前の記事の並列回路では、直列と並列だけの回路を一本の合成抵抗にまとめて解きました。ところが電源が二つになると、合成抵抗にまとめるだけでは解けません。
キルヒホッフの法則は、回路の一つの点では電流の出入りが釣り合い(電流則)、閉じた一周では電圧の上がり下がりが釣り合う(電圧則)という、二つの決まりです。この二つで式を立てれば、電源が複数あって合成抵抗にまとめられない回路も、連立方程式として解けます。この記事では、二つの法則の意味、符号の決め方、解き方の手順、電験三種で出る形の例題を順に確認します。
キルヒホッフの法則の全体像
- キルヒホッフの法則とは
- 合成抵抗にまとめられない回路で使う
- 節点・枝・閉回路の三つの言葉
- 電流則(第1法則)
- 電圧則(第2法則)
- 一周すると電位は元に戻る
- 符号は、通る向きで決める
- 解き方の手順
- 電流を仮定し、電流則と電圧則で式を立てる
- 式の本数は「節点の数 − 1」と「窓の数」
- 例題
- 二電源の回路を解き、電力で検算する
- 答えが負なら、仮定と逆向き
キルヒホッフの法則とは
キルヒホッフの法則は、直流回路で、複雑な回路を解くときの基本の道具です。1845年にドイツの物理学者キルヒホッフが示した、電流についての法則(第1法則、電流則)と、電圧についての法則(第2法則、電圧則)の二つからなります。
直列と並列だけの回路は、合成抵抗にまとめて、オームの法則で解けます。しかし、電源が二つ以上ある回路や、抵抗が橋渡しになっている回路は、一本の抵抗にまとめられません。こうした回路で使うのが、キルヒホッフの法則です。
図1 合成抵抗で解ける回路と、キルヒホッフの法則が必要な回路の見分け方
電源が二つある身近な例が、故障した車のバッテリーを、別の車のバッテリーとケーブルでつなぐ場面です。電源が二つ入ると、電流がどちらの電池からどちらへ流れるのかも、計算してみるまでは分かりません。向きが分からないまま解き始められるようにするのが、キルヒホッフの法則の使い方です。
1電池A2電池B3赤いケーブル4黒いケーブル- 電池A 一つ目の電源
- 電池B 二つ目の電源
- 赤いケーブル 電池を結ぶ道の一つ
- 黒いケーブル もう一つの道
図2 二つの電池をケーブルでつなぐ。電源が二つあると、電流の向きは計算で決まる(写真はイメージ。実際の作業は車の取扱説明書に従うこと)
キルヒホッフの法則には、三つの言葉が出てきます。
| 言葉 | 意味 | 図3の例 |
|---|
| 節点 | 三本以上の枝が集まる点 | 上の点 a と下の点 b |
| 枝 | 節点から次の節点までの、分かれ道のない一本の道 | 左・中央・右の三本 |
| 閉回路(ループ) | 同じ点を二度通らずに、一周できる道 | 左の窓、右の窓 |
図3 節点・枝・閉回路。この記事の例題の回路にあてはめる
図3は、この記事の例題で使う回路です。一周できる道は、左の窓、右の窓、外側の大きな一周の三つあります。ただし、式として独立なのは、内側に枝を含まない「窓」にあたる二つだけです。
電流則(第1法則)
電流則(キルヒホッフの第1法則)は、節点に流れ込む電流の和が、流れ出る電流の和に等しいという法則です。節点に電荷がたまったり、湧き出したりしないことを表しています。
流れ込む電流の和=流れ出る電流の和
図4の節点では、I1 と I2 が流れ込み、I3 と I4 が流れ出ます。
図4 電流則。節点に流れ込む電流の和は、流れ出る電流の和に等しい
I1+I2=I3+I4
流れ込む向きを正、流れ出る向きを負として、すべてを足すと 0 になる、と書いても同じ式です。
解答と解説を見る
流れ込む電流の合計は 6+3=9[A] です。電流則より、
9=4+I4よって I4=5[A] です。正の値なので、図に描いた流れ出る向きのままです。
家庭の分電盤にも、電流則が現れます。主幹ブレーカーから入った電流は、母線で各分岐ブレーカーへ分かれます。母線を節点と見れば、入る電流は、分岐に流れる電流の合計に等しくなります。
1主幹ブレーカー2母線3分岐ブレーカー4各回路の配線- 主幹ブレーカー ここから電流が入る
- 母線 電流が各分岐へ分かれる節点
- 分岐ブレーカー 流れ出る電流の一つ
- 各回路の配線 分かれた電流の行き先
図5 分電盤。主幹ブレーカーを通る電流は、各分岐に流れる電流の合計に等しい(写真はイメージ)
電圧則(第2法則)
電圧則(キルヒホッフの第2法則)は、閉回路を一周したとき、電源の起電力の和が、抵抗の電圧降下の和に等しいという法則です。
起電力の和=電圧降下の和
別の言い方をすると、一周して元の点に戻れば、電位も元に戻ります。山道を一周して出発点へ戻れば、登った高さと下った高さが等しいのと同じです。電源を通るときに電位が上がり、抵抗を通るときに電位が下がる分が、ちょうど釣り合います。抵抗での電圧降下 RI は、オームの法則と直列回路で扱った量です。
式を立てるときに迷うのは、符号です。符号は「一周する向き」を一つ決めて、その向きに通ったときの関係で決まります。
図6 電圧則の符号の決め方。ループの向きと、電源の極・電流の向きを見比べる
電源は、通る向きだけで符号が決まります。負極から正極へ通れば電位が上がるので +E、正極から負極へ通れば下がるので −E です。抵抗は、電流の向きと見比べます。電流と同じ向きに通れば電位は RI だけ下がるので、電圧降下は +RI、逆向きに通れば −RI です。
一巡の回路で確かめる
まず、一周するだけの回路で確かめます。
図7 例題2の回路。電池が逆向きに入っているので、電流は大きい方の向きに流れる
解答と解説を見る
a から b、c、d の順に、時計回りに一周します。E1 は負極から正極へ通るので +E1、E2 は正極から負極へ通るので −E2 です。二つの抵抗は、電流と同じ向きに通ります。
E1−E2=R1I+R2I数値を入れると、
20−8=2I+4I12=6I より、I=2[A] です。正の値なので、仮定した時計回りのとおりに流れます。
この答えを、電位の動きで追ってみます。a の電位を 0[V] として、時計回りに一周します。E1 で 20[V] 上がって b は 20[V]、R1 で 2×2=4[V] 下がって c は 16[V] です。E2 を逆向きに通って 8[V] 下がり、d は 8[V]、R2 で 4×2=8[V] 下がって a の 0[V] に戻ります。
図8 一周したときの電位の変化。上がった分と下がった分の合計は 0 になる
上がった 20[V] と、下がった 4+8+8=20[V] が等しくなっています。これが「一周すると電位は元に戻る」の中身です。
抵抗の両端にテスター棒を当てると、電圧降下 RI を実際に読み取れます。電圧則の式に出てくる RI は、測れる量です。
1電池ボックス2テスター棒3抵抗4テスター本体- 電池ボックス 電源
- テスター棒 測りたい部分に当てる
- 抵抗 電圧降下 RI が現れる
- テスター本体 電圧を読み取る
図9 抵抗の両端にテスター棒を当て、電圧降下を測る(写真はイメージ)
解き方の手順(枝電流法)
二つの法則を使った解き方には、決まった手順があります。ここでは、各枝の電流を未知数にする「枝電流法」で説明します。
図10 キルヒホッフの法則の解き方。五つの手順(枝電流法)
手順を、二電源の回路にあてはめます。左の枝に E1 と R1、右の枝に E2 と R2、中央に R3 がある回路です。
図11 電流とループの向きの決め方。向きは自由で、あとで答えの符号を見て読み替える
手順1 電流の向きを仮定する。 図11のように、左と右の枝の電流 I1、I2 は上向き、中央の枝の電流 I3 は下向きと仮定します。向きは自由です。実際と逆でも、答えが負になるだけで、解き方は変わりません。
手順2 電流則で式を立てる。 節点 a では、I1 と I2 が流れ込み、I3 が流れ出ます。
I3=I1+I2
手順3 ループを選び、一周する向きを決める。 窓の数だけ選びます。ここでは、左の窓(ループ1)を時計回り、右の窓(ループ2)を反時計回りにします。
手順4 電圧則で式を立てる。 ループ1では、左の枝を上向きに通って E1 は負極から正極へ、R1 も電流と同じ向きです。中央の R3 は下向きに通るので、これも I3 と同じ向きです。
E1=R1I1+R3I3
ループ2も、右の枝を上向き、中央を下向きに通るので、同じ形になります。
E2=R2I2+R3I3
手順5 連立方程式を解く。 三つの式で、未知数は I1、I2、I3 の三つです。解いたあと、元の式に代入して確かめます。
式は何本立てればよいか
立てる式の本数は、未知の電流の数と同じ、つまり枝の数だけです。内訳は次のとおりです。
- 電流則は、節点の数が n のとき、n−1 本
- 電圧則は、枝の数が b のとき、窓の数にあたる b−n+1 本
この回路では n=2、b=3 なので、電流則が 1 本、電圧則が 2 本の、合計 3 本です。電流則を n 本立てないのは、すべての節点の式を足すと 0=0 になるからです。最後の一つの式は、ほかの式から導けてしまい、新しい情報になりません。節点 b で式を立てても、節点 a と同じ式になります。
ループの向きも自由です。ループ2を時計回りにすると、式は −E2=−R2I2−R3I3 となりますが、これは両辺の符号を変えただけで、同じ式です。
実際の回路でも、配線が枝分かれする点は節点です。基板では、配線が三方向に分かれる丸い銅の部分が、節点にあたります。
1配線2はんだの部分3ほかの枝- 配線 電流の通り道(枝)
- はんだの部分 節点にあたる
- ほかの枝 別の方向へ分かれる
図12 基板の配線が三方向に分かれる点。ここに出入りする電流は電流則で釣り合う(写真はイメージ)
三つの解き方の違い
同じ回路でも、未知数の取り方で式の本数が変わります。
| 解き方 | 未知数 | この回路での式の本数 |
|---|
| 枝電流法 | 各枝の電流 | 3 本 |
| 網目電流法 | 各窓を回る電流 | 2 本 |
| 節点電位法 | 節点の電位 | 1 本 |
この記事で説明する枝電流法は、手順がいちばん素直です。網目電流法と節点電位法は、式が少なくなる反面、考え方に慣れが要ります。例題3の後で、同じ回路を二つの別解で解いてみます。
例題:連立方程式の解き方と検算
二電源の回路を、実際に解きます。
解答と解説を見る
電流の向きは図11のとおりに仮定し、三つの式を立てます。
I3=I1+I2⋯①24=3I1+6I3⋯②20=2I2+6I3⋯③①を②と③に代入して、I3 を消します。②は 24=3I1+6(I1+I2)=9I1+6I2 なので、3 で割って、
8=3I1+2I2⋯④③は 20=2I2+6(I1+I2)=6I1+8I2 なので、2 で割って、
10=3I1+4I2⋯⑤⑤から④を引くと 2=2I2 なので、I2=1[A] です。④に入れて 8=3I1+2 より、I1=2[A]、①より I3=3[A] です。
三つとも正の値なので、仮定した向きのとおりに流れています。②に代入すると 3×2+6×3=24、③に代入すると 2×1+6×3=20 となり、どちらも成り立ちます。
求めた電流を、回路図に書き込みます。中央の抵抗の電圧は R3I3=6×3=18[V] で、これが a と b の間の電圧です。
図13 例題3の答え。電源が出す電力と抵抗が使う電力は、どちらも 68 W で一致する
電力でも検算できます。電源が出す電力は、24×2+20×1=68[W] です。抵抗が使う電力は、I2R で、R1 が 22×3=12[W]、R2 が 12×2=2[W]、R3 が 32×6=54[W] で、合計 68[W] です。電源が出す電力と抵抗が使う電力が等しいことは、解の確かめになります。
別解:節点電位法と網目電流法
同じ回路を、式の少ない方法で解いてみます。
節点電位法。 b を基準とした a の電位を V[V] とおくと、各枝の電流は次のように書けます。
I1=324−V,I2=220−V,I3=6V
電流則 I1+I2=I3 に入れて、両辺に 6 を掛けます。
2(24−V)+3(20−V)=V
108=6V より V=18[V] です。I1=6/3=2[A]、I2=2/2=1[A]、I3=18/6=3[A] となり、枝電流法と同じ答えです。式が一本で済みます。この形の式を公式にしたものは、ミルマンの定理と呼ばれます。
網目電流法。 左の窓に時計回りの電流 Ja、右の窓に反時計回りの電流 Jb が回っていると考えます。左の枝の電流は I1=Ja、右の枝の電流は I2=Jb で、中央の抵抗は二つの電流がどちらも下向きに通るので I3=Ja+Jb です。電圧則だけで、式は二本になります。
24=3Ja+6(Ja+Jb)20=2Jb+6(Ja+Jb)
整理すると 24=9Ja+6Jb、20=6Ja+8Jb で、解は Ja=2、Jb=1 です。やはり同じ答えになります。
答えが負になる場合
電源の値を変えると、仮定した向きと実際の向きが逆になることがあります。
解答と解説を見る
式の形は例題3と同じで、③の 20 が 8 に変わります。
I3248=I1+I2=3I1+6I3=2I2+6I3②は例題3と同じなので 8=3I1+2I2 です。③は 8=2I2+6(I1+I2)=6I1+8I2 なので、2 で割って 4=3I1+4I2 になります。二つの式を引き算すると 2I2=−4 なので、
I2=−2[A]です。8=3I1−4 より I1=4[A]、I3=4+(−2)=2[A] です。
②に代入すると 3×4+6×2=24、③に代入すると 2×(−2)+6×2=8 で、どちらも成り立ちます。
I2 が負なので、右の枝の電流は、仮定した上向きと逆の下向きに 2[A] 流れています。
図14 答えが負のときは、仮定と逆向きに流れている。右の電池は充電される側になる
負の答えは、間違いではありません。仮定と逆向きに流れている、という意味です。この例では、右の電池 E2 の正極に向かって電流が流れ込むので、右の電池は電流を送り出す側ではなく、受け取る側(充電される側)になっています。電力で確かめると、電源 E1 が 24×4=96[W] を出し、E2 は 8×2=16[W] を受け取ります。抵抗が使う電力は 3×42+2×22+6×22=80[W] で、96−16=80[W] と一致します。
この例では、a と b の間の電圧が R3I3=6×2=12[V] で、E2=8[V] より高いため、右の電池に電流が押し込まれます。二台のバッテリーをつないだ図2も同じで、電池の状態に差があると、電圧の高い側から低い側へ電流が流れ込み、低い側が充電される形になります。実際の作業の手順は、車の取扱説明書に従ってください。
符号の間違いを防ぐ
よくある質問
キルヒホッフの法則の符号の決め方は?
符号は「通る向き」で決まります。電源は、負極から正極へ通るなら +E、正極から負極へ通るなら −E とします。抵抗は、一周する向きが電流と同じなら電圧降下 +RI、逆なら −RI です。これを「起電力の和 = 電圧降下の和」の形に当てはめれば、迷いません。
電流の向きを逆に仮定したらどうなる?
解き方は変わりません。その枝の電流が負の値で求まるだけで、大きさは同じです。「仮定と逆向きに流れている」と読み替えます。向きを最初から当てようとするより、とりあえず仮定して解く方が、早く確実です。
キルヒホッフの法則で式は何本立てればよい?
未知の電流と同じ数だけ立てます。電流則は「節点の数 − 1」本、電圧則は「窓の数」だけです。この記事の回路は、節点が二つ、窓が二つなので、1+2=3 本で、未知数 I1、I2、I3 と数が合います。
キルヒホッフの法則は交流回路でも使える?
使えます。交流でも、各瞬間の電流や電圧(瞬時値)で成り立ち、複素数のベクトル表示(複素数と記号法)にすれば直流と同じ形の式で書けます。ただし、電圧の大きさ(実効値)をそのまま足してはいけません。位相を含めて足します。コイルやコンデンサを含む回路の扱いは、交流回路の単元で学びます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
電流則(第1法則)を、言葉で説明してください。
節点に流れ込む電流の和は、流れ出る電流の和に等しい、という法則です。
電圧則(第2法則)を、言葉で説明してください。
閉回路を一周すると、電源の起電力の和が、抵抗の電圧降下の和に等しくなる、という法則です。一周すれば電位が元に戻る、とも言えます。
電源を、負極から正極へ通るときと、正極から負極へ通るときの、起電力の符号は?
負極から正極へなら +E、正極から負極へなら −E です。
抵抗を、電流と同じ向きに通るときと、逆向きに通るときの、電圧降下の符号は?
同じ向きなら +RI、逆向きなら −RI です。
節点が二つ、枝が三つ、窓が二つの回路で、立てる式の本数は?
電流則が 2−1=1 本、電圧則が窓の数の 2 本で、合計 3 本です。
連立方程式を解いて、ある枝の電流が負の値になったら、どう読みますか。
仮定した向きと逆に、その大きさの電流が流れています。解き間違いではありません。
まとめ
- キルヒホッフの法則は、合成抵抗にまとめられない回路(電源が複数ある回路など)を、連立方程式で解く道具
- 電流則(第1法則)は、節点に流れ込む電流の和 = 流れ出る電流の和
- 電圧則(第2法則)は、閉回路を一周したとき、起電力の和 = 電圧降下の和。符号は、通る向きで決める
- 手順は、電流を仮定し、電流則(節点の数 − 1 本)、電圧則(窓の数)の式を立てて、連立方程式を解く
- 答えが負なら、仮定と逆向きに流れている。電力の一致や、別のループへの代入で検算する
重ね合わせの理やテブナンの定理、ミルマンの定理など、この先の解き方も、二つの法則が土台です。式の立て方で迷ったら、合成抵抗にまとめる考え方を、並列回路とオームの法則と直列回路で見直しましょう。電流の合流で式を立てる考え方は、オペアンプの加算回路でもそのまま使います。