中性点接地方式の種類と比較|非接地・直接・抵抗・消弧リアクトル接地の違い
電験三種の中性点接地方式を整理。非接地・直接接地・抵抗接地・消弧リアクトル接地を、地絡電流・異常電圧・誘導障害・保護継電器の動作で比較し、日本の電圧階級ごとの使い分けと例題で確認できます。

電力を図解で読む図解でわかる 電験三種 電力 1水力発電Kindle Unlimited 対象Kindle で読む
中性点接地方式とは、三相交流の変圧器の中性点を、地面につなぐ(または、あえてつながない)やり方のことです。種類は非接地・直接接地・抵抗接地・消弧リアクトル接地の4つで、違いは「1線地絡事故が起きたときに地絡電流がどれだけ流れ、健全な相の電圧がどれだけ上がるか」に現れます。電験三種の「電力」では、この4方式を地絡電流・異常電圧・誘導障害・保護継電器の動作で比べる問題が出されます。
- 中性点接地方式とは
- 地絡事故への備えとして中性点を処理する。目的は4つ
- 非接地系で地絡が起きると
- 地絡電流は対地静電容量を流れる充電電流
- 健全相の電圧は線間電圧まで上がる
- 4つの方式のしくみ
- 中性点に何をつなぐかで性質が決まる
- 4方式の比較
- 地絡電流・異常電圧・誘導障害・保護継電器
- 日本での使い分け
- 電圧が高いほど直接接地に近づく
- 例題
- 正誤問題と、消弧リアクトルのインダクタンス計算
中性点接地方式とは
三相の電源(変圧器のY結線)には、3本の線の電位の中心にあたる点があり、これを中性点といいます。この中性点を地面につなぐかどうか、つなぐなら何を介するかを決めたものが中性点接地方式です。
なぜ決める必要があるかというと、送電線や配電線では、雷や樹木の接触などで1線が地面に触れる1線地絡事故が最もよく起きるからです。そのときの地絡電流の大きさや健全相の電圧は、中性点の処理で大きく変わります。目的は次の4つです(図1)。
1 と 2 が電圧の話、3 が保護の話、4 が事故の自然消滅の話です。方式によって、どの目的を重く見るかが違います。たとえば健全相の電圧上昇を小さくできれば、機器の絶縁を軽くでき(絶縁レベルの低減)、設備の費用を抑えられます。
実物では、変圧器の中性点は専用のブッシングから引き出され、接地装置につながります(図2)。

- 高圧ブッシング 三相の線路へつなぐ端子
- 中性点ブッシング 中性点を引き出す端子
- 放熱器 変圧器の油を冷やす
非接地系で1線地絡が起きるとどうなるか
中性点を接地しない方式を非接地方式といいます。電線は大地に対して静電容量 を持つので、非接地でも地絡電流は流れます。1線が地絡すると、地絡点から大地へ出た電流が、健全な2線の対地静電容量を通って電源へ戻ります(図3)。
このときの地絡電流 は、1線あたりの対地静電容量を 、相電圧を 、角周波数を として次の式で表せます。
は線間電圧です。この電流は静電容量を流れるので、電圧より位相が 90° 進んだ電流です。非接地系の地絡電流は小さめですが、線路が長い( が大きい)ほど増えます。
電圧にも注意が必要です。a 相が地絡すると中性点の電位が a 相の電位に引っ張られ、健全な b・c 相の対地電圧は、平常時の相電圧 から線間電圧 まで上がります(図4)。
つまり非接地系では、健全相の電圧が約1.73倍になるので、機器の絶縁はそれに耐える設計が必要です。さらに地絡点で**アークが切れたりつながったりを繰り返す(間欠アーク地絡)**と、対地静電容量の充放電が振動して、相電圧の数倍に達する異常電圧が出ることがあります。これが非接地方式の弱点です。
4つの中性点接地方式のしくみ
中性点に何をつなぐかで、4つの方式に分かれます(図5)。
- 非接地方式:中性点を接地しない。図5のとおり、変圧器の2次側を 結線にすれば中性点そのものが無い
- 直接接地方式:中性点を導線で直接接地する。地絡すると、地絡相の電圧が短絡に近い形で下がり、大きな電流が流れる
- 抵抗接地方式:中性点と大地の間に抵抗(接地抵抗器)を入れ、地絡電流を抵抗で決まる大きさに制限する
- 消弧リアクトル接地方式:中性点と大地の間にリアクトル(コイル)を入れ、対地静電容量の電流を打ち消す
抵抗接地の抵抗器は、変電所の構内では金網のケースに収めた装置として置かれています(図6)。

- がいし 中性点側の電線を支えて絶縁する
- 抵抗器 地絡電流を制限する
- 接地側 抵抗器の下端から大地へつなぐ
消弧リアクトルは、円筒形のタンクに納めた油入のコイルとして置かれます(図7)。

消弧リアクトルが電流を打ち消すしくみ
1線地絡のとき、中性点の電位は地絡相の電位に近づき、中性点には相電圧 がかかります。リアクトル には遅れ電流が、健全相の対地静電容量には進み電流が流れるので、両者は逆向きで打ち消し合います。
(並列共振)になるように を選べば、地絡点を流れる電流はほぼ 0 になります。
地絡電流が小さくなると、アークが自然に消えます。雷による一時的な地絡のほとんどが、遮断器を切らずに回復します。
4つの方式の比較:地絡電流・異常電圧・誘導障害・保護継電器
4方式の性質を、2項目ずつ3つの表で比べます(3つを合わせて表1とします)。異常電圧は間欠アークによるもの、誘導障害は通信線への誘導障害です。
| 方式 | 地絡電流 | 健全相の電圧上昇 |
|---|---|---|
| 非接地 | 小(容量性の充電電流) | 大(線間電圧、約 倍) |
| 直接接地 | 非常に大きい | 小(1.3 倍程度以下) |
| 抵抗接地 | 抵抗で制限(中程度) | 中(直接接地と非接地の間) |
| 消弧リアクトル接地 | ほぼ 0(残る電流は小) | 大(線間電圧に近い) |
| 方式 | 異常電圧 | 誘導障害 |
|---|---|---|
| 非接地 | 発生しやすい | 小 |
| 直接接地 | 発生しにくい | 大 |
| 抵抗接地 | 抑えられる | 中 |
| 消弧リアクトル接地 | 抑えられる | 小 |
| 方式 | 保護継電器の動作 | 絶縁レベル |
|---|---|---|
| 非接地 | 電流が小さく検出しにくい | 線間電圧に耐える設計が必要 |
| 直接接地 | 確実に動作 | 低減できる |
| 抵抗接地 | 確実に動作 | 中程度 |
| 消弧リアクトル接地 | 最も検出しにくい | 線間電圧に耐える設計が必要 |
表1 中性点接地方式の比較(一般的な整理)
比較は、地絡電流の大きさを軸に考えると覚えやすくなります。
- 地絡電流が大きい(直接接地)→ 継電器は確実に動く、健全相の電圧は上がらない。ただし通信線への誘導障害が大きく、事故時の電圧低下も大きい
- 地絡電流が小さい(非接地・消弧リアクトル)→ 誘導障害が小さく、アークも消えやすい。ただし健全相の電圧が上がり、継電器が動作しにくい
- 抵抗接地はその中間で、電圧上昇・誘導障害・継電器の動作をほどよく両立させる
保護継電器の動作はどう違うか
直接接地系や抵抗接地系では、大きな地絡電流が流れるので、その電流を検出する地絡過電流継電器などで確実に動作させられます。
非接地系では地絡電流が小さく、しかも負荷電流と区別しにくくなります。そこで、地絡で生じる零相電圧を検出する地絡過電圧継電器と、零相電流の向きを見る地絡方向継電器を組み合わせます。零相電圧は、接地形計器用変圧器などで取り出します。
消弧リアクトル接地系では、リアクトルが容量性の電流を打ち消してしまうため、さらに検出が難しくなります。そこで、リアクトルに並列に抵抗を入れ、有効分の電流を流して継電器が検出できるようにする方式が使われます。
日本の電圧階級ごとの使い分け
日本の送配電では、電圧が高いほど、直接接地に近い方式が使われる傾向があります。電圧が高いほど絶縁にかかる費用が大きくなるので、健全相の電圧上昇を抑えて絶縁を低減できる効果が大きくなるからです。一方、低い電圧では地絡電流を小さく保つほうが重視されます。図8は、参考書でよく整理される目安です。
- 6.6 kV の高圧配電線は非接地が基本です。地絡電流が小さく、設備もかんたんで済みます
- 66・77 kV 級では、雷による一時的な地絡を自然消滅させる目的で、消弧リアクトル接地が使われてきました。抵抗接地も使われます
- 超高圧(275 kV 以上)の送電線は、絶縁費用を下げる効果が大きいので直接接地です。大電流による誘導障害は、送電線の架空地線や電線の配置(ねん架)で抑えます
その間の電圧階級の線引きは、系統の事情で変わります。試験では「高圧配電は非接地、超高圧は直接接地」という両端の対応が確実に問われます。
送電鉄塔の上に張る架空地線は、雷から電線を守るためのもので、中性点接地とは別の話ですが、地絡の原因になる雷害を減らす役目を持ちます(図9)。

- 架空地線 電線を雷から守る
- 腕金 碍子連を支える
- 碍子連 電線を鉄塔から絶縁して吊る
- 電線 碍子連の下端から、電線へつながる
例題:中性点接地方式の正誤と計算
正誤問題は、まず「地絡電流が大きい方式か小さい方式か」で分けると解きやすくなります。計算問題は、図10の順で式を選びます。
解答と解説を見る
誤っているのは (3) です。
- (1) 正しい。 で、静電容量を流れるので 90° 進みです。
- (2) 正しい。直接接地は健全相の電圧上昇が小さいので、絶縁を低減できます。
- (3) 誤り。地絡電流が大きい直接接地のほうが誘導障害は大きく、抵抗接地は抵抗で電流を制限するので、直接接地より小さくなります。
- (4) 正しい。 で並列共振させ、地絡電流をほぼ 0 にします。
- (5) 正しい。非接地系は地絡電流が小さいので、零相電圧と零相電流の位相で地絡を見分けます。
解答と解説を見る
相電圧は
(a) に代入します。
検算: で一致します。
(b) に代入します。
検算:リアクトルの電流 で、 とほぼ等しく、打ち消し合います。
答え:(a) 約 43 A (b) 約 2.35 H
試験では、 の「3」を落とす間違いが多く見られます。健全相 2 本ぶんの電流が合成される結果、1 線あたりの容量の 3 倍になることを式と一緒に覚えておきます。
よくある質問
非接地方式なのに地絡電流が流れるのはなぜですか。
電線と大地の間には静電容量があり、地絡した相の電圧がかかると、その容量を通して電流が流れるためです。接地していなくても、健全相の対地静電容量が電流の戻り道になります。
直接接地方式を低い電圧で使わないのはなぜですか。
地絡電流が大きく、通信線への誘導障害や機器への負担が大きくなるためです。低い電圧では絶縁費用の差が小さいので、地絡電流を小さく保てる非接地や抵抗接地が選ばれます。
消弧リアクトル接地の弱点は何ですか。
地絡電流がほぼ 0 になるので、継電器が地絡を検出しにくいことです。そのため、リアクトルに並列に抵抗を入れて有効分の電流を流し、検出できるようにします。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
中性点接地の目的を、電圧・保護・事故の消滅の観点から挙げると?
健全相の電圧上昇と異常電圧を抑える、地絡継電器を確実に動作させる、地絡電流を小さくしてアークを消す、の3つの観点です。
非接地系の1線地絡電流の式は?
(進み電流)です。 は1線あたりの対地静電容量です。
非接地系で1線地絡したとき、健全相の対地電圧は何倍になる?
相電圧の 倍(線間電圧)になります。
消弧リアクトルのインダクタンスの式は?
です。並列共振で地絡電流を打ち消します。
地絡電流が大きい方式と小さい方式で、誘導障害と継電器の動作はどう違う?
大きい方式(直接接地)は誘導障害が大きく、継電器は確実に動作します。小さい方式(非接地・消弧リアクトル)は誘導障害が小さく、継電器は動作しにくくなります。
高圧配電(6.6 kV)と超高圧送電で、それぞれ使われる方式は?
6.6 kV は非接地、超高圧は直接接地です。
まとめ
- 中性点接地方式は、1線地絡のときの電流と電圧を決める。種類は非接地・直接・抵抗・消弧リアクトルの4つ
- 非接地系の地絡電流は で、健全相の電圧は 倍になる
- 消弧リアクトルは で地絡電流を打ち消し、アークを自然消滅させる
- 地絡電流が大きいほど、継電器は確実に動き、電圧は上がりにくい。代わりに誘導障害が大きい
- 日本では、6.6 kV 配電は非接地、超高圧送電は直接接地が基本
変圧器の低圧側に施す B 種接地工事の抵抗値は、法規の 接地工事の種類 で 150/Ig から求めます。ケーブルの対地静電容量が大きいと地絡電流も大きくなります。その静電容量と充電電流は地中送電線路で扱います。次は、変電所で電圧を変える機器のしくみを、変圧器の巻数比で確認しましょう。








