじを回して行います。図10のように、角が丸ければ補正不足、角がとがっていれば過補正です。
補正不足で角が丸くなるのは、9 MΩ と入力側の容量が RC 回路のように働いて、電圧の立ち上がりが遅れるためです(過渡現象の時定数と同じ考え方)。
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画面から読めるのは、オシロスコープに入った電圧です。山から谷までの値は、次のとおりです。
プローブで 1/10 になっているので、測定点の値は10倍です。
最大値は、山から谷までの半分です。
実効値は、最大値を で割ります。
入力抵抗は、9 MΩ と 1 MΩ の直列です。
リサジュー図形:周波数比と位相差
オシロスコープの X-Y モードでは、横軸を時間ではなく、もう1つの入力電圧にします。横の入力を 、縦の入力を として、2つの正弦波を同時に入れると、画面の点は、 と の組み合わせで動いて、図形を描きます。これがリサジュー図形です。
図形から、2つの信号の周波数比と、同じ周波数なら位相差 が分かります。周波数が分かっている信号と比べれば、もう一方の周波数を求められます。
同じ周波数のとき:位相差で形が変わる
のとき、 として、次のように書けます。
なら で、右上がりの直線です。 なら で、軸に平行な楕円になります( なら円)。 なら、右下がりの直線です。図11は、 の場合です。
周波数がちがうとき:接する点の数の比が周波数比
周波数がちがうと、図形は、より複雑な曲線になります。図形に外接する長方形(白い破線)を考えて、上辺に接する点の数と、右辺に接する点の数を数えます。
理由は、次のとおりです。右辺に接するのは が最大のとき、上辺に接するのは が最大のときです。同じ時間に、 の山は に、 の山は に比例した回数だけ現れるので、接する点の数の比が周波数の比になります。
図12の左は、上辺に 2 点、右辺に 1 点で、 です。右は、上辺に 3 点、右辺に 2 点で、 です。接する点が重なる位相のときは、数が少なく見えるので、位相がずれたときの図形で数えます。
楕円の形から位相差 φ を読む
同じ周波数のとき、楕円の形から位相差が読めます。楕円が 軸と交わるのは、 になる のときで、そのときの が です。これを とします。また、 の最大値 を とします。
の振幅 は、 に関係しません。図13は、、 の楕円で、次のとおりです。
から角を求めると、30° と 150° の2つの候補が出ます。右上がりの楕円なら 30°、右下がりなら 150° です。形と の関係は、次のとおりです。
| 図形 | ||
|---|---|---|
| 0° | 0 | 右上がりの直線 |
| 0°〜90° | 0〜1 | 右上がりの楕円 |
| 90° | 1 | 軸に平行な楕円 |
| 90°〜180° | 1〜0 | 右下がりの楕円 |
| 180° | 0 | 右下がりの直線 |
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(1) 上辺に接する点の数と、右辺に接する点の数の比が、 です。
横軸の入力が 600 Hz なので、縦軸の周波数は次のとおりです。
(2) 図から、(楕円のいちばん高い点)、( 軸との交点)と読めます。
となる角は 30° と 150° です。楕円は右下がりなので、 です(右上がりなら 30°)。
ディジタルオシロスコープ:サンプリングして波形を描く
電子ビームを電圧で曲げて、画面に直接描くアナログ方式に対して、ディジタルオシロスコープは、入力電圧を一定の間隔で測って数値(サンプル)にし、メモリに記録して、点をつないで画面に描きます。電圧を数値にする回路は、A-D 変換器です。
図15のように、サンプルの間隔が短いほど、もとの波形に近い形で描けます。間隔が粗いと、波形の細かい変化を取りこぼします。たとえば、間隔が なら、1 秒間に 100 万点を記録します。観測したい信号の周波数よりも、十分に速い間隔で記録する必要があります。
記録した数値は、メモリに残ります。そのため、一度しか起きない信号を、あとから画面で見直したり、画面の波形の値を数値で表示したりできる機種が多くあります。読み方は、ここまでと同じで、div 数に V/div と s/div を掛けます。
よくある質問
オシロスコープと電圧計は、何が違うの?
電圧計は、実効値などの数値を1つ示します。オシロスコープは、電圧の時間変化を波形で映すので、周期、位相差、波形のゆがみ、パルスの立ち上がりまで見られます。そのかわり、値は画面の目盛を読んで求めるので、読み取りの誤差がふくまれます。
波形が止まらずに流れるのは、なぜ?
トリガがかかっていないのが、多い原因です。トリガレベルが波形の振幅の外にあると、入力電圧がその値を横切らないので、描き始めの位置が定まらず、波形が流れます。トリガレベルを、波形の最大値と最小値の間に合わせます。
10:1 プローブで、入力抵抗が大きくなるのはなぜ?
プローブの中の 9 MΩ が、オシロスコープの 1 MΩ に直列に入るからです。測定点から見た抵抗は、9 + 1 = 10 MΩ になります。測定点から流れ出す電流が小さくなるので、測る回路への影響が小さくなります。そのかわり、画面の電圧は 1/10 になります。
リサジュー図形から、位相の進みと遅れは分かる?
分かりません。位相差 と は、同じ形になるからです。図形から分かるのは、位相差の大きさ(0° から 180°)までです。進みと遅れは、2つの波形を並べて映して、どちらが左(先)にあるかを見て決めます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
波形の電圧と周期は、どう読みますか。
電圧は縦の div 数に V/div を、周期は横の div 数に s/div を掛けます。周波数は です。
2つの波の位相差は、どう求めますか。
ずれ と周期 の比に 360° を掛けます。 で、右にずれた波が遅れです。
トリガは、何をする機能ですか。
設定したレベル・向きで電圧が横切った瞬間から描き始めます。毎回同じ点から描くので、周期波形が止まって見えます。
10 プローブを使うと、画面の電圧と入力抵抗は、どうなりますか。
画面の電圧は測定点の 1/10、入力抵抗は 9 MΩ と 1 MΩ の直列で 10 MΩ です。
リサジュー図形で、周波数比は、どう読みますか。
上辺に接する点の数 : 右辺に接する点の数が です。
同じ周波数のリサジュー図形(楕円)から、位相差は、どう求めますか。
の最大値 と、 軸との交点の高さ から、 です。右上がりなら 0° 〜 90°、右下がりなら 90° 〜 180° の角をとります。
まとめ
- 画面は 1 div ごとの格子。電圧は縦の div 数 × V/div、周期は横の div 数 × s/div で読み、周波数は
- 位相差は、ずれ と周期 から 。右にずれた波が遅れ
- トリガは、設定したレベル・向きから描き始めて、周期波形を止める機能
- 10:1 プローブは、9 MΩ を直列に入れて電圧を 1/10 にし、入力抵抗を 10 MΩ にする。補正は、方形波の角が直角になるように合わせる
- リサジュー図形では、上辺に接する点の数 : 右辺に接する点の数が 。同じ周波数の楕円は、 で位相差を読む
- ディジタルオシロスコープは、一定の間隔で電圧を記録して、点をつないで描く








