コンデンサの合成容量ではコンデンサを、電磁誘導ではコイルを学びました。この 2 つの部品を含む回路は、スイッチを入れても、電流や電圧がすぐには一定になりません。
スイッチを入れた瞬間は、コンデンサを導線、コイルを切れた線とみなします。十分に時間がたつと、コンデンサは切れた線、コイルは導線になります。その間の変化の速さを決めるのが時定数 τ で、時間 τ で変化の約 63.2% が進みます。RC 回路では τ=RC、RL 回路では τ=L/R です。この記事では、直後と十分後の見方、2 つの回路の式、グラフの読み取り、エネルギーまでを、例題で確認します。
過渡現象の全体像
- 過渡現象とは
- スイッチ操作のあと、新しい定常状態に落ち着くまでの変化。コンデンサの電圧とコイルの電流は急に変わらない
- スイッチを入れた瞬間と十分時間がたった後
- コンデンサは直後が導線、十分後が切れた線。コイルはその逆
- RC 回路の過渡現象
- 時定数 τ=RC。充電の電圧は E×(1-e の-t/τ 乗)で上がる
- RL 回路の過渡現象
- 時定数 τ=L/R。電流は同じ形で上がり、コイルの電圧は下がる
- 時定数の求め方とグラフの読み取り
- 原点の接線が最終値と交わる点が τ。3τ で約 95%、5τ でほぼ終了
過渡現象とは
回路のスイッチを入れたり切ったりすると、電流や電圧は、新しい一定の値に落ち着くまで変化を続けます。この変化している間の状態を過渡状態、一定になったあとの状態を定常状態といい、過渡状態で起こる現象を過渡現象といいます(図2)。
図1 スイッチを入れる操作が、過渡現象の始まり(写真はイメージ)
抵抗だけの回路では、スイッチを入れた瞬間に電流が E/R になり、過渡状態はありません。過渡状態が生じるのは、回路にコイルやコンデンサがあるときです。この 2 つはエネルギーをためる部品で、ためているエネルギーは一瞬では変えられないからです。
図2 スイッチを入れてから電流が一定になるまでが過渡状態、一定になったあとが定常状態
コンデンサに蓄えられるエネルギーは 21CvC2、コイルに蓄えられるエネルギーは 21Li2 です。エネルギーが急に変わらないので、コンデンサの電圧 vC とコイルの電流 i も、スイッチを入れた瞬間の前後で急には変わりません。
この記事では、抵抗 R とコンデンサ C を直列にした RC 回路と、抵抗 R とコイル L を直列にした RL 回路を、直流電源 E で扱います。電源の内部抵抗やコイルの巻線抵抗は 0 とし、スイッチを入れる前は、コンデンサは充電されておらず、コイルに電流は流れていないものとします。
スイッチを入れた瞬間と十分時間がたった後
過渡現象の問題は、スイッチを入れた直後と、十分に時間がたった後の 2 つの状態を押さえると、式を使わずに解ける場合があります。部品を次のように置き換えます(図3)。
図3 コンデンサとコイルは、直後と十分後で、導線と切れた線が入れ替わる
コンデンサは、未充電なら直後の電圧が vC=0 で、電圧が 0 の部品は導線と同じです。充電が終わった十分後は電流が流れなくなる(i=0)ので、切れた線と同じです。
コイルは、直前に電流が 0 なら直後も i=0 で、電流が 0 の部品は切れた線と同じです。十分後は電流が一定になって磁束が変化せず、誘導起電力が 0 になる(vL=0)ので、導線と同じです。
これを使うと、直後と十分後の電流と電圧が、次の表のとおり求められます。
| 量 | 直後(t=0) | 十分後(t→∞) |
|---|
| RC 回路の電流 i | E/R | 0 |
| コンデンサの電圧 vC | 0 | E |
| RL 回路の電流 i | 0 | E/R |
| コイルの電圧 vL | E | 0 |
たとえば RC 回路の直後は、コンデンサが導線と同じなので、電源の電圧 E がすべて抵抗 R に加わり、i=E/R です。十分後は、コンデンサが切れた線と同じなので、電流が 0 になり、抵抗の電圧も 0 です。電源の電圧 E がすべてコンデンサに加わります。
実物のコンデンサは、基板の上に円筒形のものが並んでいることがあります(図4)。
1本体2上面3足4基板- 本体 中身は見えない
- 上面 十字の溝
- 足 基板にはんだ付け
- 基板 部品の土台
図4 基板に取り付けた電解コンデンサ(写真はイメージ)
RC 回路の過渡現象
抵抗 R とコンデンサ C を直列につないだ回路です(図5)。スイッチを入れると、電源からコンデンサに電荷が流れ込み、コンデンサが充電されます。
図5 RC 回路。上は電源をつないで充電する回路、下は充電したコンデンサを抵抗につないで放電する回路
充電
充電の途中では、電源の電圧 E が、抵抗の電圧 Ri とコンデンサの電圧 vC に分かれます(E=Ri+vC)。直後は vC=0 なので、電流は最大の E/R です。充電が進んで vC が上がるほど、Ri は小さくなり、電流は減ります。この関係を解くと、次の式が得られます。
vCiτ=E(1−e−t/τ)=REe−t/τ=RC
e は自然対数の底(約 2.718)です。τ を時定数といい、単位は [s] です。R を [Ω]、C を [F] で入れると、RC が秒になります。
電圧は 0 から E へ上がり、電流は E/R から 0 へ下がります(図6)。t=τ では、vC は E の約 63.2%、i は初めの約 36.8% です。足すと 100% になるのは、E=Ri+vC だからです。
図6 RC 回路のグラフ。充電では電圧が上がり電流が下がり、放電では電圧と電流が同じ形で下がる
放電
充電したコンデンサを、電源をはずして抵抗につなぐと、ためた電荷が抵抗を通って流れ出します(図5 の下)。電圧も電流も、同じ形で減っていきます。
vCi=Ee−t/τ=REe−t/τ
E は、放電を始めるときのコンデンサの電圧です。時定数は充電と同じ τ=RC で、電流の向きは充電のときと逆になります。
充電のエネルギー
充電が終わるまでに、電源は電荷 Q=CE を送り出します。電源が供給するエネルギーは、QE=CE2 です。そのうちコンデンサに蓄えられるのは半分の 21CE2 で、残りの半分は抵抗で熱になります(図7)。
図7 充電では、電源が供給したエネルギーの半分だけがコンデンサに蓄えられる
この割合は、抵抗 R の値によりません。R が大きくても小さくても、変わるのは充電にかかる時間だけです。
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(1) 単位を [Ω]、[F] にそろえます。
τ=RC=2×103×100×10−6=0.2[s](2) 直後は vC=0 で、コンデンサは導線と同じです。
i=RE=2×103100=0.05[A]=50[mA](3) t=0.4[s] は 2τ です。
vC=E(1−e−2)≒100×(1−0.135)≒86.5[V]
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(1)
τ=RC=10×103×200×10−6=2[s](2) 十分後のコンデンサの電圧は E です。
WC=21CE2=21×200×10−6×502=0.25[J](3) 電源が送り出した電荷は Q=CE です。
WE=QE=CE2=200×10−6×502=0.5[J](4) 供給したエネルギーから、蓄えられた分を引きます。
WR=0.5−0.25=0.25[J]抵抗の値を変えても、WC、WE、WR は変わりません。
RL 回路の過渡現象
抵抗 R とコイル L を直列につないだ回路です(図8)。スイッチを入れると、コイルは電流の増加をさまたげる向きに起電力を生じるので、電流はゆるやかに増えます。
図8 RL 回路。上は電源をつないだ回路、下は電源をはずして L と R だけの閉回路にした回路
電源の電圧 E は、抵抗の電圧 Ri とコイルの電圧 vL に分かれます(E=Ri+vL)。直後は i=0 なので Ri=0 で、電源の電圧がすべてコイルに加わります(vL=E)。電流が増えるほど Ri が大きくなり、vL は小さくなります。この関係を解くと、次の式が得られます。
ivLτ=RE(1−e−t/τ)=Ee−t/τ=RL
L を [H]、R を [Ω] で入れると、L/R が秒になります。電流は 0 から最終値 E/R へ上がり、コイルの電圧は E から 0 へ下がります(図9)。形は RC 回路と同じで、t=τ では、i は最終値の約 63.2%、vL は E の約 36.8% です。
図9 RL 回路のグラフ。電流は最終値へ上がり、コイルの電圧は電源電圧から下がる
電流が流れているコイルは、21Li2 のエネルギーを蓄えています。十分後の電流 I=E/R では、21LI2 です。
コイルは、銅線を輪状の芯に巻いたものなど、さまざまな形で回路に取り付けられます(図10)。
1銅線2芯3足- 銅線 輪に巻いた導線
- 芯 灰色の輪
- 足 基板にはんだ付け
図10 基板に取り付けたコイル(写真はイメージ)
電源をはずして、コイルと抵抗だけの閉回路にした場合(図8 の下)、コイルの電流は急には 0 になりません。初めの電流を I0 とすると、i=I0e−t/τ で減り、蓄えたエネルギー 21LI02 は、すべて抵抗で熱になります。
流れていた電流を急に切ると、コイルは電流を保とうとして、大きな電圧を生じます。送配電の設備のように大きな電流を扱う場所では、遮断のときに生じる電圧(開閉サージ)が問題になることがあります(図11)。
図11 屋外の開閉所(写真はイメージ)
RC 回路と RL 回路は、次のように対応します。
| 比べるもの | RC 回路 | RL 回路 |
|---|
| 時定数 τ | RC | L/R |
| 0 から上がる量 | vC | i |
| 下がる量 | i | vL |
| 急に変わらない量 | vC | i |
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(1)
τ=RL=200.5=0.025[s]=25[ms](2) 十分後はコイルが導線と同じです。
I=RE=20100=5[A](3) t=τ では、e−1≒0.368 です。
ivL=5(1−e−1)≒5×0.632≒3.16[A]=Ee−1≒100×0.368≒36.8[V]確かめると、Ri+vL=20×3.16+36.8=100[V] で、E に一致します。
(4)
WL=21LI2=21×0.5×52=6.25[J]
時定数の求め方とグラフの読み取り
時定数 τ は、変化の速さを表す時間です。τ が大きいほど変化はゆっくりで、小さいほど早く落ち着きます。RC 回路では R か C が大きいほど、RL 回路では L が大きいほど、または R が小さいほど、τ は大きくなります。
経過時間と、最終値に近づく割合は次のとおりです。上がる量は最終値に対する割合、下がる量は初めの値に対する割合です。
| 経過時間 | 上がる量 | 下がる量 |
|---|
| 1τ | 63.2% | 36.8% |
| 2τ | 86.5% | 13.5% |
| 3τ | 95.0% | 5.0% |
| 4τ | 98.2% | 1.8% |
| 5τ | 99.3% | 0.7% |
5τ たつと、変化の 99% 以上が済むので、実用上は定常状態とみなせます。
曲線から τ を読むには、t=0 での接線を使います(図12)。接線は、上がる量では最終値の線と、下がる量では横軸と、t=τ で交わります。変化の勢いが最初のまま続けば、τ で終わる、という意味です。
図12 原点の接線が最終値の線と交わる位置が、時定数 τ に当たる
充電中の電圧の変化は、オシロスコープで曲線として観察できます(図13)。
1曲線2方眼3つまみ4端子- 曲線 電圧の変化
- 方眼 目盛りの線
- つまみ 画面の調整
- 端子 測定する線をつなぐ
図13 オシロスコープで見る充電の曲線(写真はイメージ)
抵抗が複数あるときの時定数
抵抗が複数あるときは、コンデンサ(コイル)から見た抵抗 R0 を求めて、τ=CR0(RL 回路では τ=L/R0)とします。R0 は、電源を短絡し、コンデンサ(コイル)を取りはずした端子から見た合成抵抗です。テブナンの定理で求める内部抵抗と同じ考え方です。
十分後のコンデンサの電圧は、テブナンの定理の開放電圧になります。直後と十分後の置き換えと、R0 の 2 つがあれば、複数の抵抗がある回路も解けます(図14)。
図14 抵抗が複数ある RC 回路。コンデンサから見ると、電源を短絡して R1 と R2 が並列になる
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(1) 直後は、コンデンサが導線と同じです。R2 は短絡されるので、電流は R1 だけを通ります。
i=6×10324=4[mA](2) 十分後は、コンデンサが切れた線と同じです。R1 と R2 の直列に電流が流れます。
i=18×10324≒1.33[mA]コンデンサの電圧は、R2 の電圧に等しくなります。
vC=R2i=12×103×34×10−3=16[V](3) コンデンサから見ると、電源を短絡して R1 と R2 が並列です。
R0=6+126×12=4[kΩ]τ=CR0=100×10−6×4×103=0.4[s](4) 電圧は、0 から最終値 16[V] へ上がります。
vC=16(1−e−1)≒16×0.632≒10.1[V]
よくある質問
時定数とは? 何を表している?
変化の速さを表す時間で、単位は [s] です。時間 τ がたつと、最終値までの変化の約 63.2% が進みます。RC 回路では τ=RC、RL 回路では τ=L/R です。同じ τ でも、上がる量は最終値の 63.2% に、下がる量は初めの値の 36.8% になります。
直後のコンデンサが導線と同じなのはなぜ?
コンデンサの電圧 vC は急に変わらないので、未充電なら直後も vC=0 のままだからです。電圧が 0 の部品は、導線と同じ働きをします。そのため、直後の RC 回路には、抵抗だけの回路と同じ i=E/R の電流が流れます。
「十分時間がたった後」とは、どのくらい?
式の上では t→∞ ですが、実用上は τ の 5 倍ほどです。5τ で変化の約 99.3% が済みます。問題では「十分に時間がたった」と書かれていたら、直流ではコンデンサは切れた線、コイルは導線として解きます。
RC 回路と RL 回路で、R と時定数の関係が逆なのはなぜ?
RC 回路は、R が大きいと電流が絞られ、コンデンサへの充電に時間がかかるので、τ=RC は R に比例します。RL 回路は、R が大きいと最終の電流 E/R が小さくなり、コイルに蓄える電流が少なくてすむので、早く落ち着きます。そのため τ=L/R は R に反比例します。
思い出してみよう
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過渡状態と定常状態とは?
変化している間の状態が過渡状態、一定になったあとの状態が定常状態です。急に変わらない量は、コンデンサの電圧 vC とコイルの電流 i です。
スイッチを入れた直後と十分後で、コンデンサとコイルは何と同じ?
コンデンサは直後が導線、十分後が切れた線です。コイルは直後が切れた線、十分後が導線です。
RC 回路の時定数と、充電のコンデンサ電圧の式は? 充電で抵抗の熱になる割合は?
τ=RC で、vC=E(1−e−t/τ) です。供給エネルギー CE2 の半分が、抵抗で熱になります。
RL 回路の時定数と、電流の式は?
τ=L/R で、i=RE(1−e−t/τ) です。コイルの電圧は vL=Ee−t/τ で下がります。
時間 τ と 5τ で、変化は何% 進む?
τ で 63.2%、5τ で 99.3% です。グラフでは、原点の接線が最終値と交わる位置が τ です。
抵抗が複数あるときの時定数の求め方は?
電源を短絡して、コンデンサ(コイル)から見た合成抵抗 R0 を求め、τ=CR0(τ=L/R0)とします。
まとめ
- 過渡現象は、スイッチ操作のあと定常状態に落ち着くまでの変化。コンデンサの電圧とコイルの電流は急に変わらない
- 直後はコンデンサが導線、コイルが切れた線。十分後はコンデンサが切れた線、コイルが導線
- RC 回路は τ=RC。充電は vC=E(1−e−t/τ)、放電は vC=Ee−t/τ。充電では電源のエネルギー CE2 の半分が抵抗で熱になる
- RL 回路は τ=L/R。電流は i=RE(1−e−t/τ) で上がり、コイルの電圧は vL=Ee−t/τ で下がる
- 時間 τ で 63.2%、3τ で 95.0%、5τ で 99.3% 進む。原点の接線が最終値と交わる位置が τ。抵抗が複数のときは、電源を短絡した R0 で求める
コンデンサの基本はコンデンサの合成容量、コイルの基本は電磁誘導で確認できます。次は、電圧や電流を測る指示電気計器の種類を整理します。