直流回路では、電圧も電流も向きと大きさが一定でした(キルヒホッフの法則まで)。コンセントから来る交流は、向きも大きさも周期的に変わり続けるので、「いまの値」「最大の値」「熱の働きで見た値」を区別して扱います。この記事では、正弦波交流の周期・周波数・位相と、実効値・平均値・波形率・波高率の求め方を、図と例題で順に確認します。
正弦波交流の全体像
- 正弦波交流とは
- 向きと大きさが周期的に変わる電圧・電流。波形が sin の形
- 大きさは、瞬時値・最大値・実効値・平均値で表す
- 周期・周波数・角周波数の関係
- 正弦波交流の瞬時値の式
- v = Vm sin(ωt + θ)。θ は初期位相
- 位相と位相差の考え方
- 同じ周波数の2つの波のずれが位相差。先に山が来るほうが進み
- 実効値とは
- 同じ抵抗に同じ熱を出させる直流の大きさ。正弦波では V = Vm ÷ √2
- 平均値と波形率・波高率
- 半周期の平均は 2Vm ÷ π。波形率 = 実効値 ÷ 平均値、波高率 = 最大値 ÷ 実効値
正弦波交流とは
直流の電圧は、電池のように向きも大きさも一定です。これに対して交流は、向きも大きさも一定の周期で入れ替わりながら変化します。時間を横軸にして電圧をグラフにすると、図1のように、直流は水平な線、交流は上下に波打つ線になります。
図1 直流は向きも大きさも一定、交流は向きも大きさも周期的に変わる
交流の波形が三角関数 sin の形になったものが正弦波交流です。磁界の中でコイルを一定の速さで回すと、コイルに生じる電圧は正弦波になります。発電所の発電機はこの原理で交流を作るので、電力の分野で交流といえば、ふつう正弦波交流を指します。
図2のオシロスコープは、電圧が時間とともに変わるようすを、画面に波形として映す測定器です。
1画面2波形3格子4つまみ- 画面 電圧の時間変化を波形で映す
- 波形 山と谷がくり返す正弦波
- 格子 目盛りの読み取りに使う
- つまみ 波の大きさや位置を調整する
図2 オシロスコープの画面。交流の電圧が正弦波として映る(写真はイメージ)
交流の大きさを表す値は、次の4つに分けて使います。
| 名前 | 記号 | 意味 |
|---|
| 瞬時値 | v | ある瞬間の値 |
| 最大値 | Vm | 波の山の高さ |
| 実効値 | V | 熱の働きで見た値 |
| 平均値 | Vav | 半周期の平均 |
このうち実効値と平均値は、あとの節で求め方を確かめます。
周期・周波数・角周波数の関係
波が1回分くり返す時間を周期 T[s]、1秒間にくり返す回数を周波数 f[Hz] といいます。
f=T1
日本の商用周波数は、東日本が 50[Hz]、西日本が 60[Hz] です。50[Hz] なら周期は T=1/50=0.02[s]=20[ms] になります。
交流の波は、長さ Vm の矢印が一定の速さで反時計回りに回るようすで表せます。図3のように、矢印の先の高さを、回った角度に合わせて横に並べると正弦波になります。
図3 回転ベクトルの高さを、回った角度に合わせて横に並べると正弦波になる
矢印が1周すると 360°(2π[rad])回るので、回る速さ(角周波数)ω は、次のとおりです。
ω=2πf=T2π[rad/s]
50[Hz] なら ω=2π×50≈314[rad/s]、60[Hz] なら ω=2π×60≈377[rad/s] です。回る矢印を複素数で扱う方法は、複素数と記号法で確かめます。
図4の発電機は、回転の速さに応じた周波数の交流を作ります。
1発電機(手前)2発電機(奥)3通路4窓- 発電機(手前) 青い円筒形の本体
- 発電機(奥) 同じ形の機械が奥にも並ぶ
- 通路 手すり付きの通路
- 窓 建屋の外は水面
図4 発電所の建屋に並ぶ円筒形の発電機。回転の速さに応じた周波数の交流ができる(写真はイメージ)
正弦波交流の瞬時値の式
正弦波交流の電圧の瞬時値 v は、時間 t の関数として次のように書けます。
v=Vmsin(ωt+θ)
| 記号 | 名前 | 単位 |
|---|
| Vm | 最大値 | V |
| ω | 角周波数 | rad/s |
| θ | 初期位相 | rad や ° |
ωt+θ が、その瞬間の位相(回っている矢印の角度)です。t=0 のとき v=Vmsinθ で、θ は、t=0 で矢印がどこまで回っているかを表します。図5のように、θ>0 の波は、θ=0 の波を左(時間の早いほう)へ θ だけずらした形です。
図5 初期位相 θ だけ左へずれた波が v = Vm sin(ωt + θ)
sin(ωt+90∘)=cosωt なので、cos で書かれた波も同じ正弦波交流です。式を読むときは、sin の中を同じ単位にそろえます。
位相と位相差の考え方
同じ周波数の2つの交流の波が、時間のずれをどれだけ持つかを表すのが位相差です。電圧と電流を次のようにおくと、位相差 ϕ は初期位相の差です。
v=Vmsin(ωt+θv)i=Imsin(ωt+θi)ϕ=θv−θi
図6では、電圧 v の山が電流 i の山より 60∘ 先に来ています。このとき「v は i より 60∘ 進んでいる」といい、同じことを「i は v より 60∘ 遅れている」ともいいます。グラフでは、時間は右へ進むので、左にある波のほうが先に同じ値になります。
図6 電圧 v の山が電流 i の山より 60° 早く来る。v は i より位相が 60° 進んでいる
位相差には、次の呼び名があります。
| 位相差 | 呼び名 | 波のようす |
|---|
| 0∘ | 同相 | 山と谷が同時 |
| 90∘ | 直角 | 一方が山のとき他方は 0 |
| 180∘ | 逆相 | 一方が山のとき他方は谷 |
コイルでは電流が電圧より 90∘ 遅れ、コンデンサでは 90∘ 進みます。くわしくは、RLC直列回路のインピーダンスで確かめます。
実効値とは
家庭のコンセントの「100 V」は、波の山の高さ(最大値)ではなく、実効値です。交流の電圧や電流の大きさは、とくに断らなければ実効値で表します。
実効値は、熱の働きで直流と比べて決めます。図7のように、同じ抵抗 R に、交流を流したときと直流を流したときで、同じ熱を出すとします。そのときの直流の大きさが、その交流の実効値です。
図7 同じ抵抗に同じ熱を出させる直流の大きさが、その交流の実効値
抵抗で出る熱は、電流の2乗に比例します。そこで、瞬時値を2乗して、平均をとり、平方根をとります(英語で root mean square、略して RMS)。正弦波 v=Vmsinωt の2乗は、次のように変形できます。
v2=Vm2sin2ωt=2Vm2(1−cos2ωt)
図8のように、2乗すると負の部分がなくなり、波は Vm2/2 を中心に上下します。cos2ωt の平均は 0 なので、v2 の平均は Vm2/2 です。
図8 v を2乗すると負の部分がなくなり、平均は Vm の2乗の半分になる
平均の平方根をとると、実効値 V が求まります。
V=2Vm2=2Vm
図9に、この手順をまとめます。
図9 実効値は「2乗する → 平均をとる → 平方根をとる」の順で求める
実効値 100[V] の電圧の最大値は、100×1.414≈141[V] です。この係数 1/2 は正弦波だけのもので、ほかの波形では変わります。
図10の柱上変圧器で下げた電圧が、家庭に届きます。
1上部の端子2放熱フィン3下部の端子4電線- 上部の端子 高圧側の接続部
- 放熱フィン 中の熱を逃がす
- 下部の端子 低圧側の接続部
- 電線 下部の端子から左へ伸びる
図10 電柱の上の柱上変圧器。送られてきた電圧を、家庭向けの低い電圧に下げる(写真はイメージ)
家庭の電気機器に表示された「100 V」も、実効値です。図11の扇風機を 100[V] の交流につなぐと、電圧は約 141[V] と約 −141[V] のあいだを変わり続けますが、熱の働きでは直流 100[V] と同じ大きさとして数えます。交流の電圧計や電流計も、ふつう実効値を指示するように目盛られています。計器のしくみは、電気計器で確かめます。
1羽根2ガード3モーター4支柱5台- 羽根 モーターの回転を風に変える
- ガード 羽根を囲む網
- モーター 交流で回る(ガードの後ろ)
- 支柱 首を支える
- 台 本体を安定させる
図11 家庭用の扇風機。100 V の交流で動かすとき、100 V は実効値(写真はイメージ)
平均値と波形率・波高率
正弦波は、全周期で平均すると正の部分と負の部分が打ち消し合って 0 になります。そこで、電気の分野では平均値を、正の半周期だけの平均で決めます。図12のように、山と同じ面積の長方形の高さが平均値です。
図12 正弦波の半周期の平均値は、山と同じ面積の長方形の高さ 2Vm/π
Vav=π2Vm≈0.637Vm
実効値 0.707Vm と平均値 0.637Vm は、近いけれど別の値です。この2つの比と、最大値との比に名前がついています。
波形率波高率=平均値実効値=実効値最大値
正弦波では、波形率が 2Vm/πVm/2=22π≈1.11、波高率が 2≈1.414 です。ほかの波形は、次のようになります。
| 波形 | 波形率 | 波高率 |
|---|
| 正弦波 | 1.11 | 1.414 |
| 方形波 | 1 | 1 |
| 三角波 | 1.155 | 1.732 |
方形波と三角波は、正負が対称な波形です。図13のように、波形が変わると実効値と平均値の比が変わります。三角波の波形率は 2/3≈1.155、波高率は 3≈1.732 です。
図13 正弦波・方形波・三角波の実効値と平均値
正弦波交流の例題
例題で使う関係をまとめます。正弦波の場合です。
| 求めるもの | 式 |
|---|
| 周期・角周波数 | T=1/f、ω=2πf |
| 位相差 | 初期位相の差 |
| 実効値 | V=Vm/2 |
| 平均値 | Vav=2Vm/π |
解答と解説を見る
最大値は、式の係数そのものです。
Vm=200[V]実効値は、最大値を 2 で割ります。
V=2200=1002≈141[V]角周波数は ω=100π[rad/s] なので、周波数と周期は次のとおりです。
f=2πω=2π100π=50[Hz]T=f1=501=0.02[s]=20[ms]初期位相は θ=π/6[rad]=30∘ です。
解答と解説を見る
初期位相は、v が 30∘、i が −30∘ です。位相差は、その差です。
ϕ=30∘−(−30∘)=60∘差が正なので、電圧 v のほうが 60∘ 進んでいます(電流 i が 60∘ 遅れています)。
実効値は、最大値を 2 で割ります。
V=2100≈70.7[V]I=24≈2.83[A]
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最大値は、実効値の 2 倍です。
Vm=2×100≈141.4[V]平均値は、最大値の 2/π 倍です。
Vav=π2Vm≈3.14162×141.4≈90.0[V]検算すると、波形率は 100/90.0≈1.11 で、正弦波の波形率と一致します。
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sin の中を、まず度に直して求めます。
ωt=100π×6001=6π=30∘初期位相 π/6=30∘ を足すと、位相は 60∘ です。
v=1002sin60∘=1002×23=506≈122.5[V]
解答と解説を見る
実効値と平均値は、最大値からそのまま出ます。
V=360≈34.6[V]Vav=260=30[V]波形率は、実効値を平均値で割ります。
VavV=3034.6≈1.155三角波の波形率 2/3≈1.155 と一致します。
よくある質問
実効値は、なぜ最大値を √2 で割った値になるのですか。
実効値は、抵抗で出る熱の平均が同じになる直流の大きさです。熱は電流の2乗に比例するので、瞬時値を2乗して平均をとります。正弦波の2乗の平均は最大値の2乗の半分になり、その平方根をとるので、1/2 が出ます。
家庭の 100 V は、最大値と実効値のどちらですか。
実効値です。最大値は約 141[V] で、電圧はこの値と、反対向きの約 −141[V] のあいだを往復しています。
正弦波の平均値が 0 にならないのは、なぜですか。
全周期で平均すれば 0 ですが、電気では、正の半周期だけの平均を平均値と決めているからです。正弦波では、2Vm/π≈0.637Vm になります。
位相が進んでいるか遅れているかは、どう見分けますか。
グラフで、山が左(時間の早いほう)に来る波が、進んでいる波です。式では、初期位相が大きいほうが進みです。v=sin(ωt+60∘) と i=sinωt なら、v が 60∘ 進んでいます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
周期 T と周波数 f、角周波数 ω の関係は?
f=1/T、ω=2πf です。50Hz なら T=20ms です。
瞬時値の式 v=Vmsin(ωt+θ) の Vm、ω、θ は、それぞれ何ですか?
Vm は最大値、ω は角周波数、θ は初期位相です。
電圧の初期位相が 30∘、電流が −30∘ のとき、位相差と進みの向きは?
位相差は 60∘ で、電圧が進み、電流が遅れています。
正弦波の実効値と最大値の関係は? それはなぜですか?
V=Vm/2 です。熱は2乗に比例するので、2乗の平均の平方根をとったためです。
正弦波の平均値(半周期)は、最大値の何倍ですか?
2/π≈0.637 倍です。
波形率と波高率の式と、正弦波での値は?
波形率は実効値÷平均値で約 1.11、波高率は最大値÷実効値で 2≈1.414 です。
まとめ
- 正弦波交流の大きさは、瞬時値・最大値・実効値・平均値で表す。とくに断らなければ実効値
- 周波数 f=1/T、角周波数 ω=2πf。瞬時値は v=Vmsin(ωt+θ)
- 同じ周波数の2つの波の初期位相の差が位相差。山が先に来るほうが進んでいる
- 正弦波の実効値は V=Vm/2、半周期の平均値は Vav=2Vm/π
- 波形率は実効値÷平均値(正弦波で約 1.11)、波高率は最大値÷実効値(正弦波で約 1.414)
次は、コイルやコンデンサのある回路で、電圧と電流の位相がどうずれるかを、RLC直列回路のインピーダンスで確かめましょう。実効値の電圧と電流から電力を求める方法は、有効電力・無効電力・皮相電力で扱います。