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電力発電所 / 原子力発電16分で読めます

原子力発電の仕組み|核分裂と質量欠損 E=mc² の計算・沸騰水型と加圧水型

電験三種の原子力発電を解説。核分裂と連鎖反応、質量欠損から E=mc² でエネルギーを求める計算、減速材と制御棒のはたらき、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の違いを図と例題で整理します。

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青空と海を背景に、大きな箱型の建屋と細長い煙突が並ぶ海辺の発電所の遠景
この記事の目次
  1. 原子力発電とは
  2. 核分裂と連鎖反応とは
  3. 質量欠損と E=mc² の求め方
  4. 減速材・冷却材・制御棒のはたらき
  5. 軽水炉の2つの型 BWR と PWR
  6. 自己制御性と熱効率
  7. よくある質問
  8. 質量欠損の計算では、質量は g のままでよいですか?
  9. 核分裂と核融合はどう違いますか?
  10. 「軽水」とは何ですか?
  11. 濃縮ウランの「濃縮」とは何ですか?
  12. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙電力を図解で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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お湯を沸かしてタービンを回す。火力発電の仕組みと流れは同じで、熱の出どころだけが違うのが原子力発電です。燃料を燃やす代わりに、ウランの原子核が分裂するときの熱を使います。この記事では、核分裂と連鎖反応、質量欠損から E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} でエネルギーを求める計算、減速材と制御棒のはたらき、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の違いを、図と例題で整理します。電験三種の「電力」では、質量欠損の計算と軽水炉の仕組みが問われます。

原子力発電の全体像
  • 原子力発電とは
    • 火力発電のボイラが原子炉に替わっただけで、タービン以降は同じ
  • 核分裂と連鎖反応
    • 中性子が当たると分裂し、中性子が 2〜3 個出て反応が続く
    • 次の核分裂を起こす中性子がちょうど 1 個で臨界(定常運転)
  • 質量欠損と E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2}
    • 減った質量 Δm [kg]\Delta m\ \mathrm{[kg]} が、エネルギー E [J]E\ \mathrm{[J]} になる
    • c=3.0×108 [m/s]c=3.0\times 10^{8}\ \mathrm{[m/s]}、1 [kWh]=3.6×106 [J]1\ \mathrm{[kWh]}=3.6\times 10^{6}\ \mathrm{[J]}
  • 減速材・冷却材・制御棒
    • 軽水が中性子を減速し、制御棒が中性子を吸収して出力を調整する
  • 軽水炉の 2 つの型
    • BWR は炉の中で沸騰、PWR は蒸気発生器で蒸気を作る
  • 自己制御性と熱効率
    • 出力が上がると反応が自然に弱まる。熱効率は約 33 %(目安)

原子力発電とは

原子力発電は、原子炉の中でウランの核分裂を起こして熱を出し、その熱で水を蒸気にしてタービンを回す発電方式です。火力発電のボイラが原子炉に替わったものと考えると、全体の流れがつかめます(図1)。

火力発電 熱源は燃料を燃やした熱 ボイラ 燃料を燃やす 蒸気 高温高圧 タービン 蒸気で回す 発電機 電気をつくる 原子力発電 熱源は核分裂の熱 原子炉 核分裂の熱 蒸気 火力より低温 タービン 蒸気で回す 発電機 電気をつくる 違うのは熱の出どころだけ(黄色の箱) タービンと発電機のしくみは火力発電と同じ
図1 火力発電と原子力発電の流れ。熱を出す設備だけが違い、タービンと発電機は同じ働きをする

蒸気でタービンを回し、軸でつながった発電機で電気をつくる部分は、火力発電の仕組みで見たものと変わりません。違いは、熱を燃料の燃焼ではなく核分裂から得る点と、その熱でつくる蒸気の温度が火力より低い点です。蒸気の温度の低さは、あとで熱効率の話につながります。

外から見ると、原子炉を収める背の高い建屋と、タービンと発電機を収める横長の建屋が並びます。

丘の上から見た、大きな箱型の建屋と横長の建屋、白い煙突、右手の送電鉄塔がある発電所
  1. 高い箱型の建屋 原子炉を収める建屋のイメージ。厚いコンクリートの壁で囲む
  2. 横長の建屋 蒸気タービンと発電機を収める建屋のイメージ
  3. 排気筒 建屋の換気に使った空気を、高い所から外へ出す
  4. 送電鉄塔 発電した電気を送電線へ送り出す
図2 発電所の外観。原子炉の建屋とタービンの建屋が並ぶ(写真はイメージ)

核分裂と連鎖反応とは

原子力発電の燃料に使うウラン 235 は、中性子を 1 個受け取ると不安定になり、2 つの軽い原子核(核分裂片)に分かれます。これが核分裂です(図3)。分かれるときに中性子が 2〜3 個飛び出し、約 200 [MeV]200\ \mathrm{[MeV]} のエネルギーが放出されます。このエネルギーの大部分は核分裂片の運動エネルギーで、周りの物質にぶつかって熱に変わります。

中性子 235U ウラン235 核分裂片 核分裂片 中性子 2〜3個 1回の核分裂で約 200 MeV のエネルギーが出る
図3 核分裂。中性子を受けたウラン 235 が 2 つに分かれ、中性子とエネルギーが出る

MeV は電子ボルト(eV)の 10610^{6} 倍で、1 [eV]=1.6×10−19 [J]1\ \mathrm{[eV]}=1.6\times 10^{-19}\ \mathrm{[J]} です。1 回の核分裂は 200 [MeV]=3.2×10−11 [J]200\ \mathrm{[MeV]}=3.2\times 10^{-11}\ \mathrm{[J]} と小さな値ですが、原子の数が桁違いに多いので、まとまると大きな熱になります。

飛び出した中性子が次のウラン 235 に当たると、またそこで核分裂が起こります。これが連鎖反応です(図4)。

1回目 2回目 3回目 235U 235U 235U 235U 235U 235U 235U 連鎖反応 出た中性子が 次の核分裂を 起こして反応が 続いていく 中性子 ウラン235の原子核
図4 連鎖反応。核分裂で出た中性子が次の核分裂を起こし、反応が続いていく

原子炉では、連鎖反応の大きさを「次の核分裂を起こす中性子の数」で決めます。1 回の核分裂から、次の核分裂を起こす中性子の平均の数を実効増倍率 kk といいます。

次の核分裂を起こす中性子反応状態
1 個より多い(k>1k\gt 1)増える超臨界
ちょうど 1 個(k=1k=1)一定臨界
1 個より少ない(k<1k\lt 1)減る未臨界

質量欠損と E=mc² の求め方

核分裂の前後で、原子核と中性子の質量の合計を比べると、反応後のほうがわずかに小さくなります。この減った分を質量欠損 Δm\Delta m といいます(図5)。失われた質量はエネルギーに変わり、アインシュタインの関係式で求められます。

反応前 ウラン235 +中性子 Δm 反応後 核分裂片 +中性子 質量欠損 失われた質量が エネルギーになる E = Δm c2 E:エネルギー [J] Δm:質量欠損 [kg] c:光速 3.0×108 m/s 実際の質量の差は反応前の約 0.09 %(図では強調)
図5 質量欠損。反応後に減った質量 Δm が、E = Δm c² のエネルギーになる
E=Δm c2E = \Delta m\,c^{2}

EE はエネルギー [J]\mathrm{[J]}、Δm\Delta m は質量欠損 [kg]\mathrm{[kg]}、cc は光速で c=3.0×108 [m/s]c=3.0\times 10^{8}\ \mathrm{[m/s]} です。c2=9.0×1016c^{2}=9.0\times 10^{16} と巨大なので、ほんのわずかな質量でも大きなエネルギーになります。たとえば質量欠損が 1 [g]=10−3 [kg]1\ \mathrm{[g]}=10^{-3}\ \mathrm{[kg]} のとき、E=9.0×1013 [J]E=9.0\times 10^{13}\ \mathrm{[J]}、電力量にして約 2.5×107 [kWh]2.5\times 10^{7}\ \mathrm{[kWh]} です。

1 回の核分裂で出る約 200 [MeV]200\ \mathrm{[MeV]} は、質量にすると約 0.2 [u]0.2\ \mathrm{[u]}(原子質量単位。1 [u]1\ \mathrm{[u]} は 931.5 [MeV]931.5\ \mathrm{[MeV]} に相当)で、ウラン 235 の質量の約 0.09 [%]0.09\ \mathrm{[\%]} です。図5で反応前後の差を大きく描いているのは、見やすくするためです。

解答と解説を見る

質量を kg に直してから代入します。Δm=0.80×10−3 [kg]\Delta m = 0.80\times 10^{-3}\ \mathrm{[kg]} です。

E=Δm c2=0.80×10−3×(3.0×108)2=7.2×1013 [J]\begin{aligned} E &= \Delta m\,c^{2} \\ &= 0.80\times 10^{-3}\times (3.0\times 10^{8})^{2} \\ &= 7.2\times 10^{13}\ \mathrm{[J]} \end{aligned}

電力量に直すと、次のようになります。

7.2×10133.6×106=2.0×107 [kWh]\begin{aligned} \frac{7.2\times 10^{13}}{3.6\times 10^{6}} &= 2.0\times 10^{7}\ \mathrm{[kWh]} \end{aligned}

出力から質量欠損を逆算する問題も、同じ式を変形するだけです。Δm=Ec2\Delta m = \dfrac{E}{c^{2}} とします。

解答と解説を見る

(1) 熱出力 3.0×103 [MW]=3.0×109 [W]3.0\times 10^{3}\ \mathrm{[MW]}=3.0\times 10^{9}\ \mathrm{[W]} に時間を掛けます。

E=P t=3.0×109×86400=2.592×1014 [J]\begin{aligned} E &= P\,t \\ &= 3.0\times 10^{9}\times 86400 \\ &= 2.592\times 10^{14}\ \mathrm{[J]} \end{aligned}

(2) E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} を Δm\Delta m について解きます。

Δm=Ec2=2.592×10149.0×1016=2.88×10−3 [kg]≈2.9 [g]\begin{aligned} \Delta m &= \frac{E}{c^{2}} \\ &= \frac{2.592\times 10^{14}}{9.0\times 10^{16}} \\ &= 2.88\times 10^{-3}\ \mathrm{[kg]} \\ &\approx 2.9\ \mathrm{[g]} \end{aligned}

(3) 電気出力は、熱出力に熱効率を掛けます。

Pe=3.0×103×0.33=990 [MW]\begin{aligned} P_{\mathrm{e}} &= 3.0\times 10^{3}\times 0.33 \\ &= 990\ \mathrm{[MW]} \end{aligned}

大きな原子炉でも、1 日で減る質量は数 g です。桁の大きく違う数を扱うので、g から kg、J から kWh への換算を落とさないことが大切です。

解答と解説を見る

(1) まず原子の数と、1 回の核分裂のエネルギーを求めます。

N=1.0235×6.02×1023=2.56×1021 個e=200×106×1.6×10−19=3.2×10−11 [J]\begin{aligned} N &= \frac{1.0}{235}\times 6.02\times 10^{23} \\ &= 2.56\times 10^{21}\ \text{個} \\ e &= 200\times 10^{6}\times 1.6\times 10^{-19} \\ &= 3.2\times 10^{-11}\ \mathrm{[J]} \end{aligned}

全体のエネルギーは、次のようになります。

E=N e=2.56×1021×3.2×10−11≈8.2×1010 [J]\begin{aligned} E &= N\,e \\ &= 2.56\times 10^{21}\times 3.2\times 10^{-11} \\ &\approx 8.2\times 10^{10}\ \mathrm{[J]} \end{aligned}

3.6×1063.6\times 10^{6} で割ると、2.3×104 [kWh]2.3\times 10^{4}\ \mathrm{[kWh]} です。

(2) E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} から求めます。

Δm=8.2×10109.0×1016≈9.1×10−7 [kg]=0.91 [mg]\begin{aligned} \Delta m &= \frac{8.2\times 10^{10}}{9.0\times 10^{16}} \\ &\approx 9.1\times 10^{-7}\ \mathrm{[kg]} \\ &= 0.91\ \mathrm{[mg]} \end{aligned}

ウラン 235 を 1 [g]1\ \mathrm{[g]} 使い切っても、減る質量は約 0.9 [mg]0.9\ \mathrm{[mg]}、元の質量の約 0.09 [%]0.09\ \mathrm{[\%]} です。先ほど見た「ウラン 235 の質量の約 0.09 [%]0.09\ \mathrm{[\%]}」と一致します。

減速材・冷却材・制御棒のはたらき

ウラン 235 に核分裂を起こさせやすいのは、速度の遅い熱中性子(約 0.025 [eV]0.025\ \mathrm{[eV]})です。ところが核分裂で出る中性子は約 2 [MeV]2\ \mathrm{[MeV]} と速く、そのままでは次の核分裂を起こしにくくなります。そこで、水の中を通して何度も衝突させ、熱中性子まで減速します(図6)。この役目の材料が減速材です。

水(減速材・冷却材) 燃料棒 燃料棒 燃料棒 制御棒 速い中性子 減速して熱中性子 核分裂 吸収 次の核分裂へ
図6 炉心での中性子の動き。水で減速された熱中性子が次の核分裂を起こし、制御棒に当たった中性子は吸収される

炉心には、役割の違う材料が組み合わされています。

部品材料の例はたらき
燃料濃縮ウラン核分裂して熱を出す
減速材軽水速い中性子を遅くする
冷却材軽水炉心の熱を運び出す
制御棒ホウ素、カドミウム中性子を吸収して出力を調整する

減速材には軽水のほか重水や黒鉛も使えますが、軽水を減速材と冷却材に使う原子炉を軽水炉といいます。軽水は中性子をいくらか吸収してしまうため、軽水炉では燃料に濃縮ウランを使います。

出力の調整は、制御棒を炉心に出し入れして、吸収される中性子の数を変えて行います。制御棒を深く入れるほど吸収が増えて反応が弱まり、引き抜くほど強まります。運転の状況は、制御室の計器で監視します。

灰色の盤に丸い指針式メーターが並び、赤・緑・橙のランプと黒いレバーが手前にある操作盤
  1. 大型メーター 針の位置で値を読み取る計器。圧力や温度などの監視に使う
  2. 表示ランプ 点灯の色で、機器の状態を知らせる
  3. 小型メーター 大小のメーターを並べ、複数の量を同時に見る
  4. 操作レバー 手で倒して機器を操作する
図7 計器盤。針の位置やランプで、機器の状態を監視する(写真はイメージ)

軽水炉の2つの型 BWR と PWR

軽水炉には、蒸気のつくり方が違う 2 つの型があります。

沸騰水型(BWR)は、炉心で水を沸騰させ、できた蒸気をそのままタービンへ送ります(図8)。系統が単純で、蒸気発生器が要りません。

原子炉 炉の中で水を沸かす 制御棒 タービン 発電機 復水器 蒸気 軸 排気 給水 冷却水 炉で発生した蒸気が、そのままタービンへ入る
図8 沸騰水型(BWR)。炉の中で発生した蒸気が、そのままタービンへ入る

加圧水型(PWR)は、炉心を通る一次冷却水を加圧器で高圧に保って沸騰させず、蒸気発生器で二次側の水を蒸気に変えます(図9)。タービンへ送られるのは二次側の蒸気で、炉心を通った水はタービンへ行きません。

制御棒 原子炉 沸騰させない 蒸気発生器 熱を二次側へ タービン 発電機 復水器 加圧器 高圧水 ポンプで炉へ戻す 蒸気 排気 給水 冷却水 一次系(炉を通る水) 二次系(蒸気とその水)
図9 加圧水型(PWR)。一次冷却水は沸騰せず、蒸気発生器で二次側の水を蒸気にする

2 つの型の違いは、次の表のとおりです。

項目BWRPWR
蒸気の作り方炉の中で沸騰蒸気発生器
タービンへ行く水炉心を通った水二次側の水
炉の圧力(目安)約 7 [MPa]7\ \mathrm{[MPa]}約 15 [MPa]15\ \mathrm{[MPa]}
制御棒を入れる向き下から上から
出力の調整再循環流量・制御棒制御棒・ホウ素濃度

BWR では炉心を通った水が蒸気になってタービンへ行くため、タービン側にも放射性物質が含まれる可能性があり、遮へいが必要です。PWR は一次系と二次系が蒸気発生器で分かれているので、タービン側へ放射性物質が移りにくい構造です。

出力の調整は、BWR では再循環ポンプで炉心を流れる水の量を変えて蒸気の泡(ボイド)の量を変える方法と、制御棒を使います。PWR では制御棒のほか、一次冷却水にホウ酸を溶かして、その濃度を変えます。ホウ素は中性子をよく吸収するためです。

どちらの型でも、蒸気を受け取るタービンと発電機は火力発電と同じ形をしています。

広い建屋の床に、銀色の保温被覆を巻いた配管と蒸気タービン、灰色の発電機が並び、上に黄色い天井クレーンがある
  1. 蒸気配管 保温材で包み、熱を逃がさずに蒸気を運ぶ
  2. 蒸気タービン 蒸気の勢いで羽根車を回す
  3. 発電機 タービンと軸でつながり、回転して電気をつくる
  4. 天井クレーン 点検のとき、重い機器を吊り上げる
図10 タービンと発電機。蒸気の勢いでタービンを回し、軸でつながる発電機が電気をつくる(写真はイメージ)
解答と解説を見る

誤っているのは (3) です。PWR では一次冷却水は一次系の中を回るだけで、タービンへは行きません。タービンを回すのは、蒸気発生器でつくられた二次側の蒸気です。(1)、(2)、(4) は正しい記述です。

自己制御性と熱効率

軽水炉には、出力が上がると反応が自然に弱まる性質があります。これを自己制御性といい、原子炉が暴走しにくい理由の 1 つです。

熱効率は、熱出力に対する電気出力の割合 η=PePth\eta = \dfrac{P_{\mathrm{e}}}{P_{\mathrm{th}}} で表します。原子力発電の熱効率は約 33 [%]33\ \mathrm{[\%]} が目安で、火力発電より低くなります。軽水炉でつくる蒸気は温度が約 280℃ 前後にとどまるためです。ランキンサイクルでは、蒸気の温度が高いほど熱効率が高くなります。熱効率の求め方は火力発電の熱効率と同じで、問題文で与えられた値を使います。

電気にならなかった約 2/32/3 の熱は、復水器で冷却水に渡します。冷却に使った海水は、水温が少し上がって海へ戻されます。

海辺のコンクリートの護岸にある四角い放水口から、海へ水が流れ落ちている。遠くに発電所の建屋と煙突が見える
  1. 放水口 復水器を通った冷却水を、海へ戻す出口
  2. 流れ落ちる水 電気にならなかった熱を運び出す
  3. 遠くの発電所 建屋と煙突が見える
図11 海へ戻る冷却水。復水器で蒸気を冷やした海水が放水口から出る(写真はイメージ)

よくある質問

質量欠損の計算では、質量は g のままでよいですか?

いいえ、kg に直します。E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} は SI 単位の式で、Δm\Delta m を kg、cc を m/s で入れたときに J で答えが出ます。1 [g]1\ \mathrm{[g]} は 10−3 [kg]10^{-3}\ \mathrm{[kg]} なので、g のまま入れると答えが 10310^{3} 倍ずれます。

核分裂と核融合はどう違いますか?

核分裂は重い原子核が軽い原子核 2 つに分かれる反応で、現在の原子力発電はこちらを使います。核融合は軽い原子核どうしが合体する反応で、太陽の熱の源です。どちらも反応の前後で質量が減り、その分が E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} のエネルギーになります。

「軽水」とは何ですか?

ふつうの水のことです。重水(重水素でできた水)と区別するための呼び方で、軽水を減速材と冷却材に使う原子炉が軽水炉です。

濃縮ウランの「濃縮」とは何ですか?

天然ウランに含まれるウラン 235 は約 0.7 [%]0.7\ \mathrm{[\%]} で、残りの大部分はウラン 238 です。軽水炉では、ウラン 235 の割合を 3∼5 [%]3\sim 5\ \mathrm{[\%]} ほどに高めた燃料を使います。この操作が濃縮です。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

原子力発電と火力発電で、違うところと同じところはどこですか?

違うのは熱の出どころです。火力は燃料の燃焼、原子力は核分裂の熱を使います。蒸気でタービンと発電機を回す部分は同じです。

質量欠損 Δm\Delta m から、エネルギー EE を求める式と単位は?

E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} です。Δm\Delta m は kg、c=3.0×108 [m/s]c=3.0\times 10^{8}\ \mathrm{[m/s]} で入れ、EE は J で出ます。電力量にするときは 3.6×1063.6\times 10^{6} で割ります。

原子炉が定常運転(臨界)しているとき、次の核分裂を起こす中性子は 1 回の核分裂あたり何個ですか?

ちょうど 1 個です。1 個より多いと超臨界で反応が増え、少ないと未臨界で反応が減ります。

減速材と制御棒は、それぞれ何をしますか?

減速材(軽水)は速い中性子を熱中性子まで遅くします。制御棒は中性子を吸収して、出力を調整します。

BWR と PWR は、蒸気のつくり方がどう違いますか?

BWR は炉の中で水を沸騰させて、その蒸気をタービンへ送ります。PWR は一次冷却水を沸騰させず、蒸気発生器で二次側の水を蒸気にします。

原子力発電の熱効率の目安は? 熱出力 3000 [MW]3000\ \mathrm{[MW]} のとき、電気出力は?

約 33 [%]33\ \mathrm{[\%]} です。3000×0.33≈990 [MW]3000\times 0.33\approx 990\ \mathrm{[MW]} になります。

まとめ

  • 原子力発電は、核分裂の熱で蒸気をつくる。熱の出どころ以外は火力発電と同じ
  • 核分裂で中性子が 2〜3 個出て連鎖反応が続く。次の核分裂を起こす中性子がちょうど 1 個なら臨界
  • 質量欠損 Δm\Delta m は E=Δm c2E=\Delta m\,c^{2} でエネルギーになる。質量は kg、c=3.0×108 [m/s]c=3.0\times 10^{8}\ \mathrm{[m/s]}
  • 軽水は減速材と冷却材を兼ね、制御棒が中性子を吸収して出力を調整する
  • BWR は炉の中で沸騰、PWR は蒸気発生器で蒸気をつくる
  • 熱効率は約 33 [%]33\ \mathrm{[\%]}(目安)。出力が上がると反応が自然に弱まる自己制御性がある
求めるもの式
質量欠損のエネルギーE=Δm c2E=\Delta m\,c^{2}
質量欠損Δm=Ec2\Delta m=\dfrac{E}{c^{2}}
電力量の換算1 [kWh]=3.6×106 [J]1\ \mathrm{[kWh]}=3.6\times 10^{6}\ \mathrm{[J]}
電気出力Pe=η PthP_{\mathrm{e}}=\eta\,P_{\mathrm{th}}

次は、蒸気を使う発電に共通する熱効率の求め方を扱う火力発電の熱効率です。蒸気の流れそのものを復習したいときは火力発電の仕組みも合わせて読んでください。

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デンケンラボ編集部

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