配電設備のしくみ|柱上変圧器・高圧カットアウト・スポットネットワーク方式を図解
電験三種の配電設備を、配電系統の流れ、樹枝状とループ、電柱の機器、配電線の自動化と電圧調整、スポットネットワーク方式まで図解で整理します。変圧器容量と SVR のタップの例題つきで確認できます。

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電気は、配電用変電所から 6,600 V の高圧配電線で送り出され、電柱の柱上変圧器で 100/200 V に下げられて家庭や店舗に届きます。電験三種の「電力」で押さえるのは、この途中の配電の方式(樹枝状・ループ・スポットネットワーク)と、電柱の上の機器の役目です。結論から言うと、電柱の機器は「電圧を下げる・切る・守る」の3つの役目で分けると整理しやすくなります。
- 配電設備とは
- 配電系統の流れと電圧の区分
- 樹枝状方式とループ方式の違い
- 停電の範囲・設備費・保護
- 電柱の上の機器の役割
- 碍子・開閉器・カットアウト・変圧器
- 配電線の自動化と電圧調整
- 区間の切り離しと SVR のタップ
- スポットネットワーク方式
- 3 回線受電とプロテクタ
- バンキング方式とカスケーディング
- 区分ヒューズと地中配電
- 配電設備の例題
- 変圧器容量と SVR のタップ
配電設備とは
配電設備とは、配電用変電所から需要家(電気を使う側)の引込口までの間にある、電線と機器の総称です。電圧の区分は、交流で 600 V 以下が低圧、600 V を超え 7,000 V 以下が高圧、7,000 V を超えるものが特別高圧です。6,600 V の配電線は高圧にあたるので、高圧配電線と呼びます。
図1のように、配電用変電所は、送電線から受けた電気を高圧配電線へ送り出します。高圧配電線の電柱には柱上変圧器が付いていて、ここで 100/200 V の低圧に下げて低圧配電線へ送り、引込線で家庭や店舗へ届けます。使う電力が大きい工場やビルは、高圧(さらに大きいと特別高圧)のまま受電して、構内の受電設備で電圧を下げます。
この記事で押さえる点は、次の3つです。
- 方式:配電線をどうつなぐか(樹枝状、ループ、スポットネットワーク、バンキング)。停電の範囲と設備費のかね合いで決まる
- 機器:電柱の上の機器が、電圧を下げる・切る・守るのどれを受け持つか
- 運用:事故区間の切り離しと、電圧を一定の範囲に保つ方法
配電線の電圧降下の計算は配電線の電圧降下と電力損失、低圧の配電方式の比較は単相3線式、変圧器の容量を決める需要率と不等率は需要率・負荷率・不等率で扱います。この記事では、方式と機器に絞って整理します。
樹枝状方式とループ方式の違い
配電線をどうつなぐかが、方式の違いです。樹枝状方式(放射状方式)は、変電所から木の枝のように線が分かれていく方式で、構成が簡単で設備費が安く、保護も単純です。弱点は、図2のように事故が起きると、事故点より先の区間と負荷がすべて停電することです。
ループ方式(環状方式)は、配電線を輪の形につなぐ方式です。図3のように、事故が起きた区間の両端の区分開閉器を開いて切り離せば、残りの区間は反対側からも供給できるので、停電するのは事故区間だけで済みます。その代わり、輪の形にする分だけ電線や開閉器が増えて設備費が高く、電流が両方向に流れるので保護の方式も複雑になります。
| 項目 | 樹枝状 | ループ |
|---|---|---|
| 事故時 | 先が停電 | 区間のみ |
| 設備費 | 安い | 高い |
| 保護 | 簡単 | 複雑 |
| 電圧降下 | 末端で大 | 小さい |
| 供給信頼度 | 低い | 高い |
ループ方式で事故区間を見分けて切り離すには、保護継電器が働きます。保護継電器の種類は保護継電器の種類と役割で整理しています。なお、低圧側の配電線を網の目状に組む低圧ネットワーク方式(レギュラーネットワーク方式)は別の方式で、あとで説明するスポットネットワーク方式とは区別します。
電柱の上の機器の役割
電柱の上の機器は、電圧を下げる・切る・守るの3つの役目に分けると覚えやすくなります。図4は、1本の電柱の機器を上から順に並べた図です。
図4の上から順に見ます。腕金(電柱から横に出た金属の腕)に、碍子で電線が取り付けられています。その下に、雷の異常電圧から機器を守る避雷器、配電線の区間を切り分ける柱上開閉器、変圧器の事故を切り離す高圧カットアウト、電圧を下げる柱上変圧器が並びます。柱上変圧器の二次側(低圧側)からは低圧線と引込線が出て、需要家へつながります。接地線は、避雷器や変圧器の低圧側を大地につなぎます。
図5は、電柱の上の部分の実物のイメージです。

- 碍子 電線を腕金から絶縁して支える
- 高圧カットアウト ヒューズで変圧器を切り離す
- 接続ケーブル 高圧線と変圧器をつなぐ
- 柱上変圧器 高圧を低圧に下げる
- 電柱 機器をのせて支える柱
碍子の近くを寄せて見たものが図6です。電線は、碍子の頭の部分に、より線でくくりつけて固定します。碍子は磁器でできていて、電線と、腕金や電柱の間を絶縁します。

| 機器 | 役目 |
|---|---|
| 碍子 | 電線を絶縁して支える |
| 柱上開閉器 | 配電線の区間を開閉する |
| 高圧カットアウト | 変圧器の事故を切り離す |
| 避雷器 | 雷の異常電圧を逃がす |
| 柱上変圧器 | 高圧を低圧に下げる |
| 接地線 | 機器を大地につなぐ |
高圧カットアウトは、変圧器の一次側に取り付けるヒューズ付きの開閉器です。変圧器に事故や過負荷が起きるとヒューズが溶けて、その変圧器だけを高圧配電線から切り離します。柱上開閉器は、配電線の途中に入れて、区間ごとに開閉する機器です。事故区間の切り離しや、工事のときに停電する範囲を狭めるのに使います。
避雷器は、雷による異常電圧を大地へ逃がして、変圧器などを守ります。異常電圧の種類と絶縁協調は避雷器と雷害対策で扱います。変圧器の低圧側は、高圧側との混触に備えて大地につなぐ(B種接地工事)ので、電柱には接地線が下りています。接地工事の種類は接地工事の種類と接地抵抗値で整理しています。
配電線の自動化と電圧調整の方法
配電線の自動化は、事故が起きたときに、事故区間を切り離して、停電する範囲を小さくする仕組みです。配電線の途中に区分開閉器を、隣の配電線との境に連系開閉器(平常時は開)を置いて、これらを遠方から制御します。
図7の上段は、事故の直後です。事故で配電用変電所の遮断器が切れて、配電線の全区間が停電します。事故区間を判別して、その両端の区分開閉器を開いて切り離します。つづいて変電所の遮断器を入れ直せば、事故点より手前の区間には変電所から送電できます。連系開閉器を閉じれば、事故点より先の区間には隣の配電線から送電できます。図7の下段が、その切り離しと復旧のあとです。
事故区間だけが停電のまま残り、ほかの区間は復旧します。
配電線の電圧は、負荷が大きいほど、変電所から遠いほど下がります。電圧を一定の範囲に保つために、次の機器を使います。配電用変電所の変圧器は、負荷の大きさに応じて、タップを切り換えて送り出す電圧を調整する負荷時タップ切換変圧器です。配電線の途中に入れる自動電圧調整器(SVR)は、負荷電流で下がった電圧を、タップを自動で切り換えて持ち上げます。柱上変圧器には一次側にタップがあり、設置する場所の電圧に合わせて、あらかじめタップを選んでおきます。
| 機器 | はたらき |
|---|---|
| 変電所の変圧器 | 送出電圧を調整 |
| SVR | 途中で電圧を持ち上げる |
| 柱上変圧器 | タップで二次電圧を調整 |
| 進相コンデンサ | 電圧降下を小さくする |
進相コンデンサで力率を改善すると、線路を流れる無効電流が減るので、電圧降下が小さくなります。コンデンサの容量の求め方は力率改善と進相コンデンサの容量計算で扱います。
スポットネットワーク方式のしくみ
スポットネットワーク方式は、ビルや工場のような1つの需要家へ、2 回線以上(一般に 3 回線)の配電線から、ネットワーク変圧器を通して供給する方式です。図8のように、回線ごとにネットワーク変圧器とプロテクタを置き、二次側を共通のネットワーク母線でつないで並列にします。1 回線が停電したり事故を起こしたりしても、残りの回線から供給が続くので、停電しにくい方式です。
プロテクタは、プロテクタ遮断器、ネットワーク継電器、プロテクタヒューズでできています。配電線側が停電すると、並列になっている母線側から、停電した回線のネットワーク変圧器へ、逆向きの電力が流れ込みます。放っておくと、停電した配電線へ電気が逆に流れて事故が広がるので、ネットワーク継電器が逆電力を検出して、プロテクタ遮断器を開きます。プロテクタヒューズは、ネットワーク変圧器の二次側の短絡事故に備えます。
配電線が復旧したときに、プロテクタ遮断器を入れるかどうかも、ネットワーク継電器が決めます。母線が無電圧のときに投入する無電圧投入特性と、投入すれば変圧器から母線へ電力が流れる条件のときだけ投入する差電圧投入特性があります。
| 特性 | はたらき |
|---|---|
| 逆電力遮断 | 逆向きの電力で遮断 |
| 無電圧投入 | 母線が無電圧で投入 |
| 差電圧投入 | 条件がそろえば投入 |
スポットネットワーク方式の利点は、1 回線が停電しても無停電で供給できること、変圧器が並列で運転されるので電圧降下や電力損失が小さいことです。欠点は、変圧器とプロテクタが回線の数だけ必要で、設備費が高いことです。停電が許されにくい都市部のビルなどに、この方式が使われます。

バンキング方式とカスケーディング
バンキング方式は、1 本の高圧配電線にいくつもの柱上変圧器をつなぎ、低圧側を並列につなぐ方式です。図10のように、低圧線の変圧器の間に区分ヒューズを入れます。低圧側が並列になるので、負荷が変圧器の間で分けられて、電圧降下や電圧変動が小さくなります。1 台の変圧器が止まっても、残りの変圧器で供給を続けられます。
バンキング方式の弱点が、カスケーディングです。低圧線で事故が起きて 1 台の変圧器の高圧ヒューズが切れると、その変圧器の負荷を残りの変圧器が受け持って過負荷になり、つぎつぎにヒューズが溶けて、広い範囲が停電します。防ぐために、低圧線の区分ヒューズが、変圧器の高圧ヒューズより先に溶けるようにそろえ、事故区間だけを切り離します。
都市部では、電線を地中に埋めた地中配電もあります。ケーブルを管路などに納め、変圧器は、図11のように地上に置く箱形の機器に収めることがあります。ケーブルの充電電流や布設方式は地中送電線路とケーブルで扱います。

- 天板 上面をおおって雨を防ぐ
- 蝶番 扉を開け閉めできるようにする
- 扉 開けて内部の機器を点検する
- 台座 機器を地面の上で支える
配電設備の例題(変圧器容量と SVR のタップ)
例題は4問です。1 問目と 2 問目は機器と方式の知識、3 問目と 4 問目は計算です。
解答と解説を見る
(ア)は変圧器の一次側にあり、ヒューズで変圧器を切り離すので、高圧カットアウトです。(イ)は配電線の区間を開閉するので、柱上開閉器です。(ウ)は雷の異常電圧を大地へ逃がすので、避雷器です。
答え:(1)
解答と解説を見る
(1) は、複数の回線で並列に受電するので正しい説明です。(2) は、共通のネットワーク母線で並列にするので正しい説明です。(3) は、逆電力遮断特性の説明で、正しい説明です。
(4) は誤りです。復旧したときの投入は、無電圧投入特性や差電圧投入特性で決まる条件がそろったときだけで、条件にかかわらずただちに投入するわけではありません。
答え:(4)
変圧器の容量は、需要家ごとの最大需要電力(設備容量×需要率)を足し、不等率で割って合成最大需要電力 を出し、力率で割って皮相電力にして、標準容量から選びます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 設備容量×需要率を足す |
| 2 | 不等率で割る |
| 3 | 力率で割る |
| 4 | 標準容量から選ぶ |
解答と解説を見る
各需要家の最大需要電力は、、、、 です。合計は です。
不等率で割って、合成最大需要電力を出します。
力率で割って、皮相電力にします。
以上で最小の標準容量は です。
答え:必要な容量は約 、標準容量は
SVR のタップは、「タップを上げた後の電圧が、目標の電圧以上になる最小の段数」を求めます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 目標の電圧を求める |
| 2 | 電圧を式で書く |
| 3 | 不等式を解く |
| 4 | 整数に切り上げる |
解答と解説を見る
段上げたときの末端の電圧は、
目標の電圧は、
を解きます。
段数は整数なので、 段です。確かめると、3 段では で目標を超え、2 段では で足りません。
答え:3 段
例題4の や は、問題を解くための設定です。実際の SVR のタップ幅や、電圧を保つ範囲の値ではありません。
よくある質問
ループ方式は、常に輪をつないだまま運転するのですか。
輪を閉じたまま運転する場合と、輪の 1 か所の開閉器を開いておき、事故のときに切り替える場合があります。閉じたまま運転すると、電圧降下が小さく、事故区間だけを切り離せますが、電流の向きが事故で変わるので、保護の方式が複雑になります。開いておく運用は、平常時は樹枝状と同じ流れ方になるので保護が簡単で、事故のときに開閉器を操作して、反対側から供給します。
スポットネットワーク方式が停電に強いのはなぜですか。
2 回線以上の配電線から受電して、ネットワーク変圧器の二次側を並列につないでいるので、1 回線が停電しても、残りの回線の変圧器から母線を通って負荷へ供給できるからです。停電した回線へ逆向きの電力が流れ込まないよう、プロテクタが自動で切り離すので、事故が広がりません。
バンキング方式とカスケーディングは、どう違いますか。
バンキングは、複数の柱上変圧器の低圧側を並列につなぐ配電の方式です。カスケーディングは、バンキング方式で起こりうる現象で、1 台の変圧器が切れると、残りの変圧器が過負荷になってヒューズが次々に溶け、連鎖して停電することです。方式と、その方式の弱点の違いです。低圧線の区分ヒューズを先に溶けるようにそろえて防ぎます。
高圧カットアウトと柱上開閉器は、どう違いますか。
守る対象が違います。高圧カットアウトは、変圧器の一次側にあって、ヒューズが溶けると、その変圧器だけを高圧配電線から切り離します。柱上開閉器は、配電線の区間を切り分ける機器で、事故区間の切り離しや、停電する範囲を狭める工事のときに使います。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
柱上変圧器は、何 V から何 V へ電圧を変換しますか?
高圧配電線の を、低圧の に下げます。
事故のときの停電の範囲が小さくなるのは、樹枝状とループのどちらですか?
ループ方式です。事故区間の両端の区分開閉器を開いて切り離し、残りは反対側から供給します。
高圧カットアウトの役目は何ですか?
変圧器の一次側に付け、ヒューズで変圧器の事故を高圧配電線から切り離します。
配電線の自動化で、事故区間を切り離したあと、残りの区間にどう供給しますか?
事故点より手前は変電所から、先は連系開閉器を閉じて隣の配電線から供給します。
スポットネットワーク方式のネットワーク継電器がもつ特性を3つ挙げてください。
逆電力遮断特性、無電圧投入特性、差電圧投入特性です。
カスケーディングは、どうすれば防げますか?
低圧線の区分ヒューズを、変圧器の高圧ヒューズより先に溶けるようにそろえ、事故区間を切り離します。
まとめ
- 配電設備は、配電用変電所から 6,600 V の高圧配電線、柱上変圧器、100/200 V の低圧配電線、引込線の順に電気を届ける
- 樹枝状方式は設備費が安く、事故で先の区間が停電する。ループ方式は事故区間だけを切り離せるが、設備費が高く保護が複雑
- 電柱の機器は、碍子(絶縁して支える)、柱上開閉器(区間の開閉)、高圧カットアウト(変圧器の切り離し)、避雷器(雷の逃がし)、柱上変圧器(電圧を下げる)
- 配電線の自動化は、事故区間の両端を開いて切り離し、手前は変電所から、先は隣の配電線から供給する。電圧は SVR やタップで保つ
- スポットネットワーク方式は、複数回線で受電し、プロテクタ(逆電力遮断・無電圧投入・差電圧投入)で逆流を防ぐ。バンキング方式は区分ヒューズでカスケーディングを防ぐ
- 変圧器の容量は、各需要家の(設備容量×需要率)を足し、不等率と力率で割って、標準容量から選ぶ
配電線から家に入った電気は、分電盤で部屋ごとに分かれます。引込口から分電盤、幹線、分岐回路までの構成と電圧降下の計算は屋内配線の構成と電圧降下の計算で、低圧の方式の比較は単相3線式で続けて確認しましょう。








