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電力発電所 / 水力発電18分で読めます

水力発電のしくみ|水が電気に変わる流れをダムから家庭まで図解

電験三種の水力発電のしくみを、ダムから水圧管路、水車、発電機、変圧器、送電線まで順に図解します。発電方式の分類や揚水発電、長所と短所を整理し、しくみを問う例題2問と解答で理解を確かめられます。

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山あいのコンクリートダムと、その下流に建つ水力発電所の建屋、屋外の開閉設備を見渡す写真
この記事の目次
  1. 水力発電とは
  2. ダムから水圧管路まで:水を水車へ運ぶ道
  3. 水車と発電機:水から回転、回転から電気
  4. 昇圧して送電し、水は川へ戻る
  5. 発電方式の分類と長所・短所
  6. 落差の得かたによる分類(水路式・ダム式・ダム水路式)
  7. ダム式のダムの種類
  8. 流量の使い方による分類(流れ込み式・調整池式・貯水池式・揚水式)
  9. 揚水発電は「電気をためる」役割をする
  10. 水力発電の長所と短所
  11. よくある質問
  12. サージタンクと水槽は、どう違いますか。
  13. 水力発電の発電機は、なぜ極数が多いのですか。
  14. 揚水発電は、電気をつくる発電所ですか。
  15. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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水力発電のしくみは、ダムなどにためた水の位置エネルギーを、水車で回転の力に、発電機で電気に変える、という一本の流れです。この記事では、雨が降るところから家庭の照明がつくところまで、エネルギーの形が変わる順に設備をたどります。出力 P=9.8QHηP = 9.8QH\eta の計算は 水力発電の出力の求め方 にまとめてあるので、ここでは全体像と分類の理解に絞ります。

水力発電のしくみの全体像
  • 水力発電とは
    • 水の循環が位置エネルギーの源
    • 水から電気まで、エネルギーは 4 回形を変える
  • ダムから水圧管路まで
    • 取水口、導水路、水槽、サージタンク、水圧管路の順に水を運ぶ
  • 水車と発電機
    • 落差に合わせて水車を選ぶ
    • 回転速度と極数で周波数が決まる
  • 昇圧して送電し、水は川へ戻る
    • 主変圧器で電圧を上げ、開閉所から送電線へ
    • 水車を出た水は放水路から川へ
  • 発電方式の分類と長所・短所
    • 落差の得かたは水路式・ダム式・ダム水路式、ダムの種類は重力式・アーチ式・フィル
    • 流量の使い方は流れ込み式・調整池式・貯水池式・揚水式

水力発電とは

水力発電は、高い所にある水が低い所へ落ちる力を使って発電機を回す発電方式です。燃料を燃やさず、水そのものの力を使います。

水が高い所にあるのは、太陽のおかげです。太陽の熱で海や川の水が蒸発して雲になり、雨や雪として山に降り、川になって流れ下ります。ダムはこの水をせき止めて、高い水位をつくります。つまり水力発電の位置エネルギーは、もとをたどると太陽のエネルギーです。

図1は、ダムから家庭までの流れを 1 枚にしたものです。水が通る道は青、電気が通る道は橙で描いてあり、各段の枠はそこでのエネルギーの形を表します。

太陽 蒸発 雨・雪 太陽が水を持ち上げる 貯水池 ダム 取水口 導水路 水槽 サージタンク 位置エネルギー 水圧管路 圧力・運動 エネルギー 回転の 機械エネルギー 水車 発電機 放水路 川 川へ戻る 主変圧器 開閉所 電圧を上げる 送電線 家庭 電気エネルギー
図1 ダムから家庭までの断面。水の位置エネルギーが、圧力・運動、回転、電気と形を変える

エネルギーの形は、次の 4 回変わります。

段設備エネルギーの形
1ダム・貯水池高い所にある水の位置エネルギー
2水圧管路位置エネルギーが、圧力と運動のエネルギーに変わる
3水車水の力で回る、回転の機械エネルギー
4発電機電磁誘導で、回転が電気エネルギーに変わる

ダムから水圧管路まで:水を水車へ運ぶ道

ダムでせき止めた水は、取水口から入り、いくつもの設備を通って水車へ届きます。水の通り道は、水の流れる順に次のとおりです。

設備役割
取水口ダムや川から水を取り入れる入口。ごみを防ぐ格子(スクリーン)が付く
導水路取水口から発電所の近くまで、ゆるい勾配で水を運ぶ水路やトンネル
水槽(ヘッドタンク)導水路の末端で水をため、水量の変化をならして水圧管路へ送り出す
サージタンク水圧管路の手前で、水の流れが急に止まったときの圧力の急変を和らげる
水圧管路水槽から水車まで、水を落として運ぶ太い鋼の管。ここで位置エネルギーが圧力と運動のエネルギーに変わる

水槽とサージタンクの使い分けは、導水路の種類で決まります。導水路が水面のある開水路や無圧トンネルなら、末端に水槽を置きます。水で満たした圧力トンネルなら、その末端にサージタンクを置きます。どちらも水圧管路の入口で水を受ける役目は同じです。

サージタンクが必要なのは、水車の負荷が急になくなると、水圧管路の水の流れが急に止められて、管の中の圧力が急に上がる(水撃作用)からです。サージタンクの水位が上下して、この圧力変化を吸収します。

山の斜面に沿った苔むしたコンクリートの水路と、その先に水が流れ落ちる堰のある水槽の写真
  1. 堰 水位をそろえて、導水路へ水を流し込む
  2. 導水路 ゆるい勾配の水路で、水を発電所の近くまで運ぶ
  3. 水路の側壁 コンクリートの壁。水路式では山腹に長く続く
図2 山の斜面に沿って水を運ぶ導水路(写真はイメージ)

水圧管路を下る間に、水は高さを失う代わりに、圧力と速さを得ます。水車の入口では、高い所にあった水の位置エネルギーが、ほぼ全部、圧力と運動のエネルギーに変わっています。管の中を流れるときの摩擦などで失われる高さの分(損失水頭)は、出力の計算で落差から引きます。有効落差との関係は 水力発電の出力の求め方 で確かめられます。

水車と発電機:水から回転、回転から電気

水圧管路を下ってきた水は、水車のランナ(羽根車)に当たって、これを回します。水の運動と圧力のエネルギーが、回転の機械エネルギーになる段です。水車は、落差が大きいか小さいかで使い分けます。

図3は、水車と発電機を縦に切って中を見せたものです。水圧管路から来た水は渦巻ケーシングで水車の周りを一周しながらガイドベーンを通ってランナに入り、ランナを回したあと吸出し管から下へ抜けます。ランナと同じ主軸の上に発電機があり、床の上で回転子が回ります。

縦軸の水力発電機を縦に切った断面の図。左から水圧管路が渦巻ケーシングにつながり、中央のランナの上に主軸がのび、床の上の発電機の中で磁極の並ぶ回転子と銅色のコイルの固定子が見える。ランナの下から曲がった吸出し管が下へのびる
  1. 水圧管路 高い所から水を運んでくる太い管
  2. 渦巻ケーシング 水をランナの周りに均等に配る、かたつむり形の管
  3. ガイドベーン 開き具合で水の量を加減する羽根
  4. ランナ 水を受けて回る羽根車(ここではフランシス水車)
  5. 吸出し管 ランナを出た水を放水路へ導き、落差を回収する
  6. 主軸 ランナと発電機の回転子を1本でつなぐ
  7. 回転子 磁極が並んだ電磁石。主軸とともに回る
  8. 固定子 コイルが巻かれ、ここに電気が起きる
図3 水車と発電機の断面。水はケーシング、ガイドベーン、ランナ、吸出し管の順に通り、主軸が発電機を回す(写真はイメージ)
高 落差 低 ペルトン水車(衝動水車) 高落差。ノズルの噴流をバケットに当てて回す フランシス水車(反動水車) 中落差。圧力と速度の両方で回す。最も多く使われる カプラン・プロペラ水車(反動水車) 低落差・大水量。カプランは羽根の角度を変えられる
図4 落差による水車の使い分け。落差が高いほど衝動水車、低いほどプロペラ系

ペルトン水車は、水の位置エネルギーをノズルで噴流の速さに変えてバケットに当てる衝動水車です。フランシス、カプラン、プロペラの各水車は、水の圧力も使う反動水車で、水車を出た水の落差を回収する吸出し管が付きます。実際のランナは、図5のように人の背丈ほどもある金属の羽根車です。各水車の詳しい違いと写真は 水車の種類と選び方 にあります。

点検のために取り出され、発電所の床の架台に置かれたフランシス水車のランナの写真。上の輪と下の輪の間に、ねじれた金属の羽根が何枚も並び、上に主軸をつなぐフランジがある。奥に黄色の天井クレーンと発電機が見える
  1. 主軸のフランジ ここで主軸とボルトでつなぐ
  2. 羽根 ねじれた曲面で水の向きを変え、その反動で回る
  3. 下の輪(バンド) 羽根の下端をまとめる輪
  4. 天井クレーン 重いランナや回転子を吊り上げて運ぶ
  5. 発電機 床の上に並ぶ、縦軸の水車発電機の上部
図5 点検で取り出したフランシス水車のランナ(写真はイメージ)

水車の主軸は、そのまま発電機の回転子につながっています。水力発電所の発電機は、三相同期発電機です。回転子(電磁石)が回ると、固定子のコイルを貫く磁束が変わり、電磁誘導で起電力が生じます。これが電気エネルギーに変わる段です。

水車 回転 N 主軸 同期発電機 N S 磁石が回り、コイルに 起電力が生じる 三相交流 周波数 f f = p N ÷ 120(p 極数、N 毎分の回転数)
図6 水車の回転が発電機で三相交流になる。周波数は極数と回転数で決まる

発電機の回転速度 NN、極数 pp、周波数 ff の関係は、次の式です。

f=pN120 [Hz]⇕N=120fp [min−1]\begin{gathered} f = \frac{pN}{120}\ \mathrm{[Hz]} \\ \Updownarrow \\ N = \frac{120f}{p}\ \mathrm{[min^{-1}]} \end{gathered}

周波数は東日本が 50 Hz、西日本が 60 Hz で、発電機はそれに合わせた回転速度で回します。たとえば 50 Hz で 20 極なら、N=120×50÷20=300 [min−1]N = 120 \times 50 \div 20 = 300\ \mathrm{[min^{-1}]} です。水車は火力発電のタービンより遅く回るので、水力発電の発電機は極数が多く、直径の大きな縦軸の発電機になります。

運転中は、2 つの装置が役割を分けて発電機を制御します。調速機が水車に入る水量を加減して回転速度(つまり周波数)を一定に保ち、**自動電圧調整装置(AVR)**が励磁電流を加減して発電機の端子電圧を一定に保ちます。電圧は AVR、周波数は調速機、と覚えてください。調速機の詳しい働きは 調速機と水撃作用とは で扱います。

昇圧して送電し、水は川へ戻る

発電機でつくった電気は、発電所の敷地内にある主変圧器で電圧を上げてから、開閉所を通って送電線へ出ていきます。主変圧器の結線は、発電機側を Δ(デルタ)、送電線側を Y(スター)とする Δ-Y が多く使われます。Y 側の中性点は接地して、送電線の地絡の検出や絶縁に使います(接地のしかたは中性点接地方式)。発電機の電圧は数 kV〜十数 kV 程度ですが、送電線では 154 kV、275 kV、500 kV などの高い電圧を使います。

電圧を上げるのは、送電中の電力の損失を減らすためです。同じ電力を送るとき、電圧を高くすると電流が小さくなり、電線の抵抗で失われる電力(3I2r3I^2r)が小さくなります。変圧器の電圧と巻数の関係は 変圧器の巻数比 で確かめられます。

発電所構内の屋外にある大型の主変圧器。高圧ブッシング、放熱器、コンサベータと、奥の鉄構の開閉設備が見える写真
  1. 開閉所の鉄構 電気の入りと切りを行い、送電線へ接続する
  2. 高圧ブッシング 変圧器から高電圧の電線を外へ引き出す口
  3. コンサベータ 絶縁油の温度による体積変化を受けるタンク
  4. 放熱器 運転中に出る熱を油から逃がす
  5. 変圧器本体 鉄心とコイルが油の中に入っている
図7 発電所の主変圧器と開閉所。発電機の電圧を上げて送電線へ送る(写真はイメージ)

開閉所を出た電気は、送電線で変電所へ運ばれ、そこで電圧を下げられます。図8のように、配電線を経て、電柱の上の柱上変圧器で 100 V と 200 V にされて、家庭に届きます。

発電機 主変圧器(昇圧) 開閉所 送電線 変電所(降圧) 柱上変圧器 → 家庭 数 kV〜十数 kV 程度 電圧を大きく上げる 電流が小さくなり 送電の損失が減る 154 kV、275 kV、500 kV など 配電用の 6.6 kV へ 100 V と 200 V
図8 発電機から家庭まで、電圧は一度大きく上がり、段階的に下がる

水の側を見ると、水車を回し終えた水は、放水路を通って川へ戻ります。反動水車(フランシス水車など)では、水車の出口に吸出し管があり、そこから放水路へ水を流します。放水路の水面の高さが、落差の下端になります。

山林に囲まれた水力発電所の建屋の下の放水口から、水が川へ流れ出ている写真
  1. 放水口 水車を出た水が放水路へ出ていく出口
  2. 発電所の建屋 中で水車と発電機が回っている
  3. 川 水は下流へ流れ、再び使われる
図9 放水口から川へ戻る水。水車で使った水は汚れず、そのまま川へ流れる(写真はイメージ)
解答と解説を見る

(1) イ。水は取水口から入り、導水路で運ばれ、水槽(またはサージタンク)に入り、水圧管路を下って水車を回し、放水路から川へ戻ります。アは水槽が水圧管路の後ろにあり、ウは水槽の位置が逆、エは導水路と水槽の順が逆で、水圧管路が水車の後ろにあります。

(2) (a)。水槽までは位置エネルギーのまま、水圧管路で圧力と運動のエネルギーに変わり、水車で回転の機械エネルギーに、発電機で電気エネルギーになります。(c) の熱エネルギーを経由するのは火力発電や原子力発電で、水力発電では熱を使いません。火力の効率は 火力発電の熱効率 で扱っています。

発電方式の分類と長所・短所

水力発電所は、落差の得かたと流量の使い方という、別々の 2 つの軸で分類します。2 つは独立なので、たとえば「水路式」で「調整池式」の発電所もあります。試験では、この 2 軸を混ぜずに答える穴埋めで問われます。

軸 1 落差の得かた(構造) 水路式 ダム式 ダム水路式 軸 2 流量の使い方(運用) 流れ込み式 調整池式 貯水池式 揚水式
図10 発電所の分類は 2 軸。落差の得かた(上)と流量の使い方(下)は別々に考える

落差の得かたによる分類(水路式・ダム式・ダム水路式)

方式落差の得かた長所・短所
水路式河川の上流で取水し、勾配の小さな導水路で運んで、水圧管路で落とすダムが要らず建設費が安い。ただしダム式より高い落差を得にくい
ダム式ダムで水位を高くして、その水位差を落差にする大きな貯水ができる。ダムの建設費が高く、環境への影響も大きい
ダム水路式ダムでためた水を導水路で運び、落差を大きくする。ダム式と水路式の組合せ両方の長所を使えるが、設備が多くなる

水路式は、河川の勾配(傾き)を使って落差を稼ぐので、水路を長くしないと高い落差になりません。そのぶんダムは要らず、建設費は安くなります。

ダム式のダムの種類

ダム式(とダム水路式)に使うダムは、本体の材料と、水圧を受け止めるしくみで分けます。大きくは、本体をコンクリートでつくるコンクリートダムと、岩石や土を盛るフィルダムです。

ダム水圧に耐えるしくみ特徴・向く地点
重力式堤体の自重で水圧を受け止める日本で最も多い。基礎に堅い岩盤が要り、コンクリートが多い
中空重力式重力式と同じ考え方で、内部に空洞を設ける重力式よりコンクリートを節約できる
アーチ式水圧を、アーチで両岸の岩盤へ伝える両岸が狭く、岩盤が堅い谷に向く。堤体を薄くでき、コンクリートが少ない
ロックフィル岩石を盛り、中央の遮水部(コア)で水を止める重力式ほど堅い岩盤でなくてもよい。岩石を近くで大量に取れる地点に向く
アースフィル土を盛って堤体をつくる低いダムや、ため池に近い規模に多い。基礎の地盤が比較的弱くてもよい

このほか、水路式の取水口に使う、背の低い**取水ダム(取水堰)**があります。水をためるためではなく、川の水を水路へ導くための堰です。

山あいの貯水池をせき止める、大きなコンクリート重力式ダムを下流側から見た写真。中央に洪水を流す越流部のゲートがある
  1. 貯水池 ダムでせき止めた水。水位が落差のもとになる
  2. 堤頂 ダムの天端。堤体の上面を道路が通る
  3. 下流面 自重で水圧を支える、厚みのある斜面
  4. 洪水吐 洪水のとき、余分な水を下流へ流す部分
図11 重力式コンクリートダム。自重で水圧を受け止める(写真はイメージ)
山あいの貯水池をせき止める、岩石を積み上げたロックフィルダムを下流側から見た写真。斜面一面が岩石で覆われている
  1. 貯水池 ダムの上流側にたまった水
  2. 堤頂 台形に盛った堤体の天端
  3. 岩石の斜面 岩石を積んだ緩やかな斜面。重量と大きな底面で水圧を支える
  4. 山腹 堤体の両端を支える斜面
図12 ロックフィルダム。岩石を台形に盛り上げた堤体(写真はイメージ)
解答と解説を見る

誤りは (イ) です。アーチ式は、水圧をアーチの形で両岸の岩盤に伝えるので、両岸が狭く岩盤が堅い谷に向きます。川幅が広い、地盤が弱い場所では、重力式やフィルダムを選びます。(ア)(ウ)(エ) は正しい記述です。

流量の使い方による分類(流れ込み式・調整池式・貯水池式・揚水式)

方式水のためかた特徴
流れ込み式(流込み式)ためない(河川の流量のまま)流量が多いときは発電が増え、渇水期は減る。出力を調整できない
調整池式小さな池に、日〜数日分ためる需要の多い昼間に発電を増やすなど、日や週の需要の変化に合わせる
貯水池式大きな貯水池に、季節単位でためる雪解けや雨の多い時期にため、渇水期に使う。季節の変化に合わせる
揚水式上池と下池の間で水を行き来させる余った電力で水を上池へくみ上げ、必要なときに落として発電する

水路式でも調整池を持つ発電所はあり、ダム式でも流れ込み式に近い使い方をするものがあります。「落差の得かた」と「流量の使い方」は、別々に聞かれます。

揚水発電は「電気をためる」役割をする

揚水発電は、発電所の上と下に池を置きます。電力に余裕のある夜間などは、余った電力でポンプを回し、下池の水を上池へくみ上げます。需要の多い昼間は、上池の水を落として水車を回し、発電します。電気そのものはためられませんが、水の位置エネルギーとして、ためておけるのです。

昼:水を落として発電 需要が多いときに電気をつくる 上池 発電所 下池 夜:水をくみ上げる 余った電力を水の高さでためる 上池 発電所 下池
図13 揚水発電。昼は上池から落として発電し、夜は余剰電力で上池へくみ上げる

揚水発電所には、ポンプと水車の両方の働きをするポンプ水車と、発電機と電動機の両方の働きをする発電電動機が付いています。ポンプの運転ではくみ上げに電力を使うので、損失の分だけ、取り出せる電力は使った電力より少なくなります。揚水式には、上池に自然の流入がない純揚水式と、自然の流入もある混合揚水式があります。

水力発電の長所と短所

長所短所
運転中に二酸化炭素を出さない建設に適した地点が限られ、都市から遠い山間になる
燃料が要らず、国内の水で発電できる建設費が高く、工期が長い
起動や停止が速く、負荷の変化に追従しやすい雨や雪の量に左右され、渇水で出力が落ちる
設備の寿命が長いダムの建設が、周囲の環境や地域の暮らしに影響する

日本の発電電力量に占める水力の割合は、近年は 7〜8 % 程度(2023 年度前後)で、2 割には届きません。また、水力発電所は無人で運転でき、離れた制御所から遠隔で起動・停止や出力の調整ができるものが多くあります。

起動が速いのは、火力発電のようにボイラーを温めたり蒸気をつくったりする必要がなく、水車のガイドベーンなどを開くだけで水が流れ込んで発電を始められるからです。この性質が、ピーク時の需要への対応や、電力系統の周波数調整に役立ちます。

解答と解説を見る

正解は (2) です。

  • (ア) は正しい。流れ込み式は、ためずに河川の流量のまま発電します。
  • (イ) は誤り。ダムで水位を上げるのはダム式です。水路式は、河川の上流で取水し、導水路で運んで落差を得ます。
  • (ウ) は正しい。貯水池式は季節単位で調整します。調整池式は、日〜数日ほどの需要の変化に合わせます。
  • (エ) は誤り。揚水式は、余剰電力で下池の水を上池へくみ上げてためます。上池から落とすのは発電のときです。

よくある質問

サージタンクと水槽は、どう違いますか。

どちらも水圧管路の入口で水を受ける設備です。水槽は水面のある無圧の導水路の末端に、サージタンクは水で満たされた圧力トンネルの末端に置きます。サージタンクは、水の流れが急に止まったときの圧力の急変(水撃作用)を和らげるのが主な役目です。

水力発電の発電機は、なぜ極数が多いのですか。

水車の回転が遅いためです。周波数 f=pN/120f = pN/120 を 50 Hz や 60 Hz にするには、NN が小さいぶん pp を大きくする必要があります。水力発電の発電機は低速で回るので、極数の多い大きな発電機になります。

揚水発電は、電気をつくる発電所ですか。

発電もしますが、本質は「電気をためる」ことです。余った電力で水をくみ上げ、必要なときに落として発電します。くみ上げと発電で損失が出るので、使った電力より取り出せる電力は少なくなりますが、電気をためる手段として需要と供給の差を埋める役目があります。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

水力発電の位置エネルギーの源は、もとをたどると何ですか?

太陽です。太陽の熱で水が蒸発し、雨や雪になって山に降ります。

水力発電で、エネルギーはどの順に形を変えますか?

位置エネルギー、圧力・運動エネルギー、回転の機械エネルギー、電気エネルギーの順です。

水が流れる順に、水圧管路の手前までの設備を挙げてください。

取水口、導水路、水槽(またはサージタンク)、水圧管路の順です。

発電機の周波数は、回転速度と極数から、どう決まりますか?

f=pN/120f = pN/120 です。水車が遅く回るので、水力の発電機は極数が多くなります。

主変圧器で電圧を上げるのは、何のためですか?

電流を小さくして、送電線での電力の損失を減らすためです。

余った電力で水をくみ上げ、昼に発電する方式は何ですか?

揚水式です。電気を水の位置エネルギーとしてためる役割をします。

まとめ

  • 水力発電は、水の位置エネルギーを、圧力・運動、回転の機械、電気の順に変える
  • 水は、取水口、導水路、水槽(サージタンク)、水圧管路、水車、放水路の順に通り、川へ戻る
  • 水車は落差で使い分け、高落差はペルトン、中落差はフランシス、低落差はカプランやプロペラ
  • 発電機の周波数は f=pN/120f = pN/120。電圧は AVR、周波数は調速機で制御する
  • 主変圧器(Δ-Y が多い)で電圧を上げ、開閉所から送電線へ出す
  • 落差の得かたは水路式(高落差を得にくいが建設費が安い)・ダム式・ダム水路式、流量の使い方は流れ込み式・調整池式・貯水池式・揚水式の 2 軸
  • ダムは、重力式が日本で最多、アーチ式は両岸が狭く岩盤が堅い谷、フィルダムは岩石や土を盛る
  • 長所は起動が速く CO2 を出さないこと。短所は建設地の制約と、雨や雪への依存

この記事は、水力発電を全体から細部へ順にたどるシリーズの1本目です。次の順に読むと、試験で問われる水力の範囲をひと通り押さえられます。

順記事分かること
1水力発電のしくみ(この記事)水が電気に変わるまでの流れと、設備の名前
2落差と流量とは水の力を高さで表す水頭、ベルヌーイの定理、有効落差
3水力発電の出力の求め方P=9.8QHηP = 9.8QH\eta と発電電力量
4流況曲線とは1年の流量の変化と、年間の発電電力量
5水車の種類と選び方ペルトン・フランシス・カプランと比速度
6キャビテーションとは水車を傷める現象と、吸出し管
7水車発電機とは回転を電気にする発電機の形と極数
8調速機と水撃作用とは回転を一定に保つしくみと、水圧の急変
9揚水発電とは電気を水の高さでためる発電所
10水力発電の計算問題 型別演習①出力・流量・比速度・調定率の計算の型
11水力発電の計算問題 型別演習②調整池・流況曲線・揚水の計算の型
12水力発電の正誤問題のポイントダム・水車・サージタンクなどの正誤の総まとめ

次は、水の力が何で決まるのかを見る 落差と流量とは です。

図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で通して読む図解でわかる 電験三種 電力 / 第1巻水力発電水の力と出力の式から水車・調速機・揚水発電までこの記事と同じ図解で、例題と練習問題まで1冊にまとめた Kindle 本です。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

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