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変圧器の巻数比と電圧・電流の関係|理想変圧器の計算と一次換算

電験三種の機械・電力で必ず使う変圧器の巻数比を解説します。電圧比・電流比・インピーダンスの一次換算を図と例題で整理し、一次側と二次側の電力が等しい理由や送配電での使われ方まで確認できます。

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変電所に据えられた大型の油入変圧器の写真
この記事の目次
  1. 変圧器とは?構造としくみ
  2. 巻数比と電圧比・電流比の関係
  3. 昇圧と降圧:電圧と電流は逆向きに変わる
  4. インピーダンスの一次換算(二次側の負荷を一次側から見る)
  5. 変圧器の問題の解き方と理想変圧器の前提
  6. 送配電で変圧器が果たす役割
  7. よくある質問
  8. 変圧器は直流の電圧も変換できますか?
  9. 巻数比 a は一次÷二次ですか、二次÷一次ですか?
  10. 電圧を上げると電流が下がるのはなぜですか?
  11. まとめ
図解でわかる 電験三種 機械 2 変圧器 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 機械 2
変圧器
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変圧器の巻数比 a=N1N2a = \dfrac{N_1}{N_2} は、電圧の比 V1V2\dfrac{V_1}{V_2} と等しく、電流の比 I1I2\dfrac{I_1}{I_2} とは逆数の関係になります。損失のない理想変圧器では一次側の電力と二次側の電力が等しいので、この三つの関係を使えば電験三種の変圧器の基本問題はほとんど解けます。

変圧器の巻数比の全体像
  • 変圧器とは
    • 鉄心に二つの巻線を巻き、磁束で電気を受け渡す
    • 交流でしか動かない
  • 巻数比と電圧比・電流比
    • 電圧は巻数に比例、電流は巻数に反比例
  • 昇圧と降圧
    • 電圧が上がれば電流は下がり、電力は変わらない
  • インピーダンスの一次換算
    • 二次側の負荷は一次側から見ると a2a^2 倍
  • 計算例題
    • 求めるものに合わせて比の式を選ぶ
  • 送配電での役割
    • 昇圧して送り、降圧して届ける

変圧器とは?構造としくみ

変圧器は、電気機器の単元のひとつで、共通の鉄心に二つの巻線を巻いた機器です。電源につなぐ側を一次巻線(巻数 N1N_1)、負荷につなぐ側を二次巻線(巻数 N2N_2)と呼びます。一次巻線に交流電圧 V1V_1 を加えると、鉄心に時間とともに変化する磁束 Φ\Phi が生じます。この磁束が二次巻線と鎖交すると、電磁誘導によって二次側に電圧 V2V_2 が生じます。電磁誘導の法則そのものは、電磁誘導とファラデーの法則で詳しく扱っています。

鉄心 磁束 Φ ~ 電源 V1 負荷 V2 一次巻線 N1 二次巻線 N2
図1 変圧器の構造。一次巻線がつくる磁束が鉄心を通り、二次巻線に電圧を生じさせる

実物の変圧器も、鉄心に二つの巻線を巻いた構造です。巻数が多い側と少ない側の違いが、そのまま電圧の違いになります。

積層鉄心に、細い導線を多く巻いた巻線と太い導線を少なく巻いた巻線が付いた小型変圧器
  1. 巻数の多い巻線 細い導線を多く巻く。電圧が高い側で、流れる電流は小さい
  2. 巻数の少ない巻線 太い導線を少なく巻く。電圧が低い側で、大きな電流を流せる
  3. 積層鉄心 薄い鋼板を重ねた鉄心。巻線がつくる磁束を通す
図2 小型変圧器の鉄心と二つの巻線。巻数の違いが電圧の違いになる(写真はイメージ)
機械 電気機器の単元 直流機 変圧器(この記事) 誘導機 同期機
図3 電気機器の中での変圧器の位置

一次巻線の誘導起電力の実効値は、周波数を f [Hz]f\ \mathrm{[Hz]}、磁束の最大値を Φm [Wb]\Phi_m\ \mathrm{[Wb]} とすると次式で表されます。

E=4.44 f N Φm[V]E = 4.44\,f\,N\,\Phi_m \quad \mathrm{[V]}

同じ磁束が一次と二次の両方を貫くので、巻数が多い側ほど大きな電圧が生じます。これが巻数比と電圧比が等しくなる理由です。磁束が時間変化することが条件なので、直流では電圧を変換できません。

解答と解説を見る

E=4.44fNΦmE = 4.44 f N \Phi_m を変形して代入します。

Φm=E4.44 f N=1004.44×50×200=10044400≈2.25×10−3 [Wb]\begin{aligned} \Phi_m &= \frac{E}{4.44\,f\,N} = \frac{100}{4.44 \times 50 \times 200} \\ &= \frac{100}{44400} \approx 2.25 \times 10^{-3}\ \mathrm{[Wb]} \end{aligned}

巻数比と電圧比・電流比の関係

一次側と二次側の電圧は巻数に比例します。巻数比を aa とおくと、

a=N1N2=V1V2a = \frac{N_1}{N_2} = \frac{V_1}{V_2}

です。損失のない理想変圧器では、一次側に入る電力と二次側から出る電力が等しくなります。

V1I1=V2I2V_1 I_1 = V_2 I_2

この式を V1/V2=aV_1/V_2 = a と組み合わせると、電流の比が求まります。

I1I2=V2V1=N2N1=1a\frac{I_1}{I_2} = \frac{V_2}{V_1} = \frac{N_2}{N_1} = \frac{1}{a}
一次側 二次側 図は a = 3 の例 巻数 N1 N2 電圧 V1 V2 電流 I1 I2 a = N1 / N2 = V1 / V2 = I2 / I1
図4 巻数・電圧は一次側が a 倍、電流は二次側が a 倍
量一次側 : 二次側巻数との関係
電圧V1:V2V_1 : V_2N1:N2N_1 : N_2 に比例
電流I1:I2I_1 : I_2N2:N1N_2 : N_1 に比例(反比例)
電力V1I1=V2I2V_1 I_1 = V_2 I_2等しい(理想変圧器)

昇圧と降圧:電圧と電流は逆向きに変わる

二次側の巻数が少なければ電圧が下がる降圧、多ければ電圧が上がる昇圧です。電力が変わらない以上、電圧が下がれば電流は増え、電圧が上がれば電流は減ります。

一次側 高電圧・小電流 降圧(a > 1) N1 > N2 二次側 低電圧・大電流 一次側 低電圧・大電流 昇圧(a < 1) N1 < N2 二次側 高電圧・小電流 どちらも一次側の電力 = 二次側の電力
図5 降圧と昇圧。電圧と電流は逆向きに変わり、電力は変わらない

身近な降圧の例が、ノートパソコンの AC アダプタです。内部の小型変圧器で、コンセントの 100 [V]100\ \mathrm{[V]} を機器に合う低い電圧へ下げています。

ノートパソコンの AC アダプタと、ケースを開けて見える基板上の小型変圧器
  1. 入力プラグ コンセントの交流 100 V を受け取る側
  2. 小型変圧器 電圧を下げる中心部。アダプタ内では高い周波数に変えてから通す形が多い
  3. 出力ケーブル 下げた電圧を整流して直流にし、機器へ送る
図6 AC アダプタと内部の小型変圧器。コンセントの電圧を機器に合う低い電圧へ下げる(写真はイメージ)
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電圧は巻数に比例するので、

V2=V1a=660030=220 [V]V_2 = \frac{V_1}{a} = \frac{6600}{30} = 220\ \mathrm{[V]}

電流は反比例するので、

I1=I2a=6030=2 [A]I_1 = \frac{I_2}{a} = \frac{60}{30} = 2\ \mathrm{[A]}

電力で確かめると、二次側は 220×60=13200 [W]220 \times 60 = 13200\ \mathrm{[W]}、一次側は 6600×2=13200 [W]6600 \times 2 = 13200\ \mathrm{[W]} で等しくなります。

解答と解説を見る

V2=V1×N2N1=100×2000200=1000 [V]V_2 = V_1 \times \dfrac{N_2}{N_1} = 100 \times \dfrac{2000}{200} = 1000\ \mathrm{[V]} なので、二次電流は

I2=V2R=1000500=2 [A]I_2 = \frac{V_2}{R} = \frac{1000}{500} = 2\ \mathrm{[A]}

電流は巻数に反比例するため、

I1=I2×N2N1=2×10=20 [A]I_1 = I_2 \times \frac{N_2}{N_1} = 2 \times 10 = 20\ \mathrm{[A]}

電力は 100×20=1000×2=2000 [W]100 \times 20 = 1000 \times 2 = 2000\ \mathrm{[W]} で一致します。

インピーダンスの一次換算(二次側の負荷を一次側から見る)

二次側に負荷インピーダンス Z2Z_2 をつなぐと、一次側から見た負荷の大きさは Z2Z_2 ではなく a2Z2a^2 Z_2 になります。理由は、一次側から見た電圧が aa 倍、電流が 1/a1/a 倍になるためです。

Z1′=V1I1=aV2I2/a=a2V2I2=a2Z2Z_1' = \frac{V_1}{I_1} = \frac{aV_2}{I_2/a} = a^2 \frac{V_2}{I_2} = a^2 Z_2
実際の回路 電源 V1 I1 変圧器 a : 1 I2 負荷 Z2 1 つの負荷にまとめる 一次側から見た回路 電源 V1 I1 等価な負荷 a2Z2 Z1' = a2Z2
図7 インピーダンスの一次換算。二次側の負荷は一次側から見ると a² 倍

逆に、一次側のインピーダンスを二次側へ換算するときは a2a^2 で割ります。抵抗やリアクタンスも同じ倍率で換算します。

解答と解説を見る

一次側から見た負荷抵抗は a2R=102×4=400 [Ω]a^2 R = 10^2 \times 4 = 400\ \mathrm{[\Omega]} です。一次電流は

I1=V1a2R=1000400=2.5 [A]I_1 = \frac{V_1}{a^2 R} = \frac{1000}{400} = 2.5\ \mathrm{[A]}

別の方法で確かめます。V2=1000/10=100 [V]V_2 = 1000 / 10 = 100\ \mathrm{[V]}、I2=100/4=25 [A]I_2 = 100 / 4 = 25\ \mathrm{[A]} なので、I1=I2/a=2.5 [A]I_1 = I_2 / a = 2.5\ \mathrm{[A]} で一致します。

変圧器の問題の解き方と理想変圧器の前提

どの式を使うかは、求めたいものから決めます。迷ったら、まず電圧比を書き、次に電力が等しいことから電流を出すと流れが安定します。

求めるものは何か 電圧 V1 : V2 = N1 : N2(巻数に比例) 電流 I1 : I2 = N2 : N1(巻数に反比例) 負荷の大きさ 一次側から見ると Z1' = a2Z2
図8 求めるものに合わせて使う式を選ぶ

ここまでの式は、損失のない理想変圧器を前提にしています。実際の変圧器は次の点で理想と異なりますが、巻数比の基本問題では理想として扱います。

項目理想変圧器実際の変圧器
巻線の抵抗0銅損と電圧降下が生じる
漏れ磁束なし漏れリアクタンスとして現れる
鉄心の損失なし鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)が生じる
励磁電流0磁束をつくる電流が流れる

送配電で変圧器が果たす役割

電力を遠くへ送るとき、同じ電力でも電圧を高くすれば電流が小さくなり、送電線の抵抗で失われる電力(電流の 2 乗に比例)を減らせます。そのため発電所では変圧器で昇圧して送電し、需要地の近くで段階的に降圧して届けます。

発電所 発電機で電気をつくる 昇圧用変圧器で電圧を上げる 送電線 高い電圧で電流を小さくし、損失を抑える 変電所の変圧器で電圧を下げる 配電線 高圧(6600 V)で需要地へ届ける 柱上変圧器で電圧を下げる 家庭・店舗 低圧(100 V・200 V)で使う
図9 発電所から家庭までの電圧の変わり方。変圧器が各段で電圧を上げ下げする

変電所では、屋外に置かれた大きな油入変圧器が送電線の高い電圧を下げます。

変電所の屋外に置かれた大型の油入変圧器。上部に碍管とコンサベータ、側面に放熱器がある
  1. コンサベータ 温度で膨らむ絶縁油を受ける油タンク
  2. ブッシング 巻線の端子を絶縁して、外の電線へ引き出す磁器の筒
  3. 放熱器 温まった絶縁油を冷やして、巻線と鉄心の熱を逃がす
  4. 本体タンク 鉄心と巻線を絶縁油に浸して収める
図10 変電所の大型変圧器。送電線の高い電圧を、配電用の低い電圧へ下げる(写真はイメージ)
電柱の上に取り付けられた柱上変圧器と、そこから住宅へ向かう電線
  1. 高圧側の端子 上部のブッシング。高圧配電線の 6600 V をつなぐ
  2. 変圧器本体 6600 V を 100 V・200 V に下げる
  3. 低圧の電線 下げた電気を各家庭へ送る
図11 電柱の上の柱上変圧器。高圧配電線の電圧を、家庭で使う低圧に下げる(写真はイメージ)

住宅街の電柱に載っている筒状の機器が柱上変圧器です。配電線の 6600 [V]6600\ \mathrm{[V]} を 100 [V]100\ \mathrm{[V]} や 200 [V]200\ \mathrm{[V]} に下げて各家庭へ送ります。巻数比の計算で出てくる 6600 [V]6600\ \mathrm{[V]} と 200 [V]200\ \mathrm{[V]} のような数字は、こうした現実の設備に対応しています。

よくある質問

変圧器は直流の電圧も変換できますか?

できません。変圧器は磁束が時間とともに変化することで二次側に電圧を生じさせるので、直流では磁束が一定になり、誘導起電力が生じません。直流を一次巻線に加えると、巻線の抵抗だけで大きな電流が流れて焼損するおそれもあります。

巻数比 a は一次÷二次ですか、二次÷一次ですか?

この記事では a=N1/N2a = N_1 / N_2(一次÷二次)と定義しています。ただし、問題によっては逆に定義することもあるので、問題文の定義を必ず確認します。迷ったときは、電圧は巻数が多い側が高い、電流は巻数が多い側が小さい、と考えると式を立て直せます。

電圧を上げると電流が下がるのはなぜですか?

理想変圧器では一次側の電力と二次側の電力が等しく、V1I1=V2I2V_1 I_1 = V_2 I_2 が成り立つからです。電力が一定で電圧が aa 分の 1 になれば、電流は aa 倍になります。電力を増やせるわけではない点が重要です。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

変圧器は、何を使って二次側に電圧を生じさせますか?

一次巻線に加えた交流がつくる時間変化する磁束が、鉄心を通って二次巻線と鎖交し、電磁誘導で電圧が生じます。

巻数比 aa と電圧比の関係は?

a=N1N2=V1V2a = \dfrac{N_1}{N_2} = \dfrac{V_1}{V_2} です。電圧は巻数に比例します。

電流比は、巻数比とどういう関係ですか。理想変圧器で変わらない量は何ですか?

I1I2=1a\dfrac{I_1}{I_2} = \dfrac{1}{a} で、電流は巻数に反比例します。電力 V1I1=V2I2V_1I_1 = V_2I_2 は変わりません。

二次側のインピーダンス Z2Z_2 は、一次側から見るとどうなりますか?

a2Z2a^2 Z_2 になります。一次へ換算するときは a2a^2 を掛け、二次へ換算するときは a2a^2 で割ります。

a=30a = 30 の理想変圧器の一次側に 6600 [V]6600\,\mathrm{[V]} を加え、二次側に 60 [A]60\,\mathrm{[A]} 流れたとき、二次電圧と一次電流は?

V2=6600/30=220 [V]V_2 = 6600/30 = 220\,\mathrm{[V]}、I1=60/30=2 [A]I_1 = 60/30 = 2\,\mathrm{[A]} です。電力は両側とも 13200 [W]13200\,\mathrm{[W]} で一致します。

送電では、なぜ昇圧してから送りますか?

同じ電力でも電圧を高くすれば電流が小さくなり、送電線の抵抗で失われる電力(電流の2乗に比例)を減らせるからです。

まとめ

  • 巻数比 a=N1N2=V1V2=I2I1a = \dfrac{N_1}{N_2} = \dfrac{V_1}{V_2} = \dfrac{I_2}{I_1}。電圧は比例、電流は反比例
  • 理想変圧器は V1I1=V2I2V_1 I_1 = V_2 I_2(電力が等しい)
  • 二次側のインピーダンスを一次側へ換算すると Z1′=a2Z2Z_1' = a^2 Z_2
  • 送配電では、昇圧して送電し、降圧して配電する
求めるもの式
電圧V2=V1/aV_2 = V_1 / a
電流I2=aI1I_2 = a I_1
一次換算の負荷Z1′=a2Z2Z_1' = a^2 Z_2

次は、発電所の出力の計算を扱う 水力発電の出力、電気の基本を確認する オームの法則と直列回路 と 並列回路、受電設備の区分を整理する 電気工作物の区分 を読むと、送配電と法規の理解がつながります。

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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