保護協調とは|高圧受電設備の過電流継電器と配電用変電所の動作時間を図解
電験三種の法規で学ぶ保護協調を整理。事故点に近い装置だけが動く考え方、CB 形と PF・S 形、過電流継電器の整定と動作特性曲線、短絡電流と遮断容量を、図と例題でしっかり確認できます。

この記事の目次
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需要家の構内で事故が起きても、地域一帯が停電しないようにするのが保護協調です。事故点に近い装置だけを動かし、ほかの装置は動かさないように、各装置の動作電流と動作時間をそろえます。受電設備の過電流継電器や電力ヒューズを、上流の配電用変電所の装置と合わせて決める考え方を整理します。
- 保護協調とは
- 事故点に最も近い保護装置だけが動作し、健全な部分は送電を続ける
- 保護装置の並び
- 配電用変電所、受電設備の主遮断装置、低圧の遮断器を上流から並べる
- 主遮断装置
- CB 形は遮断器と OCR、PF・S 形は負荷開閉器と電力ヒューズ
- 整定と動作特性
- CT 比、電流タップ、時限レバーを決め、曲線を重ねて確かめる
- 短絡電流と遮断容量
- 三相短絡電流を求め、定格遮断電流をそれ以上にする
保護協調とは?事故点に近い装置だけが動く考え方
電技 第14条は、電路の必要な箇所に過電流遮断器を施設して、過電流による過熱焼損から電線と電気機械器具を保護し、火災の発生を防止できるようにすると定めています。電技 第15条は、地絡が生じた場合に、電線や電気機械器具の損傷、感電、火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じると定めています。保護装置を付けるだけでなく、どの装置が先に動くかを決めておくことが、保護協調です。
保護協調とは、事故点に最も近い保護装置だけが動作し、ほかの健全な部分は送電を続けられるよう、各装置の動作電流と動作時間をそろえることです。
需要家の構内で起きた事故を、構内の装置で止められないと、事故が配電線に広がって、ほかの需要家まで停電します。これが波及事故で、報告の決まりは 電気事故報告 で扱います。

- 換気口 屋根の近くにある、空気の通り道
- 扉 箱の正面に並ぶ、金属の扉
- フェンス 敷地を囲む、金属の柵
- 基礎 箱を載せる、コンクリートの土台
配電系統の保護装置を上流から並べる
電気は、配電用変電所から高圧配電線で需要家の受電設備へ届きます。受電設備の変圧器で低圧に下げ、幹線と分岐回路へ分かれます。保護装置も、この順に上流から下流へ並びます。
分岐回路で事故が起きたときは、分岐回路の配線用遮断器が動作し、上流の装置は動作しません。上流の装置は、下流の装置が動作しなかった場合に動作する後備(バックアップ)になります。下流の装置を先に動かすために、上流の装置ほど動作時間を長く(動作電流を大きく)整定します。
受電点より電源側は電気を供給する側の設備で、受電点から先が需要家の設備です。

- 円筒形の機器 電柱の上部に付いている機器
- 碍子 電線と電柱を絶縁して支える部品
- 配電線 電柱から電柱へ渡る高圧の電線
- 電柱 機器と電線を支える柱
- 住宅 電気を使う需要家の建物
高圧受電設備の主遮断装置は CB 形と PF・S 形
高圧受電設備は、受電点に近い所に主遮断装置を置きます。主遮断装置の方式は、民間の規程で CB 形と PF・S 形に分けられています。
CB 形は、遮断器(CB)を主遮断装置にします。変流器(CT)で受電電流を測り、過電流継電器(OCR)が整定値を超える電流を検出すると、遮断器を引き外して電路を遮断します。事故電流を切るのは遮断器です。
PF・S 形は、電力ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(S)を直列に並べます。通常の負荷電流は負荷開閉器で開閉し、短絡電流は電力ヒューズが遮断します。比較的小さな容量の設備向けで、使える容量の上限は民間の規程で決められています。
二つの方式を表で比べます。
| 項目 | CB 形 | PF・S 形 |
|---|---|---|
| 事故電流を切る | 遮断器 | 電力ヒューズ |
| 事故の検出 | CT と OCR | ヒューズ自体 |
| 負荷電流の開閉 | 遮断器 | 負荷開閉器 |
過電流継電器の整定は CT 比・電流タップ・時限レバー
OCR は、CT の二次電流を見て動作する継電器です。原理と種類は 保護継電器の種類と役割 で扱います。OCR で整定するのは、次の三つです。
- CT 比:一次電流を二次電流に変える比。150/5 A なら 150 ÷ 5 = 30
- 電流タップ:動作する二次電流の大きさ
- 時限レバー:動作時間
一次側の動作電流は、次の式で求めます。
は電流タップ値 (二次側)、 は CT 比です。CT 比が 150/5 A で電流タップが 4 A なら、一次側の動作電流は です。

- 取っ手 盤の扉を開けるときに握る部分
- ケーブルラック 盤の上を通るケーブルの受け台
- 盤の扉 機器を収めた盤の正面
- 床 盤を据え付けた床
時限レバーを大きくすると、同じ電流でも動作時間が長くなります。受電設備の OCR は、上位の配電用変電所の OCR より動作時間が短くなるように整定します。整定の目安は民間の規程などで示されていて、問題では条件が題意に与えられます。
動作特性曲線を重ねて協調を確かめる
横軸に一次側の電流、縦軸に動作時間を取り、各装置の動作特性曲線を重ねて描くと、協調が取れているかを目で確かめられます。動作時間が何桁にもわたって変わるので、目盛りは両対数にします。
図7 の紺の実線は、上位(配電用変電所側)の OCR の曲線です。青の実線は、需要家側の OCR で、事故電流が 800 A 以上で動作時間が 0.06 s で一定になる瞬時要素を付けた例です。常に上位の曲線より下にあります。橙の破線は、需要家側の時限レバーを大きくし、瞬時要素も付けない例です。約 2,300 A で上位の曲線と交差し、それより大きな事故電流では上位の OCR が先に動作します。
事故電流が 3,000 A のとき、動作時間は、上位が約 0.42 s、需要家側(協調可)が 0.06 s、需要家側(協調不可)が約 0.50 s です。
短絡電流と遮断容量の求め方
主遮断装置は、設置点を通過する短絡電流を遮断できなければなりません。電技解釈 第33条 第1項は、低圧の過電流遮断器が、施設箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有することを求めています。第34条 第1項は、高圧と特別高圧の過電流遮断器のうち短絡時に作動するものに、同じ能力を求めています。あわせて、作動に伴い開閉状態を表示する装置を有することも求めています(開閉状態を容易に確認できるものは除く)。
三相短絡電流は、基準容量での定格電流と %インピーダンスから、次のように求めます。
は基準容量 、 は線間電圧 、 は基準容量でのパーセントインピーダンス です。短絡容量は で、 に等しくなります。%Z の意味と合成の手順は、%インピーダンスと短絡電流の計算 で扱います。
遮断器を選ぶときの条件は、次の表のとおりです。
| 選ぶ値 | 条件 |
|---|---|
| 定格遮断電流 | 設置点の三相短絡電流以上 |
| 遮断容量 | 設置点の三相短絡容量以上 |
電力ヒューズの限流作用と選び方の注意
電力ヒューズは、筒の中のヒューズ素子が溶断して電流を切る装置です。短絡電流が最大値(ピーク)に達する前に溶断し、電流を小さく抑えて遮断します。この性質を限流作用といいます。

- キャップ 筒の端に付いた、金属の端子
- 白い筒 中にヒューズ素子が入る容器
- 机 ヒューズを置いてある木の机
電技解釈 第34条は、高圧電路に施設するヒューズの性能を、次のように定めています。
| ヒューズ | 耐える電流 | 溶断の条件 |
|---|---|---|
| 包装ヒューズ | 定格電流の 1.3 倍 | 2 倍で 120 分以内 |
| 非包装ヒューズ | 定格電流の 1.25 倍 | 2 倍で 2 分以内 |
高圧の包装ヒューズは、上の性能を満たすもののほか、規格に適合する高圧限流ヒューズでもよいとされています(第34条 第2項)。
変圧器を電路に入れた瞬間には、定格電流より大きな励磁突入電流が短時間流れます。電動機の始動時にも、大きな始動電流が流れます。電力ヒューズは、これらの電流で溶断せず、しかも保護する機器の過電流では溶断する定格を選びます。
低圧側の協調は配線用遮断器の動作時間で見る
受電設備の低圧側では、幹線と分岐回路を配線用遮断器が保護します。電技解釈 第33条 第3項は、配線用遮断器について、定格電流の 1 倍の電流で自動的に動作しないこと、定格電流の 1.25 倍と 2 倍の電流を通じたときに、定格電流の区分ごとの時間内に自動的に動作することを定めています。この規定は、電気用品安全法の適用を受けるものを除く配線用遮断器に対するものです(電気用品安全法は 電気用品安全法と PSE マーク で扱います)。
33-2表のうち、定格電流 100 A 以下の区分を示します。時間は、その時間内に自動的に動作しなければならない上限です。
| 定格電流 | 1.25 倍 | 2 倍 |
|---|---|---|
| 30 A 以下 | 60 分 | 2 分 |
| 30 A 超 50 A 以下 | 60 分 | 4 分 |
| 50 A 超 100 A 以下 | 120 分 | 6 分 |
低圧側でも、下流の遮断器が先に動作するように、定格電流と動作特性を選びます。分岐回路の事故で、幹線の遮断器まで動作すると、ほかの分岐回路も停電します。

- ドアハンドル レバー形の取っ手
- 蝶番 扉を壁に留める金具
- 窓 扉の横にある窓
- 床 カーペットを敷いた床
例題で保護協調の数値を確かめる
例題で使う数値を、先に表で確かめます。
| 項目 | 値 | 使う例題 |
|---|---|---|
| CT 比 | 100/5 A(20 倍) | 例題1 |
| 基準容量と %Z | 20 MV·A で 12 % | 例題2 |
| 時間差の条件 | 0.3 s 以上 | 例題3 |
解答と解説を見る
受電電流は です。1.5 倍は です。CT 比は なので、二次側に換算すると です。これ以上で最も小さい電流タップは です。一次側の動作電流は です。
解答と解説を見る
基準容量での定格電流は です。三相短絡電流は 、つまり約 です。定格遮断電流は、これ以上でなければならないので、 を選びます。参考に、短絡容量は です。
解答と解説を見る
甲は、上位との差が 、、 です。 と で に満たず、 では上位より遅くなるので、不適です。乙は、差が 、、 で、すべて 以上です。答えは乙です。
解答と解説を見る
(a) は正しく、保護協調の定義のとおりです。(b) は誤りで、需要家側の OCR は上位より動作時間を短くします。(c) は正しく、負荷開閉器は負荷電流を開閉する装置です。(d) は誤りで、定格遮断電流は三相短絡電流以上にします。(e) は正しく、励磁突入電流で溶断すると、変圧器を入れるたびに停電します。答えは (a)、(c)、(e) です。
よくある質問
保護協調では、何をそろえるのですか?
各保護装置の動作電流と動作時間です。事故点に最も近い装置が先に動作するように、下流の装置を動作時間の短い側に、上流の装置を長い側に整定します。
受電設備の OCR の動作時間は、配電用変電所の OCR より長くしてよいですか?
長くしてはいけません。短くします。長くすると、構内の事故で配電用変電所の遮断器が先に動作して、ほかの需要家まで停電します。
PF・S 形で、負荷開閉器は事故電流を遮断しますか?
遮断しません。負荷開閉器は負荷電流を開閉する装置で、短絡電流を遮断する能力はありません。短絡電流を遮断するのは、電力ヒューズです。
主遮断装置の定格遮断電流は、どう選びますか?
設置点の三相短絡電流以上の値を選びます。三相短絡電流は、基準容量での定格電流 に を掛けて求めます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
保護協調とは何ですか?
事故点に最も近い保護装置だけが動作し、健全な部分は送電を続けられるよう、各装置の動作電流と動作時間をそろえることです。
CB 形と PF・S 形で、事故電流を遮断する装置は、それぞれ何ですか?
CB 形は遮断器、PF・S 形は電力ヒューズです。
OCR の一次側の動作電流は、どう求めますか?
電流タップ値に CT 比を掛けます。
動作特性曲線で、協調が取れているとはどんな状態ですか?
需要家側の曲線が、上位の曲線より下にあり、交わらない状態です。
主遮断装置の定格遮断電流は、何以上にしますか?
設置点の三相短絡電流以上にします。
電力ヒューズの限流作用とは何ですか?
短絡電流がピークに達する前に溶断し、電流を小さく抑えて遮断する性質です。
まとめ
- 保護協調は、事故点に最も近い装置だけが動作するよう、動作電流と動作時間をそろえること
- 主遮断装置は、CB 形が遮断器、PF・S 形が電力ヒューズで事故電流を遮断する
- OCR の一次側の動作電流は、電流タップ値に CT 比を掛けた値で、需要家側の曲線は上位の曲線より下にする
- 定格遮断電流は、設置点の三相短絡電流以上にする
| 方式 | 事故電流を遮断する装置 |
|---|---|
| CB 形 | 遮断器(OCR が検出) |
| PF・S 形 | 電力ヒューズ |
地絡事故の保護は 地絡保護、短絡電流の計算は %インピーダンスと短絡電流の計算 へ進んでください。








