絶縁耐力試験の試験電圧の求め方|最大使用電圧の1.5倍と試験用変圧器の容量
電験三種の法規で出る絶縁耐力試験を、最大使用電圧の求め方、電路・変圧器・回転機の試験電圧、連続10分間の加え方、試験用変圧器の容量まで整理します。低圧の絶縁抵抗との違いも例題で確かめます。

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電気主任技術者が、高圧の受電設備を新しく施設したときなどに確かめる試験の代表が絶縁耐力試験です。決められた高い電圧を連続して10分間加え、電路が絶縁破壊しないことを見ます。試験電圧は最大使用電圧に倍率を掛けて決まるので、倍率の使い分けと、試験をするための電源の容量が問われます。
- 絶縁耐力試験とは
- 高い電圧に耐えるかを見る。低圧の絶縁抵抗の測定とは別
- 最大使用電圧の求め方
- 公称電圧に 1.15/1.1 を掛ける。6600 V は 6900 V
- 電路の試験電圧
- 7000 V 以下は 1.5 倍。連続して 10 分間
- 試験回路と試験用変圧器の容量
- 充電電流 I = ωCV、容量 S = VI
- 変圧器・回転機・器具の試験
- 第16条。倍率は電路とほぼ同じ
- 低圧の電路の絶縁抵抗
- 0.1・0.2・0.4 MΩ 以上
- 例題
- 5問で試験電圧から絶縁抵抗まで解く
絶縁耐力試験とは?絶縁抵抗の測定との違い
電路は、大地から絶縁するのが原則です。これは電気設備に関する技術基準を定める省令(以下「電技」)第5条第1項の定めで、数値を含む細かい条件は電気設備の技術基準の解釈(以下「解釈」)が決めています。接地点のように絶縁できない部分は、例外として解釈第13条に挙げられています。
電技第5条第2項は、絶縁性能を、事故時に想定される異常電圧を考慮して、絶縁破壊による危険のおそれがないものにするよう求めています。低圧の電路だけは、第58条が別に決めています。その確かめ方が、電路の電圧によって次のように分かれます。
| 対象 | 確かめ方 | 条文 |
|---|---|---|
| 低圧の電路 | 絶縁抵抗の測定 | 電技第58条、解釈第14条 |
| 高圧・特別高圧の電路 | 絶縁耐力試験 | 解釈第15条 |
| 変圧器・回転機・器具など | 絶縁耐力試験 | 解釈第16条 |
図1は、2つの確かめ方を並べたものです。絶縁抵抗の測定は、低い電圧で抵抗値を読み、基準値以上かを見ます。絶縁耐力試験は、高い試験電圧を加えて、10分間耐えるかを見ます。
絶縁抵抗の測定では、計器の端子を電路に当てて、抵抗値を読みます(図2)。電路を傷めずに済む反面、高い電圧に耐えるかまでは分かりません。

最大使用電圧の求め方と1.15/1.1の読み方
試験電圧の基準になるのは、公称電圧ではなく最大使用電圧です。解釈第1条第二号は、最大使用電圧を、通常の使用状態で電路に加わる最大の線間電圧と定めています。求め方は次の3つで、上から順に当てはまるものを使います。
- イ:使用電圧が標準電圧の公称電圧に等しい電路は、使用電圧に1-1表の係数を掛けた電圧
- ロ:イ以外の電路は、電源となる機器の定格電圧。電源が変圧器なら最大タップ電圧、電源が複数あればそのうち最大のもの
- ハ:計算または実績で、イ・ロの電圧を上回ると想定されるときは、その想定される電圧
ふつうの問題で使うのはイです。係数は次のとおりです。
| 使用電圧の区分 | 係数 | 例 |
|---|---|---|
| 1000 V 以下 | 1.15 | 200 V は 230 V |
| 1000 V を超え 500000 V 未満 | 1.15/1.1 | 6600 V は 6900 V |
条文の表には、1.15/1.1 としか書かれていません。これは、公称電圧に 1.15 を掛けて 1.1 で割る、という読み方をします。6600 V の電路では、次のとおりです。
同じ計算で、22000 V は 23000 V、33000 V は 34500 V になります。500000 V 以上の係数は、この記事では扱いません。
公称電圧から試験電圧までは、図3の順に進みます。右の2段は、次の節で求めます。
電路の試験電圧と連続10分間の加え方
解釈第15条は、高圧・特別高圧の電路が、次のどちらかの絶縁性能を持つよう求めています。
- 15-1表の試験電圧を、電路と大地との間に連続して10分間加えて耐える。多心ケーブルは、心線相互間と、心線と大地との間に加える
- 電線にケーブルを使う交流の電路は、15-1表の試験電圧の2倍の直流電圧を、同じ箇所に連続して10分間加えて耐える
このほかの方法(第三号、第四号)は、この記事では扱いません。60000 V 以下の電路で、15-1表の試験電圧は次のとおりです。区分は、公称電圧ではなく最大使用電圧で決めます。
| 最大使用電圧 | 電路 | 試験電圧 |
|---|---|---|
| 7000 V 以下 | 交流の電路 | 1.5 倍の交流 |
| 7000 V 以下 | 直流の電路 | 1.5 倍の直流、または 1 倍の交流 |
| 7000 V 超 60000 V 以下 | 15000 V 以下の多重接地式 | 0.92 倍 |
| 7000 V 超 60000 V 以下 | 上記以外 | 1.25 倍(下限 10500 V) |
0.92 倍の行は、最大使用電圧が 15000 V 以下の中性点接地式で、中性線を持ち、その中性線に多重接地する電路だけに当てはまります。下限 10500 V は、1.25 倍にした値が 10500 V 未満になるとき、10500 V で試験するという意味です。接地方式の違いは、中性点接地方式の記事で扱っています。60000 V を超える電路は、中性点の接地方式や整流器の有無で倍率が変わり、非接地式は 1.25 倍、直接接地式は 0.72 倍などです。
公称電圧 6600 V の電路では、最大使用電圧が 6900 V で、7000 V 以下です。交流の試験電圧は 1.5 倍、ケーブルの直流は、その2倍です。
試験電圧を連続して10分間加え、その間に絶縁破壊が起きなければ耐えたことになります(図4)。
ケーブルの端末には、がい管や銅バー、接地線が並びます(図5)。試験電圧は、ケーブルの導体に加え、遮へいは接地します。

- 端子金具 ケーブルの導体につながる先端。試験電圧を加える側
- がい管 充電部と大地の間を絶縁する磁器
- ケーブル 絶縁体で覆われた電線。試験電圧に10分間耐える必要がある
- 銅バー 電路をつなぐ銅の板
- 接地線 緑の線。大地へ電流を逃がす
試験回路と試験用変圧器の容量の求め方
交流で試験するときの回路は、図6のとおりです。電源から電圧調整器、試験用変圧器を通して昇圧し、被試験のケーブルに加えます。電圧計は、加わっている試験電圧を確かめます。
ケーブルは、導体と遮へいの間に静電容量 を持つコンデンサのようなものです。交流の試験電圧を加えると、この に充電電流が流れます。試験用変圧器は、その電流を流せる容量が要ります。
は充電電流 [A]、 はケーブルの静電容量 [F]、 は試験電圧 [V]、 は周波数 [Hz]、 は試験用変圧器の容量 [V·A] です。ケーブルが長いほど が大きく、充電電流も容量も大きくなります。心線3本を一括して加えるときは、3本分の静電容量が並列になるので、 は1心の3倍です。
充電電流は、電圧より位相が 90° 進みます。進み電流は、リアクトルをつなぐと打ち消せます。試験回路に補償リアクトルを入れると、電源が負担する電流が減り、試験用変圧器と電源を小さくできます。
直流で試験すると、ケーブルを充電し終えたあとは漏れ電流しか流れないので、電源は小さくて済みます。長いケーブルを試験するとき、直流が使われる理由の一つです。
試験用変圧器と制御箱は、台車に載せて現場へ運びます(図7)。

- 高電圧端子 試験電圧が出る端子。被試験物へつなぐ
- 試験用変圧器 電圧を昇圧する。容量は充電電流で決まる
- 電圧調整つまみ 電圧を0から少しずつ上げる
- 試験ケーブル 被試験物へ電圧を送る線
- 接地線 台車を大地へつなぎ、感電を防ぐ
変圧器・回転機・器具の試験電圧
変圧器の巻線、回転機、開閉器や遮断器などの器具は、解釈第16条で試験電圧が決まっています。倍率の考え方は電路と同じで、7000 V 以下は 1.5 倍、7000 V を超えると 1.25 倍です。60000 V 以下の変圧器と回転機は、次のとおりです。
| 対象 | 最大使用電圧 | 試験電圧 |
|---|---|---|
| 変圧器の巻線 | 7000 V 以下 | 1.5 倍(下限 500 V) |
| 変圧器の巻線 | 7000 V 超 60000 V 以下 | 1.25 倍(下限 10500 V) |
| 回転機 | 7000 V 以下 | 1.5 倍(下限 500 V) |
| 回転機 | 7000 V 超 | 1.25 倍(下限 10500 V) |
変圧器の7000 V 超 60000 V 以下で、15000 V 以下の中性点接地式(中性線に多重接地するもの)に接続する巻線は、電路と同じく 0.92 倍です。下限は、倍率を掛けた値が下限未満になるとき、下限の値で試験するという意味です。加え方は、対象によって違います。
- 変圧器:試験する巻線と、他の巻線・鉄心・外箱との間に、連続して10分間
- 回転機:巻線と大地との間に、連続して10分間。回転変流機を除く交流の回転機は、試験電圧の 1.6 倍の直流でもよい
- 低圧の器具など:電路と大地との間に、連続して10分間。交流は 1.5 倍(下限 500 V)、直流は 1.5 倍の直流または 1 倍の交流(下限 500 V)
開閉器・遮断器・電力用コンデンサ・計器用変成器などの器具は、発電所や変電所の接続線・母線と同じく、第16条第6項の対象です。高圧・特別高圧の器具は第15条第一号に、ケーブルを使う機械器具の交流の接続線・母線は第15条第二号に準じて試験します。
キュービクルの中には、遮断器、変圧器、母線、ケーブルがまとまっていて、どれも第15条か第16条の対象です(図8)。

- がい管 高圧の充電部を支える白い磁器
- 遮断器 電路を開閉する器具。第16条第6項の器具等
- 銅バー 機器をつなぐ母線
- 変圧器 巻線の試験電圧は第16条第1項
- ケーブル 黒い電線。引込みや負荷へつながる
低圧の電路の絶縁抵抗の基準値
低圧の電路は、絶縁耐力試験をせず、絶縁抵抗を測ります。電技第58条は、電線相互間と、電路と大地との間の絶縁抵抗を、開閉器または過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の値以上にするよう求めています。
| 使用電圧 | 対地電圧 | 絶縁抵抗 |
|---|---|---|
| 300 V 以下 | 150 V 以下 | 0.1 MΩ 以上 |
| 300 V 以下 | 150 V 超 | 0.2 MΩ 以上 |
| 300 V 超 | 区別しない | 0.4 MΩ 以上 |
対地電圧は、接地式の電路では電線と大地との間の電圧、非接地式の電路では電線間の電圧です。単相3線式 100/200 V の接地式なら、対地電圧は 100 V なので 0.1 MΩ 以上です。三相3線式 200 V の非接地式なら、対地電圧は電線間の 200 V で、0.2 MΩ 以上になります。
絶縁抵抗の測定が難しいときは、解釈第14条第二号により、その電路の使用電圧が加わった状態の漏えい電流が 1 mA 以下であれば、基準を満たしたことになります。電気使用場所以外の低圧の電路も、第14条第2項で、これに準じます。
分電盤では、ブレーカで区切った回路ごとに測ります(図9)。

- 電源側の電線 分電盤へ電気を引き込む線
- 主幹ブレーカ 分電盤全体の電路を開閉する
- 接続バー 主幹と分岐をつなぐ銅の板
- 分岐ブレーカ上段 回路ごとに電路を区切る
- 分岐ブレーカ下段 ここで区切った回路が測定の単位
例題で試験電圧から絶縁抵抗までを解く
5問で、式の使い分けを確かめます。使う式は次のとおりです。
| 求めたいもの | 使う式 | 例題 |
|---|---|---|
| 最大使用電圧、試験電圧 | 公称電圧 × 1.15/1.1、× 倍率 | 1 |
| ケーブルの直流試験電圧 | 交流の試験電圧 × 2 | 2 |
| 充電電流、試験用変圧器の容量 | 、 | 3 |
| 変圧器・器具の試験電圧 | 最大使用電圧 × 倍率 | 4 |
| 低圧の絶縁抵抗の基準 | 電技第58条の表 | 5 |
解答と解説を見る
の電路は、最大使用電圧が 以下なので、1.5 倍です。
の電路は、最大使用電圧が 超 以下で、上記以外の行なので、1.25 倍です。
は下限 を上回るので、そのまま使います。試験電圧は、 の電路が 、 の電路が です。
解答と解説を見る
直流の試験電圧は、15-1表の交流の試験電圧の2倍です。交流は例題1の です。
2倍するのは、最大使用電圧 ではなく、試験電圧 です。試験電圧は で、連続して10分間加えます。
解答と解説を見る
試験電圧は例題1の です。3心一括なので、静電容量は3倍にします。
角周波数は次のとおりです。
充電電流は約 、試験用変圧器の容量は約 以上です。
解答と解説を見る
(1) 最大使用電圧は で、 以下なので 1.5 倍です。
(2) 低圧の最大使用電圧は、公称電圧の 1.15 倍です。
は 未満なので、下限の で試験します。
(3) 同じ手順で求めます。
は 以上なので、そのまま使います。答えは (1) 、(2) 、(3) です。
解答と解説を見る
まず使用電圧が 以下か、次に対地電圧が 以下かを見ます。
- (1) 使用電圧は で、 以下です。接地式なので対地電圧は電線と大地の間の で、 以下です。答えは です。
- (2) 使用電圧は で、 以下です。非接地式なので対地電圧は電線間の で、 を超えます。答えは です。
- (3) 使用電圧が を超えます。対地電圧は区別しません。答えは です。
よくある質問
絶縁耐力試験と絶縁抵抗の測定は、何が違いますか?
加える電圧と、見るものが違います。絶縁抵抗の測定は低圧の電路を対象に、低い電圧で抵抗値を読み、基準値以上かを見ます。絶縁耐力試験は高圧・特別高圧の電路や機器を対象に、決められた高い試験電圧を連続して10分間加え、絶縁破壊せずに耐えるかを見ます。
試験電圧の倍率は、公称電圧に掛けるのですか?
最大使用電圧に掛けます。公称電圧 6600 V の電路は、先に最大使用電圧 6900 V を出し、それに 1.5 倍を掛けて 10350 V にします。公称電圧に直接 1.5 を掛けた 9900 V は誤りです。
ケーブルを直流で試験できるのは、なぜですか?
解釈第15条第二号が、電線にケーブルを使う交流の電路について、15-1表の試験電圧の2倍の直流電圧を連続して10分間加える方法を認めているからです。交流の試験では、長いケーブルほど充電電流が大きく、大きな容量の試験用変圧器が要ります。直流なら、充電し終えたあとは漏れ電流しか流れないので、小さな電源で試験できます。
試験時間は、どの機器でも10分間ですか?
この記事で扱った条文の多くは、連続して10分間です。例外もあり、最大使用電圧が 170000 V を超え、両端の中性点が直接接地されている地中電線路は60分間(第15条第三号)です。雷サージ吸収用コンデンサなどは、16-6表で交流を1分間、直流を10秒間加えます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
絶縁耐力試験は、低圧の絶縁抵抗の測定と何が違いますか?
高圧・特別高圧の電路に、決められた高い試験電圧を連続して10分間加え、耐えるかを見ます。低圧は、低い電圧で抵抗値を測り、基準値以上かを見ます。
公称電圧 6600 V の最大使用電圧はいくつですか?
6600 V に 1.15/1.1 を掛けた 6900 V です。22000 V なら 23000 V です。
最大使用電圧が 7000 V 以下の交流の電路の試験電圧は?
最大使用電圧の 1.5 倍の交流電圧を連続して10分間加えます。6900 V の電路で 10350 V です。
ケーブルを使う交流の電路を直流で試験するときの電圧は?
15-1表の試験電圧の2倍です。6900 V の電路で 20700 V です。
試験用変圧器の容量は、どう求めますか?
充電電流 I = ωCV = 2πfCV に試験電圧 V を掛けて、S = VI です。3心一括なら C は3倍です。
低圧の電路の絶縁抵抗の基準値は?
300 V 以下で対地電圧 150 V 以下が 0.1 MΩ 以上、300 V 以下のその他が 0.2 MΩ 以上、300 V 超が 0.4 MΩ 以上です。
まとめ
- 低圧の電路は絶縁抵抗を測り、高圧・特別高圧の電路と機器は絶縁耐力試験で、連続して10分間耐えるかを見る
- 試験電圧は最大使用電圧に倍率を掛ける。最大使用電圧は、1000 V を超える公称電圧に 1.15/1.1 を掛けて出す
- 最大使用電圧 7000 V 以下は 1.5 倍、7000 V 超 60000 V 以下は 1.25 倍(下限 10500 V)。多重接地式の15000 V 以下は 0.92 倍
- ケーブルを使う交流の電路は、試験電圧の2倍の直流でも試験できる
- 試験用変圧器の容量は、充電電流 I = 2πfCV に試験電圧を掛けた S = VI。3心一括なら C は3倍
- 低圧の絶縁抵抗は 0.1・0.2・0.4 MΩ 以上。対地電圧は、接地式は電線と大地間、非接地式は電線間
試験の前提になる受電設備の分類は電気設備の分類で、次に学ぶ接地工事の種類の記事で、試験で接地する側の決まりを確かめられます。試験電圧を定めた基準の全体像は電気設備技術基準と解釈で整理しています。








