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理論電気理論 / 電磁気18分で読めます

電磁誘導とは|ファラデーの法則・レンツの法則とインダクタンスの公式を図解

電験三種の電磁誘導を図解で整理します。ファラデーの法則、レンツの法則、e=Blv とフレミングの右手、自己・相互インダクタンス、和動・差動接続、磁気エネルギーを、例題で順に確認できます。

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手回し発電機のハンドルを回すと、つないだ LED が光っている写真
この記事の目次
  1. 電磁誘導とは
  2. ファラデーの法則
  3. レンツの法則と誘導起電力の向き
  4. 磁界の中を動く導体の起電力 e=Blv sinθ
  5. 自己誘導とインダクタンス
  6. 環状コイルの自己インダクタンス
  7. 磁気エネルギー
  8. 相互誘導と結合係数
  9. 結合係数
  10. 直列接続(和動・差動)
  11. 渦電流と電磁誘導の利用
  12. 電磁誘導の例題(起電力・インダクタンス)
  13. ファラデーの法則の計算
  14. 動く導体の起電力
  15. 自己インダクタンスと磁気エネルギー
  16. 環状コイルの L の計算
  17. 相互インダクタンスと和動・差動
  18. よくある質問
  19. 磁束が大きいほど、起電力も大きくなる?
  20. ファラデーの法則のマイナスは、何を表している?
  21. フレミングの右手と左手は、どう使い分ける?
  22. 和動と差動は、どう見分ける?
  23. まとめ
図解でわかる 電験三種 機械 1 直流機 の表紙機械を図解で読む図解でわかる 電験三種 機械 1
直流機
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発電機も変圧器も、磁束を変えて電圧を取り出す装置です。前の記事の磁界の強さの求め方では、電流が磁界をつくることを学びました。この逆に、コイルを貫く磁束が変わると、コイルに起電力が生じます。これが電磁誘導です。

この記事では、ファラデーの法則とレンツの法則、磁界の中を動く導体の起電力 e=Blvsin⁡θe = Blv\sin\theta とフレミングの右手、自己インダクタンスと相互インダクタンス、和動・差動接続、磁気エネルギー W=12LI2W = \frac{1}{2}LI^2 を、例題で確かめます。

電磁誘導の全体像
  • 電磁誘導
    • 磁束が変化するとき、コイルに誘導起電力が生じる(ファラデーの法則)
    • 向きは、磁束の変化を妨げる向き(レンツの法則)
  • 動く導体の起電力
    • e = Blv sinθ。向きはフレミングの右手
  • 自己誘導
    • e = −L ΔI/Δt。環状コイルの L = μSN²/l。磁気エネルギー W = LI²/2
  • 相互誘導
    • e2 = −M ΔI1/Δt。M = k√(L1 L2)
    • 直列接続は L = L1 + L2 ± 2M(和動は +、差動は −)
  • 渦電流
    • 導体の内部に流れる渦状の誘導電流。IH 調理器と鉄心の損失
  • 例題
    • 起電力・動く導体・自己インダクタンス・環状コイル・和動差動

電磁誘導とは

コイルに検流計(図では G)をつなぎ、磁石を近づけたり遠ざけたりすると、検流計の針が振れます。コイルを貫く磁束が変化するとき、コイルに起電力が生じ、回路が閉じていれば電流が流れます。この現象を電磁誘導、生じた起電力を誘導起電力、流れる電流を誘導電流といいます。1831年に、ファラデーが見つけました。

(a)近づける S N コイル G 針が一方へ振れる (b)止めておく S N コイル G 針は振れない(0) (c)遠ざける S N コイル G 針が逆へ振れる 磁束が変化している間だけ、起電力が生じる
図1 電磁誘導。コイルを貫く磁束が変化している間だけ、コイルに起電力が生じて検流計の針が振れる

図1 のように、磁石をコイルの近くに止めておくと、針は振れません。起電力が生じるのは、磁束が変化している間だけで、磁束の大きさそのものでは決まりません。磁石を近づけるときと遠ざけるときでは、起電力の向きが逆になります。

ファラデーの法則

NN 巻のコイルを貫く磁束が、時間 Δt [s]\Delta t\,\mathrm{[s]} のあいだに ΔΦ [Wb]\Delta\Phi\,\mathrm{[Wb]} だけ変わるとき、誘導起電力は、

e=−NΔΦΔt [V]e = -N\frac{\Delta\Phi}{\Delta t}\,\mathrm{[V]}

です。これをファラデーの法則(電磁誘導の法則)といいます。大きさは、磁束の変化の速さ ΔΦ/Δt\Delta\Phi/\Delta t と巻数 NN に比例します。マイナスの符号は、起電力の向きを表していて、次のレンツの法則で説明します。単位は、1 [Wb/s]=1 [V]1\,\mathrm{[Wb/s]} = 1\,\mathrm{[V]} です。

銀色の円筒形のハブが付いた自転車の前輪の写真。ハブから黒いリード線が上へ伸びている
  1. ハブ 内部に磁石とコイルが入っている
  2. リード線 起電力を灯りへ送る
  3. 車軸のナット 車輪が回る中心を固定する
図2 自転車のハブダイナモのイメージ。車輪が回ると、内部の磁石とコイルが相対的に動き、コイルを貫く磁束が変わって起電力が生じる(写真はイメージ)

起電力を大きくする方法は、次の3つです。

変えるもの起電力理由
磁石を速く動かす大きくなるΔΦ/Δt\Delta\Phi/\Delta t が大きい
巻数 NN を増やすNN に比例各巻に同じ起電力が生じ、足される
磁石を止める0ΔΦ=0\Delta\Phi = 0

レンツの法則と誘導起電力の向き

誘導起電力の向きは、レンツの法則で決まります。誘導電流がつくる磁束は、もとの磁束の変化を妨げる向きになる、という法則です。磁束が増えるときは、それを打ち消す向きに、減るときは、それを補う向きに、誘導電流が流れます。

(a)N 極を近づける S N 磁石の磁束 Φ が増える 打ち消す向きに電流が流れる 上側は N 極:磁石をはね返す (b)N 極を遠ざける S N 磁石の磁束 Φ が減る 補う向きに電流が流れる 上側は S 極:磁石を引き戻す ⊙=手前向き ⊗=奥向き(コイルの電流)
図3 レンツの法則。誘導電流がつくる磁束は、磁石の磁束の変化を妨げる向きになる

図3 は、コイルの断面です。N 極を近づけると、コイルを貫く下向きの磁束が増えます。これを打ち消すため、コイルは上向きの磁束をつくる向きに電流を流し、コイルの上側が N 極になって、近づく磁石をはね返します。N 極を遠ざけると、下向きの磁束が減ります。これを補うため、コイルは下向きの磁束をつくる向きに電流を流し、コイルの上側が S 極になって、遠ざかる磁石を引き戻します。

磁石の操作磁束の変化コイルの上側
N 極を近づける増えるN 極(反発)
N 極を遠ざける減るS 極(引き合う)

どちらの場合も、磁石は動きを妨げる力を受けます。そのため、磁石を動かすには力が要り、この力がした機械的な仕事が、電気エネルギーに変わります。もし誘導電流が変化を助ける向きに流れるなら、エネルギーが無から生まれてしまいます。レンツの法則は、エネルギー保存の法則の表れです。ファラデーの法則の式のマイナスは、この向きの関係を表しています。

磁界の中を動く導体の起電力 e=Blv sinθ

磁界の中で導体を動かしても、起電力が生じます。磁束密度 B [T]B\,\mathrm{[T]} の一様な磁界の中を、長さ l [m]l\,\mathrm{[m]} の導体が、磁界と垂直に速さ v [m/s]v\,\mathrm{[m/s]} で動くとします。時間 Δt\Delta t に導体が通り過ぎる面の面積は l vΔtl\,v\Delta t なので、導体と回路がつくる面を貫く磁束は、ΔΦ=B l vΔt\Delta\Phi = B\,l\,v\Delta t だけ増えます。ファラデーの法則(N=1N = 1)から、

ΔΦ=B⋅l v Δte=ΔΦΔt=Blv [V]\begin{aligned} \Delta\Phi &= B \cdot l\,v\,\Delta t \\ e &= \frac{\Delta\Phi}{\Delta t} = Blv\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

です。導体の速度が磁界とのあいだに角 θ\theta をなすときは、磁界に垂直な速度の成分 vsin⁡θv\sin\theta だけが効くので、

e=Blvsin⁡θ [V]e = Blv\sin\theta\,\mathrm{[V]}

になります。θ\theta は、速度の向きと磁界の向きのなす角です。

R B v e + − F 長さ l I ⊗=磁界 B は紙面の奥向き 力 F は運動を妨げる向き 右手:親指=速度 v 人差し指=磁界 B 中指=起電力 e
図4 磁界の中を動く導体の起電力 e=Blv。右手は、親指が速度 v、人差し指が磁界 B、中指が起電力 e

向きは、フレミングの右手の法則で決めます。右手の親指・人差し指・中指を互いに直角に開き、親指を導体の動く向き(速度 vv)、人差し指を磁界 BB の向きに合わせると、中指が起電力 ee の向きです。図4 では、導体が右へ動き、磁界は紙面の奥向きなので、起電力は上向きになります。左手の法則とは、指の役割が異なります。

指右手(発電機)左手(モーター)
親指速度 vv力 FF
人差し指磁界 BB磁界 BB
中指起電力 ee電流 II

左手の法則は、前の記事の磁界の強さの求め方で使いました。

導体にレールを通して抵抗 RR をつなぐと、電流 I=e/RI = e/R が流れます。この電流は、磁界から F=BIlF = BIl の力を受けます。向きは、運動を妨げる向きです(レンツの法則)。導体を一定の速さで動かし続けるには、これと同じ大きさの力を外から加える必要があります。外力の仕事率は Fv=BIl⋅v=(Blv) I=eIFv = BIl \cdot v = (Blv)\,I = eI で、電気の出力と等しくなります。この関係が、発電機で機械の動力が電力に変わる仕組みです。電機子巻線に当てはめた式は、直流発電機の誘導起電力で確かめられます。

自己誘導とインダクタンス

コイルに流れる電流が変わると、コイル自身がつくる磁束も変わります。すると、そのコイル自身に起電力が生じます。これを自己誘導といいます。向きは、電流の変化を妨げる向きです。電流が Δt\Delta t のあいだに ΔI\Delta I だけ変わるとき、

e=−LΔIΔt [V]e = -L\frac{\Delta I}{\Delta t}\,\mathrm{[V]}

です。比例定数 LL を自己インダクタンスといい、単位はヘンリー [H]\mathrm{[H]} です。電流が 1 秒に 1 A の割合で変わるとき、1 V の起電力が生じるコイルが 1 H です。

スイッチを入れた直後 E コイル L i e (i の増加を妨げる向き) スイッチ 電流 i の変化 t i E/R ゆっくり増える 電流の変化が速いほど、起電力 e は大きい
図5 自己誘導。電流が変わるとき、コイルは変化を妨げる向きに起電力 e を生じる

図5 の回路で、スイッチを入れると、電流は増えようとします。コイルは、その増加を妨げる向きに起電力を生じるので、電流はすぐには E/RE/R になりません。コイルがなければ、電流はすぐに E/RE/R になります。

NN 巻のコイルに電流 II が流れ、1 巻あたり Φ [Wb]\Phi\,\mathrm{[Wb]} の磁束が貫くとします。NΦN\Phi は電流 II に比例するので、NΦ=LIN\Phi = LI と書けます。これと e=−N ΔΦ/Δte = -N\,\Delta\Phi/\Delta t を比べると、上の式が得られます。

L=NΦI [H]L = \frac{N\Phi}{I}\,\mathrm{[H]}

環状コイルの自己インダクタンス

断面積 S [m2]S\,\mathrm{[m^2]}、磁路の長さ l [m]l\,\mathrm{[m]}、透磁率 μ [H/m]\mu\,\mathrm{[H/m]} の環状鉄心に、NN 回巻いたコイルを考えます。電流 II を流すと、磁界の強さは H=NI/lH = NI/l で、磁束は Φ=BS=μHS\Phi = BS = \mu HS です。

Φ=μSNIlL=NΦI=μSN2l [H]\begin{aligned} \Phi &= \frac{\mu SNI}{l} \\ L &= \frac{N\Phi}{I} = \frac{\mu SN^2}{l}\,\mathrm{[H]} \end{aligned}

LL は、巻数の2乗に比例します。巻数を2倍にすると、磁束も2倍になり、さらに磁束と鎖交する巻数も2倍になるので、LL は4倍です。

変えるものLL理由
巻数 NN を2倍4倍N2N^2 に比例
断面積 SS を2倍2倍SS に比例
磁路の長さ ll を2倍1/21/2ll に反比例
透磁率 μ\mu を2倍2倍μ\mu に比例

鉄心を入れると μ\mu が数百倍以上になるので、同じ巻数でも LL が大きくなります。

薄い鋼板を重ねた鉄心に、銅線のコイルが巻かれている写真
  1. コイル 銅線を巻いた部分
  2. 鉄心の上辺 磁束の通り道
  3. 積層の側面 薄い鋼板を重ねている
図6 鉄心にコイルを巻いたもの。鉄心の透磁率が大きいので、空心のコイルよりインダクタンス L が大きくなる(写真はイメージ)

磁気エネルギー

コイルに電流 II を流すと、コイルの磁界に、エネルギーがたくわえられます。電流を 0 から II まで増やすあいだに、電源が自己誘導の起電力に逆らってする仕事が、磁界のエネルギーになります。

W=12LI2 [J]W = \frac{1}{2}LI^2\,\mathrm{[J]}

コンデンサのエネルギー 12CV2\frac{1}{2}CV^2 と、よく似た形です。この式から、電流が大きく、LL が大きいほど、たくわえられるエネルギーが多いことが分かります。回路を急に切って電流が短い時間で 0 になると、ΔI/Δt\Delta I/\Delta t が大きいので、e=L ΔI/Δte = L\,\Delta I/\Delta t の高い電圧が生じます。スイッチを切るときの火花は、この起電力が原因です。

相互誘導と結合係数

2つのコイルを近づけ、片方の電流を変えると、もう片方のコイルに起電力が生じます。これを相互誘導といいます。1次コイルの電流が Δt\Delta t のあいだに ΔI1\Delta I_1 だけ変わるとき、2次コイルに生じる起電力は、

e2=−MΔI1Δt [V]e_2 = -M\frac{\Delta I_1}{\Delta t}\,\mathrm{[V]}

です。比例定数 MM を相互インダクタンスといい、単位は [H]\mathrm{[H]} です。変圧器は、この相互誘導を使っています。1次と2次の巻数の関係は、変圧器の巻数比と電圧・電流の関係で確かめられます。

磁束 Φ E スイッチ G 1次コイル 巻数 N1 2次コイル 巻数 N2 1次の電流が変わると、2次に起電力 e2 が生じる
図7 相互誘導。1 次コイルの電流が変わると、2 次コイルに起電力が生じる

身近な例が、ワイヤレス充電です。充電台の中のコイルに流れる交流が、変化する磁束をつくり、スマートフォンの中のコイルに起電力を生じさせます。配線でつながなくても、電力を送れます。

木の机の上の黒い円盤形の充電台に、スマートフォンを置く手の写真
  1. 充電台 コイルに交流を流す
  2. スマートフォン コイルに起電力が生じる
  3. すき間 配線でつながなくても電力が届く
図8 ワイヤレス充電のイメージ。充電台のコイルの電流が変わると、スマートフォン内のコイルに起電力が生じる(写真はイメージ)

結合係数

2つのコイルの自己インダクタンスを L1L_1、L2L_2、相互インダクタンスを MM とすると、

M=kL1L2 [H]M = k\sqrt{L_1 L_2}\,\mathrm{[H]}

と書けます。kk を結合係数といい、0≤k≤10 \le k \le 1 です。1つのコイルがつくる磁束が、すべて相手のコイルを貫くとき(漏れ磁束がないとき)は k=1k = 1 で、M=L1L2M = \sqrt{L_1L_2} になります。環状鉄心に N1N_1 巻と N2N_2 巻のコイルを巻いたときは、L1=μSN12/lL_1 = \mu SN_1^2/l、L2=μSN22/lL_2 = \mu SN_2^2/l、M=μSN1N2/lM = \mu SN_1N_2/l で、M2=L1L2M^2 = L_1L_2 です。

直列接続(和動・差動)

2つのコイルを直列につなぐと、2つのコイルの磁束が、強め合うか弱め合うかで、合成インダクタンスが変わります。

(a)和動接続 電流 I L1 L2 磁束 強め合う L = L1 + L2 + 2M (b)差動接続 電流 I L1 L2 磁束 弱め合う L = L1 + L2 − 2M ●=電流が入ると、磁束が同じ向きにできる端
図9 コイルの直列接続。磁束が強め合う和動は L=L1+L2+2M、弱め合う差動は L=L1+L2−2M

図9 の黒丸は、電流が入ると磁束が同じ向きにできる端を表します。電流が両方のコイルに黒丸の端から入るのが和動接続で、磁束が強め合います。片方のコイルに黒丸と反対の端から入るのが差動接続で、磁束が弱め合います。

電流 II が共通なので、和動接続では、コイル1の起電力は自己誘導 L1L_1 と相互誘導 MM の和、コイル2も同様です。

e=−(L1+M)ΔIΔt−(L2+M)ΔIΔt=−(L1+L2+2M)ΔIΔt\begin{aligned} e &= -(L_1 + M)\frac{\Delta I}{\Delta t} \\ &\quad -(L_2 + M)\frac{\Delta I}{\Delta t} \\ &= -(L_1 + L_2 + 2M)\frac{\Delta I}{\Delta t} \end{aligned}

差動接続では、相互誘導の向きが逆になり、MM の符号が反対になります。

接続磁束合成 LL
和動接続強め合うL1+L2+2ML_1 + L_2 + 2M
差動接続弱め合うL1+L2−2ML_1 + L_2 - 2M

和動の値 L+L_+ と差動の値 L−L_- を測れば、引き算で M=(L+−L−)/4M = (L_+ - L_-)/4 が求まります。

渦電流と電磁誘導の利用

板や塊の形の導体の中で磁束が変化すると、導体の内部に、渦を巻くような誘導電流が流れます。これを渦電流といいます。導体には抵抗があるので、渦電流はジュール熱を出します。

この熱を使うのが、IH 調理器です。天板の下のコイルに高周波の電流を流して、変化する磁束を鍋の底に通すと、鍋の底に渦電流が流れ、鍋自身が発熱します。

黒いガラスの天板の上で、銀色のステンレス鍋の湯が沸騰している写真。鍋から蒸気が上がっている
図10 IH 調理器のイメージ。天板の下のコイルがつくる磁束の変化で、鍋の底に渦電流が流れて発熱する(写真はイメージ)

一方、変圧器やモーターの鉄心の中では、渦電流の熱は損失(渦電流損)になります。鉄心を、薄い鋼板を絶縁して重ねた積層鉄心にすると、渦電流の通り道が細かく分かれて小さくなり、損失が減ります。損失と効率の関係は、変圧器の損失と効率で確かめられます。

電磁誘導の利用をまとめると、次の表になります。

利用原理磁束を変えるもの
発電機・ハブダイナモ動く導体や磁石の電磁誘導磁石や導体の運動
変圧器・ワイヤレス充電相互誘導交流の電流
IH 調理器鍋の底の渦電流高周波の電流

電磁誘導の例題(起電力・インダクタンス)

計算に入る前に、問われ方と使う式を表にまとめます。

問われること使う式注意
誘導起電力e=N ΔΦ/Δte = N\,\Delta\Phi/\Delta tΔt\Delta t は秒
動く導体の起電力e=Blvsin⁡θe = Blv\sin\thetaθ\theta は vv と BB の角
自己インダクタンスL=NΦ/IL = N\Phi/I、W=12LI2W = \frac{1}{2}LI^2エネルギーは 12\frac{1}{2}
環状コイルの LLL=μSN2/lL = \mu SN^2/lN2N^2 に比例
相互・和動差動M=kL1L2M = k\sqrt{L_1L_2}、L1+L2±2ML_1 + L_2 \pm 2M差動は −2M-2M

以下、起電力は大きさだけを求めます。

ファラデーの法則の計算

解答と解説を見る

(1) e=N ΔΦ/Δte = N\,\Delta\Phi/\Delta t です。

e=NΔΦΔt=200×4×10−30.1=8 [V]\begin{aligned} e &= N\frac{\Delta\Phi}{\Delta t} \\ &= 200 \times \frac{4 \times 10^{-3}}{0.1} \\ &= 8\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

(2) 時間が4倍なので、起電力は 1/41/4 です。

e=200×4×10−30.4=2 [V]\begin{aligned} e &= 200 \times \frac{4 \times 10^{-3}}{0.4} \\ &= 2\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

動く導体の起電力

解答と解説を見る

(1) 速度が磁界と垂直なので、sin⁡θ=1\sin\theta = 1 です。

e=Blv=0.5×0.4×5=1 [V]\begin{aligned} e &= Blv \\ &= 0.5 \times 0.4 \times 5 \\ &= 1\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

(2) 電流は、オームの法則で求めます。

I=eR=12=0.5 [A]\begin{aligned} I &= \frac{e}{R} \\ &= \frac{1}{2} = 0.5\,\mathrm{[A]} \end{aligned}

必要な力は、電流が受ける電磁力 BIlBIl と同じ大きさです。

F=BIl=0.5×0.5×0.4=0.1 [N]\begin{aligned} F &= BIl \\ &= 0.5 \times 0.5 \times 0.4 \\ &= 0.1\,\mathrm{[N]} \end{aligned}

確かめると、外力の仕事率 Fv=0.1×5=0.5 [W]Fv = 0.1 \times 5 = 0.5\,\mathrm{[W]} は、電気の出力 eI=1×0.5=0.5 [W]eI = 1 \times 0.5 = 0.5\,\mathrm{[W]} と一致します。

(3) sin⁡30∘=0.5\sin 30^\circ = 0.5 なので、起電力は半分です。

e=Blvsin⁡30∘=1×0.5=0.5 [V]\begin{aligned} e &= Blv\sin 30^\circ \\ &= 1 \times 0.5 \\ &= 0.5\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

自己インダクタンスと磁気エネルギー

解答と解説を見る

(1) L=NΦ/IL = N\Phi/I です。

L=NΦI=500×4×10−32=1 [H]\begin{aligned} L &= \frac{N\Phi}{I} \\ &= \frac{500 \times 4 \times 10^{-3}}{2} \\ &= 1\,\mathrm{[H]} \end{aligned}

(2) 電流の変化は ΔI=2 [A]\Delta I = 2\,\mathrm{[A]} です。

e=LΔIΔt=1×20.1=20 [V]\begin{aligned} e &= L\frac{\Delta I}{\Delta t} \\ &= 1 \times \frac{2}{0.1} \\ &= 20\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

(3) 磁気エネルギーは、次のとおりです。

W=12LI2=12×1×22=2 [J]\begin{aligned} W &= \frac{1}{2}LI^2 \\ &= \frac{1}{2} \times 1 \times 2^2 \\ &= 2\,\mathrm{[J]} \end{aligned}

環状コイルの L の計算

解答と解説を見る

S=4×10−4 [m2]S = 4 \times 10^{-4}\,\mathrm{[m^2]}、μ=500μ0=2π×10−4 [H/m]\mu = 500\mu_0 = 2\pi \times 10^{-4}\,\mathrm{[H/m]} です。μS\mu S を先に求めます。

μS=2π×10−4×4×10−4=8π×10−8\begin{aligned} \mu S &= 2\pi \times 10^{-4} \times 4 \times 10^{-4} \\ &= 8\pi \times 10^{-8} \end{aligned}L=μSN2l=8π×10−8×50020.5=4π×10−2≈0.126 [H]\begin{aligned} L &= \frac{\mu SN^2}{l} \\ &= \frac{8\pi \times 10^{-8} \times 500^2}{0.5} \\ &= 4\pi \times 10^{-2} \\ &\approx 0.126\,\mathrm{[H]} \end{aligned}

確かめると、前の記事の例題5の鉄心で、0.5 [A]0.5\,\mathrm{[A]} のとき Φ≈1.26×10−4 [Wb]\Phi \approx 1.26 \times 10^{-4}\,\mathrm{[Wb]} でした。L=NΦ/I=500×1.26×10−4/0.5≈0.126 [H]L = N\Phi/I = 500 \times 1.26 \times 10^{-4}/0.5 \approx 0.126\,\mathrm{[H]} で、一致します。

相互インダクタンスと和動・差動

解答と解説を見る

(1) M=kL1L2M = k\sqrt{L_1L_2} です。

M=0.5×0.8×0.2=0.5×0.4=0.2 [H]\begin{aligned} M &= 0.5 \times \sqrt{0.8 \times 0.2} \\ &= 0.5 \times 0.4 \\ &= 0.2\,\mathrm{[H]} \end{aligned}

(2) 和動は +2M+2M、差動は −2M-2M です。

L+=0.8+0.2+2×0.2=1.4 [H]L−=0.8+0.2−2×0.2=0.6 [H]\begin{aligned} L_+ &= 0.8 + 0.2 + 2 \times 0.2 \\ &= 1.4\,\mathrm{[H]} \\ L_- &= 0.8 + 0.2 - 2 \times 0.2 \\ &= 0.6\,\mathrm{[H]} \end{aligned}

(3) e2=M ΔI1/Δte_2 = M\,\Delta I_1/\Delta t です。

e2=MΔI1Δt=0.2×50.1=10 [V]\begin{aligned} e_2 &= M\frac{\Delta I_1}{\Delta t} \\ &= 0.2 \times \frac{5}{0.1} \\ &= 10\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

よくある質問

磁束が大きいほど、起電力も大きくなる?

大きくなりません。起電力を決めるのは、磁束の変化の速さ ΔΦ/Δt\Delta\Phi/\Delta t です。強い磁石をコイルのそばに止めておけば、磁束は大きくても変化しないので、起電力は 0 です。反対に、磁束が小さくても、速く変われば起電力は大きくなります。

ファラデーの法則のマイナスは、何を表している?

起電力の向きです。誘導起電力は、磁束の変化を妨げる向きに生じます。これがレンツの法則で、式の中ではマイナスの符号が表します。大きさだけを求める計算では、符号を省いて e=N ΔΦ/Δte = N\,\Delta\Phi/\Delta t とします。向きは、レンツの法則や、フレミングの右手で別に決めます。

フレミングの右手と左手は、どう使い分ける?

導体を動かして起電力を得る(発電機)ときは右手、電流を流して力を得る(モーター)ときは左手です。右手は、親指が速度、中指が起電力。左手は、親指が力、中指が電流です。人差し指は、どちらも磁界を表します。

和動と差動は、どう見分ける?

2つのコイルの磁束が強め合うのが和動、弱め合うのが差動です。合成インダクタンスは、和動で L1+L2+2ML_1 + L_2 + 2M、差動で L1+L2−2ML_1 + L_2 - 2M です。差動のとき LL は小さくなりますが、負にはなりません。M≤L1L2M \le \sqrt{L_1L_2} なので、L1+L2−2M≥(L1−L2)2≥0L_1 + L_2 - 2M \ge (\sqrt{L_1} - \sqrt{L_2})^2 \ge 0 だからです。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

ファラデーの法則は、どんな式?

e=−N ΔΦ/Δte = -N\,\Delta\Phi/\Delta t です。大きさは、磁束の変化の速さと巻数に比例します。

レンツの法則とは?

誘導電流が、磁束の変化を妨げる向きに流れる法則です。増えるときは打ち消し、減るときは補います。

磁界の中を動く導体の起電力と、向きの決め方は?

e=Blvsin⁡θe = Blv\sin\theta です。向きはフレミングの右手で、親指が速度、人差し指が磁界、中指が起電力です。

自己インダクタンスと磁気エネルギーの式は?

e=−L ΔI/Δte = -L\,\Delta I/\Delta t、L=NΦ/IL = N\Phi/I、W=12LI2W = \frac{1}{2}LI^2 です。

環状コイルの自己インダクタンスは、何に比例する?

L=μSN2/lL = \mu SN^2/l で、N2N^2、SS、μ\mu に比例し、磁路の長さ ll に反比例します。

2つのコイルの直列接続の合成インダクタンスは?

L=L1+L2±2ML = L_1 + L_2 \pm 2M です。和動が +2M+2M、差動が −2M-2M。M=kL1L2M = k\sqrt{L_1L_2} です。

まとめ

  • コイルを貫く磁束が変化すると、誘導起電力 e=−N ΔΦ/Δte = -N\,\Delta\Phi/\Delta t が生じる。向きは、変化を妨げる向き(レンツの法則)
  • 磁界の中を動く導体の起電力は e=Blvsin⁡θe = Blv\sin\theta。向きはフレミングの右手。発電には、運動を妨げる力に逆らう外力が要る
  • 自己誘導は e=−L ΔI/Δte = -L\,\Delta I/\Delta t、環状コイルは L=μSN2/lL = \mu SN^2/l、磁気エネルギーは W=12LI2W = \frac{1}{2}LI^2。相互誘導は M=kL1L2M = k\sqrt{L_1L_2}、直列接続は L1+L2±2ML_1 + L_2 \pm 2M
  • 導体の中には渦電流が流れ、IH 調理器では熱に使い、鉄心では積層にして損失を減らす

相互誘導を使う装置の代表は変圧器です。次は変圧器の巻数比と電圧・電流の関係へ進みましょう。電流がつくる磁界は、磁界の強さの求め方で復習できます。

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デンケンラボ編集部

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