インバータの仕組み|直流を交流に変える単相ブリッジと PWM・VVVF 制御
電験三種の機械で問われるインバータを図解します。単相ブリッジの方形波と基本波の実効値、三相インバータ、PWM 制御、VVVF 制御で電動機の回転数を変える仕組みを、例題で確認できます。

この記事の目次
- インバータとは?直流から交流をつくる回路
- 単相ブリッジインバータ:4 つのスイッチで方形波をつくる
- 上下を同時にオンにしない理由と還流ダイオード
- 三相インバータ:6 つのスイッチで三相交流をつくる
- PWM 制御:パルスの幅で電圧を変える
- VVVF 制御:電圧と周波数で電動機の回転数を変える
- 電圧形と電流形
- 省エネに効く理由:動力は回転数の 3 乗
- 例題と間違えやすいところ
- よくある質問
- インバータの入力は直流なのに、家庭の交流でも使えるのは、なぜですか?
- 同じ脚の上下のスイッチが同時にオンになると、何が起きますか?
- 周波数を変えるとき、電圧も一緒に変えるのは、なぜですか?
- PWM は、方形波より何がよいのですか?
- まとめ
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インバータは、直流から交流をつくる回路です。出力の電圧も周波数も自由に変えられるので、電動機の回転数を思いどおりに変えられます。エアコンや電車にも使われています。この記事では、単相ブリッジの動作から、三相インバータ、PWM 制御、VVVF 制御までを、図と例題で確認します。
- インバータとは
- 直流を交流に変える回路。出力の電圧と周波数を変えられる
- 単相ブリッジ
- 4 つのスイッチで方形波をつくる。基本波の実効値は
- 三相インバータ
- 6 つのスイッチ。線間電圧の基本波の実効値は
- PWM 制御
- パルスの幅で、出力電圧の平均を正弦波にする
- VVVF 制御
- 電圧と周波数を比例させて、電動機の回転数を変える
- 例題と間違えやすいところ
- 同期速度は 、動力は回転数の 3 乗
インバータとは?直流から交流をつくる回路
インバータとは、直流を交流に変える回路です。整流回路は交流から直流をつくりますが、インバータはその逆向きの変換をします。交流から直流への変換を順変換、直流から交流への変換を逆変換といいます。
図1のように、インバータは半導体のスイッチを入り切りして、交流をつくります。入り切りの速さを変えると、出力の周波数が変わります。入り切りの時間の割合を変えると、出力の電圧が変わります。電圧も周波数も自由に変えられるのが、インバータの特長です。
入力の直流は、電池や太陽光パネルからも、整流回路の出力からも得られます。エアコンのように家庭の交流で動く機器は、まず交流を直流にして、そのあとインバータで好きな周波数の交流にします。圧縮機の電動機の回転数を変えて、冷やす力を調整できます。
太陽光発電のパワーコンディショナは、パネルの直流を、系統と同じ周波数の交流に変えます(図2)。直流の電圧を別の大きさの直流に変える回路は、チョッパといいます。

- 筐体 回路を収める箱
- 取付け金具 壁に固定する
- 電線管 配線を保護する
インバータの中のスイッチには、パワー半導体デバイスの記事で扱った IGBT などが使われます。
単相ブリッジインバータ:4 つのスイッチで方形波をつくる
単相インバータの基本は、スイッチ 4 つを H の字に並べた単相ブリッジです。直流電源 に、2 つのスイッチを直列にした「脚」を 2 組つなぎ、脚の中点の間に負荷をつなぎます。左の脚に S1(上)と S2(下)、右の脚に S3(上)と S4(下)を置きます。各スイッチには、ダイオードが逆向きに並列につながっています。
負荷の電圧 は、負荷の左の端子を + 側にとって測ります。
S1 と S4 をオンにすると、電流は電源の正極から S1、負荷、S4 を通って、負極へ戻ります(図3)。負荷には電源電圧がそのまま加わるので、 です。
次に S1 と S4 をオフにして、S2 と S3 をオンにします。電流は S3、負荷、S2 の順に、図3とは逆向きに流れます(図4)。このとき です。
この 2 つの状態を、半周期ずつ交互に繰り返すと、負荷の電圧は と を行き来する方形波になります(図5)。スイッチを切り換える周期が、出力の周期です。出力の周波数は、切り換える速さで決まります。
図5の方形波は、同じ周期の正弦波(基本波)と、3 倍、5 倍…の周波数の高調波の和で表せます。
基本波の振幅は で、方形波の振幅 より大きくなります。実効値は、振幅を で割った値です。
電動機のトルクを生むのは、おもに基本波です。高調波は、損失や振動の原因になります。なお、方形波そのものの実効値は、 がいつも一定なので です。基本波の実効値とは別の値です。
上下を同時にオンにしない理由と還流ダイオード
同じ脚の上と下(S1 と S2、S3 と S4)を、同時にオンにしてはいけません。直流電源が、2 つのスイッチだけを通して短絡され、大きな電流が流れて素子が壊れるからです。そのため、切り換えるときは、上下ともオフにする短い時間(デッドタイム)を置きます。
次に、負荷が電動機のようにコイルを含む場合を考えます。コイルの電流は、スイッチを切っても、急には 0 になりません。図6は、S1 と S4 がオンで左から右へ電流が流れていたときに、4 つのスイッチをすべてオフにした直後です。
電流の行き場がなくなりそうですが、各スイッチに並列に入れたダイオードが、通り道になります。電流は、D3、電源、D2 の順に流れます。電源の正極へ向かって流れ込むので、このときの負荷の電圧は です。負荷のコイルがためていたエネルギーが、電源へ戻ります。
このダイオードを、還流ダイオード(帰還ダイオード)といいます。電動機のように電流が急に止まらない負荷で、スイッチを切る瞬間の電流を受け止める役目です。
三相インバータ:6 つのスイッチで三相交流をつくる
三相の電動機を回すには、三相交流が必要です。三相インバータは、脚を 3 組にした回路で、スイッチは全部で 6 つです(図7)。各脚の中点が出力 U、V、W で、スイッチは S_UP(U 相の上)、S_UN(U 相の下)のように呼びます。
各脚の上のスイッチを半周期ずつオンにし、その間、下のスイッチはオフにします。オンにするタイミングを、U、V、W で 120° ずつずらします。すると、直流の負極を基準にした各相の電位 、、 は、0 と を行き来する方形波になり、120° ずつずれます(図8)。
電動機にかかるのは、相どうしの差の線間電圧です。 は、 が 120°、0 が 60°、 が 120°、0 が 60° と続く波になります。
線間電圧の基本波の実効値を求めます。各相の電位は 0 と の方形波です。直流分の を除くと、振幅 の方形波なので、基本波の振幅は次のとおりです。
2 つの相の基本波は 120° ずれています。その差の振幅は、次のようになります。
実効値は、これを で割ります。
三相インバータの線間電圧の基本波は、直流電圧の約 0.78 倍です。
PWM 制御:パルスの幅で電圧を変える
方形波のままでは、出力電圧の大きさは直流電圧 で決まってしまいます。電圧を変えるための方法が、PWM(パルス幅変調)です。
PWM では、出力させたい正弦波(信号波)と、それより速く上下する三角波(搬送波)を比べます。単相ブリッジでは、信号波が三角波より大きい間は 、小さい間は を出します(図9)。
信号波が大きいところでは、 の時間が長くなります。小さいところでは、 の時間が長くなります。このように、パルスの幅が信号波に合わせて変わります。
三角波の振幅を 1 として、信号波を とします。 を変調率といい、 とします。三角波の 1 周期の間は、信号波をほぼ一定とみなせます。すると、 の時間の割合は 、 の時間の割合は です。この間の平均は、次のとおりです。
平均が なので、出力の基本波は、振幅 、実効値 になります。図9は の場合です。 を変えれば、直流電圧 を変えずに、出力電圧を変えられます。信号波の周波数を変えれば、出力の周波数も変わります。
PWM は、方形波より低い次数の高調波が小さく、出力が正弦波に近づきます。三相インバータでも、位相が 120° ずつずれた 3 つの信号波を使って、同じように制御できます。
VVVF 制御:電圧と周波数で電動機の回転数を変える
三相誘導電動機の回転数は、電源の周波数で決まる同期速度に近い値になります。極数を 、周波数を とすると、同期速度は次の式です。
同期速度は周波数に比例します。インバータで周波数を変えれば、回転数を変えられます。実際の回転数は、すべり の分だけ低く、 です。
ただし、周波数だけを下げてはいけません。電動機の巻き線に生じる起電力は、磁束 と周波数 の積に比例し、電圧 はそれとほぼ等しくなります。そのため、磁束は に比例します。
電圧を変えずに周波数を下げると、磁束が増えて鉄心が飽和し、励磁電流が増えます。そこで、磁束を一定に保つため、電圧も周波数に比例して変えます。これが、VVVF 制御(可変電圧可変周波数制御)です。図10は、定格が 50 Hz、200 V の電動機の例です。
周波数を 30 Hz にすると、電圧は にします。定格の周波数を超えると、電圧は定格のままで、周波数だけを上げます。
電車では、架線から取った電気を、インバータで電圧と周波数を変えた三相交流にして、誘導電動機に加える方式が広く使われています(図11)。発進のときは低い周波数から始め、速度が上がるにつれて、電圧と周波数を上げます。

- パンタグラフ 架線から電気を取る
- 架線 電車に電気を送る電線
- 台車 車輪を支える
- 先頭車の前面
電圧形と電流形
インバータは、直流側のつくり方で、電圧形と電流形に分けられます。
| 項目 | 電圧形 | 電流形 |
|---|---|---|
| 直流側の部品 | コンデンサ | リアクトル |
| 一定に保つもの | 直流電圧 | 直流電流 |
| 還流ダイオード | 必要 | 不要 |
ここまでの図は、電圧形です。直流側のコンデンサで電圧を一定に保ち、スイッチで出力の電圧の波形をつくります。コイルを含む負荷の電流には通り道が必要なので、還流ダイオードを逆並列につなぎます。
電流形は、直流側に大きなリアクトルを入れて、電流を一定に保ちます。スイッチは、その電流を流す向きを切り換えて、出力の電流の波形をつくります。電流がリアクトルで決まっているので、還流ダイオードは必要ありません。
実際のインバータの装置は、パワー半導体や直流側の部品を、冷却ファンとともに箱に収めています(図12)。

- ファン 内部を冷やす
- 本体 回路を収める箱
- ケーブル 電源や電動機へつなぐ
- 金属の枠 機器を支える
省エネに効く理由:動力は回転数の 3 乗
ファンやポンプは、回転数を下げると、風量や流量が減ります。このとき、動力は、流量の割合よりもずっと小さくなります。理想的には、流量は回転数 に比例し、圧力(揚程)は に比例します。動力は「流量 × 圧力」なので、 に比例します。
回転数を 80% にすると、動力は約 51%、50% にすると 12.5% です(図13)。
電動機を一定の回転数で回し、弁やダンパで流量を絞る方法では、動力はあまり減りません。インバータで回転数を下げれば、必要な流量に合わせて動力を小さくできます(図14)。実際の設備では、配管の条件によって、ぴったり 3 乗にならない場合があります。

- 電動機 ポンプを回す
- ポンプ 水などを送る
- カップリング 軸をつなぐ
- 基礎 コンクリートの台
例題と間違えやすいところ
解答と解説を見る
V/f 一定なので、電圧は周波数に比例します。
同期速度は です。
50 Hz のときの同期速度は なので、60% になっています。すべりが のときの回転数は、次のとおりです。
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(1) 方形波の基本波の振幅は です。
実効値は、これを で割ります。
(2) PWM の基本波の振幅は で、実効値は です。
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動力は回転数の 3 乗に比例するので、 のときは 倍です。
約 です。回転数に比例すると考えて とするのは誤りです。 のときは 倍です。
約 です。
解答と解説を見る
正解は (2) です。磁束は に比例するので、電圧を周波数に比例させると、磁束が一定になります。
(1) は、同じ脚の上下を同時にオンにすると、電源が短絡されます。(3) は、電流形が直流側にリアクトルを入れ、コンデンサは電圧形です。(4) は、PWM が変えるのはパルスの幅で、高さは直流電圧 のままです。
間違えやすい点を表にまとめます。
| よくある間違い | 正しくは |
|---|---|
| 方形波の基本波の実効値を とする | 。 は方形波そのものの実効値 |
| 同期速度を周波数に反比例とする | で、周波数に比例 |
| 周波数だけを下げる | 電圧も比例して下げる(V/f 一定) |
| 動力を回転数に比例とする | 3 乗に比例。80% で約 51% |
| 電圧形と電流形の直流側を逆にする | 電圧形はコンデンサ、電流形はリアクトル |
よくある質問
インバータの入力は直流なのに、家庭の交流でも使えるのは、なぜですか?
インバータの前に、交流を直流にする整流回路と、電圧をならすコンデンサを置くからです。交流をいったん直流にして、その直流から、好きな周波数の交流をつくります。整流回路の平均電圧は、整流回路の記事で確認できます。
同じ脚の上下のスイッチが同時にオンになると、何が起きますか?
直流電源が、2 つのスイッチだけを通してつながり、短絡します。大きな電流が流れて、素子が壊れます。そこで、切り換えの間に、上下ともオフにするデッドタイムを置きます。
周波数を変えるとき、電圧も一緒に変えるのは、なぜですか?
電動機の磁束を一定に保つためです。磁束は に比例します。周波数だけを下げると、磁束が増えて鉄心が飽和し、励磁電流が増えます。電圧も同じ割合で下げれば、磁束は変わりません。
PWM は、方形波より何がよいのですか?
直流電圧を変えずに、出力電圧の大きさを変えられます。また、出力が正弦波に近づき、低い次数の高調波が小さくなります。そのぶん、スイッチを入り切りする回数は増えます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
インバータとは、何をする回路ですか?
直流を交流に変える回路です。出力の電圧と周波数を自由に変えられます。
単相ブリッジの方形波の、基本波の実効値は、どう表せますか?
です。基本波の振幅は です。
三相インバータの線間電圧の、基本波の実効値は、どう表せますか?
です。
PWM で、出力電圧の大きさを変えるには、どうしますか?
変調率 を変えます。パルスの幅で、平均が になり、基本波の実効値は です。
VVVF 制御で、周波数を下げるとき、電圧はどうしますか?
周波数に比例して下げます。磁束 を一定に保つためです。
ファンやポンプの動力は、回転数とどんな関係ですか?
回転数の 3 乗に比例します。80% で約 51%、50% で 12.5% です。
まとめ
- インバータは、直流を交流に変える回路。電圧と周波数を変えられる
- 単相ブリッジの方形波の基本波は、実効値 。三相の線間電圧は
- 同じ脚の上下は同時にオンにしない。還流ダイオードが、コイルの電流の通り道になる
- PWM は、パルスの幅で出力電圧の平均を正弦波にする。基本波の実効値は
- VVVF 制御は、 を一定にして、同期速度 を変える
- 動力は回転数の 3 乗に比例するので、ファンやポンプの省エネになる
| 項目 | 式 | 備考 |
|---|---|---|
| 単相方形波の基本波 | 実効値。約 | |
| 三相の線間電圧の基本波 | 実効値。約 | |
| PWM の基本波 | 実効値。 | |
| 同期速度 | 単位は |
次は、直流の電圧を変えるチョッパ、スイッチに使う素子を扱うパワー半導体デバイスの記事で、パワーエレクトロニクスの全体を確認できます。








