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変圧器の巻数比と電圧・電流の関係|理想変圧器の計算と一次換算
電験三種の機械・電力で必ず使う変圧器の巻数比を解説します。電圧比・電流比・インピーダンスの一次換算を図と例題で整理し、一次側と二次側の電力が等しい理由や送配電での使われ方まで確認できます。
変圧器の巻数比 a=N2N1 は、電圧の比 V2V1 と等しく、電流の比 I2I1 とは逆数の関係になります。損失のない理想変圧器では一次側の電力と二次側の電力が等しいので、この三つの関係を使えば電験三種の変圧器の基本問題はほとんど解けます。
変圧器の巻数比の全体像
- 変圧器とは
- 鉄心に二つの巻線を巻き、磁束で電気を受け渡す
- 交流でしか動かない
- 巻数比と電圧比・電流比
- 昇圧と降圧
- インピーダンスの一次換算
- 二次側の負荷は一次側から見ると a2 倍
- 計算例題
- 送配電での役割
変圧器とは?構造としくみ
変圧器は、電気機器の単元のひとつで、共通の鉄心に二つの巻線を巻いた機器です。電源につなぐ側を一次巻線(巻数 N1)、負荷につなぐ側を二次巻線(巻数 N2)と呼びます。一次巻線に交流電圧 V1 を加えると、鉄心に時間とともに変化する磁束 Φ が生じます。この磁束が二次巻線と鎖交すると、電磁誘導によって二次側に電圧 V2 が生じます。電磁誘導の法則そのものは、電磁誘導とファラデーの法則で詳しく扱っています。
図1 変圧器の構造。一次巻線がつくる磁束が鉄心を通り、二次巻線に電圧を生じさせる
実物の変圧器も、鉄心に二つの巻線を巻いた構造です。巻数が多い側と少ない側の違いが、そのまま電圧の違いになります。
1巻数の多い巻線2巻数の少ない巻線3積層鉄心- 巻数の多い巻線 細い導線を多く巻く。電圧が高い側で、流れる電流は小さい
- 巻数の少ない巻線 太い導線を少なく巻く。電圧が低い側で、大きな電流を流せる
- 積層鉄心 薄い鋼板を重ねた鉄心。巻線がつくる磁束を通す
図2 小型変圧器の鉄心と二つの巻線。巻数の違いが電圧の違いになる(写真はイメージ)
図3 電気機器の中での変圧器の位置
一次巻線の誘導起電力の実効値は、周波数を f [Hz]、磁束の最大値を Φm [Wb] とすると次式で表されます。
E=4.44fNΦm[V]
同じ磁束が一次と二次の両方を貫くので、巻数が多い側ほど大きな電圧が生じます。これが巻数比と電圧比が等しくなる理由です。磁束が時間変化することが条件なので、直流では電圧を変換できません。
解答と解説を見る
E=4.44fNΦm を変形して代入します。
Φm=4.44fNE=4.44×50×200100=44400100≈2.25×10−3 [Wb]
巻数比と電圧比・電流比の関係
一次側と二次側の電圧は巻数に比例します。巻数比を a とおくと、
a=N2N1=V2V1
です。損失のない理想変圧器では、一次側に入る電力と二次側から出る電力が等しくなります。
V1I1=V2I2
この式を V1/V2=a と組み合わせると、電流の比が求まります。
I2I1=V1V2=N1N2=a1
図4 巻数・電圧は一次側が a 倍、電流は二次側が a 倍
| 量 | 一次側 : 二次側 | 巻数との関係 |
|---|
| 電圧 | V1:V2 | N1:N2 に比例 |
| 電流 | I1:I2 | N2:N1 に比例(反比例) |
| 電力 | V1I1=V2I2 | 等しい(理想変圧器) |
昇圧と降圧:電圧と電流は逆向きに変わる
二次側の巻数が少なければ電圧が下がる降圧、多ければ電圧が上がる昇圧です。電力が変わらない以上、電圧が下がれば電流は増え、電圧が上がれば電流は減ります。
図5 降圧と昇圧。電圧と電流は逆向きに変わり、電力は変わらない
身近な降圧の例が、ノートパソコンの AC アダプタです。内部の小型変圧器で、コンセントの 100 [V] を機器に合う低い電圧へ下げています。
1入力プラグ2小型変圧器3出力ケーブル- 入力プラグ コンセントの交流 100 V を受け取る側
- 小型変圧器 電圧を下げる中心部。アダプタ内では高い周波数に変えてから通す形が多い
- 出力ケーブル 下げた電圧を整流して直流にし、機器へ送る
図6 AC アダプタと内部の小型変圧器。コンセントの電圧を機器に合う低い電圧へ下げる(写真はイメージ)
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電圧は巻数に比例するので、
V2=aV1=306600=220 [V]電流は反比例するので、
I1=aI2=3060=2 [A]電力で確かめると、二次側は 220×60=13200 [W]、一次側は 6600×2=13200 [W] で等しくなります。
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V2=V1×N1N2=100×2002000=1000 [V] なので、二次電流は
I2=RV2=5001000=2 [A]電流は巻数に反比例するため、
I1=I2×N1N2=2×10=20 [A]電力は 100×20=1000×2=2000 [W] で一致します。
インピーダンスの一次換算(二次側の負荷を一次側から見る)
二次側に負荷インピーダンス Z2 をつなぐと、一次側から見た負荷の大きさは Z2 ではなく a2Z2 になります。理由は、一次側から見た電圧が a 倍、電流が 1/a 倍になるためです。
Z1′=I1V1=I2/aaV2=a2I2V2=a2Z2
図7 インピーダンスの一次換算。二次側の負荷は一次側から見ると a² 倍
逆に、一次側のインピーダンスを二次側へ換算するときは a2 で割ります。抵抗やリアクタンスも同じ倍率で換算します。
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一次側から見た負荷抵抗は a2R=102×4=400 [Ω] です。一次電流は
I1=a2RV1=4001000=2.5 [A]別の方法で確かめます。V2=1000/10=100 [V]、I2=100/4=25 [A] なので、I1=I2/a=2.5 [A] で一致します。
変圧器の問題の解き方と理想変圧器の前提
どの式を使うかは、求めたいものから決めます。迷ったら、まず電圧比を書き、次に電力が等しいことから電流を出すと流れが安定します。
図8 求めるものに合わせて使う式を選ぶ
ここまでの式は、損失のない理想変圧器を前提にしています。実際の変圧器は次の点で理想と異なりますが、巻数比の基本問題では理想として扱います。
| 項目 | 理想変圧器 | 実際の変圧器 |
|---|
| 巻線の抵抗 | 0 | 銅損と電圧降下が生じる |
| 漏れ磁束 | なし | 漏れリアクタンスとして現れる |
| 鉄心の損失 | なし | 鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)が生じる |
| 励磁電流 | 0 | 磁束をつくる電流が流れる |
送配電で変圧器が果たす役割
電力を遠くへ送るとき、同じ電力でも電圧を高くすれば電流が小さくなり、送電線の抵抗で失われる電力(電流の 2 乗に比例)を減らせます。そのため発電所では変圧器で昇圧して送電し、需要地の近くで段階的に降圧して届けます。
図9 発電所から家庭までの電圧の変わり方。変圧器が各段で電圧を上げ下げする
変電所では、屋外に置かれた大きな油入変圧器が送電線の高い電圧を下げます。
1コンサベータ2ブッシング3放熱器4本体タンク- コンサベータ 温度で膨らむ絶縁油を受ける油タンク
- ブッシング 巻線の端子を絶縁して、外の電線へ引き出す磁器の筒
- 放熱器 温まった絶縁油を冷やして、巻線と鉄心の熱を逃がす
- 本体タンク 鉄心と巻線を絶縁油に浸して収める
図10 変電所の大型変圧器。送電線の高い電圧を、配電用の低い電圧へ下げる(写真はイメージ)
1高圧側の端子2変圧器本体3低圧の電線- 高圧側の端子 上部のブッシング。高圧配電線の 6600 V をつなぐ
- 変圧器本体 6600 V を 100 V・200 V に下げる
- 低圧の電線 下げた電気を各家庭へ送る
図11 電柱の上の柱上変圧器。高圧配電線の電圧を、家庭で使う低圧に下げる(写真はイメージ)
住宅街の電柱に載っている筒状の機器が柱上変圧器です。配電線の 6600 [V] を 100 [V] や 200 [V] に下げて各家庭へ送ります。巻数比の計算で出てくる 6600 [V] と 200 [V] のような数字は、こうした現実の設備に対応しています。
よくある質問
変圧器は直流の電圧も変換できますか?
できません。変圧器は磁束が時間とともに変化することで二次側に電圧を生じさせるので、直流では磁束が一定になり、誘導起電力が生じません。直流を一次巻線に加えると、巻線の抵抗だけで大きな電流が流れて焼損するおそれもあります。
巻数比 a は一次÷二次ですか、二次÷一次ですか?
この記事では a=N1/N2(一次÷二次)と定義しています。ただし、問題によっては逆に定義することもあるので、問題文の定義を必ず確認します。迷ったときは、電圧は巻数が多い側が高い、電流は巻数が多い側が小さい、と考えると式を立て直せます。
電圧を上げると電流が下がるのはなぜですか?
理想変圧器では一次側の電力と二次側の電力が等しく、V1I1=V2I2 が成り立つからです。電力が一定で電圧が a 分の 1 になれば、電流は a 倍になります。電力を増やせるわけではない点が重要です。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
変圧器は、何を使って二次側に電圧を生じさせますか?
一次巻線に加えた交流がつくる時間変化する磁束が、鉄心を通って二次巻線と鎖交し、電磁誘導で電圧が生じます。
巻数比 a と電圧比の関係は?
a=N2N1=V2V1 です。電圧は巻数に比例します。
電流比は、巻数比とどういう関係ですか。理想変圧器で変わらない量は何ですか?
I2I1=a1 で、電流は巻数に反比例します。電力 V1I1=V2I2 は変わりません。
二次側のインピーダンス Z2 は、一次側から見るとどうなりますか?
a2Z2 になります。一次へ換算するときは a2 を掛け、二次へ換算するときは a2 で割ります。
a=30 の理想変圧器の一次側に 6600[V] を加え、二次側に 60[A] 流れたとき、二次電圧と一次電流は?
V2=6600/30=220[V]、I1=60/30=2[A] です。電力は両側とも 13200[W] で一致します。
送電では、なぜ昇圧してから送りますか?
同じ電力でも電圧を高くすれば電流が小さくなり、送電線の抵抗で失われる電力(電流の2乗に比例)を減らせるからです。
まとめ
- 巻数比 a=N2N1=V2V1=I1I2。電圧は比例、電流は反比例
- 理想変圧器は V1I1=V2I2(電力が等しい)
- 二次側のインピーダンスを一次側へ換算すると Z1′=a2Z2
- 送配電では、昇圧して送電し、降圧して配電する
| 求めるもの | 式 |
|---|
| 電圧 | V2=V1/a |
| 電流 | I2=aI1 |
| 一次換算の負荷 | Z1′=a2Z2 |
次は、発電所の出力の計算を扱う 水力発電の出力、電気の基本を確認する オームの法則と直列回路 と 並列回路、受電設備の区分を整理する 電気工作物の区分 を読むと、送配電と法規の理解がつながります。