Kindle で読む

理論電子理論 / 演算増幅器16分で読めます

オペアンプとは|仮想短絡で解く反転増幅・非反転増幅回路の増幅度を図解

電験三種のオペアンプを図解で整理します。理想オペアンプの性質と仮想短絡、反転増幅回路・非反転増幅回路・加算回路・差動増幅回路の出力電圧の求め方を、4問の例題を解きながら確認できます。

シェア

緑の基板の上に載った、黒い樹脂のケースに金属の足が並ぶ8ピンの集積回路の写真
この記事の目次
  1. オペアンプとは
  2. 理想オペアンプと仮想短絡
  3. 反転増幅回路
  4. 非反転増幅回路
  5. ボルテージフォロワ
  6. 加算回路
  7. 差動増幅回路
  8. 積分回路とコンパレータ
  9. オペアンプの例題
  10. オペアンプで間違えやすい点
  11. よくある質問
  12. 仮想短絡とは、何ですか?
  13. 仮想接地は、なぜ 0 V になるのですか?
  14. 反転増幅回路と非反転増幅回路は、どう使い分けますか?
  15. 実際のオペアンプは、理想オペアンプと同じですか?
  16. まとめ
図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙理論を図解で読む図解でわかる 電験三種 理論 1
直列回路
Kindle Unlimited 対象Kindle で読む

前の記事のトランジスタは、小さな電流で大きな電流を操る部品でした。そのトランジスタなどを何段も組みこんで、1つの IC(集積回路)にまとめ、増幅回路として使いやすくしたものがオペアンプです。正式な名前は、演算増幅器といいます。

オペアンプの中身は複雑ですが、中身を考える必要はありません。「2つの約束」だけで、どの回路も解けます。この記事では、オペアンプの記号、理想オペアンプと仮想短絡、反転増幅回路と非反転増幅回路、加算回路や差動増幅回路などの応用までを順に確認します。

オペアンプの全体像
  • オペアンプとは
    • 2つの入力(−、+)と1つの出力をもつ増幅器。演算増幅器ともいう
  • 理想オペアンプ
    • 増幅度は無限大、入力インピーダンスは無限大、出力インピーダンスは 0
  • 2つの約束
    • 負帰還のとき V_+ = V_−(仮想短絡)
    • 入力端子には電流が流れ込まない
  • 基本の回路
    • 反転増幅回路 V_o = −(R_f/R_1) V_i
    • 非反転増幅回路 V_o = (1 + R_f/R_1) V_i
    • ボルテージフォロワ V_o = V_i
  • 応用
    • 加算回路、差動増幅回路、積分回路、コンパレータ

オペアンプとは

オペアンプは、2つの入力端子の電圧の差を、とても大きく増幅して出力する部品です。英語の operational amplifier を縮めた呼び名で、足し算や積分などの計算ができるので、演算増幅器ともいいます。外見は、足が8本ある黒い IC がよく使われます。

白い背景の上に置かれた、黒い樹脂のケースから8本の金属の足がのびる集積回路の写真
  1. ケース 中に増幅回路が入っている
  2. 足 電源や信号をつなぐ端子
  3. くぼみ 足の順番を数える目印
図1 8本足の IC。この中にオペアンプが入っている(写真はイメージ)

オペアンプの図記号は、三角形です。左側に入力が2つ、右側に出力が1つあります。

反転入力(−) 非反転入力(+) 出力 +VCC −VEE 電源端子(点線)は、回路図では省略することが多い
図2 オペアンプの図記号。入力は2つ(−と+)、出力は1つ。電源端子は省略することが多い

2つの入力端子には、名前がついています。−がついた端子を反転入力端子、+がついた端子を非反転入力端子といいます。−や+は端子の名前で、電圧が負か正かを表すわけではありません。回路図によっては、+ が上、− が下に描かれることもあるので、記号を見て区別します。

出力の電圧 VoV_{\mathrm{o}} は、非反転入力の電圧 V+V_{+} と、反転入力の電圧 V−V_{-} の差を、増幅度 AA 倍したものです。

Vo=A (V+−V−)V_{\mathrm{o}} = A\,(V_{+} - V_{-})

非反転入力の電圧が上がると出力も上がり、反転入力の電圧が上がると、出力は下がります。入力と出力の変化の向きが同じか逆かが、「非反転」と「反転」の名前の由来です。

実際のオペアンプには、プラスとマイナスの電源をつなぐ端子もありますが、回路図では省略することが多いです。出力の電圧は、電源の電圧の範囲を超えられません。

理想オペアンプと仮想短絡

実際のオペアンプは、増幅度がとても大きく、入力端子にほとんど電流が流れ込まず、出力は負荷が変わっても電圧がほぼ変わりません。そこで、電験三種では、これらを極端にした理想オペアンプで考えます。

項目理想オペアンプ意味
増幅度 AA無限大入力の差は 0 とみなせる
入力インピーダンス無限大入力端子に電流が流れ込まない
出力インピーダンス0負荷によらず出力電圧が決まる

出力インピーダンスが 0 とは、電池の内部抵抗が 0 の電池と同じ状態です。負荷にどれだけ電流が流れても、出力の電圧は下がりません。

出力の電圧には、上限があります。出力の電圧は、電源電圧のあたりで頭打ちになり、これを飽和といいます。出力の電圧と、入力の差 V+−V−V_{+} - V_{-} の関係を、図に表します。

Vo V+ − V− +Vsat −Vsat 飽和 飽和 線形領域 (ごくせまい) 負帰還をかけると、入力の差がほぼ 0 の線形領域で動作する
図3 オペアンプの出力電圧と入力の電圧差の関係(模式図)。線形領域はごくせまく、外側は飽和する

増幅度がとても大きいので、増幅しているのは、入力の差がごくわずかな範囲だけです。それより差が大きいと、出力は +Vsat+V_{\mathrm{sat}} か −Vsat-V_{\mathrm{sat}} で飽和します。

増幅しているとき、出力 VoV_{\mathrm{o}} は、電源電圧の範囲の有限な値です。Vo=A(V+−V−)V_{\mathrm{o}} = A(V_{+} - V_{-}) を変形すると、入力の差が次のように求まります。

V+−V−=VoAV_{+} - V_{-} = \frac{V_{\mathrm{o}}}{A}

理想オペアンプは AA が無限大なので、右辺は 0 になります。つまり、V+=V−V_{+} = V_{-} です。2つの入力端子は、導線でつながっていないのに、電圧が等しくなります。これを仮想短絡(イマジナリショート)といいます。

ただし、仮想短絡が成り立つのは、出力が飽和せず、増幅している状態のときです。これには、出力から反転入力端子へ戻す負帰還をかけます。出力の変化を打ち消す向きに入力へ戻すと、入力の差が 0 に近づいて、増幅の状態が保たれます。

回路を解く手順は、次のとおりです。

  1. 出力から反転入力へ、抵抗などで帰還がかかっているかを確認する
  2. 仮想短絡で、V−=V+V_{-} = V_{+} とおく
  3. 反転入力端子の節点で、電流を考える。端子には電流が流れ込まないので、入ってくる電流と、帰還へ出ていく電流は等しい
  4. 抵抗の電圧降下から、出力電圧 VoV_{\mathrm{o}} を求める

反転増幅回路

入力の電圧を、抵抗 R1R_1 を通して反転入力端子へ入れ、出力から反転入力端子へ、帰還抵抗 RfR_{\mathrm{f}} をつなぎます。非反転入力端子は接地します。これが反転増幅回路です。

Vi R1 I V−=0 Rf I Vo Vo = −(Rf/R1) Vi
図4 反転増幅回路。入力電流 I がそのまま Rf に流れ、Vo = −(Rf/R1)Vi になる

非反転入力端子は接地されているので、V+=0V_{+} = 0 です。仮想短絡から、反転入力端子の電圧も V−=0V_{-} = 0 になります。接地していないのに 0 V になる点なので、仮想接地といいます。

R1R_1 の左は ViV_{\mathrm{i}}、右は 0 V です。オームの法則から、R1R_1 を流れる電流 II は、次のとおりです。

I=Vi−0R1=ViR1I = \frac{V_{\mathrm{i}} - 0}{R_1} = \frac{V_{\mathrm{i}}}{R_1}

反転入力端子には電流が流れ込まないので、キルヒホッフの法則の電流則から、同じ電流 II が RfR_{\mathrm{f}} を流れます。RfR_{\mathrm{f}} の左は 0 V なので、出力の電圧は、0 から RfR_{\mathrm{f}} の電圧降下を引いた値です。

Vo=0−RfI=−RfR1 Vi\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= 0 - R_{\mathrm{f}} I \\ &= -\frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1}\, V_{\mathrm{i}} \end{aligned}

電圧増幅度は、次のとおりです。

Av=VoVi=−RfR1A_{\mathrm{v}} = \frac{V_{\mathrm{o}}}{V_{\mathrm{i}}} = -\frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1}

負号は、出力が入力と逆相になることを表します。入力が正なら、出力は負です。増幅度は、2つの抵抗の比だけで決まり、オペアンプの増幅度 AA には関係しません。また、仮想接地のおかげで、入力側から見た抵抗は R1R_1 になります。

実際に組むときは、ブレッドボードに IC と抵抗をさして、導線でつなぎます。抵抗の値を変えるだけで、増幅度を変えられます。

白いブレッドボードに、8本足の IC と抵抗3本、赤と黒と黄色の導線がさしてある写真
  1. IC オペアンプが入っている
  2. 抵抗 入力や帰還に使う
  3. 導線 部品どうしをつなぐ
図5 ブレッドボードに IC と抵抗をさして、回路を組む(写真はイメージ)

非反転増幅回路

入力の電圧を、非反転入力端子へ直接入れます。反転入力端子と接地の間に抵抗 R1R_1、出力と反転入力端子の間に帰還抵抗 RfR_{\mathrm{f}} をつなぎます。これが非反転増幅回路です。

Vi R1 I V−=Vi Rf I Vo Vo = (1 + Rf/R1) Vi
図6 非反転増幅回路。R1 に Vi がかかり、その電流が Rf にも流れて Vo = (1 + Rf/R1)Vi になる

非反転入力端子の電圧は V+=ViV_{+} = V_{\mathrm{i}} です。仮想短絡から、反転入力端子の電圧も V−=ViV_{-} = V_{\mathrm{i}} になります。すると R1R_1 には、ViV_{\mathrm{i}} がかかるので、流れる電流は次のとおりです。

I=ViR1I = \frac{V_{\mathrm{i}}}{R_1}

反転入力端子には電流が流れ込まないので、同じ電流 II が RfR_{\mathrm{f}} を流れます。出力の電圧は、反転入力端子の電圧 ViV_{\mathrm{i}} に、RfR_{\mathrm{f}} の電圧降下を足した値です。

Vo=Vi+RfI=Vi+RfR1 Vi=(1+RfR1)Vi\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= V_{\mathrm{i}} + R_{\mathrm{f}} I \\ &= V_{\mathrm{i}} + \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1}\, V_{\mathrm{i}} \\ &= \left( 1 + \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1} \right) V_{\mathrm{i}} \end{aligned}

電圧増幅度は Av=1+Rf/R1A_{\mathrm{v}} = 1 + R_{\mathrm{f}} / R_1 で、必ず 1 以上です。負号がないので、出力は入力と同相です。入力は非反転入力端子に直接つながるため、入力インピーダンスは、無限大になります。

同じ入力の正弦波を、2つの回路に入れたようすを比べます。どちらも Rf=2R1R_{\mathrm{f}} = 2 R_1 です。

入力 Vi 出力 Vo 反転増幅(増幅度 −2) 入力が山のとき、出力は谷 非反転増幅(増幅度 3) 入力と同じ向きに変化
図7 同じ入力に対する出力の波形。反転増幅は逆相、非反転増幅は同相で、振れ幅はそれぞれ 2 倍と 3 倍

反転増幅回路は −Rf/R1=−2-R_{\mathrm{f}} / R_1 = -2 倍で、山と谷が入れ替わります。非反転増幅回路は 1+Rf/R1=31 + R_{\mathrm{f}} / R_1 = 3 倍で、山は山のままです。

こうした入力と出力の波形は、オシロスコープで見比べます。逆相か同相か、何倍に増えたかが、画面から読み取れます。

暗い画面に緑色の波形が表示された、ノブと入力端子のついたオシロスコープの写真
  1. 画面 波形が表示される
  2. ノブ 表示する範囲を調整する
  3. 入力端子 測る信号をつなぐ
図8 オシロスコープ。電圧の時間変化が波形で表示される(写真はイメージ)

ボルテージフォロワ

非反転増幅回路で、Rf=0R_{\mathrm{f}} = 0(導線)にして、R1R_1 を取り除いた回路が、ボルテージフォロワです。出力を反転入力端子に、直接つなぎます。

Vi Vo Vo = Vi(増幅度 1)
図9 ボルテージフォロワ。出力を反転入力に直結すると、Vo = Vi(増幅度 1)になる

仮想短絡から V−=V+=ViV_{-} = V_{+} = V_{\mathrm{i}} です。反転入力端子は、出力につながっているので、Vo=V−V_{\mathrm{o}} = V_{-} です。つまり、次のようになります。

Vo=ViV_{\mathrm{o}} = V_{\mathrm{i}}

増幅度は 1 です。入力と出力の電圧が同じなのに使うのは、入力インピーダンスが無限大で、出力インピーダンスが 0 という性質を使うためです。

電池の内部抵抗が大きい電源から、電流を取り出すと、端子の電圧は下がってしまいます。電源とつなぐ側にボルテージフォロワを入れると、電源からは電流がほとんど流れ出ないので、電圧が下がりません。出力インピーダンスが 0 なので、次の回路には、同じ電圧が電流つきで渡ります。このように、前後の回路が影響し合わないようにする使い方を、バッファ(緩衝)といいます。

加算回路

反転増幅回路の反転入力端子に、入力を2つつなぐと、加算回路になります。ここでは、V1V_1 と V2V_2 が、それぞれ R1R_1、R2R_2 を通って入ります。

V1 R1 I1 V2 R2 I2 Rf If Vo Vo = −Rf(V1/R1 + V2/R2)
図10 加算回路。I1 と I2 が反転入力端子で合流し、足された電流が Rf を流れる

反転入力端子は仮想接地で、0 V です。それぞれの抵抗を流れる電流は、次のとおりです。

I1=V1R1I2=V2R2\begin{aligned} I_1 &= \frac{V_1}{R_1} \\ I_2 &= \frac{V_2}{R_2} \end{aligned}

反転入力端子には電流が流れ込まないので、I1I_1 と I2I_2 は合流して、RfR_{\mathrm{f}} に流れます。電流則から、If=I1+I2I_{\mathrm{f}} = I_1 + I_2 です。出力の電圧は、反転増幅回路と同じ考え方で求まります。

Vo=−RfIf=−Rf(V1R1+V2R2)\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= -R_{\mathrm{f}} I_{\mathrm{f}} \\ &= -R_{\mathrm{f}} \left( \frac{V_1}{R_1} + \frac{V_2}{R_2} \right) \end{aligned}

R1=R2=RfR_1 = R_2 = R_{\mathrm{f}} にすると、Vo=−(V1+V2)V_{\mathrm{o}} = -(V_1 + V_2) で、入力の和の符号を反転した出力になります。抵抗を変えると、入力ごとに足す割合を変えられます。

音声の信号を混ぜ合わせる回路などに、加算回路が使われます。

アンプの内部の基板に、輪の形のコイル、大きな円筒形のコンデンサ、放熱板のついた部品、IC が並んでいる写真
  1. コイル 輪の形に巻いた部品
  2. コンデンサ 大きな円筒形の部品
  3. 放熱板 熱を逃がす金属の板
  4. IC 多くの足をもつ四角い部品
図11 アンプの内部。基板の上にコイルやコンデンサ、IC が並ぶ(写真はイメージ)

差動増幅回路

2つの入力 V1V_1、V2V_2 の差を、増幅する回路が差動増幅回路です。V1V_1 を反転入力端子へ、V2V_2 を非反転入力端子へ、それぞれ R1R_1 を通して入れます。帰還抵抗と、非反転入力端子から接地への抵抗は、どちらも RfR_{\mathrm{f}} です。

V1 R1 V2 R1 Rf Rf Vo Vo = (Rf/R1)(V2 − V1)
図12 差動増幅回路。2つの入力の差 V2 − V1 を Rf/R1 倍にして出力する

回路は2つの入力をもつので、重ね合わせの理で、入力を1つずつ生かして考えます。

V1V_1 だけがあるとき(V2=0V_2 = 0)。非反転入力端子には電流が流れ込まないので、RfR_{\mathrm{f}} に電圧降下はなく、V+=0V_{+} = 0 です。回路は反転増幅回路になります。

Vo′=−RfR1 V1V_{\mathrm{o}}' = -\frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1}\, V_1

V2V_2 だけがあるとき(V1=0V_1 = 0)。V2V_2 を、R1R_1 と RfR_{\mathrm{f}} で分圧した電圧が、非反転入力端子の電圧になります。

V+=RfR1+Rf V2V_{+} = \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1 + R_{\mathrm{f}}}\, V_2

反転入力端子は、R1R_1 を通して接地されているので、回路は、非反転増幅回路です。V+V_{+} を入力として増幅します。

Vo′′=(1+RfR1)V+=R1+RfR1⋅RfR1+Rf V2=RfR1 V2\begin{aligned} V_{\mathrm{o}}'' &= \left( 1 + \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1} \right) V_{+} \\ &= \frac{R_1 + R_{\mathrm{f}}}{R_1} \cdot \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1 + R_{\mathrm{f}}}\, V_2 \\ &= \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1}\, V_2 \end{aligned}

2つを足し合わせると、出力は次のとおりです。

Vo=Vo′+Vo′′=RfR1(V2−V1)\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= V_{\mathrm{o}}' + V_{\mathrm{o}}'' \\ &= \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1} (V_2 - V_1) \end{aligned}

出力は、入力の差 V2−V1V_2 - V_1 の Rf/R1R_{\mathrm{f}} / R_1 倍です。2本の線に同じように乗った雑音は、差をとると打ち消されるので、小さな信号を取り出すときに使われます。

積分回路とコンパレータ

反転増幅回路の帰還抵抗 RfR_{\mathrm{f}} を、コンデンサ CC に置きかえると、積分回路になります。

Vi R C Vo 入力 Vi(方形波) 出力 Vo(三角波) t t 入力が + の間は出力が下がり、− の間は上がる
図13 積分回路。帰還にコンデンサを入れると、方形波の入力が三角波の出力になる

反転入力端子は仮想接地で 0 V なので、抵抗 RR には、Vi/RV_{\mathrm{i}} / R の電流が流れます。この電流は、そのままコンデンサに流れ込んで、電荷をためます。コンデンサの電圧は、流れ込んだ電流を積み重ねたもの(積分)で、出力は、その電圧の符号を逆にしたものです。

Vo=−1CR∫Vi dtV_{\mathrm{o}} = -\frac{1}{CR} \int V_{\mathrm{i}}\, dt

入力が一定の正の電圧なら、出力は直線的に下がっていきます。入力が方形波なら、図のように、出力は三角波になります。RR と CC を入れ替えると、微分回路になり、出力は Vo=−CR dVi/dtV_{\mathrm{o}} = -CR\, dV_{\mathrm{i}}/dt です。

もう1つ、帰還をかけない使い方があります。コンパレータは、反転入力端子と非反転入力端子の電圧を、比べる回路です。V+>V−V_{+} > V_{-} なら出力は +Vsat+V_{\mathrm{sat}}、V+<V−V_{+} < V_{-} なら −Vsat-V_{\mathrm{sat}} になります。入力の電圧が、基準の電圧より高いか低いかを、出力の高低で知らせます。

負帰還がないので、入力の差がわずかでも、出力は飽和します。この場合、仮想短絡は成り立ちません。

オペアンプの例題

4問を、反転増幅、非反転増幅、加算、2段の増幅の順に解きます。すべて、理想オペアンプとして考えます。

例題扱う内容求めるもの
1反転増幅回路AvA_{\mathrm{v}}、VoV_{\mathrm{o}}、電流
2非反転増幅回路R1R_1、VoV_{\mathrm{o}}
3加算回路各電流、VoV_{\mathrm{o}}
42段の反転増幅Vo1V_{\mathrm{o}1}、VoV_{\mathrm{o}}
解答と解説を見る

(1) 反転増幅回路の電圧増幅度は、−Rf/R1-R_{\mathrm{f}} / R_1 です。

Av=−RfR1=−102=−5\begin{aligned} A_{\mathrm{v}} &= -\frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1} \\ &= -\frac{10}{2} \\ &= -5 \end{aligned}

出力電圧は、次のとおりです。

Vo=AvVi=−5×0.3=−1.5 [V]\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= A_{\mathrm{v}} V_{\mathrm{i}} \\ &= -5 \times 0.3 \\ &= -1.5\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

(2) 反転入力端子は 0 V なので、R1R_1 には、ViV_{\mathrm{i}} がそのままかかります。

I=ViR1=0.32×103=0.15 [mA]\begin{aligned} I &= \frac{V_{\mathrm{i}}}{R_1} \\ &= \frac{0.3}{2 \times 10^{3}} \\ &= 0.15\,\mathrm{[mA]} \end{aligned}

検算として、RfR_{\mathrm{f}} の電圧降下は、0.15 [mA]×10 [kΩ]=1.5 [V]0.15\,\mathrm{[mA]} \times 10\,\mathrm{[k\Omega]} = 1.5\,\mathrm{[V]} です。左端が 0 V なので、出力は −1.5 [V]-1.5\,\mathrm{[V]} で一致します。

例題2は、非反転増幅回路です。増幅度から、抵抗を逆算します。

解答と解説を見る

(1) 非反転増幅回路の増幅度は、1+Rf/R11 + R_{\mathrm{f}} / R_1 です。これが 10 になるので、次のように解きます。

1+RfR1=10RfR1=9R1=189=2 [kΩ]\begin{aligned} 1 + \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1} &= 10 \\ \frac{R_{\mathrm{f}}}{R_1} &= 9 \\ R_1 &= \frac{18}{9} \\ &= 2\,\mathrm{[k\Omega]} \end{aligned}

(2) 出力電圧は、増幅度 10 倍です。

Vo=10×0.4=4.0 [V]V_{\mathrm{o}} = 10 \times 0.4 = 4.0\,\mathrm{[V]}

R1R_1 には ViV_{\mathrm{i}} がかかるので、電流は次のとおりです。

I=ViR1=0.42×103=0.2 [mA]\begin{aligned} I &= \frac{V_{\mathrm{i}}}{R_1} \\ &= \frac{0.4}{2 \times 10^{3}} \\ &= 0.2\,\mathrm{[mA]} \end{aligned}

検算として、RfR_{\mathrm{f}} の電圧降下は、0.2 [mA]×18 [kΩ]=3.6 [V]0.2\,\mathrm{[mA]} \times 18\,\mathrm{[k\Omega]} = 3.6\,\mathrm{[V]} です。これに反転入力端子の電圧 0.4 [V]0.4\,\mathrm{[V]} を足すと 4.0 [V]4.0\,\mathrm{[V]} で、VoV_{\mathrm{o}} に一致します。

例題3は、加算回路です。電流を1本ずつ求めて、足し合わせます。

解答と解説を見る

手順1 反転入力端子は 0 V なので、各抵抗には、入力の電圧がそのままかかります。

I1=V1R1=0.510×103=0.05 [mA]\begin{aligned} I_1 &= \frac{V_1}{R_1} \\ &= \frac{0.5}{10 \times 10^{3}} \\ &= 0.05\,\mathrm{[mA]} \end{aligned}I2=V2R2=0.320×103=0.015 [mA]\begin{aligned} I_2 &= \frac{V_2}{R_2} \\ &= \frac{0.3}{20 \times 10^{3}} \\ &= 0.015\,\mathrm{[mA]} \end{aligned}

手順2 反転入力端子には電流が流れ込まないので、2つの電流は合流して RfR_{\mathrm{f}} を流れます。

If=I1+I2=0.05+0.015=0.065 [mA]\begin{aligned} I_{\mathrm{f}} &= I_1 + I_2 \\ &= 0.05 + 0.015 \\ &= 0.065\,\mathrm{[mA]} \end{aligned}

手順3 出力電圧は、0 V から RfR_{\mathrm{f}} の電圧降下を引いた値です。

Vo=−RfIf=−40×103×0.065×10−3=−2.6 [V]\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= -R_{\mathrm{f}} I_{\mathrm{f}} \\ &= -40 \times 10^{3} \times 0.065 \times 10^{-3} \\ &= -2.6\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

検算として、公式 Vo=−(Rf/R1 V1+Rf/R2 V2)V_{\mathrm{o}} = -(R_{\mathrm{f}} / R_1\, V_1 + R_{\mathrm{f}} / R_2\, V_2) に代入すると、−(4×0.5+2×0.3)=−2.6 [V]-(4 \times 0.5 + 2 \times 0.3) = -2.6\,\mathrm{[V]} で一致します。

例題4は、2段の増幅です。1段目の出力を、2段目の入力として順に考えます。

Vi 4 kΩ 12 kΩ Vo1 6 kΩ 15 kΩ Vo
図14 例題4の回路。反転増幅回路を2段つなぐ。1段目は 4 kΩ と 12 kΩ、2段目は 6 kΩ と 15 kΩ
解答と解説を見る

手順1 1段目は、R1=4 [kΩ]R_1 = 4\,\mathrm{[k\Omega]}、Rf=12 [kΩ]R_{\mathrm{f}} = 12\,\mathrm{[k\Omega]} の反転増幅回路です。

Vo1=−124×0.2=−0.6 [V]\begin{aligned} V_{\mathrm{o}1} &= -\frac{12}{4} \times 0.2 \\ &= -0.6\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

手順2 出力インピーダンスは 0 なので、2段目をつないでも、1段目の出力は変わりません。2段目は、入力が Vo1V_{\mathrm{o}1} で、R1=6 [kΩ]R_1 = 6\,\mathrm{[k\Omega]}、Rf=15 [kΩ]R_{\mathrm{f}} = 15\,\mathrm{[k\Omega]} の反転増幅回路です。

Vo=−156×(−0.6)=1.5 [V]\begin{aligned} V_{\mathrm{o}} &= -\frac{15}{6} \times (-0.6) \\ &= 1.5\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

手順3 全体の増幅度は、1段ごとの増幅度の積です。

Av=(−3)×(−2.5)=7.5\begin{aligned} A_{\mathrm{v}} &= (-3) \times (-2.5) \\ &= 7.5 \end{aligned}

答えは、Vo1=−0.6 [V]V_{\mathrm{o}1} = -0.6\,\mathrm{[V]}、Vo=1.5 [V]V_{\mathrm{o}} = 1.5\,\mathrm{[V]}、増幅度は 7.5 です。検算として、7.5×0.2=1.5 [V]7.5 \times 0.2 = 1.5\,\mathrm{[V]} で、VoV_{\mathrm{o}} に一致します。負号が2回かかるので、全体では同相になります。

オペアンプで間違えやすい点

間違い正しくは理由
− 端子の入力は同相反転する出力は逆向きに変化
反転増幅の負号を落とす−Rf/R1-R_{\mathrm{f}} / R_1出力は入力と逆相
非反転増幅も Rf/R1R_{\mathrm{f}} / R_11+Rf/R11 + R_{\mathrm{f}} / R_1ViV_{\mathrm{i}} 自身が出力に含まれる
仮想短絡で電流が流れる流れ込まない入力インピーダンスは無限大
コンパレータでも仮想短絡成り立たない負帰還がなく飽和する

よくある質問

仮想短絡とは、何ですか?

2つの入力端子の電圧が、等しくなることです。導線でつないだように電圧が等しいのに、実際はつながっていないので、「仮想」といいます。電流は流れ込みません。出力から反転入力端子への負帰還がかかっていて、出力が飽和していないときに成り立ちます。

仮想接地は、なぜ 0 V になるのですか?

反転増幅回路では、非反転入力端子が接地されていて 0 V です。仮想短絡で、反転入力端子も同じ電圧になるので、0 V です。反転入力端子は、実際には接地につながっていません。つながっていれば電流が逃げてしまいますが、仮想接地では電流は流れ込みません。

反転増幅回路と非反転増幅回路は、どう使い分けますか?

出力の向きが違います。反転は逆相、非反転は同相です。非反転増幅回路は、増幅度が 1 以上で、入力インピーダンスが高いのが特徴です。反転増幅回路は、Rf<R1R_{\mathrm{f}} < R_1 にすると、増幅度が 1 より小さい、減衰の回路にもできます。

実際のオペアンプは、理想オペアンプと同じですか?

同じではありません。増幅度は有限で、入力端子にもわずかに電流が流れ、周波数が高くなると増幅度が下がります。ただし、負帰還をかけた回路では、理想として計算してよい場合がほとんどです。電験三種の問題では、「理想」とあれば、仮想短絡を使って解きます。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

オペアンプの出力電圧は、2つの入力の電圧と、どんな関係がありますか。

Vo=A(V+−V−)V_{\mathrm{o}} = A(V_{+} - V_{-}) です。増幅度 AA は、とても大きい値です。

理想オペアンプの3つの性質は、何ですか。

増幅度は無限大、入力インピーダンスは無限大、出力インピーダンスは 0 です。

仮想短絡とは、何ですか。どんなときに成り立ちますか。

2つの入力端子の電圧が等しくなることで、V+=V−V_{+} = V_{-} です。負帰還がかかっていて、出力が飽和していないときに成り立ちます。入力端子に電流は流れ込みません。

反転増幅回路の電圧増幅度と、仮想接地は何ですか。

増幅度は −Rf/R1-R_{\mathrm{f}} / R_1 で、出力は逆相です。反転入力端子は、接地していないのに 0 V になり、これを仮想接地といいます。

非反転増幅回路とボルテージフォロワの電圧増幅度は、何ですか。

非反転増幅回路は 1+Rf/R11 + R_{\mathrm{f}} / R_1 で、同相です。ボルテージフォロワは 1 で、前後の回路を切り離すバッファに使います。

加算回路と差動増幅回路の出力電圧は、何ですか。

加算回路は −Rf(V1/R1+V2/R2)-R_{\mathrm{f}}(V_1 / R_1 + V_2 / R_2)、差動増幅回路は (Rf/R1)(V2−V1)(R_{\mathrm{f}} / R_1)(V_2 - V_1) です。

まとめ

  • オペアンプは、2つの入力(−、+)と1つの出力をもつ増幅器で、Vo=A(V+−V−)V_{\mathrm{o}} = A(V_{+} - V_{-})。理想オペアンプは、増幅度と入力インピーダンスが無限大、出力インピーダンスが 0
  • 2つの約束で回路を解く。負帰還がかかっていれば V+=V−V_{+} = V_{-}(仮想短絡)、入力端子には電流が流れ込まない
  • 反転増幅回路は −Rf/R1-R_{\mathrm{f}} / R_1(逆相)、非反転増幅回路は 1+Rf/R11 + R_{\mathrm{f}} / R_1(同相)、ボルテージフォロワは 1
  • 加算回路は −Rf(V1/R1+V2/R2)-R_{\mathrm{f}}(V_1 / R_1 + V_2 / R_2)、差動増幅回路は (Rf/R1)(V2−V1)(R_{\mathrm{f}} / R_1)(V_2 - V_1)、積分回路は −(1/CR)∫Vi dt-(1 / CR) \int V_{\mathrm{i}}\, dt。帰還のないコンパレータには、仮想短絡は使えない

オペアンプの中身は、トランジスタを組み合わせた増幅回路です。トランジスタの働きと動作点は、トランジスタに戻って確かめられます。

図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙電験三種 理論を図解で通して読む図解でわかる 電験三種 理論 / 第1巻直列回路電流・電圧・抵抗から内部抵抗・倍率器・コンデンサまで理論の単元を、図と式で1冊ずつ通して読む Kindle 本のシリーズです。例題と練習問題まで入っています。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

読んだら、すぐ解いて覚える

「演算増幅器」の問題を
アプリで解いてみよう

読んだ直後に問題で思い出すと、記憶に残りやすくなります。電験三種の問題集アプリ「デンケンラボ」なら、理論の問題を図解つきの解説で確かめられます。

アプリでできることを見る
デンケンラボの問題画面
動画でも見て覚えるYouTube のデンケンラボで、電験三種の解説動画を配信しています

この記事をシェアする

デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

編集方針アプリについて見る