A-D変換の分解能と量子化誤差|ビット数の計算と逐次比較形・二重積分形を図解
電験三種の理論で扱うA-D変換を図解で整理します。標本化・量子化・符号化、分解能と量子化誤差の計算、逐次比較形と二重積分形のしくみ、D-A変換のR-2Rラダーまで、例題で確かめられます。

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針の振れを目盛で読む計器は、指示電気計器の種類で確認しました。一方、数字で値を表示する計器は、測った電圧をいったん数に直してから表示します。その入口にある回路が、A-D変換器です。
この記事では、A-D変換の3つの手順(標本化・量子化・符号化)、分解能と量子化誤差の計算、逐次比較形と二重積分形の違い、逆向きのD-A変換を順に確認します。例題では、1 LSB やサンプリング周波数、二重積分形の入力電圧、R-2R ラダーの出力電圧を、手を動かして求めます。
- A-D変換とは
- 連続したアナログ量を、0 と 1 の数(ディジタル量)に直す
- ディジタル計器の入口にあたる
- 標本化・量子化・符号化
- 標本化は時間を区切り、量子化は大きさを区切り、符号化は2進数にする
- サンプリング周波数は、信号の最高周波数の2倍より大きくする
- 分解能と量子化誤差
- n ビットなら 段階、1 LSB は
- 量子化誤差は、最大で LSB
- 変換の方式
- 逐次比較形は、上のけたから1ビットずつ決める
- 二重積分形は、積分の時間で測る。雑音に強い
- 並列比較形は、比較器を並べて一度に決める
- D-A変換
- R-2R ラダーで、ビットの数を電圧に戻す
A-D変換とは
電圧や電流は、本来、連続して変わる量です。時間が少し進めば値も少し変わり、途中の値はいくらでも細かく取れます。このような量をアナログ量といいます。これに対して、0 と 1 の並びで表した、とびとびの値をディジタル量といいます。
アナログ量をディジタル量に直す回路がA-D変換器で、逆に、ディジタル量をアナログ量に戻す回路がD-A変換器です。ディジタル計器の中では、測りたい電圧が次の順に進みます。
入力回路は、分圧器や増幅器を使って、測りたい電圧を A-D変換器が扱える大きさに整えます。レンジの切り替えも、ここで行います。A-D変換器が数を決め、最後の回路が、その数を数字にして表示します。針の位置で値を読む指示電気計器と比べると、針の代わりに A-D変換器が値を決めている、と考えると分かりやすくなります。
ディジタルマルチメータは、この入力回路・A-D変換器・表示が、1つの本体にまとまった計器です。

- 液晶表示部 数字で結果を表示
- ダイヤル 測る量とレンジを選ぶ
- 入力端子 リード線をつなぐ
アナログ式とディジタル式を、読み方で比べると次のとおりです。
| 比べる点 | アナログ式 | ディジタル式 |
|---|---|---|
| 値の形 | 連続して変わる | とびとびの値 |
| 読み方 | 針と目盛を読む | 数字をそのまま読む |
| 例 | 可動コイル形 | ディジタルマルチメータ |
標本化・量子化・符号化とサンプリング定理
A-D変換は、次の3つの手順で進みます。
| 手順 | 区切るもの | できるもの |
|---|---|---|
| 標本化 | 時間 | とびとびの時刻の値 |
| 量子化 | 大きさ | 段階のどれか |
| 符号化 | なし | 2進数 |
- 標本化(サンプリング):一定の時間ごとに、電圧の値を取り出します。取り出す回数が1秒あたり何回かを、サンプリング周波数 といいます。
- 量子化:取り出した値を、あらかじめ決めた段階のうち、いちばん近いものに丸めます。
- 符号化:段階の番号を、2進数で表します。2進数と10進数の変換は、論理回路とカルノー図で確かめられます。
図3は、3ビットの例です。電圧を 8 段階に分けて、10 回標本化しています。標本点の下に並んだ3けたの数が、符号化の結果です。
量子化された信号は、なめらかな波ではなく、階段のようにとびとびの値になります。段が細かいほど、元の波に近づきます。

データを取り込んで記録する装置では、一定の間隔で標本化した値を、数にして保存します。

- 本体 信号を取り込む箱
- 配線 測る信号をつなぐ
- ネジ ふたを留める
サンプリング定理とエイリアシング
標本化の間隔が粗すぎると、元の信号を取り戻せません。サンプリング定理(標本化定理)は、元に戻せる条件を、次の式で示します。
信号に含まれる最高周波数 の2倍より大きいサンプリング周波数 で標本化すれば、元の信号を取り戻せます。
この条件を満たさないと、高い周波数の成分が、低い周波数の成分に化けて見えます。これをエイリアシング(折り返しひずみ)といいます。図6は、9 Hz の波を、1 秒に 10 回標本化した例です。標本点は、1 Hz のゆっくりした波の上にも同じように並ぶため、1 Hz の波に見えてしまいます。
見かけの周波数は、 の整数倍のうち、元の周波数 にいちばん近いものとの差で決まります。図6では、 です。対策として、A-D変換器の前に、ローパスフィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)を入れ、 より高い成分を、あらかじめ取り除きます。
解答と解説を見る
(1) サンプリング定理 より、
8 kHz より大きくします。
(2) 6 kHz は 8 kHz より小さく、条件を満たしません。4 kHz の波を、1 周期に 1.5 回()しか標本化できないためです。4 kHz にいちばん近い 6 kHz の整数倍は 6 kHz で、差は、
となり、2 kHz の信号に見えます。
分解能と量子化誤差の計算
分解能は、A-D変換器が見分けられる、電圧のいちばん小さな変化です。n ビットの A-D変換器は、 段階を区別できます。変換できる最大の電圧をフルスケール電圧 とすると、最下位ビット(LSB)1つぶんの電圧は、次の式です。
のときの値は、次のとおりです。ビットが 2 つ増えるごとに、段階数は 4 倍になり、1 LSB は 4 分の 1 になります。
| ビット数 | 段階数 | 1 LSB |
|---|---|---|
| 8 | 256 | 39.1 mV |
| 10 | 1024 | 9.77 mV |
| 12 | 4096 | 2.44 mV |
| 16 | 65536 | 0.153 mV |
量子化誤差は最大 ±1/2 LSB
連続した電圧を段階に丸めるので、変換結果と実際の電圧の間には、差が出ます。これが量子化誤差です。いちばん近い段階に丸める(四捨五入形の)変換器では、誤差は最大でも 1/2 LSB で、 LSB の範囲に収まります。切り捨てる形の変換器では、0 から 1 LSB の範囲になります。
ビット数を増やすと、1 LSB が小さくなり、量子化誤差も小さくなります。
ディジタル計器の表示桁数
ディジタル計器の表示は、「3½桁」のように書きます。この「½桁」は、最上位のけたが、0 か 1 しか表示されないことを表します。3½桁の最大の表示は 1999 で、0 から 1999 までの 2000 通りを区別します。4½桁なら、最大は 19999 です。
2000 通りを区別するには、 では足りず、 の 11 ビットが必要です。
解答と解説を見る
(1) 式に当てはめます。
(2) 最大は LSB です。
(3) 入力を 1 LSB で割って、いちばん近い整数にします。
(4) より、
では足りず、 で足ります。13 ビット以上です。
A-D変換の方式と、逐次比較形・二重積分形
A-D変換器には、いくつかの方式があります。小さな IC にまとめられたものが、多く使われています。

- IC 回路をまとめた部品
- 端子 基板の配線へつなぐ
- チップ部品 抵抗やコンデンサ
- 基板 部品をつなぐ板
代表的な3つの方式を比べます。
| 方式 | 速さ | 特徴 |
|---|---|---|
| 逐次比較形 | 中くらい | n 回の比較で決まる |
| 二重積分形 | 遅め | 雑音に強い |
| 並列比較形 | 速い | 比較器が 個 |
逐次比較形
逐次比較形は、てんびんで重さを量るのとよく似ています。分銅を、重いものから順にのせ、重すぎたら外します。これを、軽い分銅まで繰り返せば、重さが決まります。
逐次比較形では、D-A変換器が作る基準の電圧と、入力電圧を、上のけた(MSB)から順に比べます。基準が入力より小さければそのビットを 1 に残し、大きければ 0 に戻します。n ビットなら、入力の大きさによらず、n 回の比較で結果が決まります。
図9は、フルスケール 16 V の 4 ビットで、入力が 11.4 V のときです。1 LSB は 1 V になります。
- 8 V は 11.4 V より小さいので、b3 は 1 に残します。
- 8 + 4 = 12 V は 11.4 V より大きいので、b2 は 0 に戻します。
- 8 + 2 = 10 V は小さいので、b1 は 1 に残します。
- 10 + 1 = 11 V は小さいので、b0 は 1 に残します。
結果は で、11 V を表します。残りの 0.4 V が、量子化誤差です。
二重積分形
二重積分形は、積分回路を2回使います。積分回路は、オペアンプで作る回路で、入力を時間で積み重ねた電圧を出力します。
図10のように、まず、入力電圧 を、一定の時間 だけ積分します。次に、逆の向きの基準電圧 をつないで、積分器の出力が 0 に戻るまでの時間 を測ります。戻る傾きは、基準電圧で決まって一定です。入力が大きいほど、たくさん積分されているので、戻るのに時間がかかります。
積分回路の定数を R と C とすると、 の終わりの出力の大きさは で、 の間に減る量は です。この2つが等しいので、
となり、R と C が消えます。部品の値のばらつきの影響を受けません。時間は、クロックのパルスを数えて測ります。
また、 を、商用周波数の周期の整数倍にすれば、その周波数の雑音は、積分の間に平均されて 0 になります。50 Hz の周期は 20 ms、60 Hz の周期は約 16.7 ms で、 なら、50 Hz の 5 周期と 60 Hz の 6 周期にあたります。
解答と解説を見る
(1) より、
(2) 10 kHz の周期は 0.1 ms です。
は 1000 カウント、 は 625 カウントです。カウントの比 に を掛けても、1.25 V になります。
並列比較形とΔ-Σ形
並列比較形(フラッシュ形)は、基準電圧を等間隔に分けて、 個の比較器で、入力と一度に比べる方式です。8 ビットなら 255 個の比較器が必要で、ビット数が増えると回路が大きくなりますが、変換は速くなります。
Δ-Σ形は、入力を、粗い 1 ビットの変換で高速に標本化し、フィルタで平均して、高い分解能を得る方式です。
D-A変換とR-2Rラダー
D-A変換は、A-D変換と逆に、2進数の数 D を、電圧に直します。基準電圧を 、ビット数を n とすると、出力電圧は、次の式です。
D が 1 増えるごとに、出力は 1 LSB ぶん、 だけ増えます。
この変換をする回路の1つが、R-2R ラダーです。図11のように、R と 2R の2種類の抵抗だけを、はしごの形につなぎます。各ビットのスイッチを、1 のときは 側、0 のときは 0 V 側に倒します。
どの節点から見ても、右側の合成抵抗が 2R になる形なので、1つ左へ進むごとに、電圧の寄与が半分になります。上のけたほど出力への寄与が大きく、3ビットなら、b2、b1、b0 が、 の 1/2、1/4、1/8 ずつを受け持ちます。この考え方は、テブナンの定理で右側を等価電源に置き換えていくと、確かめられます。
図11は なので、 より、 です。D の式 とも一致します。
4 ビットで のときの、出力の例です。
| 2進数 | 10進数 | 出力 |
|---|---|---|
| 1 | 0.625 V | |
| 8 | 5 V | |
| 10 | 6.25 V | |
| 15 | 9.375 V |
解答と解説を見る
(1) です。
(2) D が 1 増えるごとの電圧です。
よくある質問
サンプリング周波数は、信号の最高周波数のちょうど2倍でよい?
ちょうど2倍では足りません。サンプリング定理は、2倍より大きいことを求めます。たとえば、 で標本化すると、標本点が波のちょうど 0 の位置に重なる場合があり、値がすべて 0 になって、波が見えなくなります。実際には、2倍より十分に大きくとり、ローパスフィルタで高い成分も除きます。
分解能と確度は、どう違う?
分解能は、見分けられる最小の変化で、1 LSB の大きさで決まります。確度は、測った値が真の値にどれだけ近いかです。ビット数を増やして分解能を上げても、基準電圧や回路の誤差が大きければ、確度は上がりません。表示の桁数が多いことと、値が正確なことは、別の話です。ディジタル計器の確度の表し方は、測定の誤差の計算で扱います。
二重積分形は、なぜ雑音に強い?
入力を、一定の時間 のあいだ積分するからです。 を商用周波数の周期の整数倍にすると、その周波数の雑音は、積分の間に正と負が打ち消し合って 0 になります。変換の時間は長めですが、精度が必要な計器に向きます。
ビットを1つ増やすと、分解能はどうなる?
段階数が 2 倍になり、1 LSB は 1/2 になります。たとえば、 で、10 ビットの 4.88 mV から、11 ビットの 2.44 mV になります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
A-D変換の3つの手順は、何ですか。
標本化(時間を区切る)、量子化(大きさを区切る)、符号化(2進数にする)です。
n ビットの A-D変換器の段階数と、1 LSB は?
段階数は で、1 LSB は です。
量子化誤差は、最大でどれだけですか。
四捨五入形なら、 LSB です。
サンプリング定理を、式で書くと?
です。満たさないと、低い周波数に見えます(エイリアシング)。
二重積分形の入力電圧は、どんな式で求めますか。
です。R と C は式に出てきません。
D-A変換の出力電圧は、どんな式ですか。
です。
まとめ
- A-D変換は、連続したアナログ量を、標本化(時間)・量子化(大きさ)・符号化(2進数)の順に、ディジタル量へ直す。ディジタル計器の入口にあたる
- サンプリング周波数は、 にする。満たさないと、エイリアシングで別の周波数に見える
- n ビットなら 段階で、1 LSB は 。量子化誤差は、四捨五入形で最大 LSB
- 逐次比較形は、上のけたから n 回の比較で決める。二重積分形は で、雑音に強い。並列比較形は、速いが比較器が 個いる
- D-A変換の出力は 。R-2R ラダーで作れる
電圧を測る前の段階、つまり、温度・ひずみ・光といった物理量を電気信号に変える部品は、計測に使うセンサで、種類ごとに整理します。








