地絡保護と地絡電流の計算|漏電遮断器・地絡継電器と対地静電容量を図解
電験三種の法規で学ぶ地絡保護を整理。漏電遮断器のしくみ、電技解釈 第36条の地絡遮断装置、高圧の1線地絡電流 3ωCE の計算、外部の地絡で地絡継電器が不要動作する理由と地絡方向継電器を、図と例題で確認できます。

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電線の絶縁が破れて、電流が大地へ漏れる事故が地絡です。地絡は感電や火災のもとになるので、漏れた電流を見つけて自動で電路を切るしくみが欠かせません。低圧の漏電遮断器と高圧の地絡継電器に分けて、施設の決まりと地絡電流の計算を整理します。
- 地絡保護とは
- 地絡で漏れた電流を検出し、電路を自動で遮断して感電・火災・機器の損傷を防ぐ
- 地絡電流の流れ
- 電流は外箱、D種接地、大地、B種接地を通って電源へ戻る
- 漏電遮断器と施設場所
- 行きと帰りの電流の差を見る。電技解釈 第36条が施設する電路を定める
- 高圧の地絡電流
- 非接地系の1線地絡電流は、対地静電容量で決まる Ig = 3ωCE
- 不要動作と DGR
- 外部の地絡で GR が動作しないよう、DGR は零相電圧との位相で見分ける
地絡保護とは?漏れた電流を見つけて切るしくみ
電技 第15条は、地絡が生じた場合に、電線や電気機械器具の損傷、感電、火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じると定めています。この措置の中心になるのが地絡保護です。
地絡保護とは、地絡で大地へ漏れた電流を検出し、自動的に電路を遮断して、感電・火災・機器の損傷を防ぐことです。低圧の電路では漏電遮断器、高圧の電路では地絡継電器(GR)と遮断器の組み合わせで行います。
地絡が起きる原因は、電線の絶縁の劣化や損傷、水の浸入など、さまざまです。どの電路に、どの装置を施設するかは、電技解釈 第36条が定めています。

- 大きな遮断器 左にある、黒く大きな器具
- 白い遮断器 中央にある、白い器具
- 小さな遮断器 右の上段に並ぶ器具
- 小さな遮断器 右の下段に並ぶ器具
- ケーブル 上から入る、黒と赤の電線
地絡で電流は大地へ漏れる
電気機器の内部で、電圧側の電線が金属製の外箱に触れた場合を見ます。外箱が接地されていると、地絡電流は外箱から D種接地工事(機器側の接地)を通って大地へ流れます。大地を通った電流は、変圧器の低圧側の接地(B種接地工事)から電源へ戻ります。
このとき、人が外箱に触れると、外箱の電圧が人にかかります。外箱の電圧は、地絡電流が D種接地抵抗 を流れて生じる電圧で、 が小さいほど低くなります。計算の手順は 接地工事の種類 で扱います。
接地だけでは、地絡電流が流れ続けます。電流を検出して電路を切る装置を組み合わせて、危険を取り除きます。

- 取っ手 箱の扉に付いている、金属の取っ手
- 脚 箱を支える、金属の脚
- 緑の線 基礎へ降りる、緑色の電線
- 基礎 箱を載せる、コンクリートの土台
漏電遮断器は行きと帰りの電流の差を見る
漏電遮断器は、零相変流器(ZCT)に行きの電流と帰りの電流を通して、その差を見ます。正常なときは行きと帰りが等しく、ZCT の鉄心の磁束が打ち消し合うので、何も検出しません。地絡が起きると、大地へ漏れた電流 の分だけ帰りの電流が減り、差が になります。差が定められた値を超えると、遮断器を引き外します。
漏電遮断器は、接地工事の省略にも関わります。電技解釈 第29条 第2項は、水気のある場所以外の低圧用の機械器具に電気を供給する電路に、電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器(定格感度電流 15 mA 以下、動作時間 0.1 秒以下の電流動作型)を施設する場合に、金属製外箱等の接地を省略できると定めています。詳しくは 接地工事の種類 で扱います。
地絡遮断装置を施設する場所(電技解釈 第36条)
電技解釈 第36条は、自動的に電路を遮断する装置(地絡遮断装置)を施設する電路を、次の表のとおり定めています。
| 項 | 対象の電路 | 例外の例 |
|---|---|---|
| 第1項 | 金属製外箱の低圧機械器具(60 V 超)に接続する電路 | 乾燥した場所 |
| 第3項 | 高圧側と結合された 300 V 超の低圧電路 | 発電所・変電所等 |
| 第4項 | 36-1表の箇所の高圧・特別高圧の電路 | 電源側で遮断する場合 |
第4項の 36-1表の箇所は、発電所・蓄電所・変電所等の引出口、他の者から供給を受ける受電点(負荷側の電路)、配電用変圧器(単巻変圧器を除く)の施設箇所です。需要家の受電設備では、受電点の負荷側の高圧の電路が、この対象になります。
第5項は、非常用照明装置、非常用昇降機、誘導灯、鉄道用信号装置などへ電気を供給する電路について、地絡を生じたときに技術員駐在所へ警報する装置を施設すれば、第1項・第3項・第4項の装置を施設しなくてよいと定めています。停止すると公共の安全に支障が出るおそれがあるので、電路を切る代わりに知らせる扱いです。

- 防水カバー コンセントを覆う、ふた
- 水栓 水を出す金具
- 外壁 コンセントを付ける壁
- 柱 壁の右側にある、縦の部材
高圧の1線地絡電流は対地静電容量で決まる
中性点を接地しない(非接地)系統の高圧配電線で1線が地絡すると、地絡電流は、健全な2線の対地静電容量を通って流れる充電電流になります。地絡抵抗が 0 の完全地絡のとき、1線地絡電流は次の式で表されます。
は相電圧 (線間電圧 の )、 は1線あたりの対地静電容量 、 は周波数 です。 として換算します。
地絡した相の対地静電容量は短絡され、健全な2相の対地静電容量に線間電圧 が加わります。それぞれに の電流が流れ、2本の電流を位相を考えて足す(ベクトル和)と になります。
接地方式による地絡電流の違いは 中性点接地方式 で確かめられます。

- 端子 上に付いている、銅色の金具
- 端末 黒く太くなっている部分
- バンド 端末の下側に巻かれた金具
- ケーブル 下へ伸びる、黒い電線
外部の地絡で起こる地絡継電器の不要動作と DGR
地絡継電器(GR)は、零相変流器(ZCT)が検出した零相電流が整定値以上になると動作します。ZCT は三相の電流の和(零相電流の3倍)を検出し、正常なときの和は 0 です。
ところが、構内に地絡がなくても、配電線のほかの場所(外部)で1線が地絡すると、構内のケーブルの対地静電容量にも充電電流が流れ込みます。この電流は ZCT を通るので、零相電流として検出されます。大きさは、構内のケーブルについて で求めた値です。
この電流が GR の整定電流より大きいと、構内に事故がないのに GR が動作します。これが不要動作で、需要家の停電を招きます。構内のケーブルが長く、 が大きいほど起こりやすくなります。
対策として、地絡方向継電器(DGR)を使います。DGR は、零相電流に加えて零相電圧も見て、2つの位相の関係から、地絡点が自分の側(構内)にあるかを判別します。外部の地絡は向きが逆と判別されるので、DGR は動作しません。零相電圧は、接地形計器用変圧器(GPT)で検出します。原理は 保護継電器 で扱います。
| 継電器 | 動作に使う量 |
|---|---|
| GR | 零相電流 |
| DGR | 零相電流と零相電圧の位相 |
地絡保護も保護協調で考える
地絡保護も、事故点に近い装置だけを動かす考え方(保護協調)で整定します。構内の地絡は、構内の GR や DGR が配電用変電所の地絡保護より先に動作して切り離します。切り離せないと、配電用変電所の遮断器が動作して、ほかの需要家まで停電します。これが波及事故で、報告の決まりは 電気事故報告 で扱います。
逆に、外部の地絡で構内の GR が動作しても、不要な停電になります。構内の事故では確実に動作し、外部の事故では動作しないようにそろえるのが、地絡保護の協調です。整定値は民間の規程などで決められているので、この記事では数値を扱いません。協調の全体像は 保護協調 で扱います。

- 変圧器 左側に置かれた、大きな機器
- 碍子 電線を絶縁して支える部品
- ケーブル 上から下りてくる、3本の電線
- 右の機器 遮断器とみられる、箱形の機器
例題で地絡電流を確かめる
例題で使う数値を、先に表で確かめます。
| 項目 | 値 | 使う例題 |
|---|---|---|
| 1線の静電容量(50 Hz) | 0.4 μF | 例題1 |
| 1線の静電容量(60 Hz) | 0.25 μF | 例題2 |
| GR の整定電流 | 0.5 A | 例題2 |
解答と解説を見る
相電圧は 、角周波数は です。 です。
解答と解説を見る
相電圧は 、角周波数は です。構内のケーブルを流れる充電電流は です。整定電流 を超えるので、GR は不要動作するおそれがあります。不要動作を防ぐには、零相電圧との位相で地絡点の向きを判別する地絡方向継電器(DGR)を使います。
解答と解説を見る
(a) は正しく、第1項のとおりです。(b) は正しく、第1項の例外に乾燥した場所があります。(c) は正しく、第4項と 36-1表のとおりです。(d) は誤りで、第5項により、警報する装置を施設すれば、第1項・第3項・第4項の装置は施設しなくてよいとされています。(e) は誤りで、第3項の対象は使用電圧 超の低圧電路なので、 は対象外です。答えは (a)、(b)、(c) です。
解答と解説を見る
(a) は正しく、GR の動作の条件です。(b) は正しく、DGR は電流の大きさだけでなく向きも見ます。(c) は誤りで、ケーブルが長いほど が大きくなり、充電電流は大きくなります。(d) は誤りで、零相電圧は接地形計器用変圧器(GPT)で検出します。(e) は正しく、正常なときの和は 0 です。答えは (a)、(b)、(e) です。
よくある質問
漏電遮断器は、何を見て動作しますか?
ZCT を通した行きの電流と帰りの電流の差です。正常なときの差は 0 で、地絡が起きると、大地へ漏れた電流の分だけ差が出ます。差が定められた値を超えると、遮断器を引き外します。
地絡と短絡は、どう違いますか?
地絡は、電線が大地や、大地とつながった金属部分に触れることです。短絡は、電圧の異なる電線どうしが触れることです。地絡電流の大きさは、中性点の接地方式で変わります。
非接地系の1線地絡電流は、なぜ対地静電容量で決まりますか?
非接地系では、地絡電流が電源へ戻る通り道が、電線の対地静電容量しかないからです。健全な相の対地静電容量に線間電圧が加わって充電電流が流れ、その合計が になります。
構内に地絡がないのに GR が動作することがあるのは、なぜですか?
外部の地絡で、構内のケーブルの対地静電容量に充電電流が流れ、ZCT がそれを零相電流として検出するからです。電流が整定電流を超えると、不要動作になります。零相電圧との位相で向きを見る DGR で防ぎます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
地絡保護とは何ですか?
地絡で大地へ漏れた電流を検出し、自動的に電路を遮断して、感電・火災・機器の損傷を防ぐことです。
漏電遮断器は、何を検出して動作しますか?
ZCT を通した行きの電流と帰りの電流の差です。
電技解釈 第36条 第1項は、どんな電路に地絡遮断装置を求めていますか?
金属製外箱を有する使用電圧 60 V 超の低圧機械器具に接続する電路です。乾燥した場所などの例外があります。
非接地系の1線地絡電流の式は何ですか?
です。 は相電圧、 は1線あたりの対地静電容量です。
外部の地絡で GR が不要動作するのは、なぜですか?
構内のケーブルの対地静電容量に充電電流が流れ、ZCT が零相電流として検出するからです。
DGR は、何で地絡点の向きを判別しますか?
零相電圧と零相電流の位相です。
まとめ
- 地絡保護は、地絡で漏れた電流を検出し、電路を自動で遮断する保護
- 漏電遮断器は、ZCT を通した行きと帰りの電流の差で動作する
- 非接地系の1線地絡電流は で、対地静電容量に比例する
- 外部の地絡による GR の不要動作は、零相電圧との位相で見分ける DGR で防ぐ
| 装置 | 検出するもの |
|---|---|
| 漏電遮断器 | 行きと帰りの電流の差 |
| GR | 零相電流 |
| DGR | 零相電流と零相電圧の位相 |








