照度計算では、光束・光度・照度・輝度の4つの量を区別しました。この記事では、その土台にある「光の量をどう数えるか」を整理します。同じ 10 W の光でも、目に明るく見える量は色で違うので、光の量は目の感じ方を通して数えます。そのうえで、立体角の求め方、配光曲線、光束発散度と輝度の関係、反射率・透過率を使った球形グローブの計算まで、4つの例題で手を動かして確かめます。
光の量と単位の全体像
- 光の量(光束)とは
- 放射束 [W] に比視感度をかけた量。555 nm で最大の 683 lm/W
- 立体角
- ω=2π(1−cosθ)。光度が一様なら F=Iω
- 配光曲線
- 光束発散度と輝度
- 反射率・透過率
- ρ+τ+α=1。照らされた面の光束発散度は M=ρE
- 球形グローブ
- 出る光束 τF を表面積で割って M、さらに π で割って L
光の量(光束)とは?比視感度と 683 lm/W
光は電磁波の一種で、目に見える範囲(可視光)の波長は、おおよそ 380 nm から 780 nm です。同じエネルギー(放射束 [W])の光でも、目に明るく感じるかどうかは波長で変わります。黄緑の光は明るく感じ、青や赤の光は同じ放射束でも暗く感じます。この目の感じ方の違いを数にしたものが、比視感度 V(λ) です。明るい所で感度が最大になる 555 nm を 1 として、ほかの波長を 0 から 1 で表します。
光束 F [lm] は、放射束に比視感度をかけて数えた「目に感じる光の量」です。波長 λ の単色光で放射束が Φ [W] のとき、光束は次の式で求まります。
F=683×V(λ)×Φ [lm]
683 lm/W は、555 nm の光 1 W が 683 lm に当たるという、換算の最大値です。比視感度が小さい波長では、同じ 1 W でも光束は小さくなります。
図1 比視感度の曲線(形を示す概形。どちらも最大を1にそろえてある)
図1は、CIE(国際照明委員会)の標準の値を 5 nm ごとにつないだ概形で、曲線の形を示すためのものです。どちらの曲線も、最大を 1 にそろえてあります。明るい所(明所視)では 555 nm で最大になり、暗い所(暗所視)では 507 nm 付近へ、短い波長の側にずれます。暗くなると青っぽい光が相対的に明るく見える現象は、プルキンエ現象とよばれます。
放射束 10 W の単色光で、F=683×V×10 を計算すると、次の表のとおりです。
| 波長 | 比視感度 | 光束 |
|---|
| 450 nm(青) | 0.038 | 約 260 lm |
| 555 nm(黄緑) | 1.0 | 6830 lm |
| 650 nm(赤) | 0.107 | 約 731 lm |
同じ 10 W でも、青と黄緑の光束には約 26 倍の差があります。光束が「W」ではなく「lm」という別の単位をもつのは、このためです。
1白い光2プリズム3色の帯- 白い光 いろいろな波長の光が混ざっている
- プリズム 波長で曲がり方が違う
- 色の帯 赤から青紫へ、波長の順に並ぶ
図2 プリズムは、白い光を波長ごとの色の帯に分ける(写真はイメージ)
白い光には、いろいろな波長の光が混ざっています。プリズムを通すと、波長ごとに曲がり方が違うので、色の帯に分かれます(図2)。人の目は、この帯のうち黄緑付近をいちばん明るく感じます。
立体角とは?円すいの立体角の求め方
立体角 ω [sr](ステラジアン)は、点から見た広がりの大きさです。点を中心とする半径 r の球を考え、広がりが球面から切り取る面積を S とすると、ω=S/r2 です。球全体は 4π sr、半球は 2π sr になります。定義と 1 sr の考え方は、照度計算の記事でも確認できます。
円すいの立体角の求め方
光源を頂点とし、半頂角が θ の円すいの立体角を求めます。円すいが球面から切り取る部分の面積を S とすると、立体角は ω=S/r2 で、次の式になります(図3)。
図3 円すいの立体角。半頂角が θ のとき ω = 2π(1 − cos θ)
ω=2π(1−cosθ) [sr]
θ=90∘ なら cosθ=0 で ω=2π(半球)、θ=180∘ なら cosθ=−1 で ω=4π(球全体)になり、定義と合います。主な半頂角の値は次の表のとおりです。
| 半頂角 | 立体角 | 球全体の何% |
|---|
| 30° | 約 0.84 sr | 約 6.7% |
| 60° | 約 3.14 sr | 25% |
| 90° | 約 6.28 sr | 50% |
| 180° | 約 12.6 sr | 100% |
60∘ のとき、ω=2π(1−0.5)=π となり、ちょうど π sr です。
立体角から光束を求める
光度 I [cd] は、1 sr あたりの光束です。円すいの中で光度が一様なら、その中の光束は光度に立体角をかけて求めます。
F=Iω [lm]
全方向に一様なら ω=4π で、F=4πI です。図4のように、街灯の光は下向きの円すいに集まります。この光の円すいの中の光束は、F=Iω で数えられます。
1ランプ2光の円すい3路面- ランプ 円すいの頂点。光源の位置
- 光の円すい 霧で光の通り道が見える
- 路面 円すいが路面を切り取る部分
図4 街灯のランプを頂点に、光が円すいの形で広がる(写真はイメージ)
解答と解説を見る
立体角は、
ω=2π(1−cos60∘)=2π(1−0.5)=π≈3.14 [sr]光束は F=Iω なので、
F=100×3.14=314 [lm]全方向に一様なら 4π×100=1256 lm で、その 1/4 です。立体角が球全体の 25% なので、光束も 25% になります。
答え:314 lm
配光曲線とは?光度の向きによる違い
配光曲線は、光源の光度を方向ごとに測り、中心からの距離を光度として描いた曲線です。光源がどの向きへ、どれだけの光を出すかが一目で分かります。図5のように、方向は真下を 0∘ として測ります。
図5 配光曲線。光度を方向ごとに、中心からの距離で描いたもの
左の円は、どの向きにも光度が同じ光源(全方向に一様)です。光度は図の半径で決まり、全光束は F=4πI です。右の曲線は、下向きが強く、横向き(90∘)ではゼロになる配光です。方向 θ での光度が I=I0cosθ のとき、曲線は真下の光度 I0 を直径とする円になります。
配光曲線から全光束を求めるときは、方向ごとの光度に、その方向の細い立体角をかけて足し合わせます。均等拡散面はこの右の形になり、次の節の M=πL の導き方に使います。
光束発散度と輝度の関係(M = πL)
光束発散度 M [lm/m2] は、面から出る光束を、その面の面積で割った量です。面が自分で光っていても、光を反射していても、透過させていても、面から出ていく光束の密度が光束発散度です。照度と単位は同じ lm/m2 ですが、照度は面に入る光、光束発散度は面から出る光です。
| 量 | 光束の動き | 単位 |
|---|
| 照度 E | 面に入る | lm/m2 |
| 光束発散度 M | 面から出る | lm/m2 |
| 輝度 L | 向きごとの明るさ | cd/m2 |
輝度は、ある向きから見た明るさです。どの向きから見ても輝度が同じ面を均等拡散面(完全拡散面)といい、乳白ガラスや白い紙などが近い性質をもちます。この面では、光束発散度と輝度の間に次の関係があります。
M=πL
考え方は次のとおりです。面積 A の均等拡散面の、法線方向の光度を I0 とします。輝度が L なので、I0=LA です。法線から θ ずれた向きから見ると、面の見かけの面積は Acosθ に減るので、光度は I=LAcosθ になります(図5の右の形です)。半球の全方向について光度を足し合わせると、全光束は F=πLA になります。
面積で割ると、M=F/A=πL です。逆に、輝度は L=M/π で求めます。lm/m2 を π で割ると、1 sr あたりの量になり、単位が cd/m2 に変わります。
反射率・透過率と光束発散度
面に光が入ると、一部は反射し、一部は透過し、残りは吸収されて熱になります。入射した光束に対する割合を、反射率 ρ、透過率 τ、吸収率 α といいます。3つを足すと 1 になります(図6)。
図6 入射した光の行き先。反射・透過・吸収の割合を足すと 1 になる
ρ+τ+α=1
照度 E [lx] で照らされた均等拡散面を考えます。面の 1 m2 に入る光束は E lm です。そのうち反射して出る光束の割合が ρ なので、光束発散度は次のようになります。
M=ρE
輝度は、これを π で割った L=ρE/π です。照度計算の記事にある輝度の式は、この M=ρE と L=M/π を組み合わせたものです。薄い布のように光を通す面では、透過して反対側へ出る光束密度が M=τE になります。
図7 シェードは光の一部を通し、一部を反射・吸収する(写真はイメージ)
解答と解説を見る
反射して出る光束の密度が光束発散度なので、
M=ρE=0.6×300=180 [lm/m2]均等拡散面なので、L=M/π です。
L=3.14180≈57.3 [cd/m2]lx と lm/m2 は同じ単位ですが、cd/m2 には π で割る手順が入ります。
答え:M=180 lm/m2、L≈57.3 cd/m2
球形グローブの光束発散度と輝度の求め方
乳白ガラスの球形グローブの中に、光源が入っている場合を考えます。光源が出す全光束を F [lm]、グローブの透過率を τ、半径を r [m] とします。グローブの外へ出る光束は τF です。この光束がグローブの表面全体から出るので、表面積 S=4πr2 で割ると光束発散度 M が、さらに π で割ると輝度 L が求まります(図8)。
図8 球形グローブ。出る光束を表面積で割って M、M を π で割って L
M=4πr2τFL=πM
乳白ガラスは光をよく拡散するので、どの向きから見ても輝度が同じ均等拡散面とみなせます。外へ出る光束 τF は、遠くから見ると全方向に一様に出ているので、光度は I=τF/(4π) です。
1光源2グローブ3台座- 光源 球の中心にある電球の影。全光束 F を出す
- グローブ 乳白ガラス。光を通し、拡散する
- 台座 球を支える。光はほとんど出さない
図9 乳白ガラスの球。中の光源の光が球の表面全体から出る(写真はイメージ)
内部で光が反射して光源に戻る分や、台座に隠れる分は、問題の条件に従って無視します。問題文に書かれた条件を、先に確かめましょう。
解答と解説を見る
半径は r=0.15 m です。表面積と外へ出る光束は、
SτF=4πr2=4×3.14×0.152=0.2826 [m2]=0.80×1000=800 [lm]光束発散度は、
M=0.2826800≈2831 [lm/m2]輝度は L=M/π なので、
L=3.142831≈902 [cd/m2]光度は、
I=4πτF=4×3.14800≈63.7 [cd]確認として、見かけの面積 πr2 を使うと、I=Lπr2=902×3.14×0.152≈63.7 cd で一致します。
答え:M≈2831 lm/m2、L≈902 cd/m2、I≈63.7 cd
正誤問題で確かめる
解答と解説を見る
(ア) は正しい記述です。ω=S/r2 で、球全体の表面積 4πr2 から 4π になります。
(イ) は誤りです。暗い所では、最大の波長が 555 nm から 507 nm 付近の、短い波長の側へずれます。
(ウ) は正しい記述です。均等拡散面で成り立つ関係です。
(エ) は誤りです。光束発散度は面から出る光束の密度で、単位は lm/m2 です。cd/m2 は輝度の単位です。
(オ) は正しい記述です。入った光は、反射・透過・吸収のどれかになります。
答え:(イ)、(エ)
よくある質問
光束発散度と照度は、何が違いますか。
どちらも単位は lm/m2 です。照度 E は面に入ってくる光束の密度、光束発散度 M は面から出ていく光束の密度です。反射だけの面なら M=ρE の関係があります。
光束発散度と輝度は、どう換算しますか。
どの向きから見ても輝度が同じ均等拡散面では、M=πL です。輝度を求めるなら L=M/π と、π で割ります。光源が点ではなく広がりのある面のときに使います。
立体角の単位 sr は、何を表しますか。
球の中心から見た広がりの大きさで、球面上の面積を半径の2乗で割った値です。単位は「ステラジアン」で、球全体は 4π sr です。光度 cd は、1 sr あたりの光束 lm なので、cd=lm/sr です。
比視感度の最大が、暗い所でずれるのはなぜですか。
目の中で、明るい所では錐体という細胞が、暗い所では主に桿体という細胞がはたらくためです。暗い所では、感度が最大になる波長が 507 nm 付近の短い側へずれます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
光束は、放射束に何をかけた量ですか?
比視感度 V(λ) をかけます。555 nm の光 1 W は 683 lm です。
半頂角 θ の円すいの立体角は?
ω=2π(1−cosθ) です。θ=90∘ なら半球の 2π sr です。
光度 I が一様な円すいの中の光束は?
F=Iω です。立体角をかけます。
均等拡散面の光束発散度 M と輝度 L の関係は?
M=πL です。輝度は L=M/π です。
反射率 ρ、透過率 τ、吸収率 α の関係と、照度 E で照らされた面の M は?
ρ+τ+α=1 で、反射する面は M=ρE です。
球形グローブの輝度は、どの順で求めますか?
出る光束 τF を表面積 4πr2 で割って M、さらに π で割って L にします。
まとめ
- 光束 [lm] は、放射束に比視感度をかけた量。555 nm で最大の 683 lm/W
- 円すいの立体角は ω=2π(1−cosθ)。光度が一様なら F=Iω
- 配光曲線は、光度を方向ごとに極座標で描いたもの
- 均等拡散面で M=πL。反射する面は M=ρE、透過する面は M=τE
- 球形グローブは、τF を 4πr2 で割って M、π で割って L
次は、光が生まれるしくみを扱う光源の種類と、照度を使って灯数を決める照度計算に進みましょう。