電線は、張りすぎると切れ、ゆるめると地面の近くまで垂れ下がります。支持物のあいだに電線を張るときは、たるみ(弛度)を適切な大きさにして、電線にかかる張力を安全な範囲におさめます。電験三種の「法規」では、たるみの式 D = W S 2 8 T D = \dfrac{WS^{2}}{8T} D = 8 T W S 2 、電線の実長、安全率、風圧荷重、支線の張力が問われます(電力の送電線の問題でも同じ式を使います)。この記事では、式を力のつり合いから導き、6問の例題で数値を求める手順まで整理します。
電線のたるみと支線の全体像
たるみの式
D = W S 2 / ( 8 T ) D = WS^{2}/(8T) D = W S 2 / ( 8 T ) 。半分の電線のモーメントのつり合いから導く
電線の実長
L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) L = S + 8D^{2}/(3S) L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) 。温度が上がるとのびて、たるみが増える
安全率と荷重
許容張力は引張強さ÷安全率。荷重は自重と風圧の合成(第58条・第66条)
支線の張力
水平分力が電線の張力とつり合う。T w = T / sin θ T_{\mathrm{w}} = T/\sin\theta T w = T / sin θ
曲がる箇所の支線
水平角度 φ \varphi φ の合力は H = 2 T sin ( φ / 2 ) H = 2T\sin(\varphi/2) H = 2 T sin ( φ /2 ) (第62条)
支線の強さ
電線のたるみとは
架空電線は、鉄塔や電柱などの支持物のあいだに張ります。隣り合う支持物の水平距離を径間といい、S S S [m] で表します。電線は自分の重さで下に垂れるので、2つの支持点を結ぶ線から、電線のいちばん低い点までに垂直な距離ができます。これがたるみ(弛度)D D D [m] です。支持点の高さが等しいとして考えます。
1 鉄塔(左) 2 鉄塔(右) 3 電線のたるみ 4 川の水面 鉄塔(左) 電線を支える支持物鉄塔(右) 2基のあいだの水平距離が径間電線のたるみ 中央がいちばん下がる川の水面 鉄塔と電線が映っている図1 川をはさんだ2基の鉄塔と、そのあいだにたるむ電線(写真はイメージ)
写真のように、電線は支持点から中央に向かって下がり、中央がいちばん低くなります。
支持物
支持物
たるみ D
水平張力 T
径間 S
実際は D が S よりずっと小さい。図ではたるみを大きく描いている
図2 径間 S、たるみ D、水平張力 T の関係。たるみは大きく描いている
図2のとおり、いちばん低い点では、電線の張力は水平を向きます。これを水平張力 T T T [N] といいます。電線の1 m あたりの荷重を W W W [N/m] とすると、S S S 、D D D 、T T T 、W W W の関係が次の節の式で決まります。
たるみの大きさは、大きすぎても小さすぎても困ります。
たるみの大きさ 起こること 小さい(強く張る) 張力が大きくなり、電線が切れやすい。支持物にかかる力も大きい 大きい(ゆるく張る) 地面や建造物に近づく。風で揺れて、ほかの電線に触れやすい
たるみの計算式の導き方
電線の左半分を取り出します。いちばん低い点を O、左の支持点を A とします。径間に比べてたるみは小さいので、電線の長さは径間 S S S に等しいとみなします。
D
T
WS/2
A
T
O
WS/2
S/4
A まわりのモーメントのつり合い(力 × 腕の長さ)
T × D = (WS/2) × (S/4) = WS2 /8
よって D = WS2 / (8T)
図3 電線の半分にはたらく力と、支持点 A まわりのモーメントのつり合い
図3のとおり、半分の電線にはたらく力は3つです。O 点で反対側の電線が引く水平張力 T T T 、半分の電線の重さ W S / 2 WS/2 W S /2 (下向き)、A 点で支持物が電線を引く力です。重さは、O から S / 4 S/4 S /4 の位置にはたらくとみなせます。A 点の力は A 点まわりのモーメントに入らないので、残る2つでつり合いを立てます。
T × D = W S 2 × S 4 D = W S 2 8 T \begin{aligned}
T \times D &= \dfrac{WS}{2} \times \dfrac{S}{4} \\
D &= \dfrac{WS^{2}}{8T}
\end{aligned} T × D D = 2 W S × 4 S = 8 T W S 2
D D D は [m]、W W W は [N/m]、S S S は [m]、T T T は [N] です。この式から、たるみの変わり方が読み取れます。
条件を変える たるみ D D D 径間 S S S を 2 倍にする 4 倍になる 荷重 W W W を 2 倍にする 2 倍になる 水平張力 T T T を 2 倍にする 1 / 2 1/2 1/2 倍になる
注意
張力が kN で与えられたら、N に直してから入れます(30 kN は 30000 N)。支持点の張力は水平張力よりわずかに大きいですが、たるみが径間より十分小さいので、同じ値として扱います。問題文に指示があれば、それに従います。
解答と解説を見る T = 30 k N = 30000 N T = 30\ \mathrm{kN} = 30000\ \mathrm{N} T = 30 kN = 30000 N を入れます。
D = W S 2 8 T = 15 × 200 2 8 × 30000 = 600000 240000 = 2.5 [ m ] \begin{aligned}
D &= \dfrac{WS^{2}}{8T} \\
&= \dfrac{15 \times 200^{2}}{8 \times 30000} \\
&= \dfrac{600000}{240000} \\
&= 2.5\ \mathrm{[m]}
\end{aligned} D = 8 T W S 2 = 8 × 30000 15 × 20 0 2 = 240000 600000 = 2.5 [ m ]
電線の実長の求め方
電線は、たるむぶん、径間 S S S より少し長くなります。電線の長さ(実長)L L L は、たるみが小さいとき、放物線の長さの近似式で求められます。
L = S + 8 D 2 3 S L = S + \dfrac{8D^{2}}{3S} L = S + 3 S 8 D 2
L − S L - S L − S が、径間より長くなる量です。S = 200 m S = 200\ \mathrm{m} S = 200 m のとき、たるみ D D D と L − S L - S L − S の関係は次のようになります。
たるみ D D D [m] L − S L - S L − S [m]1 0.013 2.5 0.083 4 0.213 6 0.48
たるみが 6 m(径間の3 %)でも、実長が径間より長くなる量は 0.48 m(0.24 %)です。実長のわずかな変化が、たるみを大きく変えます。
解答と解説を見る L = S + 8 D 2 3 S = 200 + 8 × 2.5 2 3 × 200 = 200 + 50 600 ≒ 200.083 [ m ] \begin{aligned}
L &= S + \dfrac{8D^{2}}{3S} \\
&= 200 + \dfrac{8 \times 2.5^{2}}{3 \times 200} \\
&= 200 + \dfrac{50}{600} \\
&\fallingdotseq 200.083\ \mathrm{[m]}
\end{aligned} L = S + 3 S 8 D 2 = 200 + 3 × 200 8 × 2. 5 2 = 200 + 600 50 ≒ 200.083 [ m ] 径間より約 8.3 cm 長いだけです。
温度が上がるとたるみはどう変わるか
夏に気温が上がると電線はのび、冬に下がると縮みます。径間 S S S は変わらないので、のびた分は、たるみが増えることで吸収されます。
D
D'
気温が低いとき(たるみ D)
気温が高いとき(D')
電線がのびた分だけ、同じ径間でたるみが増える
図4 温度が上がると電線がのび、たるみが D から D' に増える。縦は大きく描いている
図4のとおり、温度変化の前後で実長の式を並べます。前を D D D 、L L L 、後を D ′ D' D ′ 、L ′ L' L ′ とし、実長の差を Δ L = L ′ − L \Delta L = L' - L Δ L = L ′ − L とします。
8 D ′ 2 3 S − 8 D 2 3 S = Δ L D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L 8 \begin{aligned}
\dfrac{8D'^{2}}{3S} - \dfrac{8D^{2}}{3S} &= \Delta L \\
D'^{2} &= D^{2} + \dfrac{3S\,\Delta L}{8}
\end{aligned} 3 S 8 D ′ 2 − 3 S 8 D 2 D ′ 2 = Δ L = D 2 + 8 3 S Δ L
温度が Δ t \Delta t Δ t [℃] 上がったときの電線ののびは、線膨張係数を α \alpha α [1/℃] として、次のとおりです。
Δ L = α S Δ t \Delta L = \alpha S \Delta t Δ L = α S Δ t
温度が下がるときは Δ t \Delta t Δ t が負になるので、Δ L \Delta L Δ L も負になり、たるみは小さくなります。
例題3
例題2の電線(径間 200 m、たるみ 2.5 m)の温度が 20 ℃ 上がった。線膨張係数を 1.7 × 10 − 5 [ 1 / ∘ C ] 1.7 \times 10^{-5}\ \mathrm{[1/{}^{\circ}C]} 1.7 × 1 0 − 5 [ 1/ ∘ C ] とするとき、温度が上がった後のたるみ D ′ D' D ′ は何 m か。径間は変わらず、実長は温度によるのびだけで変わるものとする。
解答と解説を見る まず、電線ののびを求めます。
Δ L = α S Δ t = 1.7 × 10 − 5 × 200 × 20 = 0.068 [ m ] \begin{aligned}
\Delta L &= \alpha S \Delta t \\
&= 1.7 \times 10^{-5} \times 200 \times 20 \\
&= 0.068\ \mathrm{[m]}
\end{aligned} Δ L = α S Δ t = 1.7 × 1 0 − 5 × 200 × 20 = 0.068 [ m ] 次に、D ′ D' D ′ を求めます。
D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L 8 = 2.5 2 + 3 × 200 × 0.068 8 = 6.25 + 5.1 = 11.35 D ′ ≒ 3.37 [ m ] \begin{aligned}
D'^{2} &= D^{2} + \dfrac{3S\,\Delta L}{8} \\
&= 2.5^{2} + \dfrac{3 \times 200 \times 0.068}{8} \\
&= 6.25 + 5.1 \\
&= 11.35 \\
D' &\fallingdotseq 3.37\ \mathrm{[m]}
\end{aligned} D ′ 2 D ′ = D 2 + 8 3 S Δ L = 2. 5 2 + 8 3 × 200 × 0.068 = 6.25 + 5.1 = 11.35 ≒ 3.37 [ m ] 実長が 6.8 cm のびただけで、たるみは 2.5 m から約 3.37 m(約 0.87 m 増)になります。
電線の安全率と許容張力
電技解釈 第66条は、高圧架空電線(ケーブルを除く)を、荷重が加わったときの引張強さに対する安全率が一定の値以上になる弛度で施設するよう定めています。安全率は、次のように表します。
安全率 = 引張強さ 最大張力 \text{安全率} = \dfrac{\text{引張強さ}}{\text{最大張力}} 安全率 = 最大張力 引張強さ
安全率が決まっていれば、許容できる張力は、引張強さを安全率で割って求まります。66-1表は次のとおりです。
電線の種類 安全率 硬銅線・耐熱銅合金線 2.2 以上 その他 2.5 以上
荷重は、その地方の平均温度と最低温度のそれぞれで計算します。荷重は、電線の重量と風圧荷重の合成荷重です。風圧荷重は電線路に直角にはたらくものとし、乙種風圧荷重を適用するときは、被氷荷重(氷の重さ)も加えます。低圧架空電線でも、使用電圧が 300 V を超えるとき、または多心型電線のときは、これに準じます(第2項)。特別高圧架空電線も、第85条でこの規定に準じます。電圧の区分は 電気工作物の区分とは で確認できます。
例題4
引張強さ 33 kN の硬銅より線を、径間 150 m、高低差のない支持物のあいだに張る。荷重(自重と風圧の合成)は 12 N/m である。第66条の安全率を満たすためには、たるみを最低何 m にする必要があるか。水平張力が最大張力に等しいものとする。
解答と解説を見る 硬銅線の安全率は 2.2 なので、許容張力を求めます。
T = 33 2.2 = 15 [ k N ] = 15000 [ N ] \begin{aligned}
T &= \dfrac{33}{2.2} \\
&= 15\ \mathrm{[kN]} \\
&= 15000\ \mathrm{[N]}
\end{aligned} T = 2.2 33 = 15 [ kN ] = 15000 [ N ] 張力がこの値のとき、たるみはいちばん小さくなります。
D = W S 2 8 T = 12 × 150 2 8 × 15000 = 270000 120000 = 2.25 [ m ] \begin{aligned}
D &= \dfrac{WS^{2}}{8T} \\
&= \dfrac{12 \times 150^{2}}{8 \times 15000} \\
&= \dfrac{270000}{120000} \\
&= 2.25\ \mathrm{[m]}
\end{aligned} D = 8 T W S 2 = 8 × 15000 12 × 15 0 2 = 120000 270000 = 2.25 [ m ] たるみを 2.25 m より小さくすると、張力が 15 kN を超えて、安全率が 2.2 を下回ります。最低 2.25 m 必要です。
風圧荷重と氷雪の荷重
電線には、自分の重さのほかに、風や氷雪の荷重がかかります。電技解釈 第58条は、風圧荷重を甲種・乙種・丙種・着雪時の4つに分けています。風速は、気象庁の「地上気象観測指針」が定める10分間平均風速です。
種類 氷雪の付着 風圧の大きさ 甲種 なし 垂直投影面に 980 Pa 乙種 厚さ 6 mm、比重 0.9 の氷雪 甲種の 0.5 倍 丙種 なし 甲種の 0.5 倍 着雪時 比重 0.6 の雪が同心円状 甲種の 0.3 倍
980 Pa は架渉線(電線)の値です。多導体(2条ごとに水平に並べ、電線の間隔が外径の20倍以下のもの)は 880 Pa です。着雪時風圧荷重は、着雪厚さの大きい地域の異常着雪時想定荷重を計算するとき、次の58-2表にかかわらず適用します。
雪が付くと電線は太くなり、重さも、風を受ける面も増えます。
1 雪が付いた電線 2 奥の電線 3 電柱 4 腕木の上の雪 雪が付いた電線 電線のまわりに雪が厚く付いている奥の電線 雪の付き方がちがう電線電柱 雪をかぶっている腕木の上の雪 電柱の上部に積もっている図5 雪が付いて太くなった電線(写真はイメージ)
甲種の風圧荷重 w w w は、圧力に電線の垂直投影面積をかけて求めます。電線の外径を d d d [m] とすると、長さ 1 m あたりの垂直投影面積は d [ m 2 ] d\ \mathrm{[m^2]} d [ m 2 ] です。
w = 980 × d [ N / m ] w = 980 \times d\ \mathrm{[N/m]} w = 980 × d [ N/m ]
外径 12 mm(0.012 m)の電線なら w = 980 × 0.012 = 11.76 N / m w = 980 \times 0.012 = 11.76\ \mathrm{N/m} w = 980 × 0.012 = 11.76 N/m です。乙種では、氷雪が電線の周囲 6 mm に付くので、外径は d + 0.012 d + 0.012 d + 0.012 m になり、風圧は甲種の 0.5 倍なので w = 0.5 × 980 × ( d + 0.012 ) w = 0.5 \times 980 \times (d + 0.012) w = 0.5 × 980 × ( d + 0.012 ) です。
電線の重さは下向き、風圧は水平なので、直角に合成します。電線の重さを W 0 W_{0} W 0 [N/m](乙種では氷の重さも含める)とすると、合成荷重 W W W は次のとおりです。
W = W 0 2 + w 2 W = \sqrt{W_{0}^{2} + w^{2}} W = W 0 2 + w 2
たとえば、W 0 = 15 N / m W_{0} = 15\ \mathrm{N/m} W 0 = 15 N/m 、w = 10 N / m w = 10\ \mathrm{N/m} w = 10 N/m なら、W = 15 2 + 10 2 = 325 ≒ 18.0 N / m W = \sqrt{15^{2} + 10^{2}} = \sqrt{325} \fallingdotseq 18.0\ \mathrm{N/m} W = 1 5 2 + 1 0 2 = 325 ≒ 18.0 N/m です。この W W W を、たるみの式 D = W S 2 / ( 8 T ) D = WS^{2}/(8T) D = W S 2 / ( 8 T ) に入れます。
どの風圧荷重を使うかは、58-2表で季節と地方により決まります。
季節・地方 適用する風圧荷重 高温季(全ての地方) 甲種 低温季・氷雪が多い・海岸地など 甲種か乙種の大きいほう 低温季・氷雪が多い・上記以外 乙種 低温季・氷雪が多い地方以外 丙種
「海岸地など」は、低温季に最大風圧を生じる地方です。人家が多く連なる場所では、低圧・高圧の架空電線路の支持物と架渉線に、甲種や乙種に代えて丙種を適用できます。
支線とは
電柱の上部には、電線の張力が横向きにかかります。電線路が曲がる箇所や、電線を引き留める箇所では、張力が打ち消し合わず、電柱が傾こうとします。これを防ぐために、電柱の上部から斜めに地面へ張る線が支線です。
1 コンクリート柱 2 支線 3 黄色の支線ガード 4 地面に入るところ コンクリート柱 電線を支える支持物支線 より線を斜めに張って、柱を引く黄色の支線ガード 地際の支線を覆う黄色の筒地面に入るところ 支線の根もとが固定される図6 柱から地面へ斜めに下りる支線。地面に近い部分は黄色の支線ガードで覆われている(写真はイメージ)
電線を支える側にも、支線が付いています。
1 がいし 2 腕木 3 支線 がいし 電線を絶縁して支える腕木 がいしを取り付ける木製の部材支線 電柱を引いて傾きを防ぐ図7 木製の腕木に付いたピンがいしと、右下へ下がる支線(写真はイメージ)
写真の腕木は木製です。鋼製のものは腕金といい、電技解釈は腕金類として扱います。
支線のうち、場所や用途に関する第61条の規定は、次のとおりです。
道路を横断する支線の高さは、路面上 5 m 以上(技術上やむを得ず、交通に支障がないときは 4.5 m 以上、歩行の用にのみ供する部分は 2.5 m 以上)(第2項)
低圧または高圧の架空電線路の支持物の支線で、電線と接触するおそれがあるものは、その上部にがいしを入れる。低圧架空電線路の支線は、水田その他の湿地以外の場所では不要(第3項)
支線は、同等以上の効力のある支柱で代えられる(第4項)
支線の張力の求め方
電柱の上部に、電線が水平方向に張力 T T T で引いているとします。支線の張力を T w T_{\mathrm{w}} T w 、支線と電柱のなす角を θ \theta θ とします。
電線の
張力 T
Tw
Tw sinθ
Tw cosθ
θ
h
l
水平方向のつり合い:Tw sinθ = T
sinθ = l / √(h2 + l2 )(θ は支線と電柱のなす角)
鉛直分力 Tw cosθ は電柱を下へ押す
図8 電柱の上部にかかる力。支線の水平分力が電線の張力 T とつり合う
図8のとおり、電線の取付点と支線の取付点が同じ高さのとき、支線の張力の水平分力 T w sin θ T_{\mathrm{w}}\sin\theta T w sin θ が T T T とつり合います。鉛直分力 T w cos θ T_{\mathrm{w}}\cos\theta T w cos θ は電柱を下へ押します。θ \theta θ は、支線の取付高さを h h h 、根もとから支線の地面の固定点までの水平距離を l l l として、sin θ = l / h 2 + l 2 \sin\theta = l/\sqrt{h^{2} + l^{2}} sin θ = l / h 2 + l 2 で求まります。
T w sin θ = T T w = T sin θ \begin{aligned}
T_{\mathrm{w}} \sin\theta &= T \\
T_{\mathrm{w}} &= \dfrac{T}{\sin\theta}
\end{aligned} T w sin θ T w = T = sin θ T
sin θ \sin\theta sin θ は 1 より小さいので、支線の張力は電線の張力より大きくなります。支線を立てるほど(θ \theta θ を小さくするほど)、張力は大きくなります。
支線と電柱のなす角 θ \theta θ T w / T T_{\mathrm{w}}/T T w / T 30° 2.00 45° 1.41 60° 1.15
電線の取付高さ h 1 h_{1} h 1 と、支線の取付高さ h 2 h_{2} h 2 が違うときは、電柱の根もとのまわりのモーメントでつり合わせます。
電線の張力 T
根もと
Tw
Tw sinθ
θ
h1
h2
l
根もとまわりのモーメントのつり合い
T × h1 = Tw sinθ × h2
sinθ = l / √(h2 2 + l2 )
図9 取付高さが違うときは、電柱の根もとまわりのモーメントでつり合わせる
図9のとおり、電線の張力 T T T が根もとのまわりに回す力は T × h 1 T \times h_{1} T × h 1 、支線の水平分力が逆向きに回す力は T w sin θ × h 2 T_{\mathrm{w}}\sin\theta \times h_{2} T w sin θ × h 2 です。
T × h 1 = T w sin θ × h 2 T w = T h 1 h 2 sin θ \begin{aligned}
T \times h_{1} &= T_{\mathrm{w}}\sin\theta \times h_{2} \\
T_{\mathrm{w}} &= \dfrac{T h_{1}}{h_{2}\sin\theta}
\end{aligned} T × h 1 T w = T w sin θ × h 2 = h 2 sin θ T h 1
h 1 = h 2 h_{1} = h_{2} h 1 = h 2 なら、T w = T / sin θ T_{\mathrm{w}} = T/\sin\theta T w = T / sin θ に戻ります。支線を電線より低い位置に付けると、支線の水平分力は T h 1 / h 2 T h_{1}/h_{2} T h 1 / h 2 と、電線の張力より大きくなります。
例題5
地上 10 m の位置に、電線が水平方向に 6 kN の張力でかかっている。地上 8 m の位置から、電柱の根もとと水平に 6 m 離れた地点まで支線を張る。支線の張力 T w T_{\mathrm{w}} T w は何 kN か。
解答と解説を見る 支線の長さは 8 2 + 6 2 = 10 m \sqrt{8^{2} + 6^{2}} = 10\ \mathrm{m} 8 2 + 6 2 = 10 m です。
sin θ = 6 10 = 0.6 \sin\theta = \dfrac{6}{10} = 0.6 sin θ = 10 6 = 0.6 根もとのまわりのモーメントをつり合わせます。
6 × 10 = T w × 0.6 × 8 T w = 60 4.8 = 12.5 [ k N ] \begin{aligned}
6 \times 10 &= T_{\mathrm{w}} \times 0.6 \times 8 \\
T_{\mathrm{w}} &= \dfrac{60}{4.8} \\
&= 12.5\ \mathrm{[kN]}
\end{aligned} 6 × 10 T w = T w × 0.6 × 8 = 4.8 60 = 12.5 [ kN ] 検算です。水平分力は 12.5 × 0.6 = 7.5 k N 12.5 \times 0.6 = 7.5\ \mathrm{kN} 12.5 × 0.6 = 7.5 kN で、T h 1 / h 2 = 6 × 10 / 8 = 7.5 k N T h_{1}/h_{2} = 6 \times 10/8 = 7.5\ \mathrm{kN} T h 1 / h 2 = 6 × 10/8 = 7.5 kN と一致します。
電線路が曲がる箇所の支線
電線路がまっすぐなら、両側の電線の張力は電柱の上で打ち消し合います。曲がる箇所では、2本の張力が1つの合力になり、電柱を曲がりの内側へ引きます。電線路が曲がる角度を水平角度 φ \varphi φ といい、まっすぐなときが 0° です。
T
T
合力 H
支線
H を受ける
φ
電柱
延長線
水平角度 φ:電線路が曲がる角度(まっすぐなら 0°)
H = 2T sin(φ/2)
φ = 60° のとき H = T
支線は H の反対側に張る
図10 電線路が曲がる箇所の平面図。2本の電線の張力の合力 H を、反対側の支線が受ける
図10のとおり、2本の電線の張力はどちらも T T T で、2本のなす角は 180 ∘ − φ 180^{\circ} - \varphi 18 0 ∘ − φ です。合力 H H H は、次のとおりです。
H = 2 T cos 180 ∘ − φ 2 = 2 T sin φ 2 \begin{aligned}
H &= 2T\cos\dfrac{180^{\circ} - \varphi}{2} \\
&= 2T\sin\dfrac{\varphi}{2}
\end{aligned} H = 2 T cos 2 18 0 ∘ − φ = 2 T sin 2 φ
支線は、この合力 H H H の反対側(曲がりの外側)に張ります。H H H が水平方向のとき、支線の張力は T w = H / sin θ T_{\mathrm{w}} = H/\sin\theta T w = H / sin θ です。水平角度が大きいほど、合力も大きくなります。
水平角度 φ \varphi φ 合力 H H H (T T T の何倍か) 5° 0.087 30° 0.52 60° 1.00 90° 1.41 120° 1.73
電技解釈 第62条は、高圧または特別高圧の架空電線路の支持物に使う木柱、A種鉄筋コンクリート柱、A種鉄柱に、次のように支線を施設するよう定めています。
電柱の箇所 支線が耐える力 水平角度 5° 以下で、両側の径間の差が大きい 径間の差で生じる不平均張力による水平力 水平角度 5° を超える 全架渉線の水平横分力(各架渉線の想定最大張力から生じる) 全架渉線を引き留める 想定最大張力に等しい不平均張力による水平力
水平角度 5° 以下で径間の差が大きい箇所の支線は電線路に平行な方向の両側に、引き留める箇所の支線は電線路の方向に設けます。
支線の安全率と素線の条数
支線の強さについて、第61条第1項は次のように定めています。第62条と第70条第3項の規定により施設する支線は、別の値です。
項目 原則 第62条・第70条第3項 引張強さ 10.7 kN 以上 6.46 kN 以上 安全率 2.5 以上 1.5 以上
第70条第3項の支線は、低圧または高圧の保安工事で、直線路が連続する箇所に設ける支線です。そのほかの規定は、次のとおりです。
支線により線を使うときは、素線を3条以上より合わせる
素線は、直径が 2 mm 以上、かつ引張強さが 0.69 kN/mm² 以上の金属線
木柱に施設する場合を除き、地中の部分と地表上 30 cm までの地際の部分は、耐食性のあるもの、または亜鉛めっきを施した鉄棒を使い、容易に腐食しにくい根かせに堅ろうに取り付ける
支線の根かせは、支線の引張荷重に十分耐えるように施設する
素線の条数は、次の順で求めます。支線の張力 T w T_{\mathrm{w}} T w に安全率を掛けて必要な引張強さを出し、素線1条の引張強さで割って、切り上げます。素線1条の引張強さは、断面積に 0.69 kN/mm² を掛けて求めます。
例題6
水平角度 60° の箇所の電柱に、電線の張力が両側とも 6 kN の電線が1本通っている。地上 8 m の電線の取付点と同じ高さから、電柱の根もとと水平に 6 m 離れた地点へ、曲がりの外側に支線を張る。第62条の規定により施設する支線(安全率 1.5)の張力 T w T_{\mathrm{w}} T w を求め、直径 2.6 mm の素線(引張強さは 0.69 kN/mm² とする)を使うとき、最少の素線の条数を求めよ。
解答と解説を見る まず、水平角度 60° の合力です。
H = 2 T sin φ 2 = 2 × 6 × sin 30 ∘ = 6 [ k N ] \begin{aligned}
H &= 2T\sin\dfrac{\varphi}{2} \\
&= 2 \times 6 \times \sin 30^{\circ} \\
&= 6\ \mathrm{[kN]}
\end{aligned} H = 2 T sin 2 φ = 2 × 6 × sin 3 0 ∘ = 6 [ kN ] 支線の長さは 8 2 + 6 2 = 10 m \sqrt{8^{2} + 6^{2}} = 10\ \mathrm{m} 8 2 + 6 2 = 10 m 、sin θ = 0.6 \sin\theta = 0.6 sin θ = 0.6 です。
T w = H sin θ = 6 0.6 = 10 [ k N ] \begin{aligned}
T_{\mathrm{w}} &= \dfrac{H}{\sin\theta} \\
&= \dfrac{6}{0.6} \\
&= 10\ \mathrm{[kN]}
\end{aligned} T w = sin θ H = 0.6 6 = 10 [ kN ] 安全率 1.5 から、必要な引張強さは 10 × 1.5 = 15 k N 10 \times 1.5 = 15\ \mathrm{kN} 10 × 1.5 = 15 kN です。第61条の下限の 6.46 kN も上回ります。素線1条は次の値です。
A = π × 1.3 2 ≒ 5.31 [ m m 2 ] 5.31 × 0.69 ≒ 3.66 [ k N ] \begin{aligned}
A &= \pi \times 1.3^{2} \\
&\fallingdotseq 5.31\ \mathrm{[mm^{2}]} \\
5.31 \times 0.69 &\fallingdotseq 3.66\ \mathrm{[kN]}
\end{aligned} A 5.31 × 0.69 = π × 1. 3 2 ≒ 5.31 [ m m 2 ] ≒ 3.66 [ kN ] 15 / 3.66 ≒ 4.1 15/3.66 \fallingdotseq 4.1 15/3.66 ≒ 4.1 なので、切り上げて 5 条です(3 条以上の規定も満たします)。
原則の安全率 2.5 の支線なら、必要な引張強さは 10 × 2.5 = 25 k N 10 \times 2.5 = 25\ \mathrm{kN} 10 × 2.5 = 25 kN で、25 / 3.66 ≒ 6.8 25/3.66 \fallingdotseq 6.8 25/3.66 ≒ 6.8 から 7 条になります。
よくある質問
たるみの式の T T T は、水平張力と最大張力のどちらですか?
式を導いたときの T T T は、いちばん低い点の水平張力です。支持点の張力は、重さを支える鉛直分力のぶん、水平張力よりわずかに大きくなります。たるみが径間に比べて小さいときは、ほぼ等しいので、同じ値として扱うのが普通です。問題文に水平張力と最大張力のどちらと書かれているか、等しいとみなす指示があるかを確かめます。
温度が上がると、電線の張力はどうなりますか?
温度が上がると電線がのびて、たるみが増えます。D = W S 2 / ( 8 T ) D = WS^{2}/(8T) D = W S 2 / ( 8 T ) から、たるみが増えると張力 T T T は小さくなります。冬は反対に、電線が縮んで張力が大きくなります。第66条が、平均温度と最低温度のそれぞれで荷重を計算するよう定めているのは、気温による張力の変化があるためです。
支線の θ \theta θ は、電柱とのなす角ですか、地面とのなす角ですか?
この記事では、支線と電柱のなす角を θ \theta θ とし、水平分力を T w sin θ T_{\mathrm{w}}\sin\theta T w sin θ としました。問題によっては、地面とのなす角で与えられます。その角を α \alpha α とすると、θ = 90 ∘ − α \theta = 90^{\circ} - \alpha θ = 9 0 ∘ − α なので、水平分力は T w cos α T_{\mathrm{w}}\cos\alpha T w cos α です。角度の基準を図で確かめます。
支線の張力が、電線の張力より大きくなるのはなぜですか?
支線は斜めに張るので、水平分力が電線の張力とつり合うためには、支線の張力そのものは大きくなければなりません。T w = T / sin θ T_{\mathrm{w}} = T/\sin\theta T w = T / sin θ で、sin θ \sin\theta sin θ は 1 より小さいからです。取付高さが電線より低いときは、さらに h 1 / h 2 h_{1}/h_{2} h 1 / h 2 倍になります。鉛直分力は電柱を下へ押すので、電柱はこの力にも耐える必要があります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
たるみ D D D を求める式と、各文字の単位は何ですか? D = W S 2 / ( 8 T ) D = WS^{2}/(8T) D = W S 2 / ( 8 T ) です。W W W は [N/m]、S S S は [m]、T T T は [N](kN は N に直す)です。
電線の実長の式と、温度が上がったときのたるみの求め方は? L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) L = S + 8D^{2}/(3S) L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) です。Δ L = α S Δ t \Delta L = \alpha S \Delta t Δ L = α S Δ t を求め、D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L / 8 D'^{2} = D^{2} + 3S\Delta L/8 D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L /8 から D ′ D' D ′ を出します。
高圧架空電線の安全率は、電線の種類でどう分かれますか? 硬銅線・耐熱銅合金線は 2.2 以上、その他は 2.5 以上です(第66条)。許容張力は引張強さ÷安全率です。
取付高さが違うときの、支線の張力の求め方は? 根もとのまわりのモーメントで、T h 1 = T w sin θ × h 2 T h_{1} = T_{\mathrm{w}}\sin\theta \times h_{2} T h 1 = T w sin θ × h 2 とつり合わせます。同じ高さなら T w = T / sin θ T_{\mathrm{w}} = T/\sin\theta T w = T / sin θ です。
水平角度 φ \varphi φ の箇所で、2本の電線の張力の合力は? H = 2 T sin ( φ / 2 ) H = 2T\sin(\varphi/2) H = 2 T sin ( φ /2 ) です。支線は合力の反対側に張ります。5° を超える箇所は全架渉線の水平横分力に耐える支線が要ります(第62条)。
支線の引張強さ・安全率・素線の条件は? 原則は 10.7 kN 以上、安全率 2.5 以上、第62条の支線は 6.46 kN 以上、1.5 以上です。素線は3条以上で、直径 2 mm 以上、引張強さ 0.69 kN/mm² 以上です(第61条)。
まとめ
たるみは D = W S 2 / ( 8 T ) D = WS^{2}/(8T) D = W S 2 / ( 8 T ) 。半分の電線の、支持点まわりのモーメントのつり合いから導く
実長は L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) L = S + 8D^{2}/(3S) L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) 。温度が上がると Δ L = α S Δ t \Delta L = \alpha S \Delta t Δ L = α S Δ t だけのびて、D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L / 8 D'^{2} = D^{2} + 3S\Delta L/8 D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L /8 になる
高圧架空電線の安全率は、硬銅線・耐熱銅合金線が 2.2 以上、その他が 2.5 以上。荷重は自重と風圧の合成(第58条・第66条)
支線の張力は T w = T h 1 / ( h 2 sin θ ) T_{\mathrm{w}} = T h_{1}/(h_{2}\sin\theta) T w = T h 1 / ( h 2 sin θ ) 。同じ高さなら T / sin θ T/\sin\theta T / sin θ
曲がる箇所の合力は H = 2 T sin ( φ / 2 ) H = 2T\sin(\varphi/2) H = 2 T sin ( φ /2 ) 。支線は反対側に張る(第62条)
支線は引張強さ 10.7 kN 以上、安全率 2.5 以上、素線3条以上(第61条)
求めるもの 式 たるみ D = W S 2 / ( 8 T ) D = WS^{2}/(8T) D = W S 2 / ( 8 T ) 実長 L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) L = S + 8D^{2}/(3S) L = S + 8 D 2 / ( 3 S ) 温度上昇後のたるみ D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L / 8 D'^{2} = D^{2} + 3S\Delta L/8 D ′ 2 = D 2 + 3 S Δ L /8 合成荷重 W = W 0 2 + w 2 W = \sqrt{W_{0}^{2} + w^{2}} W = W 0 2 + w 2 支線の張力 T w = T h 1 / ( h 2 sin θ ) T_{\mathrm{w}} = T h_{1}/(h_{2}\sin\theta) T w = T h 1 / ( h 2 sin θ ) 曲がる箇所の合力 H = 2 T sin ( φ / 2 ) H = 2T\sin(\varphi/2) H = 2 T sin ( φ /2 )
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