前の記事のキルヒホッフの法則では、回路全体の電流を連立方程式で求めました。ところが、知りたいのが1本の枝の電流だけで、しかもその枝の抵抗を取り替えて何度も調べるとなると、連立方程式を毎回解き直すのは遠回りです。
テブナンの定理は、この場面の近道です。端子から先の回路を、電圧源1個と抵抗1個の直列に置き換えてしまえば、あとは割り算1回で電流が求まります。この記事では、定理の中身、求め方の四つの手順、負荷を変える例題、分圧回路が負荷でずれる理由と最大電力、電験三種で扱う不平衡ブリッジの検流計電流までを順に確認します。
テブナンの定理の全体像
- テブナンの定理とは
- 2端子から見た回路は、開放電圧 V0 と抵抗 R0 の直列に置き換えられる
- 負荷 R の電流は I = V0 ÷ (R0 + R)
- 求め方の手順
- 負荷を外す → V0 を求める → R0 を求める → 負荷をつなぐ
- R0 は、電圧源を短絡、電流源を開放して求める
- 例題
- 負荷を変えても、V0 と R0 は同じ
- 電源が二つの回路も、連立方程式なしで解ける
- 分圧回路のずれと最大電力
- V = V0 − R0 I なので、負荷をつなぐと電圧が下がる
- 負荷の電力が最大になるのは R = R0 のとき
- 不平衡ブリッジ
テブナンの定理とは
テブナンの定理は、電源と抵抗でできた回路を、2つの端子 a-b から見たとき、回路全体を「電圧源1個と抵抗1個の直列」に置き換えてよい、という定理です。置き換えた電源を、等価電圧源(等価電源)と呼びます。
等価電源の電圧は、a-b に何もつながずに開いたときの a-b 間の電圧で、開放電圧といい、V0 で表します。直列の抵抗 R0 は、電源を 0 にして a-b から見た抵抗です。電池の内部抵抗にあたるので、等価電源の内部抵抗ともいいます。
図1 テブナンの定理。端子 a-b から左側は、V0 の電圧源と R0 の直列に置き換えられる
置き換えたあとの回路は、電源と抵抗2つの直列回路です。a-b に負荷 R をつなぐと、流れる電流はオームの法則で次のように求まります。
I=R0+RV0
身近な例が、コンセントにつなぐ AC アダプタです。中の回路がどうなっているかは見えませんが、出力の端子から見れば、決まった電圧の電源と、小さな抵抗が直列になった箱として扱えます。端子から見た電圧と電流の関係さえ分かれば、そこにつないだ負荷の電流は決まります。
1本体22ピンプラグ3出力プラグ4ケーブル- 本体 中身は見えない箱
- 2ピンプラグ コンセント側の入口
- 出力プラグ 端子 a-b にあたる
- ケーブル 負荷へ電気を送る
図2 AC アダプタ。中身が見えなくても、出力の端子から見た電圧と抵抗が分かれば、負荷の電流は求まる(写真はイメージ)
どの方法を使うかは、知りたいものによって変わります。
| 知りたいもの | 向く方法 |
|---|
| すべての枝の電流と電圧 | キルヒホッフの法則で連立方程式を解く |
| 1本の枝(負荷)の電流や電圧。負荷を変えて何度も調べる | テブナンの定理 |
| 並列の枝がつながる点の電圧を、一度で | ミルマンの定理 |
使える回路は、抵抗と電源でできた回路です。ダイオードのように、電圧と電流が比例しない部品を含む回路には、そのままでは使えません。
この定理は、1883年にフランスの電気技術者テブナンが発表しました。それより前の1853年に、ドイツのヘルムホルツが同じ内容を導いていた、と伝えられています。
求め方の手順(4つのステップ)
テブナンの定理の使い方は、いつも同じ4つの手順です。
図3 テブナンの定理の求め方。外す・測る・0 にする・つなぎ直す
手順1 負荷を外す。 知りたい枝の部分(負荷 R)を取り外して、端子 a-b を開きます。
手順2 開放電圧 V0 を求める。 開いた a-b の間の電圧を求めます。分圧の式でも、一巡の電流から出してもかまいません。ここまでは、負荷のない普通の回路の計算です。
手順3 電源を 0 にして R0 を求める。 回路の電源をすべて 0 にして、a-b から見た合成抵抗を求めます。負荷は外したままです。
手順4 等価電源に負荷をつなぎ直す。 V0 と R0 の直列回路に R をつなぎ、I=V0/(R0+R) で電流を求めます。
手順3の「電源を 0 にする」は、電源の種類で操作が違います。
| 電源の種類 | 0 にするときの置き換え | 理由 |
|---|
| 電圧源 | 短絡(導線に置き換える) | 電圧が 0 の電圧源は、両端の電圧がいつも 0 の導線と同じ |
| 電流源 | 開放(取り除く) | 電流が 0 の電流源は、電流の流れない切れた線と同じ |
| 電池の内部抵抗 | そのまま残す | 電圧源とは別に直列に入れた、ふつうの抵抗として扱う |
開放電圧は、実際の機器でも測れます。車のバッテリーの端子に電圧計(テスター)を当てると、何も負荷をつないでいない状態の電圧、つまり開放電圧が読めます。電圧計は内部の抵抗がとても大きく、ほとんど電流を流さないので、負荷をつなぐ前の電圧に近い値が測れます。
1プラス端子2マイナス端子3テスター棒4バッテリー- プラス端子 a にあたる
- マイナス端子 b にあたる
- テスター棒 電圧を測る
- バッテリー 電源の本体
図4 車のバッテリーの端子に電圧計を当てる。何もつながない状態の電圧が開放電圧(写真はイメージ)
テブナンの定理の例題(電源が1つ・2つ)
電源が1つの回路
まず、電源が1つの回路で、手順を確かめます。
図5 例題1 の回路。a-b から右の R を負荷として考える
解答と解説を見る
手順1 R を外します。a-b は開いているので、電流は E、R1、R2 の順に通るだけです。
手順2 a-b 間の電圧は、R2 にかかる電圧です。分圧の式で求めます。
V0=E×R1+R2R2=30×10+1515=18[V]手順3 電源 E を短絡すると、a-b から見て R1 と R2 が並列になります。
R0=R1+R2R1R2=10+1510×15=6Ω手順4 V0=18[V]、R0=6Ω の電源に R=12Ω をつなぎます。
I=R0+RV0=6+1218=1[A]検算します。R と R2 の並列は 12×15/(12+15)=20/3Ω、回路全体は 10+20/3=50/3Ω なので、電源の電流は 30÷(50/3)=1.8[A] です。a-b 間の電圧は 1.8×20/3=12[V] で、R の電流は 12/12=1[A] となり、一致します。
図6 例題1 を手順に沿って解く。V0 = 18 V、R0 = 6 Ω の等価電源にできる
テブナンの定理が便利なのは、負荷を取り替えたときです。V0 と R0 は、負荷を外した回路だけで決まるので、負荷が変わっても同じ値を使えます。
| 負荷 R | 電流 I=18/(6+R) | 負荷の電圧 RI |
|---|
| 3Ω | 2[A] | 6[V] |
| 12Ω | 1[A] | 12[V] |
| 24Ω | 0.6[A] | 14.4[V] |
同じ回路をキルヒホッフの法則で解くと、電源を通る電流、R2 を通る電流、R を通る電流の3つが未知数になり、式が3本の連立方程式になります。そのうえ、R を替えるたびに、連立方程式を解き直します。テブナンの定理なら、2回目からは割り算1回です。連立方程式の立て方は、キルヒホッフの法則で扱いました。
電源が2つの回路
電源が2つあって、合成抵抗にまとめられない回路でも、手順は同じです。前の記事の例題3と同じ回路で、答えを比べてみます。
図7 例題2 の回路。中央の R3 を負荷として a-b から切り離して考える
解答と解説を見る
手順1 R3 を外します。a-b が開くので、電流は E1、R1、R2、E2 の一巡だけを流れます。E1 の向きに流れる電流は、
I=3+224−20=0.8[A]手順2 a-b 間の電圧は、左の枝から見て E1 から R1 の電圧降下を引いた値です。
V0=24−3×0.8=21.6[V]右の枝から見ても、20+2×0.8=21.6[V] で同じ値になります。
手順3 電源 E1、E2 を短絡すると、a-b から見て R1 と R2 が並列です。
R0=3+23×2=1.2Ω手順4 R3=6Ω のとき、
I3=R0+R3V0=1.2+621.6=3[A]前の記事で連立方程式から求めた I3=3[A] と一致します。
R3=2.4Ω に替えると、V0 と R0 は変わらないので、
I3=1.2+2.421.6=6[A]です。
図8 例題2 を手順に沿って解く。V0 = 21.6 V、R0 = 1.2 Ω の等価電源にできる
テブナンの定理で求まるのは、負荷の電流だけです。ほかの枝の電流 I1、I2 も必要なときは、キルヒホッフの法則のほうが向いています。知りたいものによって、使い分けます。
分圧回路のずれと最大電力
分圧回路に負荷をつなぐと電圧が下がる理由
例題1の回路は、30[V] を R1 と R2 で分けて、R2 から 18[V] を取り出す分圧回路です。分圧の式で出した 18[V] は、a-b に何もつながないとき(無負荷)の電圧で、これが開放電圧 V0 です。負荷をつなぐと、a-b の電圧は下がります。
図9 負荷が重い(R が小さい)ほど、分圧回路の出力電圧は 18 V から下がる
テブナンの定理で見ると、理由がはっきりします。負荷をつなぐと電流 I が流れ、等価電源の内部抵抗 R0 で電圧が R0I だけ下がります。a-b の電圧は、
V=V0−R0I
です。例題1で R=12Ω のとき、V=18−6×1=12[V] になり、18[V] より下がります。R2 と R が並列になって、a-b から見た抵抗が小さくなったとも言えます。
負荷の抵抗が R0 より十分大きければ、電流が小さいので、V は V0 に近いままです。逆に、重い負荷(R が小さい負荷)ほど、電圧は下がります。R0 が小さい電源ほど、負荷をつないでも電圧が下がりにくい電源です。
分圧回路の実物は、抵抗を並べたブレッドボードで試せます。可変抵抗を使うと、取り出す電圧を変えられます。
1可変抵抗2抵抗3ジャンパー線4電池ボックス- 可変抵抗 取り出す電圧を変える
- 抵抗 分圧に使う
- ジャンパー線 部品をつなぐ
- 電池ボックス 電源
図10 ブレッドボードの分圧回路。取り出す電圧は、負荷をつなぐと下がる(写真はイメージ)
負荷の電力が最大になる条件
等価電源に負荷 R をつなぐと、R で消費される電力 P は、R の大きさで変わります。
P=RI2=(R0+R)2V02R
例題1の等価電源(V0=18[V]、R0=6Ω)で、R を変えて計算します。
| 負荷 R | 電流 I | 負荷の電力 P=I2R |
|---|
| 1.5Ω | 2.4[A] | 8.64[W] |
| 3Ω | 2[A] | 12[W] |
| 6Ω | 1.5[A] | 13.5[W] |
| 12Ω | 1[A] | 12[W] |
| 24Ω | 0.6[A] | 8.64[W] |
図11 負荷の電力は R = R0 = 6 Ω で最大の 13.5 W になる
R が小さすぎても大きすぎても電力は小さく、R=6Ω のときに最大です。この 6Ω は、ちょうど R0 に等しくなっています。式で確かめます。分子と分母を R で割ると、
P=R+2R0+R02/RV02
となります。分母の R+R02/R は、相加平均と相乗平均の関係から 2R0 以上で、等号が成り立つのは R=R02/R、つまり R=R0 のときです。このとき分母は 4R0 になるので、
Pmax=4R0V02
です。例題1の等価電源では、182/(4×6)=13.5[W] で、表と一致します。
解答と解説を見る
例題1より、V0=18[V]、R0=6Ω です。
(1) 電力が最大になるのは、R=R0=6Ω のときです。
Pmax=4R0V02=4×6182=13.5[W](2) R=3Ω のとき、電流は I=18/(6+3)=2[A] なので、
P=I2R=22×3=12[W]です。R=12Ω(R02/R=36/3)のときも、同じ 12[W] になります。
例題:不平衡ブリッジの検流計電流
ブリッジ回路は、4つの抵抗を輪の形につなぎ、向かい合う2つの点 a-b の間に検流計 G(微小な電流を測る電流計)をつないだ回路です。ひし形に描いても、長方形に描いても、つながり方は同じです。
1上の抵抗2左の角3下の抵抗4右の角- 上の抵抗 電源側の辺
- 左の角 a にあたる
- 下の抵抗 電源側の辺
- 右の角 b にあたる
図12 4本の抵抗をひし形につないだブリッジ回路。左右の角の間(a-b)に検流計をつなぐ(写真はイメージ)
4つの抵抗の比が釣り合っていると、a と b の電位が等しくなって、検流計に電流が流れません。釣り合っていない(不平衡の)ブリッジは、a-b の枝があるために直列と並列にまとめられず、キルヒホッフの法則で解くと式が増えます。テブナンの定理なら、検流計を負荷 R とみなして、a-b から見た V0 と R0 を求めるだけで済みます。電流が 0 になる釣り合いの条件は、ブリッジ回路の記事で扱います。
図13 例題4 の不平衡ブリッジ。a-b の間に検流計 G がつながっている
解答と解説を見る
手順1 検流計を外します。
手順2 d の電位を 0[V] として、a と b の電位を分圧で求めます。
Va=20×20+3030=12[V]Vb=20×20+2020=10[V]V0=Va−Vb=2[V]手順3 電源を短絡すると、c と d が同じ点になります。a-b から見ると、R1 と R2 の並列、R3 と R4 の並列が、直列につながります。
R0=20+3020×30+20+2020×20=12+10=22Ω手順4 検流計の抵抗 Rg=18Ω をつなぎます。
I=R0+RgV0=22+182=0.05[A]=50[mA]a のほうが電位が高いので、電流は a から b の向きに流れます。
答えの流れを、図で確かめます。手順2は、検流計を外して a と b の電位を比べる計算です。
図14 検流計を外すと、a は 12 V、b は 10 V。差の V0 = 2 V が開放電圧
手順3と手順4では、電源を短絡して R0 を出し、等価電源に検流計をつなぎます。
図15 ブリッジの R0 は 22 Ω。等価回路に検流計をつなぐと 50 mA
検算として、検流計をつないだまま、d を基準にした a と b の電位を求めると、Va=11.4[V]、Vb=10.5[V] になります。検流計の電流は (11.4−10.5)/18=0.05[A] で、同じ答えです。a と b の電位差が、検流計をつなぐ前の 2[V] から 0.9[V] に下がっているのは、分圧回路のずれの節で見た「負荷をつなぐと電圧が下がる」と同じ現象です。
よくある質問
テブナンの定理は、どんなときに使う?
回路の中の1か所(負荷)の電流や電圧だけを知りたいときや、負荷の抵抗を変えて何度も調べるときに使います。電源が複数ある回路や、直列と並列にまとめられないブリッジ回路でも、負荷を外して V0 と R0 を求めれば、同じ手順で解けます。すべての枝の電流を知りたいときは、キルヒホッフの法則のほうが向いています。
電流源がある回路では、R0 をどう求める?
電流源は開放(取り除く)にします。電圧源は短絡、電流源は開放、という組み合わせで覚えます。電池の内部抵抗のように、電源に直列に入っている抵抗は、そのまま残します。
テブナンの定理とノートンの定理は何が違う?
等価回路の形が違います。テブナンの定理は、電圧源 V0 と抵抗 R0 の直列に置き換えます。ノートンの定理は、電流源と抵抗 R0 の並列に置き換えます。R0 は同じ値で、電流源の電流は V0/R0 です。
テブナンの定理は交流回路でも使える?
使えます。交流では、V0 を電圧に、R0 をインピーダンスに置き換えれば、I=V0/(Z0+Z) と同じ形になります。ただし、電圧と電流の大きさだけでなく、位相も含めて計算します。コイルやコンデンサを含む回路の扱いは、交流回路の単元で学びます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
テブナンの定理とは、どんな定理ですか。
2つの端子から見た回路を、開放電圧 V0 の電圧源と抵抗 R0 の直列に置き換えてよい、という定理です。
開放電圧 V0 とは、何の電圧ですか。
負荷を外して端子 a-b を開いたときの、a-b 間の電圧です。
R0 を求めるとき、電圧源と電流源はどうしますか。
電圧源は短絡、電流源は開放にして、a-b から見た合成抵抗を求めます。
負荷 R をつないだときの電流を表す式は?
I=V0/(R0+R) です。
分圧回路に負荷をつなぐと、出力電圧が下がるのはなぜですか。
負荷に電流が流れると、等価電源の内部抵抗 R0 で R0I だけ電圧が下がり、V=V0−R0I になるからです。
負荷の電力が最大になる条件と、最大電力は?
R=R0 のときで、最大電力は V02/(4R0) です。
まとめ
- テブナンの定理は、2つの端子から見た回路を、開放電圧 V0 と抵抗 R0 の直列(等価電源)に置き換える定理
- 手順は、負荷を外す、V0 を求める、電源を 0 にして R0 を求める(電圧源は短絡、電流源は開放)、負荷をつなぐ、の4つ。電流は I=V0/(R0+R)
- 負荷を替えても V0 と R0 は同じなので、負荷を変える問題や、電源が複数あって合成できない回路、不平衡ブリッジの検流計の電流に向く
- 分圧回路は、負荷をつなぐと V=V0−R0I で電圧が下がる。負荷の電力は R=R0 のとき最大で、Pmax=V02/(4R0)
電源が並列に並ぶ回路はミルマンの定理や重ね合わせの理でも解けます。Δ や Y につながった抵抗はΔ-Y 変換でまとめられます。連立方程式の立て方で迷ったらキルヒホッフの法則を、直列と並列の合成抵抗や分流の計算で迷ったら並列回路を、見直しましょう。