架空送電線の導体には、銅ではなくアルミが広く使われています。アルミは銅より電気を通しにくいのに選ばれるのは、同じ抵抗にそろえると軽くなるからです。電験三種の電気材料では、導電材料の抵抗率と導電率、温度が変わったときの抵抗の計算(温度係数)、銅とアルミの比較が中心になります。
導電材料の全体像
- 導電材料とは
- 抵抗率と導電率
- R=ρl/A、σ=1/ρ、%IACS
- 抵抗の温度係数
- R2=R1{1+α1(t2−t1)}
- 金属は増え、半導体は減る
- 銅とアルミの比較
- 同じ抵抗なら断面積は約 1.64 倍、質量は約 0.50 倍
- 抵抗材料・接点材料・超電導
- 例題
導電材料とは
導電材料とは、電気を流すことを目的に使う材料の総称です。いちばん身近なのは電線の銅やアルミですが、抵抗を「わざと大きく」して熱を出すニクロムや、開閉をくり返す接点に使う金属、抵抗がゼロになる超電導体も導電材料の仲間です。図1は、配電盤の中で大きな電流を流す銅の母線(ブスバー)です。
1銅の母線2がいし3接続部4固定金具- 銅の母線 平たい銅の帯で大きな電流を通す
- がいし 母線を盤から絶縁して支える
- 接続部 ボルトで母線をつなぐ
- 固定金具 母線を保持する
図1 配電盤の中の銅の母線。大きな電流を、断面積の大きい銅の帯で流す(写真はイメージ)
どの材料も、電気の通しにくさは抵抗 R=ρl/A で表せます(オームの法則と直列回路)。求める性質は、使い道によって次のように変わります。
| 区分 | 求める性質 | 例 |
|---|
| 電線・巻線 | 抵抗が小さい | 銅・アルミ |
| 抵抗体 | 抵抗が大きく安定 | ニクロム |
| 接点 | 溶けにくく消耗しにくい | 銀・タングステン |
| 超電導 | 抵抗がゼロ | ニオブチタン |
電線や巻線の材料は、抵抗が小さいほど損失と電圧降下が小さくなります。そのため、ここでは「抵抗率が小さいこと」が出発点になります。
抵抗率と導電率
導体の抵抗 R は、長さ l に比例し、断面積 A に反比例します(図2)。比例定数が材料の抵抗率 ρ で、材料そのものの電気の通しにくさを表します。
図2 導体の抵抗。長さに比例し、断面積に反比例し、材料の抵抗率 ρ に比例する
R=ρAl [Ω]
抵抗率の単位は [Ω⋅m] です。逆数が導電率 σ で、電気の通しやすさを表します。
σ=ρ1 [S/m]
電線の断面積は mm2 で表すので、抵抗率を Ω⋅mm2/m で書くことがあります。1 mm2=10−6 m2 なので、次の換算になります。
1 [Ω⋅mm2/m]=10−6 [Ω⋅m]
導電率は、%IACS という比でも表します。国際標準軟銅(焼なました銅)の導電率を 100 % とした割合で、100 %IACS は 58.0 MS/m、抵抗率にすると 1.7241×10−8 Ω⋅m(20 ℃)です。電気用のアルミはおよそ 61 〜 62 %IACS です。
主な金属の 20 ℃ での値の目安を次に示します。抵抗率は 10−8 Ω⋅m を単位にした値、導電率は MS/m を単位にした値です。
| 材料 | 抵抗率 | 導電率 |
|---|
| 銅 | 1.72 | 58 |
| アルミ | 2.82 | 35.5 |
| タングステン | 5.6 | 17.9 |
| 鉄 | 9.70 | 10.3 |
| ニクロム | 110 | 0.91 |
銅は、表の中でもっとも電気を通しやすい金属です。導電率は、金属の中では銀がもっとも大きく、次に銅が続きます。ニクロムの抵抗率は銅の約 64 倍もあり、電線ではなく発熱体に使われる理由になります(後の節で扱います)。
抵抗の温度係数
金属は、温度が上がると原子の振動が大きくなり、自由電子が進みにくくなって抵抗が増えます。増え方は温度とほぼ直線の関係にあり、その傾きを決めるのが抵抗の温度係数 α です。一方、半導体は温度が上がるとキャリア(電子と正孔)が増えるので、抵抗は減ります(負の温度係数)。図3はその違いの概形です。
図3 温度と抵抗の関係の概形。金属は温度が上がると抵抗がほぼ直線的に増え、半導体は減る
図3は式から作った概形で、実際の材料の曲線ではありません。金属は、温度 t1 での抵抗 R1 と、そこでの温度係数 α1 がわかれば、温度 t2 の抵抗 R2 が次の式で求まります。
R2=R1{1+α1(t2−t1)} [Ω]
α1 の単位は [1/∘C] です。式の中の t2−t1 が温度の差なので、t を ℃ で書いても K で書いても同じ結果になります。変圧器や電動機の巻線は、運転中に温度が上がって抵抗が増えます。巻線の銅損 I2R が増える理由の一つです(変圧器の効率)。
主な金属の温度係数の目安(20 ℃ を基準にした値)を示します。単位は 10−3 1/∘C です。
| 材料 | 温度係数 | ひとこと |
|---|
| 銅 | 3.93 | 電線・巻線 |
| アルミ | 3.90 | 銅とほぼ同じ |
| 鉄 | 5.0 | 銅よりやや大きい |
| タングステン | 4.5 | フィラメント |
| ニクロム | 0.4 | 変化が小さい |
温度係数 α は、基準にする温度で値が変わります。基準が t1 のときの α1 と、基準が t2 のときの α2 には、次の関係があります。温度が上がった分だけ基準の抵抗が大きくなるので、変化の割合は小さくなります。
α2=1+α1(t2−t1)α1
たとえば銅の α20=3.93×10−3 1/∘C を、80 ℃ 基準にすると α80≒3.18×10−3 1/∘C に下がります。問題文に「〇〇 ℃ における温度係数」と書いてあれば、その温度を t1 として式に入れます。半導体の性質はダイオードの記事で詳しく扱います。
銅とアルミの比較
同じ長さの導体を、銅とアルミで同じ抵抗にそろえるとき、必要な断面積は抵抗率に比例します。R=ρl/A で R と l を同じにすると、A は ρ に比例するためです。
ACuAAl=ρCuρAl=1.722.82≒1.64
アルミの断面積は銅の約 1.64 倍で、導体の直径にすると約 1.28 倍です。ところがアルミは軽く、密度は銅 8.9 g/cm3 に対して 2.7 g/cm3 です。質量は断面積と密度の積なので、同じ長さなら次の比になります。
mCumAl=1.64×8.92.7≒0.50
つまり、同じ抵抗の電線ならアルミは銅の約半分の重さです(図4)。
図4 銅 100 mm² と同じ抵抗にしたアルミ。断面積は約 1.64 倍、質量は約 0.50 倍(密度は銅 8.9、アルミ 2.7 g/cm³)
図4は、円の面積と棒の高さを断面積と質量の比に合わせた概略図です。表にまとめると次のとおりです。抵抗率は 10−8 Ω⋅m、導電率は %IACS、密度は g/cm3 を単位にした値で、下の 2 行は銅を 1 とした比です。
| 項目 | 銅 | アルミ |
|---|
| 抵抗率 | 1.72 | 2.82 |
| 導電率 | 100 | 約 61 |
| 密度 | 8.9 | 2.7 |
| 断面積の比 | 1 | 約 1.64 |
| 質量の比 | 1 | 約 0.50 |
電線が軽いと、電線の重さを支える鉄塔やがいしの負担が小さくなります。そのため、架空送電線にはアルミが使われます。アルミは軽い代わりに引っ張りに弱いので、中心に鋼線を入れて補強した鋼心アルミより線(ACSR)が使われます(図5)。引っ張りは鋼線が受け持ち、電流は主にアルミの部分を流れます。電線の構成は架空送電線路の記事で扱います。
1外側のアルミ素線2内側のアルミ素線3中心の鋼線- 外側のアルミ素線 電流の大部分を流す
- 内側のアルミ素線 外側と同じくアルミ
- 中心の鋼線 引っ張りに耐える
図5 鋼心アルミより線の切り口。中心が鋼線、外側がアルミ素線(写真はイメージ)
軟銅と硬銅
同じ銅でも、加工のしかたで性質が変わります。焼きなました軟銅は柔らかく、導電率が高い銅です。引き抜いたままの硬銅は硬く、引っ張りに強い代わりに、導電率はやや低くなります。
| 項目 | 軟銅 | 硬銅 |
|---|
| 導電率 | 高い | やや低い |
| 強さ | 小さい | 大きい |
| 用途 | 絶縁電線の導体 | 架空電線 |
絶縁電線の導体には、細い素線を何本もより合わせたより線が多く使われます(図6)。1 本の太い線より曲げやすく、配線しやすいためです。
図6 銅のより線の切り口。細い素線を多数より合わせている(写真はイメージ)
抵抗材料・接点材料・超電導
抵抗材料
抵抗材料は、抵抗率が大きく、温度が変わっても抵抗があまり変わらない材料です。代表はニッケルとクロムの合金のニクロムで、抵抗率は約 1.1×10−6 Ω⋅m(銅の約 64 倍)、融点は約 1400 ℃ と高く、表面にできる酸化皮膜が内部の酸化を防ぎます。電気ヒーターの発熱体(図7)や電熱器に使われます。
1ヒーター線2セラミック台3線の端- ヒーター線 抵抗率が高く赤熱する
- セラミック台 熱に耐えて線を支える
- 線の端 台の溝に掛かる
図7 赤熱するヒーター線。抵抗の大きい線に電流を流して熱を出す(写真はイメージ)
ほかに、温度係数が非常に小さい合金(マンガニンなど)は、値が安定していることが求められる標準抵抗器に使われます。
接点材料
接点材料は、スイッチや遮断器の接点のように、開閉をくり返す部分に使う金属です。次の性質が求められます。
- 導電率が高く、接触抵抗が小さい
- 開閉のときのアークで溶けにくく、すり減りにくい
- 接点どうしがくっつく(溶着)しにくい
導電率がもっとも大きい銀や銀の合金は、電流の小さい接点に広く使われます。融点の高いタングステンは、アークに強い接点に使われます。
超電導
金属を冷やしていくと、ある温度で急に抵抗がゼロになる物質があります。この現象が超電導で、抵抗がゼロになりはじめる温度を臨界温度 Tc といいます(図8)。
図8 超電導体の抵抗と温度の概形。臨界温度 Tc 以下で抵抗がゼロになる(物質ごとに Tc は違う)
図8は超電導体の抵抗の変化を示した概形で、実際の測定曲線ではありません。臨界温度は物質ごとに違い、たとえば次の程度です。
| 物質 | 臨界温度 | 冷却 |
|---|
| 水銀 | 約 4 K | 液体ヘリウム |
| ニオブチタン | 約 10 K | 液体ヘリウム |
| イットリウム系 | 約 90 K 台 | 液体窒素 |
超電導の状態は、温度のほかに、磁界の強さにも左右されます。磁界が強すぎると超電導が壊れ、その限界を臨界磁界といいます。抵抗がゼロなので、大きな電流を損失なしに流せます。強力な電磁石や、電力ケーブルへの応用が研究されています。
導電材料の例題
導電材料の計算は、抵抗の式をそのまま使う問題がほとんどです。次の 4 問で、手順を確かめましょう。
| 例題 | 求めるもの | 使う関係 |
|---|
| 1 | 温度が変わったときの抵抗 | 温度係数の式 |
| 2 | 断面積の比と質量の比 | 抵抗率と密度 |
| 3 | 抵抗率の換算と抵抗 | σ=1/ρ |
| 4 | 性質の正誤 | 各材料の特徴 |
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80 ℃ の抵抗は、t2−t1=60 ∘C を式に入れて、
R2=10×{1+3.93×10−3×60}=10×1.2358≒12.4 [Ω]抵抗が 12.0 Ω のときは、式を t2 について解きます。
1012.0t2−20=1+3.93×10−3(t2−20)=3.93×10−30.2≒50.9よって t2≒70.9 ∘C です。
答え:80 ℃ で約 12.4 Ω、12.0 Ω のときは約 71 ℃
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抵抗と長さが同じなので、断面積は抵抗率に比例します。
AAl=100×1.722.82≒164 [mm2]長さ 1 km の質量は、体積に密度を掛けて求めます。銅線は 100 mm2=10−4 m2、密度は 8.9×103 kg/m3 なので、
mCu=10−4×1000×8.9×103=890 [kg]アルミ線は、断面積が 1.64×10−4 m2、密度が 2.7×103 kg/m3 なので、
mAl=1.64×10−4×1000×2.7×103≒443 [kg]質量の比は 443/890≒0.50 です。
答え:断面積は約 164 mm2(約 1.64 倍)、質量は約 443 kg(銅の約 0.50 倍)
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抵抗率は導電率の逆数です。
ρ=58×1061≒1.72×10−8 [Ω⋅m]10−6 Ω⋅m=1 Ω⋅mm2/m なので、0.0172 Ω⋅mm2/m とも書けます。
61 %IACS は、導電率が標準軟銅の 0.61 倍なので、抵抗率は逆に 1/0.61 倍になります。
ρAl=581×0.611≒0.02826 [Ω⋅mm2/m]長さは 1 km=1000 m なので、
R=0.02826×2001000≒0.141 [Ω]答え:1.72×10−8 Ω⋅m(0.0172 Ω⋅mm2/m)、抵抗は約 0.141 Ω
この抵抗に電流が流れると電圧降下が生じます(三相3線式の電圧降下)。
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- (1) 正しい。金属の温度係数は正で、抵抗は温度に対してほぼ直線で増えます。
- (2) 誤り。半導体はキャリアが増えるので、温度が上がると抵抗は減ります。
- (3) 正しい。断面積は約 1.64 倍でも、密度が小さいので質量は約 0.50 倍です。
- (4) 正しい。臨界温度以下で抵抗がゼロになる物質があります。
- (5) 正しい。硬銅は強度、軟銅は導電率に優れます。
答え:(2)
よくある質問
導電率と抵抗率はどう違いますか?
抵抗率 ρ は電気の通しにくさ、導電率 σ は通しやすさで、σ=1/ρ の逆数の関係です。単位は抵抗率が Ω⋅m、導電率が S/m です。電線の抵抗率は Ω⋅mm2/m で書くことがあり、1 Ω⋅mm2/m=10−6 Ω⋅m と換算します。
温度係数が小さい材料は何に使いますか?
温度が変わっても抵抗があまり変わらないので、値の安定が大切な標準抵抗器や、抵抗値を変えたくない抵抗体に使います。ニクロムの温度係数は銅の 10 分の 1 ほどです。
アルミは銅より導電率が低いのに、なぜ送電線に使うのですか?
同じ抵抗の電線にすると、アルミは断面積が約 1.64 倍になりますが、質量は銅の約半分です。軽い電線は鉄塔の負担が小さく、引っ張りに弱い欠点は中心の鋼線で補います(鋼心アルミより線)。
半導体の抵抗が温度で下がるのはなぜですか?
温度が上がると、電気を運ぶキャリア(電子と正孔)の数が増えるためです。金属は自由電子の数がほとんど変わらず、原子の振動で進みにくくなるので、抵抗が増えます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
導電率 σ と抵抗率 ρ の関係は何ですか?
σ=1/ρ です。単位は S/m と Ω⋅m で、1 Ω⋅mm2/m=10−6 Ω⋅m です。
温度 t1 の抵抗 R1 から、温度 t2 の抵抗 R2 を求める式は何ですか?
R2=R1{1+α1(t2−t1)} です。α1 は t1 を基準にした温度係数です。
温度が上がると、金属と半導体の抵抗はそれぞれどうなりますか?
銅と同じ長さ・同じ抵抗にしたアルミの断面積と質量は、銅の何倍ですか?
断面積は約 1.64 倍、質量は約 0.50 倍です。
鋼心アルミより線で、鋼線とアルミ素線の役割は何ですか?
鋼線が引っ張りを受け持ち、電流は主にアルミ素線が流します。
超電導体の抵抗がゼロになるのは、どんなときですか?
臨界温度 Tc 以下に冷やしたときです。
まとめ
- 導電材料には、電線・巻線の銅とアルミ、発熱体のニクロム、接点の金属、超電導体がある
- 抵抗は R=ρl/A、導電率は σ=1/ρ。1 Ω⋅mm2/m=10−6 Ω⋅m
- 温度による抵抗は R2=R1{1+α1(t2−t1)}。金属は増え、半導体は減る
- 同じ抵抗にすると、アルミは銅の約 1.64 倍の断面積で、質量は約 0.50 倍
- 超電導体は、臨界温度以下で抵抗がゼロになる
電気を通さない材料の性質は絶縁材料で、磁石や鉄心になる材料の性質は磁性材料で、続けて確かめましょう。