屋内配線は、引込口から分電盤までの幹線と、分電盤から負荷までの分岐回路でできています。電線には抵抗があるので、電流が流れると電圧が下がります。結論から言うと、電圧降下は「負荷の電流を求める → 電線の抵抗を出す → 方式ごとの式にあてはめる」の3手順で計算でき、許容値に収まるように電線の太さを選びます。
屋内配線の全体像
- 屋内配線とは
- 負荷電流の求め方
- 電線の抵抗と電圧降下のしくみ
- 方式ごとの電圧降下の簡易式
- 電線の太さの選び方
- 配線を守る遮断器・漏電遮断器と接地の役目
- 屋内配線の例題
屋内配線とは
屋内配線とは、建物の中で、電気を受け入れる引込口から、照明・コンセント・電動機などの負荷までをつなぐ配線のことです。役割で分けると、次の2種類があります。
- 幹線:引込口(ビルなどでは受電設備や変圧器の二次側)から、分電盤までの太い配線
- 分岐回路:分電盤から、照明やコンセントなどの負荷までの配線
図1は、住宅とビルの構成を並べた図です。電気は、引込線から引込口に入り、電力量計を通って、幹線で分電盤へ送られます。分電盤で回路ごとに分かれたものが分岐回路です。ビルでは、主配電盤から出た幹線が、各階の分電盤へ分かれていきます。
図1 住宅とビルの屋内配線の構成。引込口から分電盤までが幹線、分電盤から負荷までが分岐回路
分電盤の中を見たのが図2です。幹線から入った電気は、まず主幹ブレーカを通り、回路ごとの分岐ブレーカで分かれて、それぞれの分岐回路へ出ていきます。右の端子台には、緑色の線がまとめてつながっています。
1電源側の電線2主幹ブレーカ3分岐ブレーカ4端子台- 電源側の電線 幹線から入る
- 主幹ブレーカ 全体を入り切りする
- 分岐ブレーカ 回路ごとに切る
- 端子台 緑の線をまとめる
図2 分電盤の内部。主幹ブレーカと分岐ブレーカが並ぶ(写真はイメージ)
この記事で押さえる点は、次の3つです。
- 構成:引込口 → 幹線 → 分電盤 → 分岐回路 → 負荷の順に電気が流れる
- 電流:負荷の電力と力率から、幹線に流れる電流を求める
- 電圧降下:電線の抵抗で下がる電圧を、電線の太さ(断面積)で抑える
電線に流してよい電流は許容電流と幹線の太さ、配線の工事の種類は低圧屋内配線の工事の種類で扱います。高圧の配電線の電圧降下は配電線の電圧降下と電力損失、送電線の三相の電圧降下は三相3線式の電圧降下の求め方で整理しています。この記事では、建物の中の幹線と分岐回路に絞って、電流・電圧降下・電線の太さを順に見ます。
負荷電流の求め方
電圧降下を計算するには、まず電線に流れる電流 I が必要です。負荷の電力 P [W]、線間電圧 V [V]、力率 cosθ から、単相と三相で次のように求めます。
単相: I三相: I=VcosθP [A]=3VcosθP [A]
低圧の方式は、単相2線式の 100 V、単相3線式の 100/200 V、三相3線式の 200 V などがあります。家庭では単相3線式の 100/200 V、工場の動力には三相3線式の 200 V が使われます。単相3線式の中性線や電圧降下は単相3線式で詳しく扱います。
同じ電力でも、力率が低いと電流が大きくなります。三相 200 V・10 kW の負荷と、単相 100 V・2 kW の負荷で、力率を変えたときの電流は次のとおりです。
| 力率 | 三相 | 単相 |
|---|
| 0.6 | 48.1 A | 33.3 A |
| 0.8 | 36.1 A | 25.0 A |
| 0.9 | 32.1 A | 22.2 A |
| 1.0 | 28.9 A | 20.0 A |
力率 0.6 の電流は、力率 1.0 の約 1.7 倍です。電流が増えると、電線の抵抗で失う電力 3I2R(三相の場合)も増えます。力率を上げる方法は力率改善と進相コンデンサの容量計算で扱います。
力率の違う負荷が並列につながっているときは、電流の大きさをそのまま足してはいけません。電圧と同じ向きの有効分どうし、遅れの無効分どうしを足してから、ベクトルとして合成します。図3は、負荷A(30 A、力率 0.8 遅れ)と負荷B(20 A、力率 1)を並列にした例です。
図3 力率の違う2つの負荷の電流の合成(例)。有効分と無効分に分けて足す
I有効I無効I=30×0.8+20=44 [A]=30×0.6=18 [A]=442+182≒47.5 [A]
算術和の 30+20=50 A より小さい 47.5 A になるのは、負荷Aの電流が電圧に対して遅れていて、向きがそろっていないからです。
電線の抵抗と電圧降下のしくみ
電線の抵抗 R は、長さ L に比例し、断面積 A に反比例します。
R=ρAL [Ω]
ρ は抵抗率で、試験では標準軟銅の値として、ρ=1/58 Ω⋅mm2/m を使うことがあります。ρ≒0.0172 Ω⋅mm2/m です。L は [m]、A は [mm2] で入れます。図4は、太さの違う電線の断面です。太いほど断面積 A が大きく、抵抗 R が小さくなります。
1細い電線2太い電線3絶縁被覆4銅のより線- 細い電線 断面積が小さい
- 太い電線 断面積が大きい
- 絶縁被覆 銅をおおって絶縁する
- 銅のより線 電気が流れる部分
図4 太さの違う電線の断面。太いほど断面積が大きい(写真はイメージ)
電線は、細い素線をより合わせた「より線」で作られることがあります。標準軟銅の抵抗率で電線 1 km の抵抗を 1000ρ/A と計算した値と、IV 電線(ビニル絶縁電線)の仕様書にある導体抵抗の最大値(20 ∘C)を並べると、次のとおりです。単位は Ω/km です。
| 断面積 | 計算値 | 最大値 |
|---|
| 8 mm2 | 2.16 | 2.31 |
| 14 mm2 | 1.23 | 1.30 |
| 22 mm2 | 0.78 | 0.82 |
| 38 mm2 | 0.45 | 0.49 |
仕様書の値は、計算値より 5〜7 % ほど大きくなっています。試験では、問題で与えられた抵抗率や抵抗の値を使います。
電流が電線を流れると、抵抗で電圧が下がります。図5は、単相2線式の回路です。電源側の電圧を Vs、負荷側の電圧を Vr とすると、電圧降下 e は、その差です。往きの電線と帰りの電線の両方で IR ずつ下がるので、合わせて 2IR です。
図5 単相2線式の電圧降下。往きと帰りの2本の電線で IR ずつ下がり、合わせて 2IR になる
e=Vs−Vr=IR+IR=2IR [V]
ここまでは電線の抵抗だけを考えています。問題に「リアクタンスは無視する」と書かれていれば、抵抗だけで考えます。リアクタンスまで含めた三相の電圧降下は三相3線式の電圧降下の求め方で扱います。
方式ごとの電圧降下の簡易式
リアクタンスを無視して、電線 1 本あたりの抵抗 R と負荷の力率 cosθ で考えると、電圧降下は方式ごとに次の式で表せます。
単相2線式: e単相3線式: e三相3線式: e=2IRcosθ=IRcosθ=3IRcosθ
単相2線式は、往きと帰りの2本の電線で電圧が下がるので、IR が2本分になります。単相3線式は、負荷が平衡していれば中性線に電流が流れないので、外側の電線 1 本分の IR だけです。三相3線式は、線間電圧の降下が、電線 1 本あたりの降下の 3 倍になります。
力率を 1 とおいて R=ρL/A を入れると、どの方式も e=kLI/A の形にまとまります。L は片道の長さ [m]、A は断面積 [mm2]、I は電流 [A] です。単相2線式では、次のようになります。
e=2IR=2I⋅ρAL=582⋅ALI≒0.0345ALI [V]
係数 k は、ρ=1/58 として計算すると、次の値になります。
| 方式 | 式 | 係数 k |
|---|
| 単相2線 | 2IR | 0.0345 |
| 単相3線 | IR | 0.0172 |
| 三相3線 | 3IR | 0.0299 |
力率が 1 より小さいときは cosθ をかけるので、力率を 1 とおいた値は大きめになります。たとえば、単相2線式で L=50 m、I=30 A、A=22 mm2 のとき、電圧降下は次のとおりです。
e≒0.0345×2250×30≒2.35 [V]
電線の太さの選び方
電線の太さは、次の2つの条件を両方満たすように選びます。
- 許容電流:電線に流してよい電流が、負荷の電流以上であること
- 電圧降下:電圧降下が、許容される値以内であること
許容電流の決め方は許容電流と幹線の太さで扱うので、ここでは電圧降下の条件から断面積を逆算します。単相2線式なら、e=2ρLI/A を A について解きます。
A≧e2ρLI [mm2]
求めた値以上で、いちばん小さい標準の断面積を選びます。より線の標準の断面積には、2、3.5、5.5、8、14、22、38、60、100 mm2 などがあります。
断面積を大きくすると、電圧降下は反比例して小さくなります。図6は、片道 50 m、30 A、力率 1 の単相2線式について、式 e=3000/(58A) から作った自作の曲線です。点は標準の断面積です。許容値を例として 2 V とすると、A≧25.9 mm2 が必要なので、標準では 38 mm2 になります。22 mm2 は 2.35 V で、許容値を超えます。
図6 単相2線式(片道 50 m、30 A、力率 1)の電線の断面積と電圧降下。式 e = 3000 / (58A) から作った自作の曲線
電線の抵抗では、電力の損失も出ます。三相3線式の損失は 3I2R で、電流の2乗に比例します。電線を太くして R を小さくすれば、電圧降下も損失も小さくなります。ただし、太い電線は費用がかかり、重くて曲げにくくなります。
太い幹線のケーブルは、図7のようなケーブルラックにのせて、天井や壁に沿って敷設することがあります。施設する場所によって、配線の工事の種類は使い分けます。工事の種類は低圧屋内配線の工事の種類で整理しています。
1吊り材2ラック3ケーブル4金属配管- 吊り材 ラックを天井から支える
- ラック ケーブルをのせて運ぶ
- ケーブル 電気を送る太い電線
- 金属配管 電線を通して守る
図7 ケーブルラックにのせた太いケーブル(写真はイメージ)
配線を守る遮断器・漏電遮断器と接地の役目
配線には、電線を守る機器と、人を守る機器が付きます。
| 機器 | はたらき | 守るもの |
|---|
| 配線用遮断器 | 過電流で切る | 電線 |
| 漏電遮断器 | 漏電で切る | 人・火災 |
| 接地 | 大地へ逃がす | 人・機器 |
配線用遮断器は、定格を超える電流が流れると、回路を切ります。過負荷や短絡で電線が焼けるのを防ぐので、遮断器の定格電流は、電線の許容電流以下にそろえます。定格が許容電流より大きいと、電線が過熱しても遮断器が切れません。遮断器どうしの動作の順序の考え方は保護協調とはで扱います。
漏電遮断器は、行きの電流と帰りの電流の差から漏電を見つけて、回路を切ります。感電や、漏電による火災を防ぎます。地絡の電流の計算や保護の方式は地絡保護と地絡電流の計算で扱います。
接地は、機器の金属製の外箱などを、接地線で大地につなぐことです。漏電したとき、電流を大地へ逃がして、外箱の電圧が上がるのを抑えます。接地工事の種類は接地工事の種類と接地抵抗値で整理しています。
電線は、傷や熱から守るために、配管に通して建物の骨組みに固定することがあります。図8は、その様子です。
図8 電線は配管に通して骨組みに固定し、ボックスまで導く(写真はイメージ)
屋内配線の例題(電圧降下と電線の太さ)
例題は4問です。1 問目と 2 問目は単相2線式の電圧降下と電線の太さ、3 問目は電流の合成、4 問目は三相3線式の電圧降下です。計算は、次の4手順で進めます。
| 手順 | 内容 |
|---|
| 1 | 電流 I を求める |
| 2 | 抵抗 R を出す |
| 3 | 方式の式で e を出す |
| 4 | 許容値と比べる |
解答と解説を見る
電線 1 本の抵抗を求めます。
R=ρAL=581×858=0.125 [Ω]往復の 2 本で下がるので、電圧降下は次のとおりです。
e=2IR=2×20×0.125=5.0 [V]負荷側の電圧は、105−5.0=100 V です。
答え:100 V
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電圧降下の条件から、必要な断面積を逆算します。
A≧e2ρLI=58×22×30×40≒20.7 [mm2]20.7 mm2 以上で最小の電線は、22 mm2 です。
確かめると、14 mm2 では 2.96 V で 2 V を超えます。22 mm2 では 1.88 V で収まります。
答え:(3)
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負荷A、Bの電流を、それぞれ求めます。
IA=3×200×0.88000≒28.87 [A]IB=3×200×16000≒17.32 [A]有効分と無効分に分けます。無効分は負荷Aだけです。
I有効I無効=28.87×0.8+17.32≒40.41 [A]=28.87×0.6≒17.32 [A]合成します。
I=40.412+17.322≒44.0 [A]算術和の 28.87+17.32=46.2 A は誤りです。電力で確かめると、有効電力は 14 kW、無効電力は 6 kvar で、皮相電力は 15.23 kV⋅A です。
I=3×20015230≒44.0 [A]答え:(2)
解答と解説を見る
電線 1 本の抵抗を求めます。
R=581×2244≒0.0345 [Ω]三相3線式の電圧降下です。
e=3IRcosθ=3×50×0.0345×0.8≒2.39 [V]電圧降下率は、負荷側の電圧に対する割合です。
ε=2002.39×100≒1.2 [%]力率を 1 とおく概算では 2.99 V になり、大きめの値です。
答え:電圧降下は約 2.39 V、電圧降下率は約 1.2 %
よくある質問
電圧降下は、何 % までなら許されますか。
試験では、問題文に書かれた条件に従います。実際の工事では、民間の規程が目安を示しています。この記事では、規程の数値は扱いません。問題で「電圧降下を 2 V 以下にする」などと与えられた値を、そのまま許容値に使います。
幹線と分岐回路は、何が違いますか。
幹線は、引込口(または変圧器の二次側)から分電盤までの配線で、建物全体の電流を送ります。分岐回路は、分電盤から照明やコンセントなどの負荷までの配線で、回路ごとに分電盤の分岐ブレーカで守ります。幹線は、そこから分かれる分岐回路すべての電流を受け持つので、太い電線を使います。
単相2線式は 2、三相3線式は 3 をかけるのはなぜですか。
単相2線式は、往きと帰りの2本の電線に電流が流れ、2本分の電圧が下がるので、2 をかけます。三相3線式は、各線の電圧降下を線間でみると、120 度ずれた 2 つの同じ大きさのベクトルの差になるので、大きさが 3 倍になります。
電線は、太いほどよいのですか。
太くすると、電圧降下も電力損失も小さくなりますが、電線の費用が増え、重くて曲げにくくなり、収める配管や端子も大きくなります。許容電流と電圧降下の条件を満たす、必要な太さを選びます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
幹線と分岐回路は、それぞれどこからどこまでの配線ですか?
幹線は引込口(または変圧器の二次側)から分電盤まで、分岐回路は分電盤から負荷までです。
三相3線式の負荷電流を求める式は何ですか?
I=3VcosθP です。
力率の違う2つの負荷の電流は、大きさを足してよいですか?
足せません。有効分どうし、無効分どうしを足し、I=I有効2+I無効2 で合成します。
単相2線式の電圧降下を表す式は何ですか?
e=2IRcosθ です。力率 1 なら 2IR です。
電線を太くすると、電圧降下はどう変わりますか?
断面積に反比例して小さくなります。電力損失も小さくなります。
配線用遮断器の定格電流は、電線の許容電流に対してどうそろえますか?
許容電流以下にそろえます。電線が過熱する前に遮断器が切れるようにするためです。
まとめ
- 屋内配線は、引込口から分電盤までの幹線と、分電盤から負荷までの分岐回路に分かれる
- 負荷電流は、単相なら P/(Vcosθ)、三相なら P/(3Vcosθ)。力率の違う負荷は、有効分と無効分に分けて足す
- 電線の抵抗は R=ρL/A。試験では抵抗率に 1/58 Ω⋅mm2/m を使うことがある
- 電圧降下は、単相2線式で 2IRcosθ、単相3線式で IRcosθ、三相3線式で 3IRcosθ
- 電線の太さは、許容電流と電圧降下の両方を満たす、いちばん小さい標準の断面積を選ぶ
- 配線用遮断器は電線を、漏電遮断器と接地は人を守る。遮断器の定格は電線の許容電流以下にそろえる
幹線より手前の、配電線から引込口までの設備と方式は配電設備のしくみで、高圧の配電線の電圧降下は配電線の電圧降下と電力損失で、続けて確認しましょう。