電験三種の法規で計算に使う式を、1本の記事にまとめました。電気施設管理の需要率・負荷率・不等率、変圧器の全日効率、力率改善のコンデンサ容量、電線のたるみと支線、そして条文の数値を使う B 種接地抵抗の上限と絶縁耐力試験の電圧です。式と記号の意味だけに絞って、1式を1行ずつ並べます。
この記事は、式を探すための入口です。式を見て意味が言えないときは、各節にあるリンク先の記事で、図と例題を使って確かめてください。最後の節に、問題文の言葉から使う式を選ぶ図と、2つの例題を載せています。
法規の公式の全体像
- 電気施設管理の計算に使う公式とは
- 条文の数値を使う式と、電気施設管理の式に分けて見る
- 需要率・負荷率・不等率
- 最大需要電力、平均需要電力、合成最大需要電力から比を求める
- 合成最大需要電力から変圧器の容量を決める
- 変圧器の全日効率と力率改善
- 全日効率は、出力電力量と損失電力量の比
- コンデンサの容量は、改善前と改善後の無効電力の差
- たるみと支線
- たるみ、実長、温度による変化、風圧荷重、支線の張力
- B種接地抵抗と絶縁耐力試験の電圧
- 接地抵抗は 150 を地絡電流で割る
- 試験電圧は、最大使用電圧に倍率を掛ける
- 公式の選び方と例題
電気施設管理の計算に使う公式とは
法規の計算に使う式は、大きく2つに分かれます。1つは電気施設管理の式です。電気を使う側の事情から、設備の大きさを決めます。どれだけ同時に使うか(需要率・負荷率・不等率)、どの容量の変圧器が要るか、コンデンサをいくつ入れるか、電線をどれだけたるませるか、といった計算です。
もう1つは、条文の数値を使う式です。B 種接地抵抗の上限や、絶縁耐力試験の試験電圧は、電気設備の技術基準の解釈(以下「解釈」)が決めた数値に、地絡電流や公称電圧を当てはめて求めます。
図1 法規の公式は、条文の数値を使う式と電気施設管理の式に分けて見る
図1は、この記事の式の分け方です。電気施設管理の式には、理論の力率や電力、機械の変圧器の損失、力のつり合いが入っています。式を丸暗記するより、どの単元の考え方を使った式なのかを押さえるほうが、忘れにくくなります。勉強の順番に迷うときは、電験三種の勉強の始め方も見てください。
需要率・負荷率・不等率の公式
需要家の電気の使い方を表す3つの比です。意味と例題は、需要率・負荷率・不等率の記事で確かめられます。
dLPavgF=SPmax=PmaxPavg=TW=PcPmax1+Pmax2+⋯
d は需要率、L は負荷率、F は不等率です。S は設備容量 [kW]、Pmax は最大需要電力 [kW]、Pavg は平均需要電力 [kW]、W は期間中の使用電力量 [kW·h]、T は期間の時間 [h]、Pmax1、Pmax2 は需要家ごとの最大需要電力、Pc は合成最大需要電力 [kW] です。
複数の負荷グループに送る変圧器の容量は、合成最大需要電力を力率で割って求めます。
Pc変圧器容量=FS1d1+S2d2+⋯ [kW]≥cosθPc [kV⋅A]
S1、S2 はグループごとの設備容量 [kW]、d1、d2 はその需要率、cosθ は力率です。変圧器容量の計算に、負荷率は使いません。
分電盤の中には、負荷ごとにブレーカが並んでいます(図2)。つないだ負荷の定格の合計が設備容量、実際に同時に使った電力の最大が最大需要電力です。
1上段のブレーカ2下段のブレーカ3ケーブル4盤の扉- 上段のブレーカ 負荷ごとの回路を入り切りする
- 下段のブレーカ もう1段の別の回路
- ケーブル 負荷へ電気を送る線
- 盤の扉 開けると中が見える
図2 扉を開けた分電盤。つないだ負荷の定格の合計が設備容量、同時に使った最大が最大需要電力になる(写真はイメージ)
変圧器の全日効率と力率改善の公式
変圧器の効率は、負荷率 α で運転しているときの出力と損失の比です。損失は、負荷に関係なく生じる鉄損 Pi と、負荷電流の2乗に比例する銅損 α2Pc です。意味と例題は、変圧器の損失と効率の記事にあります。
η=αPncosθ+Pi+α2PcαPncosθ
百分率にするときは 100 倍します。Pn は定格容量、cosθ は負荷の力率、Pi は鉄損、Pc は全負荷時の銅損です。分子と分母は、kW か W かの単位をそろえます。効率が最大になる負荷率は、鉄損と銅損が等しくなる次の値です。
α=PcPi
全日効率は、1日の電力量で比べます。鉄損は24時間ずっと生じるので 24Pi、銅損は負荷率が変わる時間帯ごとに足します。
ηd損失電力量=出力電力量+損失電力量出力電力量=24Pi+∑α2Pct
t は、その負荷率 α で運転した時間 [h] です。法規の負荷率(平均と最大の比)と、変圧器の α(定格容量に対する負荷の割合)は、同じ「負荷率」という語でも別の量です。
力率改善では、進相コンデンサを入れて、無効電力を減らします(図3)。必要な容量は、改善前と改善後の無効電力の差です。意味と例題は、力率改善の記事にあります。
図3 電力の三角形。進相コンデンサの容量は、改善前と改善後の無効電力の差
Qc=Q1−Q2=P(tanθ1−tanθ2) [kvar]
P は有効電力 [kW]、θ1 は改善前、θ2 は改善後の力率角です。力率から tanθ は、sinθ を経由して求めます。
tanθ=cosθsinθ=cosθ1−cos2θ
整数の比になる力率は、そのまま覚えておくと速く計算できます。
cosθ=0.6 ⇒ tanθ=34cosθ=0.8 ⇒ tanθ=43cosθ=0.96 ⇒ tanθ=247
たるみと支線の公式
電線は、支持物のあいだで自分の重さと風圧を受けて、たるみます(図4)。たるみの式の導き方と6問の例題は、電線のたるみと支線の記事にあります。
1左の鉄塔2電線3電線の最下点4右の鉄塔- 左の鉄塔 電線の支持点
- 電線 自重と風圧でたるむ
- 電線の最下点 たるみが最大
- 右の鉄塔 もう1つの支持点
図4 鉄塔のあいだでたるむ電線。2つの支持点の間隔が径間、支持点から最も下がった点までの深さがたるみ(写真はイメージ)
DLΔLD′2=8TWS2=S+3S8D2=αSΔt=D2+83SΔL
D はたるみ [m]、W は電線 1 m あたりの合成荷重 [N/m]、S は径間 [m]、T は電線の水平張力 [N]、L は電線の実長 [m] です。ΔL は温度変化による実長の変化 [m]、α は電線の線膨張係数 [1/∘C](変圧器の α とは別)、Δt は温度変化 [∘C]、D′ は温度変化後のたるみです。
張力の上限は安全率で決まります。風圧は、解釈第58条の甲種で、電線の外径 d [m] に 980 を掛けた値になります。重さと風圧は直角なので、合成します。
安全率wW=最大張力引張強さ=980×d [N/m]=W02+w2
w は甲種の風圧荷重、W0 は電線の重さ [N/m] です。許容できる張力は、引張強さを安全率で割った値です。
電線路が曲がる箇所や電線を引き留める箇所には、支線を張ります。支線の張力と、曲がりの水平角度による合力は、次の式で求めます。
TwH=sinθT=2Tsin2φ
Tw は支線の張力、θ は支線と電柱のなす角です。H は水平角度 φ で曲がる箇所に、電線の張力 T が2本分かかるときの合力です。
B種接地抵抗と絶縁耐力試験の電圧の公式
どちらも、解釈が決めた数値に、問題文の値を当てはめる式です。数値の根拠と例題は、接地工事の記事と絶縁耐力試験の記事にあります。
B種接地工事の抵抗値の上限
高圧電路と低圧電路を結ぶ変圧器に施す B 種接地工事の抵抗 RB は、混触で低圧電路の対地電圧 E が上がりすぎないように、上限が決まっています(解釈第17条の17-1表)。
ERB=Ig×RB≤150 V≤Ig150
Ig は、変圧器の高圧側(または特別高圧側)の電路の1線地絡電流 [A] です。混触時に自動で電路を遮断する装置があるときは、遮断時間に応じて、上限の分子が変わります。
- 遮断装置がない、または遮断に 2 秒を超える:RB≤150/Ig
- 遮断が 1 秒を超えて 2 秒以下:RB≤300/Ig
- 遮断が 1 秒以下:RB≤600/Ig
低圧の機器の外箱に D 種接地工事を施した場合、地絡したときの外箱の電圧は、RB と RD の分圧で決まります。
IVD=RB+RDV=RB+RDRDV
V は電源の電圧 [V]、RD は D 種接地抵抗、VD は外箱の電圧です。
絶縁耐力試験の試験電圧
試験電圧は、公称電圧ではなく最大使用電圧に倍率を掛けて決まります(図5)。意味と区分は、解釈第15条の15-1表にあります。
図5 絶縁耐力試験の電圧は、公称電圧から倍率を順に掛けて求める
VmVt=Vn×1.11.15=Vm×1.5
Vn は公称電圧 [V]、Vm は最大使用電圧 [V]、Vt は試験電圧 [V] です。公称電圧が 1000 V 以下のときは、最大使用電圧を Vn×1.15 とします。倍率 1.5 は、最大使用電圧が 7000 V 以下の交流の電路の値です。7000 V を超え 60000 V 以下の電路は、15000 V 以下の多重接地式を除いて 1.25 倍(下限 10500 V)で、多重接地式は 0.92 倍です。ケーブルを使う電路は、交流の2倍の直流電圧で試験する方法もあります。
ケーブルの対地静電容量 C が大きいと、試験電圧を加えたときに充電電流が流れます。試験用変圧器の容量は、この電流と試験電圧から求めます。
IS=ωCV=2πfCV=VI
V は試験電圧 [V]、I は充電電流 [A]、f は周波数 [Hz]、S は必要な容量 [V·A] です。
低圧の電路や幹線の計算でも、条文の数値を使います。たとえば、電動機などの定格電流の合計 IM が、電熱器などの定格電流の合計 IH より大きく、かつ 50 A 以下のとき、幹線の許容電流 IW は次の値以上です。50 A を超える場合は、1.25 を 1.1 に替えます。詳しくは許容電流と幹線の太さの記事を見てください。
IW≥IH+1.25IM
公式の選び方と例題
式がたくさんあっても、問題文の言葉に反応して、どの式かを選べば、あとは代入です。図6は、問題文の言葉と、使う式の組み合わせです。
図6 問題文の言葉から、使う式を選ぶ
次の2問で、式の選び方を試します。
解答と解説を見る
「設備容量」と「需要率」から最大需要電力、「不等率」から合成最大需要電力、「力率」から変圧器容量の順に求めます。
手順1 各工場の最大需要電力を求めます。
PAPB=400×0.5=200 kW=300×0.6=180 kW手順2 不等率で割って、合成最大需要電力を求めます。
Pc=1.25200+180=304 kW手順3 力率で割って、変圧器容量を求めます。
cosθPc=0.95304=320 kV⋅A変圧器の容量は 320 kV·A 以上です。検算すると、320 × 0.95 = 304 kW で、合成最大需要電力と合います。
解答と解説を見る
「力率を改善」とあるので、Qc=P(tanθ1−tanθ2) を使います。
手順1 力率から tanθ を求めます。
cosθ1=0.6cosθ2=0.8⇒tanθ1=34⇒tanθ2=43手順2 コンデンサの容量を求めます。
Qc=240×(34−43)=240×127=140 kvar必要な容量は 140 kvar です。検算すると、改善前の無効電力は 240 × 4/3 = 320 kvar、改善後は 240 × 3/4 = 180 kvar で、差は 320 − 180 = 140 kvar です。
よくある質問
公式は、全部暗記しないといけない?
式の多くは、導き方があります。たるみの式は力のつり合い、全日効率は定義、コンデンサの容量は電力の三角形から作れるので、導き方を一度たどっておくと覚える量が減ります。tanθ も、3 : 4 : 5 や 7 : 24 : 25 の直角三角形を使うと、力率から素早く出せます。一方で、150・300・600 や 1.5 倍・1.25 倍のように条文で決まっている数値は、根拠と一緒に確かめて覚えておきます。
需要率・負荷率の「負荷率」と、変圧器の負荷率 α は同じ?
同じ語ですが、別の量です。需要率・負荷率の負荷率 L は、期間中の平均需要電力を最大需要電力で割った値です。変圧器の効率で使う α は、定格容量に対して、ある時刻の負荷がどれだけかを表します。問題文が「負荷率」と書いていても、どちらの話かは、平均や期間があるかどうかで見分けます。
B種接地抵抗の 150 は、どんなときに 300 や 600 になる?
混触したときに、低圧電路の対地電圧が 150 V を超えたら自動で電路を遮断する装置があり、その遮断時間が短いときです。遮断が 1 秒を超えて 2 秒以下なら 300/Ig、1 秒以下なら 600/Ig になります。装置がないときや、遮断に 2 秒を超えるときは、基本の 150/Ig です。
式を忘れたときは、どう確かめる?
単位で確かめる方法があります。たるみの式 D=WS2/(8T) は、[N/m] × [m²] ÷ [N] で [m] になり、たるみの単位と合います。需要率や負荷率は 1 以下、不等率は 1 以上という範囲でも、式の分子と分母が逆になっていないか確かめられます。それでも分からないときは、導き方に戻ります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
需要率・負荷率・不等率の式は?
需要率は d=Pmax/S、負荷率は L=Pavg/Pmax、不等率は F=(Pmax1+Pmax2+⋯)/Pc です。
力率を改善するために必要なコンデンサの容量は?
改善前と改善後の無効電力の差で、Qc=P(tanθ1−tanθ2) です。
たるみ D と電線の実長 L の式は?
D=WS2/(8T)、L=S+8D2/(3S) です。
B種接地抵抗の上限は?(遮断装置がないとき)
RB≤150/Ig です。遮断が 1 秒以下なら 600、1 秒を超えて 2 秒以下なら 300 を分子に使います。
公称電圧 6600 V の電路の、交流の絶縁耐力試験の電圧は?
最大使用電圧 6600×1.15/1.1=6900 V の 1.5 倍で、10350 V です。
問題文に「設備容量」「最大需要電力」とあったら、まず何の式を考える?
需要率の式 d=Pmax/S です。
まとめ
- 法規の計算の式は、電気施設管理の式(需要率・負荷率・不等率、変圧器の全日効率、力率改善、たるみと支線)と、条文の数値を使う式(B 種接地抵抗、絶縁耐力試験の電圧)に分けられる
- 需要率は最大需要電力÷設備容量、負荷率は平均÷最大、不等率は各最大の和÷合成最大。変圧器容量は、合成最大需要電力÷力率
- コンデンサの容量は Qc=P(tanθ1−tanθ2)。たるみは D=WS2/(8T)、実長は L=S+8D2/(3S)
- B 種接地抵抗は RB≤150/Ig(遮断時間で 300、600)。試験電圧は、公称電圧ではなく最大使用電圧に倍率を掛ける
- 問題文の言葉(設備容量、力率を改善、径間、地絡電流、試験電圧など)から使う式を選ぶ
各式の導き方と例題は、需要率・負荷率・不等率、変圧器の損失と効率、力率改善、電線のたるみと支線、接地工事、絶縁耐力試験の各記事で確かめられます。条文の読み方は電気設備の技術基準の記事、覚える数値は法規の数字のまとめ、ほかの科目の式は理論の公式一覧・電力の公式一覧・機械の公式一覧、式の変形に不安があるときは電験三種に必要な数学、勉強の順番は電験三種の勉強の始め方を見てください。