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機械電気加工 / 放電加工12分で読めます

放電加工の原理|形彫りとワイヤ放電加工の違い・加工液と電極の役割を図解

電験三種の機械で扱う放電加工の原理を、1回の放電の4段階から整理します。加工液の役割、パルス電源と1パルスのエネルギー、形彫りとワイヤ放電加工の違いを図解し、例題4問で計算まで確かめます。

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細い金色のワイヤが、水に濡れた厚い鋼のブロックを縦に切り進め、上下の白いガイドから水が流れ落ちている写真
この記事の目次
  1. 放電加工とは?刃物を使わず、火花で溶かして削る
  2. 1回の放電で起きること:4段階
  3. 加工液の役割:絶縁性の媒体・冷却・くずの排出
  4. パルス電源と1パルスのエネルギー
  5. 放電のエネルギーと面の粗さ
  6. 形彫り放電加工とワイヤ放電加工
  7. 放電加工の特徴と電極の消耗
  8. 例題で確かめる:特徴・加工液・パルスのエネルギー
  9. よくある質問
  10. 放電加工は、なぜ硬い材料でも加工できるのですか。
  11. 絶縁物は、放電加工できないのですか。
  12. パルスの休止時間は、なぜ必要ですか。
  13. 形彫りとワイヤ放電加工は、どう使い分けますか。
  14. まとめ
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焼入れした硬い鋼でも、放電なら削れます。刃物を工作物に当てず、小さな雷のような放電をくり返して、少しずつ溶かして取り除くからです。この記事では、放電加工の原理と、1パルスのエネルギーの計算を中心に扱います。1回の放電で何が起きるか、加工液は何のためにあるか、形彫りとワイヤ放電加工はどう違うか。図で意味を確かめながら進み、4つの例題で手を動かしましょう。

放電加工の全体像
  • 放電加工とは
    • 電極と工作物の間のパルス放電の熱で、工作物を溶かして取り除く
  • 1回の放電で起きること
    • 絶縁破壊 → アーク柱 → 溶融・気化 → 除去
  • 加工液の役割
    • 絶縁性の媒体、冷却、くずの排出
  • パルス電源と1パルスのエネルギー
    • W=VItonW = VIt_{\mathrm{on}}、P=WfP = Wf
  • 放電のエネルギーと面の粗さ
    • エネルギーが大きいと、速いが粗い
  • 形彫りとワイヤ放電加工
    • 電極の形を写す加工と、細い線で切り抜く加工
  • 特徴と電極の消耗
    • 硬い材料に強いが、導電性の材料に限る
  • 例題で確かめる
    • 特徴の正誤、加工液、エネルギーと電力、方式の選択

放電加工とは?刃物を使わず、火花で溶かして削る

放電加工は、工具の電極と工作物の間に短い放電(火花)を起こし、その熱で工作物の表面を少しずつ溶かして取り除く加工法です。電極と工作物は触れず、数十マイクロメートルほどのすきまをあけて向かい合います。すきまは、絶縁性の液体である加工液で満たします(図1)。

加工液工作物電極(工具)送り放電(火花)すきまパルス電源
図1 放電加工は、加工液の中で電極と工作物の間に放電を起こして削る

パルス電源が、電極と工作物の間に短い電圧を何度も加えると、そのたびにすきまで放電が起き、工作物に小さなくぼみができます。放電は毎秒数万回以上もくり返されることがあり、小さなくぼみが積み重なって、電極の形が工作物に写っていきます。電極は、すきまが保たれるように、少しずつ送られます(図2)。

透明な液の中で、角柱状の銅色の電極の先と鋼の工作物の間に、青白い細い火花が飛び、まわりに小さな気泡が浮いている写真
  1. 電極 加工する形をもつ工具
  2. 火花 すきまで起きる放電
  3. 気泡 放電のまわりに生じる小さな泡
  4. 工作物 放電の熱で表面が溶ける
図2 液の中の放電。電極と工作物の間に火花が飛ぶ(写真はイメージ)

1回の放電で起きること:4段階

1回の放電は、次の4段階で進みます(図3)。

1絶縁破壊電圧を加えると、絶縁が破れ電流の通り道ができる電極工作物通り道2アーク柱電流が細い柱に集まり、高温になる電極工作物電流が集中3溶融・気化表面が溶けて、一部は気化する電極工作物溶けて気化4除去冷やされ、くずが流れ、小さなくぼみが残る電極工作物くず
図3 1回の放電は、絶縁破壊から除去までの4段階で進む
  1. 絶縁破壊:電極と工作物の間に電圧を加えると、すきまの電界が強くなり、やがて絶縁が破れて電流が流れ始める
  2. アーク柱:電流が細い柱の形の放電路に集中し、その部分が非常に高温になる
  3. 溶融・気化:高温で、工作物の表面が溶け、一部は気化する
  4. 除去:放電が止まると加工液に冷やされ、溶けた金属は小さなくずになって流され、小さなくぼみが残る

電界と電圧の関係は、電位と平行板の電界で確かめられます。放電の熱を使うという点では、電気加熱の方式で扱ったアーク加熱と同じ仲間です。アーク加熱は熱で金属を溶かして使い、放電加工は小さな溶融を積み重ねて形をつくります。

加工液の役割:絶縁性の媒体・冷却・くずの排出

加工液には、次の3つの役割があります。

役割はたらき
絶縁性の媒体すきまを絶縁し、電圧を加えると放電が起きる場をつくる
冷却放電で熱くなった電極と工作物を冷やす
くずの排出加工でできたくずを流し去る

加工液には、水を主にした液と、油を主にした液があります。ワイヤ放電加工では、イオンを取り除いた水(脱イオン水)が多く使われます。

くずがすきまにたまると、異常な放電や短絡が起こり、加工面が悪くなります。そこで、加工液を噴き出したり、電極を上下に動かして液を入れ替えたりして、くずの排出を助けます。

パルス電源と1パルスのエネルギー

パルス電源は、電流を流す時間と休む時間を、交互にくり返します(図4)。電流を流す時間をパルス幅 tont_{\mathrm{on}}、休む時間を休止時間 tofft_{\mathrm{off}} といい、1回分の長さが周期 TT です。

電流 I時間Iパルス幅 ton休止時間 toff周期 T = ton + toff周波数 f = 1/T(1秒あたりのパルス数)
図4 パルス電源は、放電する時間と休止する時間をくり返す

周期と周波数の関係は、次のとおりです。

T=ton+tofff=1T [Hz]\begin{aligned} T &= t_{\mathrm{on}} + t_{\mathrm{off}} \\[4pt] f &= \dfrac{1}{T}\ \mathrm{[Hz]} \end{aligned}

周波数 ff は、1秒あたりのパルスの数です。休止時間があるのは、一般に、放電のあとにすきまの絶縁をもとに戻し、くずを流し去って、次の放電に備えるためです。

1回の放電で使われるエネルギー、つまり1パルスのエネルギー WW は、放電中の電圧 VV、電流 II、パルス幅 tont_{\mathrm{on}} から求めます。ここでの VV は、放電が始まったあと、すきまにかかっている電圧です。VV と II は一定とみなします。

W=VIton [J]W = V I t_{\mathrm{on}}\ \mathrm{[J]}

パルスは毎秒 ff 回くり返されるので、平均の電力 PP は、次の式で表されます。

P=Wf=VI×tonT [W]\begin{aligned} P &= W f \\[4pt] &= V I\times\dfrac{t_{\mathrm{on}}}{T}\ \mathrm{[W]} \end{aligned}

ton/Tt_{\mathrm{on}}/T は、放電している時間の割合です。休止時間を長くすると、1パルスのエネルギーは同じでも、平均の電力は小さくなります。1 W=1 J/s1\ \mathrm{W} = 1\ \mathrm{J/s} なので、WW に毎秒のパルス数 ff を掛けると、電力になります(熱量と電力の関係は電熱の計算を参照)。

放電のエネルギーと面の粗さ

1パルスのエネルギー WW が大きいほど、1回の放電で取り除く量が増え、加工は速くなります。しかし、できるくぼみも大きくなり、加工した面は粗くなります。WW を小さくすると、その逆です(図5)。

エネルギー大加工は速い面は粗いエネルギー小加工は遅い面は滑らか
図5 放電のエネルギーが大きいほど、くぼみは大きく、面は粗くなる

放電加工した面は、小さなくぼみが一面に重なった、ざらついた面です(図6)。一般に、はじめは大きなエネルギーで速く削り、最後に小さなエネルギーで面を整える、という順に条件を変えます。

放電加工した面を拡大したイメージで、小さなくぼみが一面に並ぶ、灰色のざらついた金属の表面の写真
図6 放電加工した面を拡大したイメージ。放電のあとのくぼみが一面に並ぶ(写真はイメージ)

形彫り放電加工とワイヤ放電加工

放電加工は、電極の使い方で、形彫り放電加工とワイヤ放電加工に分けられます(図7)。

形彫り放電加工工作物電極送り電極の形が、工作物に写るくぼみや型の加工に向くワイヤ放電加工工作物ワイヤ放電走行細いワイヤを走らせ、工作物を水平に動かして輪郭を切る
図7 形彫りは電極の形を写し、ワイヤは細い線で輪郭を切る

形彫り放電加工は、加工したい形に合わせてつくった電極を、工作物に向けて送り、電極の形を写してくぼみを彫ります。電極には、銅や黒鉛などが使われます(図8)。

段差と凹凸のある銅色の電極が上にあり、その下に、同じ形のくぼみをもつ鋼のブロックが置かれている写真
  1. 電極 加工する形をもつ銅色の工具
  2. 凹凸 この形が工作物に写る
  3. くぼみ 電極の形が写った部分
  4. 工作物 鋼のブロック
図8 形彫り放電加工の電極と工作物。電極の形がくぼみとして写る(写真はイメージ)

ワイヤ放電加工は、細い金属線(ワイヤ)を電極にします。ワイヤを走らせながら、工作物を水平に動かし、糸のこで切り抜くように、輪郭に沿って切ります。ワイヤが工作物を貫くので、一般に、行き止まりのくぼみではなく、貫通した形の切り抜きに向きます。複雑な形の穴や溝をもつ金型の部品も、放電加工でつくられます(図9)。

星形の穴、細長い溝の列、丸い穴をあけた鋼のブロックで、切り口は縦の筋が見える垂直な壁になっている写真
図9 複雑な形の穴や溝をもつ鋼の部品のイメージ(写真はイメージ)

2つの方式を比べると、次のとおりです。

項目形彫りワイヤ
電極加工する形の電極細いワイヤ
動かし方電極を送る工作物を動かす
向く加工くぼみ・型輪郭の切り抜き

放電加工の特徴と電極の消耗

放電加工の向き不向きを、特徴と理由で整理します。

向き不向き特徴理由
得意硬い材料の加工熱で削るので、硬さの影響を受けにくい
得意複雑な形・細かい形電極やワイヤの形が、そのまま写る
苦手絶縁物の加工導電性がないと、放電が起きない
苦手大量に削る加工1回の放電で取り除く量が小さい

放電では、工作物だけでなく、電極も少し溶けて減ります。これを電極の消耗といいます。消耗は、極性などの電気条件によって変わります。理想は、電極の溶融を抑え、工作物の溶融を多くすることで、一般に、電極の消耗が小さくなる条件が選ばれます。消耗した電極の形は、そのまま工作物に写るので、形彫りでは電極の消耗が加工の精度に関わります。

放電加工は、電極(またはワイヤ)という工具を必要とします。電極のかわりに、電子ビームやレーザ光でエネルギーを狭い場所に集めて加工する方法が、ビーム加工です。

例題で確かめる:特徴・加工液・パルスのエネルギー

解答と解説を見る

(1) 正しい。電極と工作物は、すきまをあけて向かい合います。

(2) 正しい。放電を起こすには、工作物が導電性でなければなりません。

(3) 正しい。加工液は、絶縁性の媒体、冷却、くずの排出の3つの役割をもちます。

(4) 誤り。放電加工は熱で溶かして削る方法で、工作物の硬さの影響を受けにくい特徴があります。

答え:(4)

解答と解説を見る

(ア) 絶縁性の媒体として、すきまを絶縁し、電圧を加えると放電が起きる場をつくります。

(イ) 加工液が熱を受け取り、電極と工作物を冷却します。

(ウ) 加工でできた小さなくずは、加工液が流し去ります。くずがたまると、異常な放電や短絡が起こりやすくなります。

答え:(ア) 絶縁、(イ) 冷却、(ウ) くず

電流 I時間40 A20 μs30 μs周期 T = 50 μs放電中は 25 V、40 A
図10 例題3のパルス。20 μs 放電して、30 μs 休むことをくり返す
解答と解説を見る

(1) ton=20 μs=20×10−6 st_{\mathrm{on}} = 20\ \mu\mathrm{s} = 20\times10^{-6}\ \mathrm{s} です。

W=VIton=25×40×20×10−6=0.020 [J]\begin{aligned} W &= V I t_{\mathrm{on}} \\[4pt] &= 25\times40\times20\times10^{-6} \\[4pt] &= 0.020\ \mathrm{[J]} \end{aligned}

(2) 周期は T=20+30=50 μsT = 20 + 30 = 50\ \mu\mathrm{s} です。

f=1T=150×10−6=2.0×104 [Hz]\begin{aligned} f &= \dfrac{1}{T} \\[4pt] &= \dfrac{1}{50\times10^{-6}} \\[4pt] &= 2.0\times10^{4}\ \mathrm{[Hz]} \end{aligned}

(3) 1パルスのエネルギーに、毎秒のパルス数を掛けます。

P=Wf=0.020×2.0×104=400 [W]\begin{aligned} P &= W f \\[4pt] &= 0.020\times2.0\times10^{4} \\[4pt] &= 400\ \mathrm{[W]} \end{aligned}

確かめます。VI=25×40=1000 WVI = 25\times40 = 1000\ \mathrm{W} で、放電している時間の割合は 20/50=0.420/50 = 0.4 です。1000×0.4=400 W1000\times0.4 = 400\ \mathrm{W} となり、一致します。

(4) 周期は T′=20+80=100 μsT' = 20 + 80 = 100\ \mu\mathrm{s} です。パルス幅は同じなので、WW は変わりません。

f′=1100×10−6=1.0×104 [Hz]P′=0.020×1.0×104=200 [W]\begin{aligned} f' &= \dfrac{1}{100\times10^{-6}} \\[4pt] &= 1.0\times10^{4}\ \mathrm{[Hz]} \\[6pt] P' &= 0.020\times1.0\times10^{4} \\[4pt] &= 200\ \mathrm{[W]} \end{aligned}

休止時間を長くしても、1パルスのエネルギーは同じです。平均の電力は 400 W から 200 W に下がります。

答え:(1) 20 mJ、(2) 20 kHz、(3) 400 W、(4) 200 W

解答と解説を見る

(1) ワイヤ放電加工です。ワイヤが工作物を貫き、輪郭に沿って切り抜けます。

(2) 形彫り放電加工です。電極の形が、底のあるくぼみとして写ります。

(3) ワイヤ放電加工です。細い金属線がワイヤで、工作物を動かして切ります。

答え:(1) ワイヤ、(2) 形彫り、(3) ワイヤ

よくある質問

放電加工は、なぜ硬い材料でも加工できるのですか。

放電の熱で、工作物を溶かして取り除くからです。刃物で削る加工とちがい、工作物の硬さの影響を受けにくくなります。そのため、ダイやパンチなどの硬い工具や、超硬合金の加工に使われます。

絶縁物は、放電加工できないのですか。

一般には、できません。放電は、電極と工作物の間に電圧を加えて起こすので、工作物が電気を通さないと、放電が起きないからです。金属などの導電性の材料が対象になります。

パルスの休止時間は、なぜ必要ですか。

一般に、休止時間の間に、すきまの絶縁がもとに戻り、くずが流されて、次の放電の準備ができるからです。休止時間を長くすると、1パルスのエネルギーは同じでも、平均の電力は小さくなり、加工は遅くなります。

形彫りとワイヤ放電加工は、どう使い分けますか。

くぼみや型のように、電極の形を写したいときは、形彫り放電加工を使います。板から輪郭に沿って、貫通した形を切り抜きたいときは、ワイヤ放電加工を使います。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

放電加工で工作物を削るのは、何の熱ですか?

電極と工作物の間の放電(火花)の熱で、工作物の表面が溶けて取り除かれます。

1回の放電の4段階は何ですか?

絶縁破壊 → アーク柱 → 溶融・気化 → 除去です。

加工液の3つの役割は何ですか?

絶縁性の媒体、冷却、くずの排出です。

1パルスのエネルギーと、平均の電力の式を書けますか?

W=VItonW = VIt_{\mathrm{on}}、P=WfP = Wf(f=1/Tf = 1/T)です。

形彫りとワイヤ放電加工は、どう違いますか?

形彫りは電極の形を写し、ワイヤは細い線で輪郭を切り抜きます。

放電加工できる工作物の条件は何ですか?

電気を通す材料(導電性)であることです。

まとめ

  • 放電加工は、電極と導電性の工作物の間に放電をくり返し、熱で溶かして取り除く。硬さの影響を受けにくい
  • 1回の放電は、絶縁破壊 → アーク柱 → 溶融・気化 → 除去の4段階で進む
  • 加工液の役割は、絶縁性の媒体、冷却、くずの排出の3つ
  • 1パルスのエネルギーは W=VItonW = VIt_{\mathrm{on}}、平均の電力は P=WfP = Wf。エネルギーが大きいと、速いが面は粗い
  • 形彫りは電極の形を写し、ワイヤは細い線で輪郭を切り抜く

電子ビームやレーザ光でエネルギーを集める加工はビーム加工、放電のアークの熱を使う加熱は電気加熱の方式の記事へ進みましょう。

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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