磁性材料とヒステリシス曲線|保磁力・残留磁束密度とケイ素鋼板・永久磁石を図解
電験三種の磁性材料を、磁化曲線と磁気飽和、ヒステリシス曲線の残留磁束密度と保磁力、軟磁性材料と硬磁性材料の違い、ケイ素鋼板・永久磁石・キュリー温度まで図解で整理します。ループを読む例題で確かめられます。

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絶縁材料が電気を通さない材料なら、磁性材料は磁束を通し、ときには磁石になる材料です。変圧器の鉄心には磁石になりにくい鉄を使い、モーターの永久磁石には磁石のままでいる鉄を使います。同じ磁性材料でも求める性質は正反対で、その違いを 1 本の曲線で表したものがヒステリシス曲線です。電験三種の電気材料では、ヒステリシス曲線の読み方、軟磁性材料と硬磁性材料の性質、鉄心の材料が中心になります。
- 磁性材料とは
- 強磁性体・常磁性体・反磁性体、
- 磁化曲線と磁気飽和
- 初磁化曲線、 が増えなくなる
- ヒステリシスループ
- 残留磁束密度 、保磁力
- 軟磁性材料と鉄心の材料
- ケイ素鋼板、アモルファス合金、フェライト
- 硬磁性材料とキュリー温度
- 永久磁石、鉄は約 770 ℃
- 例題
- ループの読み取り、用語、鉄心の材料、
磁性材料とは
磁性材料とは、磁界の中で磁化され、磁束を通したり磁石になったりする材料です。物質は、磁界の中での性質によって、次の 3 つに分けられます。
| 種類 | 比透磁率 | 例 |
|---|---|---|
| 強磁性体 | 非常に大きい | 鉄・ニッケル |
| 常磁性体 | わずかに 1 超 | アルミニウム |
| 反磁性体 | わずかに 1 未満 | 銅・銀 |
変圧器の鉄心もモーターの磁石も、使うのは強磁性体で、鉄・ニッケル・コバルトとその合金が代表です。強磁性体の内部には、磁気の向きがそろった小さな領域(磁区)があり、外から磁界を加えると、磁区の向きがそろって強く磁化されます。砂鉄も強磁性体で、磁界の向きに沿って並ぶので、磁界の様子を見ることができます(図1)。

- 密な所 砂鉄が集まる磁極の付近
- 極の間 砂鉄が向きをそろえて並ぶ
- 外側の曲線 磁界が外へ広がる様子
磁界の強さ と磁束密度 の関係は、透磁率 を使って と表します。真空の透磁率は で、比透磁率は です。強磁性体は が非常に大きく、磁束をよく通します。これらの量は、磁界の強さと磁束密度で扱っています。ところが、強磁性体の は一定ではなく、磁界の強さや、それまでの磁化の履歴で変わります。次の 2 つの節で、その変わり方を曲線で確かめます。
磁化曲線と磁気飽和
磁化されていない強磁性体に、磁界の強さ を 0 から増やしていくと、磁束密度 は図2のように変わります。この曲線を初磁化曲線といいます。
図2は概形で、実測した曲線ではありません。目盛は書いていません。 が小さいうちは、 を少し増やすだけで が大きく増えます。この曲線の傾きが透磁率 です(図の破線)。 が大きくなると、磁区の向きがほぼそろい終わり、 はほとんど増えなくなります。この現象を磁気飽和、増えなくなった磁束密度を飽和磁束密度 といいます。
磁気飽和が起こると、曲線の傾きが小さくなるので、 は一定とみなせなくなり、 は に比例して増えなくなります。鉄心は、通常、飽和より下の範囲で使うように設計します。
ヒステリシスループ
初磁化曲線の先まで を増やしたあと、 を減らして逆向きに増やし、また元に戻す、というように往復させると、 は行きと帰りで違う道をたどります。この閉じた曲線がヒステリシスループ(ヒステリシス曲線)です(図3)。ヒステリシスとは「履歴」のことで、 が今の だけでなく、それまでの磁化の履歴にも左右されることを表します。
図3も概形で、実測した曲線ではありません。ループの上側は を減らしていく向き、下側は を増やしていく向きで、矢印の向きに 1 周します。ループが横軸や縦軸と交わる点が、材料の性質を表します。
- 残留磁束密度 :飽和するまで磁化したあと、 を 0 に戻したときに残る磁束密度。磁石として残る磁気の強さ
- 保磁力 :残った磁気を打ち消して を 0 に戻すために、逆向きに加える磁界の強さ。磁気の消えにくさ
白丸は、逆向きに磁化したときの同じ値で、ループは原点について対称です。
ループを 1 周させるたびに、ループの面積に比例したエネルギーが熱になって失われます。これがヒステリシス損で、ループが細い材料ほど小さくなります。交流の鉄心では、磁化の向きが電源の周波数で往復し続けるので、ループの面積の小さい材料が求められます。ヒステリシス損の式と、変圧器全体の損失との関係は、変圧器の損失と効率で扱います。
軟磁性材料と鉄心の材料
保磁力が小さく、ループが細い材料を軟磁性材料といいます。小さな磁界で磁化され、磁界を取り除くと磁気がほとんど残りません。透磁率が大きく、ヒステリシス損が小さいので、交流で磁化の向きを変え続ける変圧器・回転機・リアクトルの鉄心に使います(図4)。
図4も概形で、実測した曲線ではありません。2 つのループは、同じ目盛で並べています。ループが太い硬磁性材料は、次の節で扱います。
鉄心の損失には、ヒステリシス損のほかに、鉄心の中を流れる渦状の電流による渦電流損があります。渦電流が生じるしくみは、電磁誘導とファラデーの法則で説明しています。変圧器の鉄心は、薄い鋼板を絶縁して積み重ねた積層鉄心にして、渦電流の流れる断面を細かく分けています(図5)。

- 積層した鋼板 薄い板を重ねて渦電流を抑える
- コイル 銅色の線を巻いたもの
- 鉄心の脚 磁束が通る道
鉄心の材料には、次のものがあります。
| 材料 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| 無方向性鋼板 | 向きによらず同程度 | 回転機 |
| 方向性鋼板 | 圧延方向の特性が良い | 変圧器 |
| アモルファス | 鉄損が小さい | 変圧器 |
| ソフトフェライト | 渦電流が小さい | 高周波 |
電磁鋼板(ケイ素鋼板)は、鉄にケイ素を加えた鋼板です。ケイ素を加えると抵抗率が上がって渦電流が減り、ヒステリシスループも細くなります。ただし、ケイ素を多く入れると脆くなって加工しにくいので、実用上は 3 % 前後までです。圧延の向きに磁束を通すと特性がよくなるように加工したものが方向性で、磁束の向きが決まっている変圧器に使い、向きによらず特性が同程度の無方向性は、磁束の向きが回転する回転機に使います。
アモルファス合金は、原子が規則正しく並ばない金属で、非常に薄い帯状につくります。鉄損が小さく、変圧器の鉄心に使われます。ソフトフェライトは、酸化鉄を主成分とするセラミックスの磁性体で、抵抗率が高いため渦電流が小さく、周波数の高い機器の鉄心に向きます。ニッケルと鉄の合金のパーマロイも、軟磁性材料の 1 つとして知られています。
硬磁性材料とキュリー温度
保磁力が大きく、ループが太い材料を硬磁性材料といいます。いちど磁化すると、磁界を取り除いても強い磁気が残るので、永久磁石に使います。残留磁束密度と保磁力が大きいほど、強くて消えにくい磁石になります。軟磁性材料との違いは、次のとおりです。
| 項目 | 軟磁性 | 硬磁性 |
|---|---|---|
| 保磁力 | 小さい | 大きい |
| 磁化の向き | 変えやすい | 変えにくい |
| ループの面積 | 小さい | 大きい |
| 用途 | 鉄心 | 永久磁石 |
永久磁石の代表が、ネオジム磁石とフェライト磁石です。ネオジム磁石は、焼結品で残留磁束密度が 1 T 前後と大きく、保磁力も大きい強力な磁石です(図6)。フェライト磁石は、残留磁束密度は約 0.4 T 以下と小さいものの、安価で広く使われます。

- 磁石 磁化されたまま磁気が残る
- 鉄の球 磁石に引きつけられて付く
- 手前の磁石 別の磁石にも鉄が付く
永久磁石は、電流を流さなくても磁界をつくり続けられるので、小形のモーターや発電機の回転子に使われます(図7)。

- 永久磁石 回転子の周囲に並ぶ平たい磁石
- 積層鉄心 磁石の間にある薄い鋼板の積層
- 軸 回転子の中心を通る
強磁性体は、温度が上がると磁化が弱まり、キュリー温度を超えると強磁性を失って、常磁性体のようにふるまいます。鉄のキュリー温度は約 770 ℃ です。永久磁石は、温度が高いと磁力が下がるので、熱が出る場所で使うときは使用温度に注意します。
磁性材料の例題
磁性材料の問題は、ヒステリシスループの読み取りと用語、鉄心の材料の特徴、 の計算が中心です。次の 4 問で確かめましょう。
| 例題 | 求めるもの | 使う関係 |
|---|---|---|
| 1 | と | 図8のループ |
| 2 | 用語の組合せ | ・・損失 |
| 3 | 材料の正誤 | 鉄心の材料 |
| 4 | と飽和 |
例題 1 では、図8のループを使います。図8は例題用に作ったループで、実在する材料の測定値ではありません。
解答と解説を見る
は、 のときの です。縦軸を読むと、 です。
は、 になるときの の大きさです。横軸を読むと、 です。
ネオジム磁石の保磁力 は なので、この材料の保磁力はその 分の 1 以下です。 は大きくても、保磁力が小さく、ループが細いので、軟磁性材料に近いと判断できます。
答え:、、軟磁性材料に近い
解答と解説を見る
- (ア) のときに残る は、残留磁束密度です。
- (イ) を 0 に戻すための逆向きの は、保磁力です。
- (ウ)ループの面積に対応する損失は、ヒステリシス損です。渦電流損は、渦電流が鉄心の抵抗で熱になる損失で、ループの面積とは別のものです。
答え:(2)
解答と解説を見る
- (1) 正しい。軟磁性材料はループが細く、ヒステリシス損が小さくなります。
- (2) 正しい。保磁力が大きいと、いちど磁化した磁気が消えにくくなります。
- (3) 正しい。実用上のケイ素は 3 % 前後までです。
- (4) 誤り。ソフトフェライトは抵抗率が高く、渦電流が小さいので、周波数の高い機器の鉄心に使います。
- (5) 正しい。鉄のキュリー温度は約 770 ℃ です。
答え:(4)
解答と解説を見る
透磁率は、真空の透磁率に比透磁率を掛けて求めます。
磁束密度は、 です。
で のとき、
なので、 を 2 倍にしても は約 1.25 倍です。磁気飽和に近づくと が下がり、 が に比例して増えなくなるためです。
答え:、(約 1.25 倍)
よくある質問
残留磁束密度と保磁力は、何が違いますか?
残留磁束密度は、磁界を 0 に戻したときに残る磁束密度で、磁気の強さを表します。保磁力は、その残った磁気を 0 に戻すために逆向きに加える磁界の強さで、磁気の消えにくさを表します。ヒステリシスループでは、残留磁束密度は縦軸との交点、保磁力は横軸との交点の大きさです。
変圧器の鉄心に、永久磁石の材料を使わないのはなぜですか?
硬磁性材料はループが太く、磁化の向きを変えるたびに失うエネルギーが大きいからです。交流の鉄心は磁化の向きを電源の周波数で往復させ続けるので、ヒステリシス損が大きくなり、発熱します。そのため、ループの細い軟磁性材料を使います。
磁気飽和が起こると、何が困りますか?
が に比例して増えなくなり、 が一定とみなせなくなります。飽和まで磁化した鉄心では、磁束を少し増やすために必要な磁界が大きくなるので、鉄心は通常、飽和より下の範囲で使うように設計します。
キュリー温度とは何ですか?
強磁性体が、強磁性を失う温度です。この温度を超えると、強磁性体は常磁性体のようにふるまいます。鉄のキュリー温度は約 770 ℃ です。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
初磁化曲線で、 を増やしても がほとんど増えなくなる現象を何といいますか?
磁気飽和です。増えなくなった磁束密度が飽和磁束密度です。
ヒステリシスループで、 のときの と、 になるときの をそれぞれ何といいますか?
のときの は残留磁束密度 、 になるときの の大きさは保磁力 です。
ヒステリシス損は、ループのどんな量に対応しますか?
ループの面積です。ループが細いほど、損失は小さくなります。
軟磁性材料と硬磁性材料は、保磁力と用途がそれぞれどう違いますか?
軟磁性材料は保磁力が小さく、変圧器などの鉄心に使います。硬磁性材料は保磁力が大きく、永久磁石に使います。
電磁鋼板にケイ素を加える理由と、量の目安は何ですか?
抵抗率を上げて渦電流を減らし、ループも細くするためです。脆くなるので、実用上は 3 % 前後までです。
キュリー温度とは何ですか? 鉄ではいくらですか?
強磁性を失う温度です。鉄は約 770 ℃ です。
まとめ
- 磁性材料の中心は強磁性体。 で、磁気飽和が起こると は一定とみなせなくなる
- ヒステリシスループで、 のときの が残留磁束密度 、 に戻す逆向きの が保磁力 。ループの面積がヒステリシス損に対応する
- 軟磁性材料は保磁力が小さくループが細い鉄心の材料で、ケイ素鋼板(3 % 前後まで)・アモルファス合金・ソフトフェライトなどがある
- 硬磁性材料は保磁力が大きくループが太い永久磁石の材料で、ネオジム磁石・フェライト磁石がある
- 強磁性体は、キュリー温度(鉄は約 770 ℃)を超えると強磁性を失う








