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電力送電線路 / 架空送電線路19分で読めます

架空送電線路の構成|がいし・架空地線・多導体とコロナ放電・電線の振動対策を図解

電験三種の電力で学ぶ架空送電線路の構成。電線(ACSR)・がいし連・架空地線・鉄塔の役割から、多導体方式、コロナ放電、電線の振動と対策、ねん架、連効率の計算までを図と例題で解説します。

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夕焼けの空を背景に、送電鉄塔のシルエットが2基並んで電線をのばしている構図
この記事の目次
  1. 架空送電線路とは
  2. 電線の種類(ACSR)と表皮効果
  3. 多導体方式のしくみと効果
  4. がいし連のはたらきと連効率
  5. 架空地線と雷対策
  6. コロナ放電とは
  7. 電線の振動と対策
  8. ねん架とは
  9. 架空送電線路と地中ケーブルの比較
  10. 例題:架空送電線路
  11. よくある質問
  12. 多導体にするとリアクタンスが小さくなるのはなぜですか?
  13. 雨や霧の日にコロナ放電が起きやすいのはなぜですか?
  14. 微風振動とギャロッピングは、どう見分けますか?
  15. がいし連のがいしの個数は、どう決まりますか?
  16. まとめ
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山を越えて続く送電線は、電線・がいし・架空地線の3つでできています。どれも、雷と風、そして高い電圧が生む電界への対策がかたちになったものです。この記事では、架空送電線路の構成と各部のはたらき、多導体方式、コロナ放電、電線の振動と対策、ねん架までを、図と例題で整理します。連効率の計算も、手順を追って解きます。

架空送電線路の全体像
  • 架空送電線路とは
    • 鉄塔で電線を空中に張り、高い電圧で電気を遠くへ運ぶ
    • 電圧を kk 倍にすると、電流は 1/k1/k、電線の損失は 1/k21/k^{2}
  • 電線(ACSR)と表皮効果
    • 鋼心アルミより線。アルミが電気を、鋼心が強さを受け持つ
    • 交流は表面近くに集中。周波数が高いほど表皮深さが浅い
  • 多導体方式
    • 1相を複数の電線で構成。インダクタンスが下がり、コロナも起きにくい
  • がいし連と連効率
    • 電圧分担は電線側が最大。η=En Vmax×100\eta=\dfrac{E}{n\,V_{\mathrm{max}}}\times 100
  • 架空地線と雷
    • 電線の上で雷を受け止める。遮へい角が小さいほど効果が大きい
  • コロナ放電
    • 電線表面の電界が空気の限界を超えると起きる。太い電線ほど臨界電圧が高い
  • 電線の振動と対策
    • 微風振動はダンパ、ギャロッピングは相間スペーサ
  • ねん架
    • 3線の位置を入れ替え、線路定数をそろえる
  • 例題
    • 正誤問題を3問と、連効率の計算

架空送電線路とは

架空送電線路は、鉄塔などの支持物で電線を空中に張り、発電所から変電所まで電気を運ぶ設備です。電気は、発電所でつくられ、送電線、変電所、配電線を通って需要家に届きます(図1)。この記事で扱うのは、そのうちの送電線です。

発電所 電気をつくる 送電線 高い電圧で遠くへ(この記事) 変電所 電圧を下げる 配電線 町の中へ配る 需要家 電気を使う
図1 電気の流れ。発電所でつくった電気を、送電線で高い電圧のまま変電所まで運ぶ

送電線では、電圧をできるだけ高くします。送る電力 P=3 VIcos⁡θP=\sqrt{3}\,VI\cos\theta が同じなら、電圧 VV を kk 倍にすると電流 II は 1/k1/k になります。電線の損失 3RI23RI^{2} は 1/k21/k^{2} になり、電圧降下も小さくなります。損失と電圧降下の計算は三相3線式の電圧降下の求め方で扱っています。

高い電圧の電線を空中に張ると、鉄塔から電線を絶縁する工夫と、雷や風への備えが必要になります。送電鉄塔の構成を見てみましょう(図2)。

架空地線 腕金 鉄塔本体 がいし連 電線 2回線で電線6本 塔脚の接地
図2 送電鉄塔の構成。頂部の架空地線の下に、腕金・がいし連・電線が並ぶ

鉄塔は、鉄の骨組みでできた支持物です。頂部に架空地線を張り、その下の腕金から、がいし連で電線をつり下げます。図は2回線の例で、電線は左右に3本ずつ、計6本です。塔脚は接地します。

部品役目備える相手
電線電流を流す損失・風・氷雪
がいし電線を絶縁して支える高電圧・汚れ
架空地線電線を雷から守る雷
鉄塔すべてを支える電線の張力・風

実物の送電線は、山の尾根のような高い場所にも立ちます。

青空と緑の山の上に立つ送電鉄塔と、腕から下がるがいし連、左右へのびる電線
  1. 架空地線 鉄塔の頂部から左右へのびる細い線。雷を受け止める
  2. がいし連 腕から電線をつり下げ、鉄塔と電線を絶縁する
  3. 電線 電気を流す太い線。ここでは腕の下をのびる
  4. 鉄塔本体 腕金や架空地線を支える鉄の骨組み
図3 山の上に立つ送電鉄塔。頂部の細い線が架空地線(写真はイメージ)

電線の種類(ACSR)と表皮効果

送電線の電線には、鋼心アルミより線(ACSR)が広く使われます。中心に鋼線を置き、その周りにアルミ線をより合わせた構造です(図4)。

外層 アルミ16本 内層 アルミ10本 中心 鋼線7本 電気:おもにアルミ線 強さ:鋼心が受け持つ アルミ線26本・鋼線7本(構成の一例)
図4 ACSR の断面。中心の鋼線が強さを、外側のアルミ線が電気を受け持つ

アルミ線は電気を通し、鋼線は引っ張りに耐えます。電線は鉄塔の間で自分の重さと風を受けるので、強さが要ります。なぜアルミを使うのかは、銅と比べるとわかります。

項目銅(軟銅)アルミ
導電率100 %約 61 %
比重約 8.9約 2.7
同じ抵抗にする断面積1約 1.6 倍
同じ抵抗にする質量1約 0.5 倍

アルミは導電率が低いので、同じ抵抗にするには断面積が約 1.6 倍必要です。それでも比重が小さいため、質量は銅の約半分で済みます。軽ければ鉄塔の負担も減ります。

電線のたるみと張力の計算は、電線のたるみの計算と実長の求め方で扱っています。

もう1つ、交流の電線に特有の性質があります。直流は電線の断面全体を流れますが、交流は電線の表面近くに集中して流れます。これが表皮効果です(図5)。

直流 交流 δ 断面の全体を流れる 表面近く(黄)に集中 周波数が高いほど、δ(表皮深さ)は小さい 50 Hz のアルミ線で δ は約 12 mm(計算例)
図5 表皮効果。直流は断面全体を流れ、交流は表面近く(黄)に集中する

電流が流れる深さの目安を表皮深さ δ\delta といい、表面の電流密度が 1/e1/e(約 37 %)に減る深さです。

δ=2ρωμ\delta = \sqrt{\frac{2\rho}{\omega\mu}}

ρ\rho は抵抗率 [Ω⋅m]\mathrm{[\Omega\cdot m]}、ω=2πf\omega=2\pi f は角周波数 [rad/s]\mathrm{[rad/s]}、μ\mu は透磁率 [H/m]\mathrm{[H/m]} です。周波数が高いほど、導電率が大きいほど、透磁率が大きいほど、δ\delta は小さくなり、表皮効果の影響が大きくなります。

条件表皮深さ δ\delta影響
周波数が高い小さい大きい
導電率が大きい小さい大きい
透磁率が大きい小さい大きい
電線が太い変わらない大きい

電線が太くなると、δ\delta は変わらないまま断面が広がるので、電流が流れない中心部の割合が増えます。そのため、太い電線ほど影響が目立ちます。

50 Hz のアルミ線で δ\delta を計算してみます。ρ=2.8×10−8 [Ω⋅m]\rho=2.8\times 10^{-8}\ \mathrm{[\Omega\cdot m]}、μ=4π×10−7 [H/m]\mu=4\pi\times 10^{-7}\ \mathrm{[H/m]} とします。

δ=2ρωμ=2×2.8×10−8314×1.26×10−6≈0.012 [m]\begin{aligned} \delta &= \sqrt{\frac{2\rho}{\omega\mu}} \\ &= \sqrt{\frac{2\times 2.8\times 10^{-8}}{314\times 1.26\times 10^{-6}}} \\ &\approx 0.012\ \mathrm{[m]} \end{aligned}

δ\delta は約 12 mm です。60 Hz では 50/60≈0.91\sqrt{50/60}\approx 0.91 倍の約 11 mm になります。商用周波数の送電線では、表皮効果による抵抗の増加はわずかです。それでも、太い電線ほど実効的な抵抗が少し大きくなることは、押さえておきましょう。

多導体方式のしくみと効果

大きな電力を送る送電線は、1相を1本の電線でなく、複数の電線で構成します。これが多導体方式です。電線の間隔はスペーサで保ちます。1相あたりの電線の本数が nn 本なら、2導体、4導体のようによびます。

実物では、スペーサの枠で複数の電線を束ねています。

4本の太い電線を枠状のスペーサで束ねて1相としている多導体の送電線の接写
  1. スペーサ 電線どうしの間隔を一定に保つ枠
  2. 素導体 束ねた1本ずつの電線
  3. 奥のスペーサ 一定の間隔ごとに取り付けてある
図6 多導体の電線。枠状のスペーサで4本の間隔を保つ(写真はイメージ)

多導体にすると、電線全体が1本の太い電線のようにふるまいます。この太さに相当する半径を等価半径 rer_{\mathrm{e}} といいます(図7)。

単導体 2導体 4導体 s s 破線の円:等価半径 re re = 14 mm L = 1.32 mH/km re = 75 mm L = 0.96 mH/km re = 223 mm L = 0.73 mH/km 計算例:相間距離 D = 8 m、電線の半径 r = 14 mm s:2導体 0.4 m、4導体 0.5 m(正方形)。縮尺は不同
図7 多導体の断面。本数が増えるほど等価半径(破線の円)が大きくなり、インダクタンスが小さくなる

単導体の半径を rr、素導体の間隔を ss とすると、2導体の等価半径は re=r sr_{\mathrm{e}}=\sqrt{r\,s} です。4導体を正方形に並べたときは re≈1.09 (r s3)1/4r_{\mathrm{e}}\approx 1.09\,(r\,s^{3})^{1/4} になります。三相線路の1線のインダクタンスは、次の式で表せます。

L=0.05n+0.4605log⁡10Dre [mH/km]L = \frac{0.05}{n}+0.4605\log_{10}\frac{D}{r_{\mathrm{e}}}\ \mathrm{[mH/km]}

DD は電線の間隔(相間距離)、nn は 1 相の電線の本数です。等価半径 rer_{\mathrm{e}} が大きいほど対数の中身が小さくなり、LL は小さくなります。図の計算例(D=8 [m]D=8\ \mathrm{[m]}、r=14 [mm]r=14\ \mathrm{[mm]})では、単導体 1.321.32、2導体 0.960.96、4導体 0.73 [mH/km]0.73\ \mathrm{[mH/km]} です。

効果理由
インダクタンスが小さい等価半径が大きくなる
静電容量が大きい等価半径が大きくなる
コロナ放電が起きにくい電線表面の電界が小さくなる
許容電流が大きい表面積が増えて放熱しやすい

インダクタンスが小さければ、リアクタンス ωL\omega L も小さくなり、大きな電力を送りやすくなります。一方で、荷重と風圧が大きくなり、スペーサも必要で、構造が複雑になります。

がいし連のはたらきと連効率

がいしは、電線を鉄塔から絶縁して支える部品です。高い電圧では、がいしを何個もつないだがいし連にします(図8)。

鉄塔の腕から下がる、円板形のがいしを縦につないだがいし連と、その下の電線
  1. 腕 がいし連をつり下げる鉄塔の腕金
  2. 円板がいし 1個ずつ絶縁し、連ねて必要な絶縁を得る
  3. 電線側 金具で電線を支える。ここが最大の電圧を受け持つ
図8 懸垂がいしを縦につないだがいし連(写真はイメージ)

がいし連の各がいしには、電圧が等しく分かれては加わりません。がいしの金具と鉄塔の間に静電容量(対地静電容量)があるため、電流が金具から鉄塔へ逃げます。その結果、電線に近いがいしほど大きな電圧を分担します(図9)。

鉄塔側 各がいしの分担電圧 10 % 11 % 13 % 16 % 21 % 29 % 最大 電線側 対地容量を、がいし1個の静電容量の 1/10 と仮定した計算例
図9 がいし連の電圧分担。電線に近いがいしほど分担が大きく、電線側が最大

電圧が均等に分かれているかを表すのが連効率です。電線側のがいしが受け持つ最大の電圧に注目します。

η=En Vmax×100 [%]\eta=\frac{E}{n\,V_{\mathrm{max}}}\times 100\ \mathrm{[\%]}

EE は電線の対地電圧 [V]\mathrm{[V]}、nn はがいしの個数、VmaxV_{\mathrm{max}} は 1 個が受け持つ最大の電圧 [V]\mathrm{[V]} です。電圧が完全に均等なら、全部が E/nE/n になって η=100 [%]\eta=100\ \mathrm{[\%]} です。実際は不均等なので、η\eta は 100 % より小さくなります。図の例(6 個、対地容量をがいし 1 個の容量の 1/101/10 と仮定)では、η\eta は約 58 % です。

がいし連の不具合には、次のような対策を取ります。

問題対策ねらい
電圧分担が不均等均圧リング電線側の負担を減らす
雷でアークが出るアークホーンアークをがいしから離す
塩分などで汚れる耐塩がいし・洗浄絶縁の低下を防ぐ

均圧リングは、電線側のがいしに取り付ける金属の輪で、電界をなだらかにして分担を均等に近づけます。アークホーンは、がいし連の両端に取り付ける金属の角で、雷によるフラッシオーバ(がいし連の外側を通る放電)のアークを、がいしから離れた所に出させます。耐塩がいしは、表面のひだを深くして、がいしの表面に沿った距離(沿面距離)を長くしたものです。

架空地線と雷対策

架空地線は、送電線の最上部に張る、接地した電線です(図2の頂部)。電線の上で雷を受け止め、電線への直撃を防ぎます。

架空地線がどれだけ電線を守れるかは、遮へい角 θ\theta で決まります。架空地線から鉛直に下ろした線と、架空地線から電線を結んだ線のなす角です(図10)。

遮へい角 θ が大きい θ 電線に雷が当たりやすい 遮へい角 θ が小さい θ 架空地線が雷を受け止める 架空地線 電線
図10 遮へい角。θ が小さいほど雷は架空地線に落ちやすく、電線は守られる

遮へい角が小さいほど、架空地線が雷を受け止めやすくなり、電線への直撃が減ります。

架空地線に雷が落ちても、安心はできません。雷電流が鉄塔を通って大地へ流れるとき、塔脚の接地抵抗が大きいと、鉄塔の電位が大きく上がります。すると、鉄塔から電線へ向かう放電が、がいし連を通って起こることがあります。これが逆フラッシオーバです。

対策ねらい
塔脚の接地抵抗を小さくする鉄塔の電位上昇を抑える
埋設地線を設ける接地抵抗を小さくする
アークホーンを付けるアークからがいしを守る

架空地線には、1線地絡事故のときに電流の一部が流れて、通信線への電磁誘導障害を軽くする効果もあります。

コロナ放電とは

電線に加える電圧を高くしていくと、電線表面の電界が強くなります。この電界が空気の絶縁破壊電界(教科書の値で、波高値約 30 kV/cm)を超えると、電線の周りの空気が部分的に絶縁破壊を起こし、青白い光や音を出します。これがコロナ放電です(図11)。

電線表面の電界 E 電圧 V 空気の絶縁破壊電界 約30 kV/cm 細い電線 太い電線 V0(細) V0(太) V0 を超えるとコロナ放電が始まる
図11 コロナ放電の始まり。電界が空気の絶縁破壊電界に達する電圧 V0 が臨界電圧

コロナ放電が始まる電圧を臨界電圧といいます。臨界電圧が高いほど、コロナ放電は起きにくくなります。

条件臨界電圧が高い臨界電圧が低い
電線の太さ太い細い
空気の密度大きい小さい
天候晴れ雨・霧・雪
電線の表面なめらか傷・汚れ・突起

雨や霧の日は、水滴が電線の表面に付いて突起のようになり、電界が局所的に強まるので、臨界電圧が下がります。

コロナ放電が起きると、次のような影響が出ます。

  • コロナ損(電力の損失)が生じる
  • ラジオやテレビへの雑音(電波障害)が生じる
  • 可聴雑音(ジーという音)が生じる
  • 電線を傷める

対策は、電線表面の電界を小さくすることです。電線を太くする、多導体にする、中空の電線を使う、がいし金具にシールドリングを付ける、などの方法があります。

電線の振動と対策

電線は風や氷雪の影響で振動します。振動の種類によって、原因と対策が違います(図12)。

微風振動 弱い風が当たる 小振幅・高周波 ギャロッピング 氷雪の付いた電線に強い風 大振幅・低周波 スリートジャンプ 氷雪が落ちた反動で 電線が跳ね上がる
図12 電線の振動の3種類。振幅と周波数、原因がそれぞれ違う

雪をかぶった電線の写真は、冬の送電線がどんな状態かを教えてくれます。

雪をかぶって太くなった電線と、遠くに並ぶ送電鉄塔、雪におおわれた空と地面
  1. 着雪した電線 雪で太くなり、重さと風圧が増える
  2. 鉄塔 電線の重さを支える
  3. がいし連 雪や氷が付くと絶縁が下がることもある
図13 雪が付いた電線と鉄塔。氷雪の付着は電線の振動の原因になる(写真はイメージ)
現象原因対策
微風振動弱い風が電線に当たるダンパ・アーマロッド
サブスパン振動多導体の風による振動スペーサを不等間隔に
ギャロッピング氷雪が付いた電線に強い風相間スペーサ
スリートジャンプ氷雪が落ちた反動オフセット・相間スペーサ

微風振動は、弱い風で起こる小さな振幅の高周波の振動です。電線を支える金具の付近が疲れて、素線が切れることがあります。ダンパで振動を吸収し、アーマロッドで支持点を補強します。

サブスパン振動は、多導体のスペーサとスペーサの間の電線が、風で振動する現象です。スペーサの間隔を不等間隔にすると、振動がそろわなくなって収まります。

ギャロッピングは、氷雪が付いた電線に強い風が当たって、大きな振幅でゆっくり上下に揺れる現象です。電線どうしが近づいて短絡することがあります。相間スペーサを付け、電線の離隔を大きくします。

スリートジャンプは、電線に付いた氷雪が落ちた反動で、電線が跳ね上がる現象です。上下の電線が近づいて短絡することがあります。上下の電線を水平にずらすオフセットや、相間スペーサで対策します。

ねん架とは

3本の電線の位置がそろっていないと、各線の大地や他の線との距離が違うため、インダクタンスと静電容量が3線で等しくなりません。すると、各線に流れる電流や電圧が不平衡になります。これを防ぐために、線路の全長を3等分して、3本の電線の位置を順に入れ替えるのがねん架です(図14)。

入れ替え 入れ替え a b c 区間1 区間2 区間3 全長を3等分して、位置を順に入れ替える
図14 ねん架。3つの区間で、電線 a・b・c の上中下の位置を順に入れ替える

ねん架をすると、1つの電線がすべての位置を同じ長さだけ通るので、線路定数(インダクタンスと静電容量)が3線でそろいます。その効果は次の2つです。

  • 各線の電圧・電流が平衡する。中性点に残留電圧が生じるのを抑えられる
  • 通信線への静電誘導・電磁誘導の障害を軽くできる

中性点の電位は、中性点の接地のしかたで変わります。方式の違いは中性点接地方式の種類と比較で扱っています。

架空送電線路と地中ケーブルの比較

電気を送る方法には、電線を空中に張る架空のほかに、地中にケーブルを埋める方法があります。大きな違いを表にまとめます。

項目架空地中
建設費安い高い
雷・風雪影響を受ける受けにくい
事故の復旧早い時間がかかる
静電容量小さい大きい
外観景観に影響景観を保てる

ケーブルは電線より静電容量が大きく、充電電流が流れます。地中送電線路の構造や充電電流の計算は、地中送電線路とケーブルの充電電流で扱っています。

例題:架空送電線路

ここまでの知識で、正誤問題と連効率の計算を解いてみましょう。連効率の計算は、図15の順に進めます。

1 線間電圧 V から E = V / √3 を求める 2 1個あたりの最大分担電圧 Vmax を読む 3 η = E / (n × Vmax) × 100 [%] 4 η が100 %に近いほど、電圧が均等
図15 連効率の計算の手順。対地電圧を求めてから、最大分担電圧とがいしの個数で割る
解答と解説を見る

誤っているのは (5) です。

  • (1) 正しい。スペーサで素導体の間隔を保ちます。
  • (2) 正しい。等価半径が大きくなるので、インダクタンスは小さくなります。
  • (3) 正しい。等価半径が大きいほど、静電容量は大きくなります。
  • (4) 正しい。1本の太い電線のようにふるまい、表面の電界が小さくなります。
  • (5) 誤り。電線の本数が増えるので、風圧荷重や氷雪荷重は大きくなります。

多導体の長所はインダクタンス・コロナ・許容電流、短所は荷重・風圧・構造の複雑さです。長所と短所を分けて覚えると、選択肢の誤りが見つけやすくなります。

解答と解説を見る

誤っているのは (5) です。

  • (1) 正しい。ダンパは微風振動のエネルギーを吸収します。
  • (2) 正しい。間隔をそろえないことで、振動がそろうのを防ぎます。
  • (3) 正しい。相間スペーサは、電線が大きく揺れても電線どうしが近づきすぎないようにします。
  • (4) 正しい。接地抵抗を小さくすると、鉄塔の電位上昇を抑えられます。
  • (5) 誤り。ダンパは小振幅・高周波の振動用です。スリートジャンプにはオフセットや相間スペーサを使います。

「現象の特徴」から対策を考えます。小さな高周波の振動はダンパ、大きな揺れや跳ね上がりは電線どうしを離す対策、と分けましょう。

解答と解説を見る

まず、電線の対地電圧を求めます。

E=663≈38.1 [kV]\begin{aligned} E &= \frac{66}{\sqrt{3}} \\ &\approx 38.1\ \mathrm{[kV]} \end{aligned}

連効率の式に代入します。

η=En Vmax×100=38.14×12×100≈79 [%]\begin{aligned} \eta &= \frac{E}{n\,V_{\mathrm{max}}}\times 100 \\ &= \frac{38.1}{4\times 12}\times 100 \\ &\approx 79\ \mathrm{[\%]} \end{aligned}

検算:4×12×0.79≈37.9 [kV]4\times 12\times 0.79\approx 37.9\ \mathrm{[kV]} で、E=38.1 [kV]E=38.1\ \mathrm{[kV]} とほぼ一致します。

答え:(3)

線間電圧 66 [kV]66\ \mathrm{[kV]} をそのまま使うと、664×12×100=137.5 [%]\dfrac{66}{4\times 12}\times 100=137.5\ \mathrm{[\%]} となり、100 % を超えます。連効率は 100 % を超えないので、そこで気づけます。

解答と解説を見る

誤っているのは (4) です。

  • (1) 正しい。これが表皮効果の定義です。
  • (2) 正しい。δ=2ρ/(ωμ)\delta=\sqrt{2\rho/(\omega\mu)} で、ω\omega が大きいほど δ\delta は小さくなります。
  • (3) 正しい。μ\mu が大きいほど δ\delta は小さくなります。
  • (4) 誤り。導電率が大きい(抵抗率 ρ\rho が小さい)ほど δ\delta は小さくなり、影響は大きくなります。
  • (5) 正しい。電流が通る断面が減るので、実効的な抵抗は大きくなります。

δ=2ρ/(ωμ)\delta=\sqrt{2\rho/(\omega\mu)} の式で、δ\delta が小さいほど影響が大きい、と読めば迷いません。導電率は ρ\rho の逆数で、分母側に入ります。

よくある質問

多導体にするとリアクタンスが小さくなるのはなぜですか?

複数の電線を束ねると、等価半径が大きくなり、1本の太い電線と同じようにふるまうからです。インダクタンス LL が小さくなるので、リアクタンス ωL\omega L も小さくなります。

雨や霧の日にコロナ放電が起きやすいのはなぜですか?

水滴が電線の表面に付くと、突起のようになって電界が局所的に強まります。その結果、臨界電圧が下がります。

微風振動とギャロッピングは、どう見分けますか?

風の強さと、振動の大きさで見分けます。微風振動は弱い風で起こる小振幅・高周波の振動で、ダンパで対策します。ギャロッピングは、氷雪が付いた電線に強い風が当たって起こる大振幅・低周波の振動で、相間スペーサで対策します。

がいし連のがいしの個数は、どう決まりますか?

電圧が高い線路ほど、がいしの個数を増やします。そのうえで、連効率、塩害、雷によるフラッシオーバなども考えて決めます。問題では、個数は条件として与えられます。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

架空送電線路を構成する4つの部品と、それぞれの役目は?

電線は電流を流し、がいしは電線を絶縁して支え、架空地線は電線を雷から守り、鉄塔はすべてを支えます。

ACSR は何でできていて、どう役割を分けていますか?

中心の鋼線と、その周りのアルミ線です。アルミ線が電気を流し、鋼線が引っ張りの強さを受け持ちます。

周波数が高くなると、表皮深さ δ\delta はどうなりますか?

小さくなります。電流は電線の表面近くに集中し、表皮効果の影響が大きくなります。

多導体にすると、インダクタンス・静電容量・コロナ放電はどうなりますか?

インダクタンスは小さく、静電容量は大きくなり、コロナ放電は起きにくくなります。

連効率の式と、EE に使う電圧は?

η=En Vmax×100\eta=\dfrac{E}{n\,V_{\mathrm{max}}}\times 100 です。EE は線間電圧ではなく、対地電圧 V/3V/\sqrt{3} です。

ギャロッピングとスリートジャンプの対策は?

どちらも相間スペーサが有効です。スリートジャンプにはオフセットも使います。ダンパは微風振動の対策です。

まとめ

  • 架空送電線路は、電線・がいし・架空地線・鉄塔でできている。電圧を高くすると、電流と損失が小さくなる
  • 電線は鋼心アルミより線(ACSR)。交流は表面近くに集中する(表皮効果)
  • 多導体は、インダクタンスが小さく、コロナ放電が起きにくい。荷重と風圧は大きくなる
  • がいし連は電線側の分担が最大。連効率は η=En Vmax×100\eta=\dfrac{E}{n\,V_{\mathrm{max}}}\times 100 で、EE は対地電圧
  • 架空地線は雷を受け止める。遮へい角は小さいほどよく、逆フラッシオーバは塔脚の接地抵抗を下げて防ぐ
  • コロナ放電は、電線が細い・雨や霧・表面が荒れているときに起きやすい。対策は太い電線と多導体
  • 電線の振動は、微風振動がダンパ、ギャロッピングとスリートジャンプが相間スペーサ。ねん架で線路定数をそろえる
求めるもの式
表皮深さδ=2ρωμ\delta=\sqrt{\dfrac{2\rho}{\omega\mu}}
2導体の等価半径re=r sr_{\mathrm{e}}=\sqrt{r\,s}
多導体のインダクタンスL=0.05n+0.4605log⁡10DreL=\dfrac{0.05}{n}+0.4605\log_{10}\dfrac{D}{r_{\mathrm{e}}}
連効率η=En Vmax×100\eta=\dfrac{E}{n\,V_{\mathrm{max}}}\times 100

次は、送電線の中性点の処理を扱う中性点接地方式の種類と比較です。送電線の電圧降下と損失を計算したいときは、三相3線式の電圧降下の求め方も合わせて読んでください。

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デンケンラボ編集部

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