電線にも抵抗があるので、電流を流すと、電源から遠い家ほど電圧が下がり、電線では熱として電力も失われます。配電線の計算では、この電圧降下と電力損失を、方式ごとの式で求めます。この記事では、方式ごとの式、電圧を上げたときの損失の変化、負荷が分布した線路の計算を、図と 4 つの例題で順にたどります。
配電線の計算の全体像
- 電圧降下とは
- 方式ごとの式
- 電線の量
- 電圧を上げる
- 分布した負荷
配電線の電圧降下とは
配電線は、変電所から送られた電気を、工場や家庭へ配る電線です。電柱に沿って高圧(多くは 6.6 kV)の電線が地域に張りめぐらされ、柱上変圧器で 100 V や 200 V の低圧に下げて、各家庭へ引き込みます(図1)。
図1 農道に沿って続く電柱。高圧の配電線は、電柱で地域に配られる(写真はイメージ)
配電線は長い電線なので、電線には抵抗 R とリアクタンス X があります。電流 I が流れると、この R と X に電圧が生じ、負荷の側(受電端)の電圧 Vr は、電源の側(送電端)の電圧 Vs より低くなります。この差が電圧降下 v です(図2)。
v=Vs−Vr [V]
図2 配電線の電圧降下。電流は往復の2本を流れ、送電端より受電端の電圧が低くなる
電線に電流が流れると、電線の抵抗で熱が出て、電力も失われます。これが電力損失で、電線 1 本ぶんは I2R です。電流の 2 乗に比例するので、電流が大きいほど急に増えます。
電圧降下が大きいと、負荷の電圧が足りなくなって、照明が暗くなったり、機器が正常に動かなくなったりします。電力損失が大きいと、送った電気が熱になって無駄になります。柱上変圧器は、高圧線から電気を受けて、低圧に下げて配る機器です(図3)。
1高圧側の端子2変圧器の胴3放熱ひれ4低圧側の線5コンクリート柱- 高圧側の端子 高圧線を受ける
- 変圧器の胴 高圧を低圧に下げる
- 放熱ひれ 熱を逃がす
- 低圧側の線 電柱へ下ろす
- コンクリート柱 機器を支える
図3 電柱の柱上変圧器。高圧を低圧に下げて配る(写真はイメージ)
方式ごとの電圧降下と電力損失の式
配電線には、単相2線式、三相3線式、単相3線式があります。電線 1 本あたりの抵抗を R、リアクタンスを X、負荷の電流(線電流)を I、負荷の力率(遅れ)を cosθ とすると、電圧降下 v と電線全体の電力損失 Pl は、次の形にまとまります。
vPl=kI(Rcosθ+Xsinθ)=nI2R
係数 k と本数 n は、方式で決まります。
| 方式 | 係数 k | 本数 n |
|---|
| 単相2線式 | 2 | 2 |
| 三相3線式 | 3 | 3 |
| 単相3線式 | 1 | 2 |
単相2線式は、往きの線と戻りの線の 2 本に電流が流れます。両方の線で電圧が下がるので k=2、損失も 2 本ぶんで n=2 です。
三相3線式は、1 線あたりの電圧降下 I(Rcosθ+Xsinθ) を線間電圧に直すと 3 倍になります(導き方は三相3線式の電圧降下の求め方)。3 本すべてに電流が流れるので n=3 です。
単相3線式は、負荷が平衡していれば、中性線に電流が流れません。電圧降下は外線 1 本ぶんの k=1、損失は外線 2 本ぶんの n=2 です(中性線のはたらきは単相3線式の仕組みと中性線で扱います)。
電線の太さと電線の量
電線の抵抗は、材料の抵抗率 ρ、長さ l、断面積 A で決まります。
R=ρAl [Ω]
電線を太くする(断面積を大きくする)と、抵抗が下がって電圧降下も電力損失も小さくなります。ただし、そのぶん電線の材料が増えます。太い電線は、細い線を束ねたより線でつくります(図4)。
図4 より線の切り口。細い線を束ねて、太い電線にする(写真はイメージ)
電線の量は、本数と断面積の積に比例します。同じ電力を、同じ負荷の電圧、力率、電力損失で送るとき、方式ごとに必要な電線の量を、単相2線式を 1 として比べたのが図5です。
図5 電線の量の比較。単相2線式を 1 とすると、三相3線式は 3/4、単相3線式は 3/8
導き方は、電流と損失を並べるとわかります。単相2線式の電流を I1 とします。負荷の電圧は同じなので、三相3線式は線間電圧が V、単相3線式は外線と中性線の間が V とします。電線 1 本の抵抗が同じ R のときは、次のようになります。
| 方式 | 電流 | 損失 |
|---|
| 単相2線式 | I1 | 2I12R |
| 三相3線式 | I1/3 | I12R |
| 単相3線式 | I1/2 | I12R/2 |
三相3線式の損失は単相2線式の 1/2、単相3線式は 1/4 です。損失を同じにそろえるには、三相3線式は R を 2 倍にできて、断面積は 1/2 で済みます。単相3線式は R を 4 倍にできて、断面積は 1/4 で済みます。電線の量は、本数 × 断面積に比例するので、次のとおりです。
単相2線式三相3線式単相3線式=2×1=2=3×21=23=3×41=43
単相2線式を 1 にそろえると、三相3線式は 23÷2=43、単相3線式は 43÷2=83 です。
電圧を上げると電力損失が減る理由
三相3線式で、負荷の電力 P、線間電圧 V、力率 cosθ のとき、電流は次の式です。
I=3VcosθP
これを電力損失 3I2R に入れると、損失は電圧の 2 乗に反比例することがわかります。
Pl=3I2R=3(3VcosθP)2R=V2cos2θP2R
電力 P に対する損失の割合は、Pl/P=PR/(V2cos2θ) です。X を無視すると、電圧降下 v とその率は、次のようになります。
vVv=3IRcosθ=VPR=V2PR
つまり、同じ電力を送るとき、電圧を n 倍にすると、電流は 1/n、電力損失は 1/n2 になります(図6)。電圧降下 v は 1/n、電圧降下率は 1/n2 です。
図6 電圧を上げたときの電流と電力損失。電流は 1/n、損失は 1/n の 2 乗
力率も同じ形で効きます。損失は cos2θ に反比例するので、力率を 0.8 から 1 に改善すると、損失は (0.8/1)2=0.64 倍になります(力率の改善は力率改善と進相コンデンサの容量計算で扱います)。
負荷が分布した線路の計算
配電線の負荷は、線路の末端に 1 か所だけあるとは限りません。途中の何か所かで分かれて取り出される場合と、線路に沿って一様に分布している場合を、順に見ていきます。
途中に負荷が分かれた線路
図7は、電源の S 点から A 点、B 点、C 点へ線路が続き、各点で負荷電流が取り出される例です。各区間を流れる電流は、その区間より先にある負荷電流の合計です。この例では、S–A 間が 20+30+10=60 A、A–B 間が 30+10=40 A、B–C 間が 10 A です。
図7 途中に負荷が分かれた線路。区間の電流は、その先にある負荷電流の合計
電柱から住宅へ負荷が分かれるたびに、線路を流れる電流は減っていきます(図8)。
1がいしと腕金2柱上変圧器3コンクリート柱4低圧線- がいしと腕金 高圧線を支える
- 柱上変圧器 高圧を低圧に下げる
- コンクリート柱 機器を支える
- 低圧線 住宅の方へ向かう
図8 電柱から住宅へ。負荷が分かれるたびに、線路の電流は減っていく(写真はイメージ)
電圧降下は、区間ごとの電圧降下を足します。電力損失も、区間ごとの損失を足します。S–A 間、A–B 間、B–C 間の電流を I1、I2、I3、抵抗を R1、R2、R3 とします。
vPl=k(I1R1+I2R2+I3R3)=n(I12R1+I22R2+I32R3)
この式は、力率 1 の形です。力率がどの負荷でも同じなら、電流の大きさをそのまま足せるので、電圧降下は各項の IiRi を Ii(Ricosθ+Xisinθ) に置き換えます。電力損失は Ri のままです。力率が違うときは、電流を有効分と無効分に分けて、それぞれ足してから計算します。
一様に分布した負荷
街路灯や住宅が、線路に沿ってびっしり並んでいるときは、負荷が一様に分布しているとみなします。線路の長さを L、電線 1 本の抵抗を(全長ぶんで)R、送電端の電流を I とします。電流は、末端に向かって直線的に減り、末端で 0 になります(図9)。
図9 一様に分布した負荷。電流の面積は 1/2、電流の 2 乗の面積は 1/3
電圧降下は、電流の曲線の面積(図9の左の三角形)に比例し、電力損失は、電流の 2 乗の曲線の面積(図9の右)に比例します。この面積から、次のとおりになります。
v′=2IR,p′=3I2R
v′ と p′ は、電線 1 本ぶんの電圧降下と電力損失です(力率 1、または X を無視したとき)。末端に全電流 I を集めた場合の IR と I2R に比べて、電圧降下は 1/2、電力損失は 1/3 です。電圧降下は、全負荷を線路の中央に集めたときと同じです。方式ごとにまとめると、次の表です。
| 方式 | 電圧降下 | 電力損失 |
|---|
| 単相2線式 | IR | 32I2R |
| 三相3線式 | 23IR | I2R |
末端にも集中負荷があるときは、電圧降下は、分布した負荷の分と集中負荷の分を別々に求めて足せます。電力損失は電流の 2 乗なので、別々に求めて足すことはできません。線路を流れる電流の合計から求めます。
配電線の例題
配電線の問題は、文章から k、n、R、電流を読み取るところから始まります。
| 問題の言葉 | 読み取り |
|---|
| 6.6 kV の三相3線式 | 線間電圧 |
| 200 V の単相2線式 | 負荷の電圧 |
| 電線 1 線の抵抗 | R |
| 力率 1 | X の項が消える |
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片道は 0.3 km なので、R=0.06 Ω、X=0.03 Ω です。力率 0.8 より sinθ=0.6 です。
(1) Rcosθ=0.048、Xsinθ=0.018 です。
v=2I(Rcosθ+Xsinθ)=120×(0.048+0.018)=7.92 [V](2) 送電端電圧は、負荷の電圧に電圧降下を足します。
Vs=200+7.92≒207.9 [V](3) 単相2線式は n=2 です。
Pl=2I2R=2×602×0.06=432 [W]答え:(1) 7.92 V (2) 207.9 V (3) 432 W
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区間の電流は、先にある負荷電流の合計です。
- 電源–A 間:60 A、R1=0.8 Ω
- A–B 間:30 A、R2=0.4 Ω
- B–C 間:10 A、R3=0.4 Ω
(1) 三相3線式は k=3 です。
v=3(I1R1+I2R2+I3R3)=3(48+12+4)=3×64≒110.9 [V]6600 V の約 1.7 % です。
(2) 三相3線式は n=3 です。
Pl=3(I12R1+I22R2+I32R3)=3(2880+360+40)=9840 [W]答え:(1) 110.9 V (2) 9840 W
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電線 1 線の全体の抵抗は R=0.3×2=0.6 Ω です。
(1) 一様な分布では、末端集中の 1/2 です。
v=23IR=23×100×0.6≒52.0 [V](2) 1 線あたり I2R/3 で、3 線ぶんです。
Pl=3×3I2R=1002×0.6=6000 [W](3) 末端に集中した場合です。
vPl=3IR≒103.9 [V]=3I2R=18000 [W]比は、電圧降下が 1/2、電力損失が 1/3 です。
答え:(1) 52.0 V (2) 6000 W (3) 103.9 V、18000 W
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電流を求めて、Pl=3I2R に入れます。3.3 kV のときです。
IPl=3VP=3×33001000×103≒175 [A]=3×1752×0.5≒45.9 [kW]電力の 45.9/1000=4.59 % です。6.6 kV のときです。
IPl=3×66001000×103≒87.5 [A]=3×87.52×0.5≒11.5 [kW]電力の約 1.15 % です。電圧が 2 倍になると、電流は 1/2、損失は 1/4 になります。
答え:3.3 kV で約 45.9 kW(4.59 %)、6.6 kV で約 11.5 kW(1.15 %)
よくある質問
電圧降下の係数が方式ごとに違うのはなぜですか。
電圧降下を、負荷の電圧に合わせて数えているからです。単相2線式は、往きと戻りの 2 本の電圧降下を足すので k=2 です。三相3線式は、1 線あたりの電圧降下を線間電圧に直すと 3 倍になります。単相3線式は、平衡していれば中性線に電流が流れないので、外線 1 本ぶんの k=1 です。
配電線の電圧降下を小さくするには、どうすればよいですか。
式 v=kI(Rcosθ+Xsinθ) の各項を小さくします。電線を太くして R を小さくする、電圧を上げて電流を減らす、進相コンデンサなどで力率を改善して電流を減らす、の方法があります。電圧を上げると、電力損失も小さくなります。
分布負荷で電圧降下が 1/2 になるのはなぜですか。
線路に沿って負荷が取り出されるので、電流が送電端の I から末端の 0 まで直線的に減ります。電流の平均は I/2 なので、電圧降下は末端集中の半分です。電力損失は電流の 2 乗で決まります。2 乗の平均は 1/3 なので、損失は 1/3 になります。
単相3線式の損失で、本数が 2 になるのはなぜですか。
負荷が平衡していると、中性線に電流が流れないからです。電流が流れるのは外線 2 本だけなので n=2 です。不平衡のときは、中性線の電流 IN と抵抗 RN から、中性線の損失 IN2RN を加えます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
三相3線式の電圧降下と電力損失の式は?
v=3I(Rcosθ+Xsinθ)、Pl=3I2R です。
単相2線式の電圧降下と電力損失の式は?
v=2I(Rcosθ+Xsinθ)、Pl=2I2R です。
電圧を n 倍にすると、電流・電力損失・電圧降下率はどうなる?
電流は 1/n、電力損失と電圧降下率は 1/n2 になります。
同じ電力・損失で送るとき、単相2線式を 1 とした電線の量は?
三相3線式は 3/4、単相3線式は 3/8 です。
一様に分布した負荷では、末端集中に比べて電圧降下と電力損失は何倍?
電圧降下は 1/2、電力損失は 1/3 です。
途中で負荷が分かれた線路は、どう計算する?
区間の電流(先にある負荷電流の合計)と抵抗から、区間ごとの IR と I2R を足します。
まとめ
- 電圧降下は送電端と受電端の電圧の差で、v=kI(Rcosθ+Xsinθ)。係数は単相2線式が 2、三相3線式が 3、単相3線式が 1
- 電力損失は nI2R。本数は単相2線式が 2、三相3線式が 3、単相3線式が 2
- 同じ電力・損失で送るときの電線の量は、単相2線式を 1 として、三相3線式が 3/4、単相3線式が 3/8
- 電圧を n 倍にすると、電流は 1/n、電力損失と電圧降下率は 1/n2。力率を上げても電流が減る
- 途中で負荷が分かれた線路は、区間ごとに足す。一様に分布した負荷は、末端集中の電圧降下の 1/2、電力損失の 1/3
電流を減らして損失を下げる力率の改善は、力率改善と進相コンデンサの容量計算で続けて確認できます。