避雷器と雷害対策|異常電圧の種類・逆フラッシオーバ・絶縁協調を図解
電験三種の異常電圧と避雷器を図で解説します。雷による逆フラッシオーバ、架空地線や避雷器などの雷害対策、避雷器の酸化亜鉛素子の特性、絶縁協調を整理し、3 つの例題で計算を確認できます。

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避雷器は、雷などで電線に生じる異常電圧を大地へ逃がし、機器を守る装置です。異常電圧には、雷による外部異常電圧と、開閉サージなどの内部異常電圧があり、雷害対策と絶縁協調の考え方もここから出てきます。この記事では、逆フラッシオーバのしくみから絶縁協調までを、図と例題で順にたどります。
- 異常電圧とは
- 外部異常電圧(雷)と内部異常電圧(開閉サージなど)
- 雷と逆フラッシオーバ
- 直撃雷と誘導雷、鉄塔の電位は だけ上がる
- 雷害対策と避雷器
- 架空地線・埋設地線・アークホーン・避雷器・不平衡絶縁
- 絶縁協調
- 避雷器の制限電圧 < 機器の絶縁強度(BIL)
- 例題
- 正誤問題2問と、逆フラッシオーバの計算
異常電圧とは
電力系統の電圧は、ふだん定格の近くで安定しています。ところが、雷、遮断器の開閉、地絡事故などで、運転電圧を大きく超える電圧が生じることがあり、これを異常電圧(過電圧)と呼びます。絶縁が耐えられる電圧を超えると、がいしの放電や機器の絶縁破壊につながります。
異常電圧は、原因が系統の外にあるか内にあるかで分けます。雷によるものが外部異常電圧、系統の中の操作や事故によるものが内部異常電圧です(図1、表)。

| 分類 | 原因 | 代表例 |
|---|---|---|
| 外部異常電圧 | 雷 | 直撃雷、誘導雷 |
| 内部異常電圧 | 遮断器などの開閉 | 開閉サージ |
| 内部異常電圧 | 一線地絡 | 健全相の電圧上昇 |
| 内部異常電圧 | 軽負荷の長距離線路 | フェランチ現象 |
地絡のときに健全相の電圧がどれだけ上がるかは、中性点の接地方式で決まります(中性点接地方式)。開閉サージは、遮断器や断路器が電流を開閉するときに生じる過渡的な電圧です(遮断器と断路器)。フェランチ現象は、軽負荷の長い送電線で、線路の静電容量へ流れる進み電流がリアクタンスを通り、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象です。
雷による異常電圧と逆フラッシオーバ
雷による異常電圧は、雷が落ちる場所で、直撃雷と誘導雷に分けます(図2)。
直撃雷は、雷が電線に直接落ちるものです。雷電流は落雷点から電線の両側へ進行波として流れます。電線のサージインピーダンスを 、雷電流を とすると、電流が両側に半分ずつ流れるので、電線に生じる電圧は次のとおりです。
たとえば 、 なら、、つまり です。実際には、これほど高くなる前にがいしで放電します。
誘導雷は、電線の近くに雷が落ち、静電誘導や電磁誘導で電線に電圧が生じるものです。直撃雷より電圧は低くなりますが、絶縁の弱い配電線などでは、誘導雷でも事故になることがあります。
送電線の最上部には架空地線が張られ、雷を受けて電線への直撃雷を防ぎます。ところが、架空地線や鉄塔の頂部に落ちた雷電流が、そのまま安全に大地へ流れるとは限りません。雷電流は鉄塔を通り、塔脚接地抵抗を経て大地へ流れます。塔脚接地抵抗を 、雷電流を とすると、鉄塔の電位は次のように上がります。
実際には鉄塔のインダクタンスによる の項も加わりますが、ここでは無視します。電線の電位はほとんど変わらないとみなすと、がいし連の鉄塔側と電線側の間に がかかります。これががいし連の耐えられる電圧を超えると、鉄塔側から電線側へ放電します。これが逆フラッシオーバです(図3)。
逆フラッシオーバが起きると、雷電流の一部が電線へ入り、そのあと系統の電圧によるアーク(続流)が残って、地絡事故や短絡事故になることがあります。防ぐには、 を小さくして を下げます。つまり、塔脚接地抵抗を低くします。
雷害対策と避雷器のしくみ
雷害対策は、「電線に落とさない」「鉄塔の電位を上げない」「放電しても事故にしない」「機器に異常電圧を届かせない」の順に考えます。
雷害対策の種類
| 対策 | しくみ | 防ぐもの |
|---|---|---|
| 架空地線 | 雷を受けて大地へ流す | 電線への直撃雷 |
| 埋設地線 | 塔脚接地抵抗を下げる | 逆フラッシオーバ |
| アークホーン | アークをがいしから離す | がいし・電線の損傷 |
| 避雷器 | 異常電圧を大地へ逃がす | 機器の絶縁破壊 |
| 不平衡絶縁 | 2 回線の絶縁に差をつける | 2 回線の同時事故 |
架空地線は、電線の上に張る接地した電線です(鉄塔・がいし・架空地線の構成は架空送電線路の構成で扱います)。埋設地線は、鉄塔の脚から地中へ導体を埋めて、塔脚接地抵抗を下げます。アークホーンは、がいし連の両端に付ける金属の角です(図4)。フラッシオーバが起きても、アークをがいしから離し、がいしの損傷や電線の溶断を防ぎます。
不平衡絶縁は、2 回線送電線の一方の絶縁(がいしの個数など)を強める方法です。雷でフラッシオーバが起きるのを絶縁の弱い回線だけにして、2 回線が同時に事故になるのを避け、もう一方の回線で送電を続けます。

- 鉄塔の腕 がいし連を吊る
- 鉄塔側の角 アークホーンの一方
- がいし連 電線を鉄塔から絶縁
- 電線側の角 もう一方のアークホーン
- 電線 下の金具で吊られる
避雷器のしくみ
避雷器は、電線と大地の間に接続します。雷サージなどの異常電圧が来たときだけ電流を大地へ流して、電圧を制限電圧以下に抑える装置です。運転電圧ではほとんど電流を流さず、異常電圧が去れば元の状態に戻ります(図5)。

- 線路側端子 電線とつなぐ
- 外筒 中に酸化亜鉛素子が入る
- 3 本で三相 1 線に 1 本
- 接地線 大地へつなぐ
避雷器の素子には、酸化亜鉛が使われます。酸化亜鉛素子の電圧–電流特性は、電圧が少し上がるだけで電流が桁違いに増える、非線形の特性です。電圧 と電流 の関係は、定数 と非線形係数 を使って次のように書けます。
オームの法則に従う抵抗は ですが、酸化亜鉛素子の は非常に大きくなります。図6は とした概念図です。電流 のときの電圧(基準電圧)を 1 とすると、運転電圧に近い 0.8 では電流が約 とごくわずかです。電圧が約 1.7 になると が流れ、電圧が約 2 倍になる間に電流は約 10 桁増えます。
放電電流が のときの端子電圧が、この例の制限電圧です。電流が桁違いに増えても電圧はあまり上がらないので、機器にかかる電圧が抑えられます。
酸化亜鉛形避雷器は、運転電圧のもとで流れる電流がきわめて小さく、放電のあとに続流がほとんど流れません。そのため、従来の炭化けい素形避雷器に必要だった直列ギャップがなくても使えます。
避雷器を施設する場所
電気設備技術基準の解釈 第37条は、高圧と特別高圧の電路中の次の箇所、またはこれに近接する箇所に避雷器を施設すると定めています。
- 発電所・蓄電所・変電所、またはこれに準ずる場所の、架空電線の引込口(需要場所の引込口を除く)と引出口
- 架空電線路に接続する配電用変圧器の、高圧側と特別高圧側
- 高圧架空電線路から受電する、受電電力 500 kW 以上の需要場所の引込口
- 特別高圧架空電線路から受電する需要場所の引込口
直接接続する電線が短い場合などは、施設しなくてもよいとされています(同条第 2 項)。避雷器には A 種接地工事を施します(同条第 3 項)。
避雷器は、保護する機器のできるだけ近くに施設します。
絶縁協調とは
絶縁協調とは、避雷器の制限電圧と機器の絶縁強度を、雷サージなどの異常電圧に対して経済的かつ合理的に釣り合わせることです。すべての設備の絶縁をどこまでも強くすれば安全ですが、費用が大きくなります。そこで、避雷器で電圧の上限を決め、保護する機器の絶縁強度をそれより高くします(図7)。
図7の「雷サージ(避雷器なし)」は、機器の絶縁強度を超えるので、そのままでは絶縁が壊れます。避雷器があると、サージは制限電圧で頭打ちになり、機器の絶縁強度より低く抑えられます。
機器の絶縁強度の基準が BIL(基準衝撃絶縁強度)です。雷インパルス電圧に対して機器が耐えられる電圧の基準値です。試験に使う標準の雷インパルスは、波頭長 、波尾長 の波(1.2/50 μs)です。
| 量 | 意味 |
|---|---|
| 常規対地電圧 | 運転中の対地電圧 |
| 制限電圧 | 避雷器が抑える電圧 |
| BIL | 機器が耐える雷インパルス電圧 |
異常電圧の例題
例題1と2は、正しい記述と誤りの入れ替えを見抜く問題です。例題3は、式に値を入れる計算です。
| 例題 | 使う量 | 解き方 |
|---|---|---|
| 1・2 | 用語の意味 | 向きや大小の入れ替えを探す |
| 3 | 、 | と放電電圧を比べる |
解答と解説を見る
- (1) 正しい。架空地線が雷を受けて、電線への直撃雷を防ぎます。
- (2) 誤り。鉄塔の電位の上昇は なので、塔脚接地抵抗を小さくすると逆フラッシオーバが起きにくくなります。
- (3) 正しい。アークをがいしから離して、損傷を防ぎます。
- (4) 正しい。一方の回線の絶縁を強めると、フラッシオーバが両回線で同時に起きにくくなります。
答え:(2)
解答と解説を見る
- (1) 正しい。電線と大地の間に接続して、異常電圧のときだけ電流を流します。
- (2) 正しい。非線形の特性なので、運転電圧では電流がごくわずかで、続流もほとんど流れません。
- (3) 正しい。電気設備技術基準の解釈 第37条に定められた箇所です。
- (4) 誤り。制限電圧を機器の BIL より低くして、機器の絶縁を守ります。
答え:(4)
解答と解説を見る
鉄塔の電位の上昇は、
は放電電圧 を超えるので、逆フラッシオーバが起きます。
起こさないためには が必要なので、
たとえば に下げると、 で、放電電圧を下回ります。
答え:起きる()、上限は
よくある質問
逆フラッシオーバの「逆」は、何が逆なのですか。
放電の向きです。ふつうのフラッシオーバは、電線に異常電圧がかかって、電線側から鉄塔側へ放電します。逆フラッシオーバは、鉄塔側に落ちた雷電流で鉄塔の電位が上がり、鉄塔側から電線側へ放電します。
避雷器と架空地線は、何が違いますか。
守る相手と場所が違います。架空地線は、送電線の上に張って、電線への直撃雷を防ぎます。避雷器は、電線へ入ってきた異常電圧を、変電所の機器などに届く前に大地へ逃がします。
続流とは何ですか。
放電が終わったあとも、系統の電圧によって流れ続ける電流です。酸化亜鉛形避雷器は、運転電圧での電流がきわめて小さく、続流がほとんど流れないので、直列ギャップがなくても使えます。
BIL とは何ですか。
基準衝撃絶縁強度のことで、雷インパルス電圧に対して機器が耐えられる電圧の基準値です。避雷器の制限電圧を BIL より低く選ぶことで、雷サージから機器を守ります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
異常電圧は、外部と内部にどう分けますか?
外部異常電圧は雷によるもの、内部異常電圧は開閉サージ、地絡時の電圧上昇、フェランチ現象など系統の中の原因によるものです。
逆フラッシオーバとは何ですか?
落雷で鉄塔の電位が だけ上がり、がいし連で鉄塔側から電線側へ放電する現象です。塔脚接地抵抗を低くすると防ぎやすくなります。
埋設地線・アークホーン・不平衡絶縁は、それぞれ何をしますか?
埋設地線は塔脚接地抵抗を下げ、アークホーンはアークをがいしから離し、不平衡絶縁は 2 回線の同時事故を避けます。
酸化亜鉛形避雷器の特徴は何ですか?
電圧–電流特性が非線形で、運転電圧では電流がごくわずかです。続流がほとんど流れず、直列ギャップが不要です。
絶縁協調で、制限電圧と BIL の大小はどうなりますか?
常規対地電圧 < 制限電圧 < BIL です。制限電圧を機器の BIL より低くして守ります。
まとめ
- 異常電圧は、雷による外部異常電圧と、開閉サージ・地絡・フェランチ現象などの内部異常電圧に分ける
- 逆フラッシオーバは、鉄塔の電位が だけ上がり、がいし連で鉄塔側から電線側へ放電する現象。塔脚接地抵抗を下げて防ぐ
- 雷害対策は、架空地線、埋設地線、アークホーン、避雷器、不平衡絶縁。避雷器は第37条に定められた箇所に施設し、A 種接地工事を施す
- 酸化亜鉛形避雷器は非線形の特性で、続流がほとんどなく、直列ギャップが不要
- 絶縁協調は「常規対地電圧 < 制限電圧 < 機器の BIL」








