電力 送電線路 / 地中送電線路 2026.10.28 14分で読めます
地中送電線路とケーブルの充電電流|誘電損・布設方式・故障点の探し方を図解 電験三種の電力で問われる地中送電線路を図解。CV ケーブルの構造、直接埋設式・管路式・暗きょ式の布設方式、充電電流と充電容量、誘電損、マーレーループ法による故障点の探し方を例題つきで整理します。
三相3線式の電圧降下 では、架空線の抵抗とリアクタンスによる電圧降下を求めました。都市部では、電線を地面の下に通す地中送電線路(ケーブル)も使われます。ケーブルは導体と遮へい層が近く、静電容量が架空線より大きいので、負荷がなくても充電電流が流れ、絶縁体には誘電損も生じます。電験三種の「電力」では、充電電流 I c = ω C E I_{\mathrm{c}} = \omega C E I c = ω C E 、三相の充電容量、誘電損、マーレーループ法による故障点の位置が問われます。この記事で、構造から順に求め方を整理します。
地中送電線路の全体像
地中送電線路とは
ケーブルを地中に施設する。見えない、天候に強い、建設費は高い
CV ケーブルの構造
布設方式
直接埋設式・管路式・暗きょ式(電技解釈 第120条)
充電電流と充電容量
I c = ω C E I_{\mathrm{c}} = \omega C E I c = ω C E (E は相電圧)、Q = ω C V 2 Q = \omega C V^{2} Q = ω C V 2
損失と誘電損
抵抗損・誘電損・シース損。誘電損は ω C E 2 tan δ \omega C E^{2}\tan\delta ω C E 2 tan δ
マーレーループ法
地中送電線路とは
地中送電線路は、電線をケーブルにして地面の下に通す送電線路です。電技解釈 第120条第1項は、地中電線路の電線にはケーブルを使い、施設の方法を管路式・暗きょ式・直接埋設式のいずれかにすると定めています。架空線は裸の電線を空中に張りますが、ケーブルは導体を絶縁体と保護層で包んでいるので、地中に置けます。
項目 架空線 地中ケーブル 景観 電柱・鉄塔が見える 見えない 風雨・雷・雪の影響 受けやすい 受けにくい 建設費 比較的安い 高い 故障の発見・復旧 見つけやすく早い 掘り出すので時間がかかる 静電容量 小さい 大きい
ケーブルは工場でドラムに巻いて運びます。1本の長さには限りがあるので、長い線路では途中で別のケーブルとつなぎます。
1 ドラムの側板 2 巻いたケーブル 3 引き出した端 ドラムの側板 木製で、ケーブルを巻き取る巻いたケーブル 黒いシースで覆われている引き出した端 布設のときに、ここから溝や管へ送り出す図1 木製のドラムに巻いたケーブル。引き出した端が地面にのびている(写真はイメージ)
静電容量が大きいという性質が、このあとの充電電流と誘電損の原因になります。まず、ケーブルの中身を見ます。
CV ケーブルの構造
高圧・特別高圧の地中電線路には、CV ケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)が広く使われます。紙に絶縁油をしみこませた OF ケーブルは、油の圧力を保つ設備が要るので手間がかかります。取り扱いが簡単な CV ケーブルが主流です。
シース
遮へい層(銅テープ)
外部半導電層
絶縁体(架橋ポリエチレン)
内部半導電層
導体(銅のより線)
青い矢印は、導体から遮へい層へ向かう電気力線
導体と遮へい層を電極、絶縁体を誘電体とするコンデンサになる
図2 CV ケーブルの断面。導体と遮へい層の間の絶縁体がコンデンサの誘電体になる
図2のとおり、中心から外へ、導体、内部半導電層、絶縁体、外部半導電層、遮へい層、シースの順に重なります。各層のはたらきは次のとおりです。
層 はたらき 導体(銅のより線) 電流を流す。より線にして曲げやすくする 半導電層(内部・外部) 電界のかたよりをやわらげ、すきまを防ぐ 絶縁体(架橋ポリエチレン) 導体と遮へい層の間を絶縁する 遮へい層(銅テープなど) 電界を絶縁体の中に閉じ込める。地絡電流の通路になる シース(ビニル) 外傷や水分から内部を守る
遮へい層は接地して使います。地絡事故のとき、電流が流れる通路にもなります(接地のしかたは 中性点接地方式の種類と比較 にあります)。導体と遮へい層の間に絶縁体があるので、この部分は導体と遮へい層を電極、絶縁体を誘電体とするコンデンサになります。静電容量が大きい理由です。
1 導体 2 絶縁体 3 黒い層 4 遮へい層 5 シース 導体 銅の細い線を束ねたより線絶縁体 白い樹脂の層黒い層 絶縁体の外側をおおう半導電層遮へい層 銅のテープシース いちばん外側の黒い保護層図3 端を段ごとにむいた CV ケーブル。内側から外側へ層が重なる(写真はイメージ)
地中電線路の布設方式
地中電線路の布設方式には、直接埋設式、管路式、暗きょ式の3つがあります。
方式 施設のしかた 特徴 直接埋設式 溝を掘ってケーブルを埋める 工事は安く早い。外傷を受けやすい 管路式 管を埋めてケーブルを通す 引き入れや取替えがしやすい 暗きょ式 コンクリートの溝やトンネルに並べる 多くの本数を置ける。建設費は大きい
直接埋設式
管路式
暗きょ式
深さ
防護板
コンクリート
通路
土に直接埋める
管にケーブルを通す
棚にケーブルを並べる
深さ:重量物の圧力を受けるおそれがある場所は 1.2 m 以上、他は 0.6 m 以上
図4 地中電線路の3つの布設方式(断面)
図4のとおり、直接埋設式は土の中にケーブルを埋め、管路式はコンクリートブロックの穴にケーブルを通し、暗きょ式は人が入れる箱やトンネルの棚にケーブルをのせます。電技解釈 第120条は、方式ごとに次のことを求めています。
直接埋設式:埋設深さは、車両などの重量物の圧力を受けるおそれがある場所で 1.2 m 以上、その他の場所で 0.6 m 以上(第4項第一号)。衝撃から守るため、堅ろうなトラフなどに収める。低圧・高圧で圧力を受けるおそれがない場所では、上部を堅ろうな板またはといで覆う
管路式:ケーブルを収める管は、重量物の圧力に耐えるもの(第2項第一号)
暗きょ式:暗きょは重量物の圧力に耐え、防火措置を施す。ケーブルに耐燃措置をするか、暗きょ内に自動消火設備を置く(第3項)
表示:管路式と直接埋設式では、高圧・特別高圧の地中電線路に、物件の名称・管理者名・電圧をおおむね 2 m 間隔で表示する(需要場所の短い高圧線路などは除く)
管路式を溝に並べたところは、次のようになります。ケーブルは管の中に通します。
1 上段の管 2 下段の管 3 溝の壁 上段の管 この中にケーブルを通す下段の管 管は上下に重ねて何本も並べられる溝の壁 掘った土がむき出しになっている図5 溝に並べた管。管の中にケーブルを通すのが管路式のイメージ(写真はイメージ)
暗きょ式は、人が点検できる大きさのトンネルにケーブルを並べる方式です。
1 金具 2 ケーブル 3 通路 4 天井の照明 金具 ケーブルを壁に固定して支えるケーブル 黒いシースのケーブルが何本も並ぶ通路 点検する人が歩く床天井の照明 トンネルの奥まで続く図6 トンネルの壁に何段にも並ぶケーブル。暗きょ式のイメージ(写真はイメージ)
管路式では、一定の間隔でマンホールをつくります。ここからケーブルを引き入れ、ケーブルの接続もここで行います。
1 ふた 2 格子の模様 3 舗装 ふた 下のマンホールへの出入口をふさぐ格子の模様 表面のすべりを防ぐ凹凸舗装 アスファルトの路面図7 路面のマンホールのふた。下の空間でケーブルを引き入れ、接続する(写真はイメージ)
ケーブルの静電容量と充電電流
ケーブルは、中心の導体と、外側の接地した遮へい層の間に絶縁体をはさんだ構造です(図2)。電極が近く、絶縁体の誘電率が空気より大きいので、静電容量 C C C が架空線より大きくなります。電圧をかけると、負荷がつながっていなくても、このコンデンサを充電する電流が流れます。これが充電電流 I c I_{\mathrm{c}} I c です。
Ic
E
C
1相分の等価回路
E
Ic
90°
Ic = ωCE
フェーザ図(E を基準)
図8 充電電流 Ic は相電圧 E より 90° 進む
図8の左は、三相のうち1相分を取り出した等価回路です。相電圧 E E E の電源にコンデンサ C C C をつなぐと、電流は電圧より 90° 進みます。大きさは、コンデンサのリアクタンス 1 / ( ω C ) 1/(\omega C) 1/ ( ω C ) で E E E を割って求めます。
I c = E 1 / ( ω C ) = ω C E ω = 2 π f E = V 3 \begin{gathered}
I_{\mathrm{c}} = \dfrac{E}{1/(\omega C)} = \omega C E \\
\omega = 2\pi f \\
E = \dfrac{V}{\sqrt{3}}
\end{gathered} I c = 1/ ( ω C ) E = ω C E ω = 2 π f E = 3 V
V V V は線間電圧 [V]、E E E は相電圧 [V]、f f f は周波数 [Hz]、C C C は 1 線あたりの静電容量 [F] です。三相分をまとめた充電容量 Q Q Q は、1相分の E I c E I_{\mathrm{c}} E I c を3倍します。3 E 2 = V 2 3E^{2} = V^{2} 3 E 2 = V 2 なので、線間電圧で書けます。
Q = 3 E I c = 3 ω C E 2 = ω C V 2 [ v a r ] \begin{aligned}
Q &= 3 E I_{\mathrm{c}} = 3\omega C E^{2} \\
&= \omega C V^{2}\ \mathrm{[var]}
\end{aligned} Q = 3 E I c = 3 ω C E 2 = ω C V 2 [ var ]
この式は、Y 接続の進相コンデンサの容量と同じ形です(力率改善と進相コンデンサの容量計算 )。ケーブルは、負荷がなくても、進相コンデンサと同じ大きさの進み無効電力を送り出します。
軽負荷のとき、この進み電流が線路のインダクタンスを流れると、受電端の電圧が送電端より高くなります。これをフェランチ効果といいます。長いケーブルほど充電電流が大きくなるので、分路リアクトルで充電電流を打ち消す対策があります。
注意
I c = ω C E I_{\mathrm{c}} = \omega C E I c = ω C E の E E E は相電圧です。線間電圧 V V V をそのまま入れると 3 \sqrt{3} 3 倍の誤りになります。また、静電容量は μF で与えられるので、1 μ F = 10 − 6 F 1\ \mathrm{\mu F} = 10^{-6}\ \mathrm{F} 1 μ F = 1 0 − 6 F に直してから計算します。
例題1
線間電圧 66 kV、周波数 50 Hz の三相3線式の地中送電線路がある。ケーブルの 1 線あたりの静電容量は 0.30 μF/km、線路の長さは 10 km である。充電電流 I c I_{\mathrm{c}} I c と、三相の充電容量 Q Q Q を求めよ。
解答と解説を見る 静電容量と相電圧を求めます。
C = 0.30 × 10 = 3.0 [ μ F ] = 3.0 × 10 − 6 [ F ] \begin{aligned}
C &= 0.30 \times 10 \\
&= 3.0\ \mathrm{[\mu F]} \\
&= 3.0 \times 10^{-6}\ \mathrm{[F]}
\end{aligned} C = 0.30 × 10 = 3.0 [ μ F ] = 3.0 × 1 0 − 6 [ F ] E = 66000 3 ≒ 38100 [ V ] \begin{aligned}
E &= \dfrac{66000}{\sqrt{3}} \\
&\fallingdotseq 38100\ \mathrm{[V]}
\end{aligned} E = 3 66000 ≒ 38100 [ V ] ω C = 2 π × 50 × 3.0 × 10 − 6 ≒ 9.42 × 10 − 4 [ S ] \omega C = 2\pi \times 50 \times 3.0 \times 10^{-6} \fallingdotseq 9.42 \times 10^{-4}\ \mathrm{[S]} ω C = 2 π × 50 × 3.0 × 1 0 − 6 ≒ 9.42 × 1 0 − 4 [ S ] なので、充電電流は次のとおりです。
I c = ω C E ≒ 9.42 × 10 − 4 × 38100 ≒ 35.9 [ A ] \begin{aligned}
I_{\mathrm{c}} &= \omega C E \\
&\fallingdotseq 9.42 \times 10^{-4} \times 38100 \\
&\fallingdotseq 35.9\ \mathrm{[A]}
\end{aligned} I c = ω C E ≒ 9.42 × 1 0 − 4 × 38100 ≒ 35.9 [ A ] 充電容量は、線間電圧で求めます。
Q = ω C V 2 ≒ 9.42 × 10 − 4 × 66000 2 ≒ 4.1 × 10 6 [ v a r ] \begin{aligned}
Q &= \omega C V^{2} \\
&\fallingdotseq 9.42 \times 10^{-4} \times 66000^{2} \\
&\fallingdotseq 4.1 \times 10^{6}\ \mathrm{[var]}
\end{aligned} Q = ω C V 2 ≒ 9.42 × 1 0 − 4 × 6600 0 2 ≒ 4.1 × 1 0 6 [ var ] 約 4100 kvar です。3 E I c 3 E I_{\mathrm{c}} 3 E I c でも同じ値になります。
例題2
線間電圧 22 kV、周波数 60 Hz の三相3線式の地中送電線路がある。ケーブルの 1 線あたりの静電容量は 0.25 μF/km、線路の長さは 5 km である。三相の充電容量 Q Q Q [kvar] と、充電電流 I c I_{\mathrm{c}} I c [A] を求めよ。
解答と解説を見る C = 0.25 × 5 = 1.25 [ μ F ] = 1.25 × 10 − 6 [ F ] C = 0.25 \times 5 = 1.25\ \mathrm{[\mu F]} = 1.25 \times 10^{-6}\ \mathrm{[F]} C = 0.25 × 5 = 1.25 [ μ F ] = 1.25 × 1 0 − 6 [ F ] です。
ω C = 2 π × 60 × 1.25 × 10 − 6 ≒ 4.71 × 10 − 4 [ S ] \begin{aligned}
\omega C &= 2\pi \times 60 \times 1.25 \times 10^{-6} \\
&\fallingdotseq 4.71 \times 10^{-4}\ \mathrm{[S]}
\end{aligned} ω C = 2 π × 60 × 1.25 × 1 0 − 6 ≒ 4.71 × 1 0 − 4 [ S ] Q = ω C V 2 ≒ 4.71 × 10 − 4 × 22000 2 ≒ 228 × 10 3 [ v a r ] \begin{aligned}
Q &= \omega C V^{2} \\
&\fallingdotseq 4.71 \times 10^{-4} \times 22000^{2} \\
&\fallingdotseq 228 \times 10^{3}\ \mathrm{[var]}
\end{aligned} Q = ω C V 2 ≒ 4.71 × 1 0 − 4 × 2200 0 2 ≒ 228 × 1 0 3 [ var ] Q Q Q は約 228 kvar です。充電電流は、Q = 3 V I c Q = \sqrt{3}\, V I_{\mathrm{c}} Q = 3 V I c から求めます。
I c = Q 3 V = 228 × 10 3 3 × 22000 ≒ 5.99 [ A ] \begin{aligned}
I_{\mathrm{c}} &= \dfrac{Q}{\sqrt{3}\, V} \\
&= \dfrac{228 \times 10^{3}}{\sqrt{3} \times 22000} \\
&\fallingdotseq 5.99\ \mathrm{[A]}
\end{aligned} I c = 3 V Q = 3 × 22000 228 × 1 0 3 ≒ 5.99 [ A ]
ケーブルの損失と誘電損
ケーブルでは、導体の抵抗以外にも損失が生じます。
損失 生じる場所 大きさを決めるもの 抵抗損 導体 電流の2乗と抵抗 誘電損 絶縁体 電圧の2乗(電流には無関係) シース損 遮へい層・シース 導体の電流で生じる誘導電流
誘電損は、絶縁体にかかる電圧で決まります。負荷電流が小さくても、電圧がかかっていれば出つづけます。理想的なコンデンサなら、電流は電圧より 90° 進み、損失は生じません。実際の絶縁体には、充電電流 I c I_{\mathrm{c}} I c のほかに、電圧と同じ向きの小さな電流 I g I_{\mathrm{g}} I g が流れ、これが損失になります。
E
C
Ic
Ig
抵抗分
C に抵抗分が並列
E
Ic
Ig
I
δ
tanδ = Ig / Ic
(δ は見やすいよう大きく描いた)
図9 絶縁体の損失は、電圧と同じ向きの電流 Ig で生じる
図9の左は、静電容量 C C C に抵抗分が並列につながる等価回路です。右のフェーザ図で、I c I_{\mathrm{c}} I c と I g I_{\mathrm{g}} I g の比が tan δ \tan\delta tan δ (誘電正接)で、δ \delta δ は損失角です。
tan δ = I g I c \tan\delta = \dfrac{I_{\mathrm{g}}}{I_{\mathrm{c}}} tan δ = I c I g
1相分の誘電損 W d W_{\mathrm{d}} W d は、電圧 E E E と同じ向きの電流 I g I_{\mathrm{g}} I g の積です。I g = I c tan δ I_{\mathrm{g}} = I_{\mathrm{c}}\tan\delta I g = I c tan δ と I c = ω C E I_{\mathrm{c}} = \omega C E I c = ω C E を使うと、次のようになります。
W d = E I g = E I c tan δ = ω C E 2 tan δ \begin{aligned}
W_{\mathrm{d}} &= E I_{\mathrm{g}} = E I_{\mathrm{c}} \tan\delta \\
&= \omega C E^{2} \tan\delta
\end{aligned} W d = E I g = E I c tan δ = ω C E 2 tan δ
三相分は3倍です。3 E 2 = V 2 3E^{2} = V^{2} 3 E 2 = V 2 から、充電容量 Q Q Q との関係が見えます。
W = 3 ω C E 2 tan δ = ω C V 2 tan δ = Q tan δ \begin{aligned}
W &= 3 \omega C E^{2} \tan\delta \\
&= \omega C V^{2} \tan\delta \\
&= Q \tan\delta
\end{aligned} W = 3 ω C E 2 tan δ = ω C V 2 tan δ = Q tan δ
誘電損は、電圧の2乗と周波数と静電容量に比例します。
例題3
例題1と同じ線路(線間電圧 66 kV、周波数 50 Hz、静電容量 3.0 μF)で、絶縁体の誘電正接が tan δ = 0.05 % \tan\delta = 0.05\ \mathrm{\%} tan δ = 0.05 % のとき、三相分の誘電損は何 W か。
解答と解説を見る 0.05 % = 5 × 10 − 4 0.05\ \mathrm{\%} = 5 \times 10^{-4} 0.05 % = 5 × 1 0 − 4 です。例題1で、充電容量は Q ≒ 4.1 × 10 6 [ v a r ] Q \fallingdotseq 4.1 \times 10^{6}\ \mathrm{[var]} Q ≒ 4.1 × 1 0 6 [ var ] でした。
W = Q tan δ ≒ 4.1 × 10 6 × 5 × 10 − 4 ≒ 2.05 × 10 3 [ W ] \begin{aligned}
W &= Q \tan\delta \\
&\fallingdotseq 4.1 \times 10^{6} \times 5 \times 10^{-4} \\
&\fallingdotseq 2.05 \times 10^{3}\ \mathrm{[W]}
\end{aligned} W = Q tan δ ≒ 4.1 × 1 0 6 × 5 × 1 0 − 4 ≒ 2.05 × 1 0 3 [ W ] 約 2.05 kW です。ω C V 2 tan δ \omega C V^{2} \tan\delta ω C V 2 tan δ に直接入れても同じ値になります。
マーレーループ法で故障点を探す
地中のケーブルは見えないので、地絡事故が起きたら、端から測って事故点のおおよその位置を求め、掘る場所を決めます。その方法の1つがマーレーループ法です。事故を起こしたケーブルと、同じ種類・同じ長さの健全なケーブルを先端で接続して輪(ループ)にし、手前の端 A、B に滑り線をつなぎます。滑り線は、長さに比例した抵抗をもつ線です。滑り線の接点を動かして、検流計 G の振れが 0 になる位置を探します。
先端で接続
A
B
滑り線
電池
G
F(事故点)
事故ケーブル
健全ケーブル
a
b
x
L
x = 2L・a / (a + b)
a・b は滑り線の長さ
図10 マーレーループ法。ブリッジが平衡する滑り線の位置から事故点までの距離を求める
図10は、ブリッジ回路の形になっています。ブリッジが平衡する条件は、向かい合う辺の抵抗の積が等しいことです(ブリッジ回路の平衡条件 )。4つの辺の抵抗は、滑り線の A 側の長さ a a a 、B 側の長さ b b b 、A から事故点 F までのケーブル(長さ x x x )、F から B までのケーブル(長さ 2 L − x 2L - x 2 L − x )に比例します。L L L はケーブル1本の長さです。ケーブルの単位長さあたりの抵抗と滑り線の単位長さあたりの抵抗は、どちらも約分されて消えます。
a : b = x : ( 2 L − x ) a ( 2 L − x ) = b x x = 2 L a a + b \begin{gathered}
a : b = x : (2L - x) \\
a (2L - x) = b x \\
x = \dfrac{2La}{a + b}
\end{gathered} a : b = x : ( 2 L − x ) a ( 2 L − x ) = b x x = a + b 2 L a
a a a は事故ケーブル側(A 側)の滑り線の長さです。a a a と b b b は同じ単位であれば、cm でも目盛りでもかまいません。A の端から事故点までの距離 x x x が求まります。
例題4
長さ 1200 m の事故ケーブルと、同じ種類・同じ長さの健全なケーブルを先端で接続し、全長 100 の滑り線を用いてマーレーループ法で測定した。A 側の長さ a = 25 a = 25 a = 25 で検流計の振れが 0 になった。A の端から事故点までの距離は何 m か。
解答と解説を見る b = 100 − 25 = 75 b = 100 - 25 = 75 b = 100 − 25 = 75 です。
x = 2 L a a + b = 2 × 1200 × 25 25 + 75 = 600 [ m ] \begin{aligned}
x &= \dfrac{2La}{a + b} \\
&= \dfrac{2 \times 1200 \times 25}{25 + 75} \\
&= 600\ \mathrm{[m]}
\end{aligned} x = a + b 2 L a = 25 + 75 2 × 1200 × 25 = 600 [ m ] 検算です。x : ( 2 L − x ) = 600 : 1800 = 1 : 3 x : (2L - x) = 600 : 1800 = 1 : 3 x : ( 2 L − x ) = 600 : 1800 = 1 : 3 で、a : b = 25 : 75 a : b = 25 : 75 a : b = 25 : 75 と一致します。事故点は A の端から 600 m の位置です。
よくある質問
充電電流の式には、線間電圧と相電圧のどちらを使いますか?
1相分の等価回路で求めるので、相電圧 E = V / 3 E = V/\sqrt{3} E = V / 3 を使います。線間電圧 V V V で書くなら I c = ω C V / 3 I_{\mathrm{c}} = \omega C V/\sqrt{3} I c = ω C V / 3 です。三相の充電容量は、線間電圧で Q = ω C V 2 Q = \omega C V^{2} Q = ω C V 2 と書け、3 \sqrt{3} 3 は出てきません。式ごとに、どの電圧が入るかを確かめます。
負荷がなくても誘電損は出ますか?
出ます。誘電損は絶縁体にかかる電圧で決まり、負荷電流には関係しません。抵抗損は負荷電流の2乗に比例するので、負荷がなければ(充電電流による分を除いて)ごくわずかですが、誘電損は電圧がかかっているかぎり出つづけます。
ケーブルの静電容量が架空線より大きいのはなぜですか?
静電容量は、電極が近いほど、間の誘電体の誘電率が大きいほど大きくなります。架空線は、電線どうしや電線と大地が空気をはさんで離れています。ケーブルは、導体と遮へい層が絶縁体 1 層をはさんだだけで近く、絶縁体の誘電率も空気より大きいので、静電容量が大きくなります。
マーレーループ法で、なぜ健全なケーブルが必要ですか?
事故点から先の導体を使って、ブリッジの4つの辺をつくるためです。事故ケーブルの先端に健全ケーブルをつなぐと、事故点 F から B までが長さ 2 L − x 2L - x 2 L − x の抵抗になり、a : b = x : ( 2 L − x ) a : b = x : (2L - x) a : b = x : ( 2 L − x ) が成り立ちます。健全ケーブルが使えないときは、パルスを送って事故点で反射して戻るまでの時間から距離を求めるパルス法を使います。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
地中電線路で認められている施設の方法は、何ですか? 管路式、暗きょ式、直接埋設式の3つで、電線にはケーブルを使います(電技解釈 第120条)。
直接埋設式の埋設深さは、いくら以上ですか? 重量物の圧力を受けるおそれがある場所は 1.2 m 以上、その他の場所は 0.6 m 以上です。
充電電流の式と、E E E に入れる電圧は何ですか? I c = ω C E I_{\mathrm{c}} = \omega C E I c = ω C E で、E E E は相電圧 V / 3 V/\sqrt{3} V / 3 です。電流は電圧より 90° 進みます。
三相の充電容量は、どう求めますか? Q = 3 ω C E 2 = ω C V 2 Q = 3\omega C E^{2} = \omega C V^{2} Q = 3 ω C E 2 = ω C V 2 [var] です。V V V は線間電圧で、C C C は F に直して入れます。
誘電損の式と、何に比例しますか? 三相分は W = ω C V 2 tan δ = Q tan δ W = \omega C V^{2} \tan\delta = Q\tan\delta W = ω C V 2 tan δ = Q tan δ です。電圧の2乗に比例し、負荷電流には関係しません。
マーレーループ法で、事故点までの距離はどう求めますか? x = 2 L a / ( a + b ) x = 2La/(a + b) x = 2 L a / ( a + b ) です。L L L はケーブルの長さ、a a a は事故ケーブル側の滑り線の長さ、b b b はその反対側の長さです。
まとめ
地中電線路は、ケーブルを管路式・暗きょ式・直接埋設式で施設する(第120条)。直接埋設式の深さは 1.2 m 以上または 0.6 m 以上
CV ケーブルは導体・絶縁体・遮へい層・シースの順で、導体と遮へい層の間がコンデンサになる
充電電流は I c = ω C E I_{\mathrm{c}} = \omega C E I c = ω C E (E は相電圧)、三相の充電容量は Q = ω C V 2 Q = \omega C V^{2} Q = ω C V 2
誘電損は ω C V 2 tan δ \omega C V^{2}\tan\delta ω C V 2 tan δ で、電圧の2乗に比例し、負荷電流に関係しない
マーレーループ法は、ブリッジの平衡から x = 2 L a / ( a + b ) x = 2La/(a + b) x = 2 L a / ( a + b ) を求める
求めるもの 式 充電電流 I c = ω C E = ω C V / 3 I_{\mathrm{c}} = \omega C E = \omega C V/\sqrt{3} I c = ω C E = ω C V / 3 三相の充電容量 Q = ω C V 2 Q = \omega C V^{2} Q = ω C V 2 三相の誘電損 W = ω C V 2 tan δ W = \omega C V^{2}\tan\delta W = ω C V 2 tan δ 故障点までの距離 x = 2 L a / ( a + b ) x = 2La/(a + b) x = 2 L a / ( a + b )
ケーブルの充電電流は進み電流なので、線路の電圧降下への影響を 三相3線式の電圧降下 で、進み無効電力で力率を調整する考え方を 力率改善と進相コンデンサの容量計算 で見直すと、理解が深まります。