電験三種の計算問題は、単位を見れば式の間違いに気づけます。単位が合っていれば式の形も合っている可能性が高く、合っていなければ式が間違っています。この記事では、電気の単位 V・A・Ω・W・F・H・T の関係、接頭語、kWh や mm² の換算、次元で式を確かめる方法を、図と例題で整理します。
電気の単位の全体像
- 電気の単位とは
- 基本単位は7つ。電気の計算では m・kg・s・A が中心
- ほかの単位は、基本単位を掛けたり割ったりしてつくる
- 電気の組立単位の一覧
- V・Ω・W・F・H・T などは、人名に由来する組立単位
- 単位どうしの関係
- V = J/C、W = J/s、Ω = V/A。F = s/Ω、H = Ω·s
- 接頭語
- 1000 倍ごとに k・M・G・T、m・μ・n・p
- 接頭語と単位記号は、空白なしで一つの記号
- 単位の換算
- 1 kWh=3.6×106 J、1 mm2=10−6 m2、ω=2πN/60
- 次元で式を確かめる
- 例題
- 電力量の換算、単位の正誤、抵抗の計算、接頭語の正誤
電気の単位とは
電気の単位は、国際単位系(SI)の約束にもとづいています。SI では基本単位を7つ決め、そのほかの単位は、基本単位を掛けたり割ったりしてつくります。これが組立単位です。さらに、接頭語を付けると、10 の累乗倍の大きさを表せます(図1)。
図1 単位の3段構成。基本単位から組立単位をつくり、接頭語で大きさを変える
基本単位は次の7つです。
| 量 | 単位 | 記号 |
|---|
| 時間 | 秒 | s |
| 長さ | メートル | m |
| 質量 | キログラム | kg |
| 電流 | アンペア | A |
| 熱力学温度 | ケルビン | K |
| 物質量 | モル | mol |
| 光度 | カンデラ | cd |
電験の計算でおもに使うのは、m・kg・s・A の4つです。熱の計算では K も使います。電圧の V や抵抗の Ω は基本単位ではなく、組立単位です。電気の基本単位は A だけで、電流の単位 A は、電気素量 e=1.602176634×10−19 [C] の値を決めることで定められています。
質量は、はかりと分銅で比べてはかります。
1皿2指針3大きい分銅4小さい分銅- 皿 はかるものをのせる
- 指針 つり合いを見る
- 大きい分銅 質量の基準になるおもり
- 小さい分銅 細かい質量を足すおもり
図2 質量をはかる上皿天びんと分銅(写真はイメージ)
電気の組立単位の一覧
電気の計算に出てくる単位の多くは、組立単位です。名前のある単位は、人名に由来するものが多く、単位記号は大文字で始めます(V・A・W・F・H・T・S・Wb。Ω だけはギリシャ文字です)。
まず、電気の量の単位です。
| 量 | 単位 | 組み立て方 |
|---|
| 電荷 | C(クーロン) | A·s |
| 電圧 | V(ボルト) | J/C = W/A |
| 抵抗 | Ω(オーム) | V/A |
| コンダクタンス | S(ジーメンス) | A/V = 1/Ω |
| 電力 | W(ワット) | J/s = V·A |
| エネルギー | J(ジュール) | N·m = W·s |
次に、静電気と磁気の量の単位です。
| 量 | 単位 | 組み立て方 |
|---|
| 静電容量 | F(ファラド) | C/V |
| 磁束 | Wb(ウェーバ) | V·s |
| 磁束密度 | T(テスラ) | Wb/m2 |
| インダクタンス | H(ヘンリー) | Wb/A |
| 周波数 | Hz(ヘルツ) | 1/s |
| 力 | N(ニュートン) | kg⋅m/s2 |
磁界の強さの求め方は磁界の強さの求め方で、磁束の変化と電圧の関係は電磁誘導とはで扱っています。
さらに、固有の名前を持たない組立単位があります。量の定義から単位を組んで導けます。
| 量 | 単位 | 導き方 |
|---|
| 電界の強さ | V/m | 電圧 ÷ 距離 |
| 誘電率 | F/m | ε=D/E から |
| 磁界の強さ | A/m | 電流 ÷ 長さ |
| 透磁率 | H/m | μ=B/H から |
誘電率の単位は、電束密度 D [C/m2] を電界 E [V/m] で割って C/(V⋅m)=F/m と求められます。透磁率も、磁束密度 B [T] を磁界 H [A/m] で割って、H/m になります。
単位どうしの関係
組立単位は、暗記するよりも、つながりを覚えるほうが確かです。電気と磁気の単位が、どの単位から組み立てられるかを並べました(図3)。
図3 単位のつくり方。左の2つの単位を掛ける(×)か割る(÷)と、黄色の単位ができる
電力 W は、電圧と電流の積です。電流 A は 1 秒あたりの電荷 C(A=C/s)なので、単位を代入すると、J/s になります。
W=V⋅A=CJ⋅sC=sJ
1 V は、1 C の電荷を運ぶのに 1 J の仕事がいる電圧です。1 W は、1 秒あたり 1 J のエネルギーを使う電力です。抵抗 Ω は V/A なので、オームの法則 R=V/I を単位で書いただけです。オームの法則はオームの法則と直列回路を図解で、電荷 C と力の関係はクーロンの法則と電界の強さで確かめられます。
コイルとコンデンサの単位も、同じように組み立てられます。磁束 Wb は、電圧と時間の積(電磁誘導の式 e=Δϕ/Δt を変形した形)です。インダクタンス H は、次のように書けます。
H=AWb=AV⋅s=Ω⋅s
コンデンサは、次のように書けます。
F=VC=VA⋅s=Ωs
H = Ω·s と F = s/Ω の2つを覚えておくと、コイルやコンデンサの回路で時間の単位が出てくる理由が見えてきます。
接頭語(k・M・μ・n・p)の一覧
接頭語は、単位の前に付けて、10 の累乗倍の大きさを表す記号です。1000 倍ごとに名前が決まっています(図4)。
図4 接頭語のはしご。1段上がるごとに 1000 倍、下がるごとに 1/1000 倍
デシ(d、10−1)、センチ(c、10−2)、ヘクト(h、102)、デカ(da、101)のように、1000 倍ごとではない接頭語もあります。電気の計算では、図の k・M・G・T と、m・μ・n・p を使いこなせば十分です。
接頭語の付いた数値は、10 の累乗に直すと計算しやすくなります。
| 書き方 | 意味 | 10 の累乗 |
|---|
| 6.6 kV | 6600 V | 6.6×103 V |
| 4.7 kΩ | 4700 Ω | 4.7×103 Ω |
| 33 mA | 0.033 A | 33×10−3 A |
| 220 μF | 0.00022 F | 220×10−6 F |
| 100 pF | 0.0000000001 F | 100×10−12 F |
長さの接頭語は、ノギスやマイクロメータの目盛りで見られます。
1目盛り2回転筒3銅線- 目盛り ノギスの本尺。mm の目盛りが並ぶ
- 回転筒 マイクロメータのつまみ。細かい長さをはかる
- 銅線 はかる対象の一例。電線の太さもはかれる
図5 ノギスとマイクロメータ。mm や μm の長さをはかる道具(写真はイメージ)
単位の換算のコツ
単位をそろえずに計算すると、桁が大きくずれます。電験でとくに注意したい換算は、kWh と J、mm² と m² です。
電力量の kWh は、電力 kW に時間 h を掛けた量です。kW は電力、kWh は電力量で、別の量です。W·s が J なので、1 kWh は次のように J へ換算できます(図6)。
図6 kWh と J の換算。1000 W に 3600 s を掛けると、3.6 MJ になる
電力量計には、円板の回転で電力量をはかるものがあります。
1円板2上のコイル3下のコイル- 円板 回転して電力量を積算する
- 上のコイル 磁束をつくり、円板を回す力を生む
- 下のコイル 磁束をつくり、円板を回す力を生む
図7 電力量計の内部。円板が回った分が電力量(kWh)になる(写真はイメージ)
そのほかの換算を、表にまとめます。
| 項目 | 換算 | 例 |
|---|
| 電力量 | 1 kWh=3.6×106 J | 0.5 kWh = 1.8 MJ |
| 時間 | 1 h=3600 s | 45 min = 2700 s |
| 回転数 | ω=2πN/60 | 1500 min−1≈157 rad/s |
| 温度 | T=t+273.15 | 27 ∘C=300.15 K |
| 面積 | 1 mm2=10−6 m2 | 2 mm2=2×10−6 m2 |
| 体積 | 1 L=10−3 m3 | 1 L=1 dm3 |
回転数 N は、1 分間あたりの回転数 [min−1] です。角速度 ω [rad/s] にするには、2π を掛けて 60 で割ります。rad は単位のない数(無次元)で、rad/s は s−1 と同じです。温度は、温度差なら ℃ と K で同じ値になります。
mm² と m² の換算は、桁を取り違えやすいところです。接頭語は単位の一部なので、2 乗すると接頭語も 2 乗されます(図8)。
図8 面積の換算。1 m = 1000 mm なので、1 m² は 10 の 6 乗 mm²。1 mm² は 10 の −6 乗 m²
電線の太さは、断面積を mm² で表します。
1細い電線2中くらいの電線3太い電線- 細い電線 断面積が小さく、抵抗が大きい
- 中くらいの電線 断面積が中間の電線
- 太い電線 断面積が大きく、電流が流れやすい
図9 太さの違う電線の断面。導体の断面積は mm² で表す(写真はイメージ)
電線の抵抗 R=ρl/A の断面積 A に mm² の値を入れるときは、m² に直してから使います。
次元で式を確かめる
式の両辺の単位がそろっているか調べることを、次元の確認といいます。式を覚え間違えたときや、計算の途中で自信がなくなったときの検算に使えます。
例として、時定数 τ=RC の単位を調べます。Ω と F を組立単位で書き直すと、V と A が約分されて、s だけが残ります(図10)。
図10 Ω·F が秒になる理由。V と A が約分され、時間の単位 s が残る
ほかの式も、同じ手順で確かめられます。
| 式 | 単位の計算 | 結果 |
|---|
| τ=RC | Ω·F = (V/A)(C/V) = C/A | s |
| P=I2R | A2⋅Ω = A·V | W |
| W=21CV2 | F⋅V2 = C·V | J |
| ω0=LC1 | H·F = (Ω·s)(s/Ω) = s2 | 1/s |
表の4行目は、LC の単位が s になるので、その逆数は 1/s です。F = s/Ω と H = Ω·s の積で Ω が消える点が、確認の決め手です。
単位で間違えやすいところ
換算の失敗は、桁の取り違えとして答えに現れます。ありがちな間違いと、正しい扱いを並べました。
| ありがちな間違い | 正しい扱い |
|---|
| mm² を 10−3 m2 とする | 2 乗するので 10−6 m2 |
| kWh のまま J の式に入れる | 3.6×106 を掛けて J にする |
| min−1 をそのまま ω に使う | 2π/60 を掛けて rad/s にする |
| μF と mF を取り違える | μ は 10−6、m は 10−3 で 1000 倍違う |
| MΩ と mΩ を取り違える | MΩ=106 Ω、mΩ=10−3 Ω |
| kW と kWh を同じ量とみる | kW は電力、kWh は電力量 |
| 温度差に 273.15 を足す | 温度差は ℃ でも K でも同じ値 |
熱量の単位 cal は SI ではありません。J にそろえてから計算します。問題文に換算値が書かれていれば、その値を使います。
例題:単位と換算
接頭語の付いた数値を式に入れるときは、図11の3つの手順で進めます。例として、R = 2 kΩ、C = 50 μF の時定数 τ=RC を求めます。
図11 単位をそろえる3手順。10 の累乗に直し、単位ごと計算し、答えの単位を確かめる
解答と解説を見る
まず、単位をそろえます。
Pt=1.2 [kW]=1200 [W]=45 [min]=2700 [s]電力量は、電力と時間の積です。
W=Pt=1200×2700=3.24×106 [J]=3.24 [MJ]検算:1.2 [kW]×0.75 [h]=0.9 [kWh] で、0.9×3.6=3.24 [MJ] となり、一致します。
答え:(3)
(1) の 0.90 は、kWh のままの値です。MJ にするには 3.6 を掛けます。(4) は 1.2×45 のように、kW と min を単位ごと掛けた値で、(5) は 60 を余計に掛けた値です。
解答と解説を見る
誤っているのは (3) です。
- (1) 正しい。Ω⋅F=s です。
- (2) 正しい。H/Ω=(Ω⋅s)/Ω=s です。
- (3) 誤り。H⋅F=(Ω⋅s)(s/Ω)=s2 で、秒の2乗です。
- (4) 正しい。CV の単位は F⋅V=C で、C/A=s です。
- (5) 正しい。LC が s2 なので、平方根は s です。
LC の単位が s2 になることを覚えておくと、LC が時間、1/LC が角周波数になる理由がわかります。
解答と解説を見る
断面積を m² に直します。
A=2 [mm2]=2×10−6 [m2]抵抗の式に代入します。
R=ρAl=1.72×10−8×2×10−6100=0.86 [Ω]検算:ρ=0.0172 [Ω⋅mm2/m] で計算すると、0.0172×100/2=0.86 [Ω] で一致します。
答え:(3)
断面積を mm² のまま、抵抗率を Ω·m のまま入れると、桁がずれます。抵抗率の単位に合わせて、長さを m、断面積を m² にそろえましょう。
解答と解説を見る
誤っているのは (5) です。
- (1) 正しい。μ から n へは 1000 倍します。0.33×1000=330 です。
- (2) 正しい。p から n へは 1000 で割ります。4700/1000=4.7 です。
- (3) 正しい。k から M へは 1000 で割ります。66/1000=0.066 です。
- (4) 正しい。mA=10−3 A なので、1500×10−3=1.5 です。
- (5) 誤り。m から μ へは 1000 を掛けます。2.2 mH=2200 μH です。
隣り合う接頭語は 1000 倍ずつ違います。小さい接頭語(m → μ)へ移すときは数値が 1000 倍に、大きい接頭語へ移すときは 1/1000 になる、と覚えると迷いません。
よくある質問
kWh は電力の単位ですか?
いいえ、電力量の単位です。電力の単位は kW で、電力に時間を掛けると kWh になります。1 kWh は 3.6×106 J です。
電気の基本単位はどれですか?
電流の A だけです。電圧の V や抵抗の Ω は、基本単位を組み合わせた組立単位です。
μ は「ミュー」と「マイクロ」のどちらで読みますか?
記号 μ はギリシャ文字のミューで、接頭語の読みはマイクロです。10−6 を表します。
単位が合っていれば、答えは正しいですか?
単位が合っているのは、正解の必要条件です。係数や桁の誤りは、単位では見つかりません。換算を確かめたうえで、検算もしましょう。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
電験の計算でおもに使う基本単位は?
m(長さ)・kg(質量)・s(時間)・A(電流)です。熱の計算では K(温度)も使います。
V・Ω・W を、割り算や掛け算で表すと?
V=J/C、Ω=V/A、W=J/s=V⋅A です。
F と H を、s と Ω で表すと?
F=s/Ω、H=Ω⋅s です。
k・M・G・T と m・μ・n・p の倍数は?
103・106・109・1012 と、10−3・10−6・10−9・10−12 です。
1 kWh は何 J ですか?
3.6×106 J です。1000 W に 3600 s を掛けた値です。
1 mm² は何 m² ですか?
10−6 m2 です。1 mm=10−3 m を 2 乗します。
まとめ
- 基本単位は7つで、電気の基本単位は A だけ。V・Ω・W・F・H・T などは組立単位
- 単位のつながりは、V = J/C、W = J/s、Ω = V/A。F = s/Ω、H = Ω·s と覚える
- 接頭語は 1000 倍ごと。k・M・G・T は大きく、m・μ・n・p は小さい。m と M の取り違えに注意
- 計算の前に、接頭語を 10 の累乗に直し、単位をそろえる。答えの単位も確かめる
- kWh は電力量で、1 kWh=3.6×106 J。mm² は 10−6 m2
- 次元の確認で式の形を検算できる。係数や桁の誤りは、別に確かめる
| 項目 | 関係 |
|---|
| 電力量 | 1 kWh=3.6×106 J |
| 抵抗 | Ω=V/A |
| 静電容量 | F=s/Ω |
| インダクタンス | H=Ω⋅s |
| 面積 | 1 mm2=10−6 m2 |
| 回転数 | ω=2πN/60 |
次は、単位を使って電気回路を計算するオームの法則と直列回路を図解です。電荷と力の関係はクーロンの法則と電界の強さで確かめられます。