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変圧器の効率とは|鉄損・銅損から最大効率・全日効率まで求める
電験三種の変圧器の効率を、鉄損と銅損の違いから整理します。規約効率の式、鉄損と銅損が等しいとき最大になる負荷率と最大効率、1日の電力量で考える全日効率の求め方を図解し、例題4問で身につけます。
変圧器の試験では、無負荷試験で鉄損を、短絡試験で銅損を測りました。この記事では、その2つの損失を使って変圧器の効率を計算します。電験三種の機械では、規約効率の式、効率が最大になる負荷率(最大効率)、1日の電力量で考える全日効率の3つが問われます。どれも「鉄損は一定、銅損は負荷率の2乗」という性質から導けるので、式を丸暗記せず、図で意味を確かめながら進めましょう。
変圧器の効率の全体像
- 変圧器の損失とは
- 鉄損の中身
- 銅損と負荷率
- 銅損は α2Pc
- 規約効率
- η=αPncosθ+Pi+α2PcαPncosθ
- 最大効率
- 鉄損 = 銅損 のとき、α=Pi/Pc
- 全日効率
- 1日の出力電力量 ÷(出力電力量 + 損失電力量)
変圧器の損失とは?鉄損と銅損の違い
変圧器は、入った電力のほとんどを出力に渡しますが、一部は熱になって失われます。この失われる電力が損失です。変圧器の損失で押さえるのは、次の2つです(図1)。
図1 変圧器の損失は、鉄損と銅損の2つ
| 損失 | 別名 | 場所 | 負荷との関係 | 測る試験 |
|---|
| 鉄損 Pi | 無負荷損 | 鉄心 | 負荷によらず一定 | 無負荷試験 |
| 銅損 Pc | 負荷損 | 巻線 | 負荷率の2乗に比例 | 短絡試験 |
鉄損は、電圧を加えて鉄心に磁束が通れば、負荷をつながなくても発生します。電柱の上の変圧器(図2)は、夜に家の明かりがほとんど消えても、電圧がかかっている限り、鉄損を出し続けています。一方、銅損は巻線に電流が流れてはじめて発生し、電流が大きいほど急に増えます。
1腕金2ブッシング3変圧器4電柱- 腕金 電線を支える金具
- ブッシング 高圧線をつなぐ端子
- 変圧器 円筒形のタンクに収まる
- 電柱 変圧器を支える
図2 夜の柱上変圧器。負荷が軽くても鉄損は出ている(写真はイメージ)
2つの損失の測り方は、変圧器の試験で扱いました。ここでは、その値をどう使うかを見ていきます。
鉄損(無負荷損)の中身:ヒステリシス損と渦電流損
鉄損は、さらに2つに分かれます。
- ヒステリシス損:交流で磁束の向きが変わるたびに、鉄心の中の磁区が向きを変える。そのときに失われるエネルギー
- 渦電流損:磁束の変化によって、鉄心の中に渦状の電流が流れ、鉄心の抵抗で熱になる損失
渦電流は、鉄心を一枚の塊にすると大きな渦を作ります。そこで変圧器の鉄心は、薄い鋼板を絶縁して重ねた積層鉄心(または薄い帯を巻いた巻鉄心)にして、渦を小さくしています(図3)。渦電流が生じるしくみは、電磁誘導とファラデーの法則で説明しています。ヒステリシス損を減らすには、ヒステリシス曲線の面積が小さい材料(ケイ素鋼板など)を使います。
1鉄心の層2巻線3台- 鉄心の層 薄い鋼板を重ねている
- 巻線 銅の線を巻いた部分
- 台 鉄心を支える
図3 薄い鋼板を巻いた鉄心。層が渦電流を細かく分ける(写真はイメージ)
電圧と周波数を変えたときの鉄損
試験の問題では、電圧や周波数を変えたときに鉄損がどう変わるかが問われます。最大磁束密度を Bm、周波数を f とすると、次の関係です。
ヒステリシス損∝fBm2渦電流損∝f2Bm2Bm∝fV
最後の式は、電圧を一定にして周波数を上げると、磁束が小さくなることを表しています。ここから要点は次の2つです。
- 周波数が同じで電圧を上げると、鉄損は電圧のほぼ2乗に比例して増える
- 電圧が同じで周波数を上げると、渦電流損は変わらず、ヒステリシス損は減る。そのため鉄損は減る(50 Hz 用の変圧器を 60 Hz の地域で同じ電圧で使うと、鉄損は減る)
鉄損を小さくする:アモルファス鉄心
近年は、鉄損を大幅に小さくするため、ケイ素鋼板のかわりにアモルファス合金の薄帯を鉄心に使った変圧器があります。鉄損(無負荷損)が小さいので、電柱の上の変圧器のように、軽い負荷の時間が長い用途で電力量を節約できます。
銅損(負荷損)と負荷率
銅損は、巻線の抵抗 r に電流 I が流れて生じる損失 rI2 です。定格の電流に対する負荷電流の割合を負荷率 α とすると、電流が α 倍なので、銅損は α2 倍になります。法規で使う負荷率(平均需要電力と最大需要電力の比)とは別の意味なので、混同しないようにします(需要率・負荷率・不等率)。
銅損=α2Pc [W]
Pc は、定格電流が流れたときの銅損(短絡試験で測った値)です。たとえば、Pc=1200 W の変圧器では、負荷率ごとに次のようになります。
| 負荷率 α | 0.25 | 0.5 | 0.75 | 1.0 |
|---|
| 銅損 α2Pc [W] | 75 | 300 | 675 | 1200 |
負荷が半分になると、銅損は半分ではなく4分の1になります。鉄損と銅損を同じグラフに描くと、次のようになります(図4)。
図4 鉄損は一定、銅損は負荷率の2乗で増える。交点が最大効率の条件(Pi = 400 W、Pc = 1200 W の例)
水平な線が鉄損、右上がりの曲線が銅損です。負荷が軽いうちは鉄損が大きく、重くなると銅損が大きくなり、途中で入れ替わります。この交点が、あとで出てくる最大効率の位置です。
損失は、すべて熱になります。大きな変圧器の側面にたくさんの放熱器が付いているのは、この熱を空気に逃がすためです(図5)。
図5 放熱器のフィン。損失で出た熱を空気に逃がす(写真はイメージ)
変圧器の効率とは?規約効率の求め方
変圧器の効率は、入力のうち、どれだけが出力として取り出せたかの割合です。
η=入力出力×100=出力+損失出力×100 [%]
入力から出力を引いた残りが損失です(図6)。
図6 入力から損失(鉄損と銅損)を引いたものが出力。効率は出力 ÷ 入力
変圧器の効率は、入力と出力を直接測って割るのではなく、試験で測った鉄損と銅損を使って計算で求めるのが一般的です。これを規約効率といい、損失は鉄損と銅損の2つだけを考えます。負荷率 α、定格容量 Pn、力率 cosθ のとき、次の式です。
η=αPncosθ+Pi+α2PcαPncosθ×100 [%]
分子は出力、分母は出力に鉄損と銅損を足した入力です。定格容量 Pn の単位は kV·A なので、Pi、Pc の W と単位を揃えて使います。
変圧器の銘板には、定格容量や定格電圧などの値が刻まれています(図7)。損失の値は、銘板ではなく、試験成績書に記されるのが一般的です。
1銘板2ボルト3ブッシング- 銘板 定格の値が刻まれている
- ボルト 銘板を固定している
- ブッシング 電線をつなぐ端子
図7 変圧器の銘板。定格容量や定格電圧などが刻まれる(写真はイメージ)
解答と解説を見る
(1) 出力は 100×103×1=100000 W、損失は 400+1200=1600 W です。
η=100000+1600100000×100≒98.4 [%](2) 出力は 0.5×100×103×0.8=40000 W、損失は 400+0.52×1200=700 W です。
η=40000+70040000×100≒98.3 [%]答え:(1) 約 98.4 %、(2) 約 98.3 %
最大効率になる負荷率と最大効率の求め方
効率は、負荷率が小さいときは鉄損の割合が大きいため低く、負荷率が上がると高くなり、さらに上げると銅損が増えて再び下がります。途中に効率が最大になる点があります(図8)。
図8 効率は負荷率の途中で最大になる(100 kV·A、Pi = 400 W、Pc = 1200 W の例)
効率の式の分母と分子を α で割ると、次のようになります。
η=Pncosθ+αPi+αPcPncosθ
Pncosθ は一定なので、効率が最大になるのは、損失の項 αPi+αPc が最小になるときです。この2つの項の積は PiPc で一定なので、2つが等しいとき(相加平均と相乗平均の関係)に和が最小になります。
αPi=αPcα=PcPi
両辺に α をかけると Pi=α2Pc です。つまり、鉄損と銅損が等しくなる負荷率で、効率が最大になります。そのときの最大効率は、損失が 2Pi になるので、次の式です。
ηmax=αPncosθ+2PiαPncosθ×100 [%]
解答と解説を見る
最大効率になる負荷率は、次のとおりです。
α=1200400=31≒0.577そのときの出力は 0.577×100×103≒57700 W、損失は 2×400=800 W です。
ηmax=57700+80057700×100≒98.6 [%]答え:負荷率 約 0.577(約 58 %)、最大効率 約 98.6 %
全負荷の 98.4 % より、わずかに高い値です。
解答と解説を見る
(1) 最大効率の条件 α=Pi/Pc=0.5 より、Pi/Pc=0.25、つまり Pc=4Pi です。
Pi+Pc=5Pi=1250Pi=250 [W]Pc=1000 [W](2) 出力は 50×103 W、損失は 1250 W です。
η=50000+125050000×100≒97.6 [%]答え:(1) 鉄損 250 W、銅損 1000 W、(2) 約 97.6 %
確かめると、負荷率 0.5 での最大効率は 25000+50025000≒98.0 % で、全負荷より高くなります。
全日効率の求め方:1日の電力量で考える
柱上変圧器のように、1日のうちで負荷が大きく変わる変圧器は、ある一瞬の効率よりも、1日を通した効率が大切です。これが全日効率で、電力ではなく電力量で計算します。式の電力量は、どれも1日ぶんです。
ηd=出力電力量+損失電力量出力電力量×100 [%]
損失電力量を出すときの注意は、次の2つです。
- 鉄損は、負荷がなくても24時間発生する(24Pi)
- 銅損は、時間帯ごとに α2Pc×時間 を計算して足す
図9 一日の負荷の例。時間帯ごとに負荷率が変わる
解答と解説を見る
出力電力量 は、時間帯ごとに(負荷率 × 100 kW × 時間)を足します。
0+0.5×100×6+1.0×100×8+0.25×100×4=300+800+100=1200 [kW⋅h]鉄損の電力量 は、24時間ぶんです。
0.4×24=9.6 [kW⋅h]銅損の電力量 は、時間帯ごとに α2×1.2 kW× 時間を足します。
0.52×1.2×6+1.02×1.2×8+0.252×1.2×4=1.8+9.6+0.3=11.7 [kW⋅h]損失電力量は 9.6+11.7=21.3 kW⋅h なので、全日効率は次のとおりです。
ηd=1200+21.31200×100≒98.3 [%]答え:約 98.3 %
全負荷効率の 98.4 % より、わずかに低くなっています。無負荷の6時間にも、鉄損が出ているためです。
全日効率は、鉄損が小さい変圧器ほど高くなります。負荷が軽い時間が長い変圧器では、鉄損の影響が大きいからです。また、負荷の形を変えずに大きさだけを変えたとき、全日効率が最大になるのは、1日の鉄損の電力量と銅損の電力量が等しいときです。
よくある質問
最大効率のとき、鉄損と銅損はどちらが大きいですか。
等しくなります。最大効率の条件は、鉄損 Pi と、そのときの銅損 α2Pc が等しいことです。このとき損失の合計は、鉄損の2倍(銅損の2倍)です。
効率が全負荷ではなく、軽い負荷で最大になるのはなぜですか。
鉄損は負荷によらず一定で、銅損は負荷率の2乗で増えるので、負荷が重くなる前に銅損が鉄損に追いつくからです。鉄損と銅損の比が決める α=Pi/Pc が1より小さければ、全負荷より軽い負荷で最大になります。負荷が軽い時間の長い変圧器では、軽めの負荷で最大になるよう設計されることも多いです。
規約効率は、実際に測った効率と違うのですか。
規約効率は、入力と出力を直接測って割るのではなく、試験で測った損失から計算で求める効率です。変圧器の効率は 98 % 以上と高く、入力と出力を直接測ると、小さな差を測ることになり、誤差が大きくなります。損失を測って計算するほうが、精度が高くなります。
力率が変わると、最大効率になる負荷率も変わりますか。
変わりません。α=Pi/Pc には力率が入っていないからです。ただし、最大効率の値は、分子の出力が力率に比例するので、力率が下がると小さくなります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
鉄損は負荷が変わると、どうなりますか?銅損は?
鉄損を作る2つの損失は何ですか?
規約効率の式を書けますか?
η=αPncosθ+Pi+α2PcαPncosθ です。
効率が最大になる条件と、そのときの負荷率は?
鉄損 = 銅損 のときで、α=Pi/Pc です。
最大効率になる負荷率は、力率で変わりますか?
全日効率を求めるとき、鉄損は何時間ぶん数えますか?
まとめ
- 変圧器の損失は、鉄損(無負荷損、一定)と銅損(負荷損、負荷率の2乗)の2つ
- 鉄損はヒステリシス損と渦電流損。電圧を上げると約2乗で増える
- 規約効率は η=αPncosθ+Pi+α2PcαPncosθ
- 最大効率は鉄損 = 銅損 のとき。負荷率は α=Pi/Pc、力率には関係しない
- 全日効率は電力量で計算し、鉄損は24時間ぶん数える
鉄損と銅損をどう測るかは変圧器の試験、銅損が電圧の下がりに関係する話は電圧変動率の記事に戻って確かめましょう。