Kindle で読む

電力発電所 / 水力発電15分で読めます

揚水発電とは|揚水入力・総合効率・可変速揚水を例題つきで図解

電験三種の揚水発電を、ポンプ水車と発電電動機のしくみから、揚水入力 P=9.8QH/(ηpηm) と総合効率の計算、純揚水と混合揚水、可変速揚水の特長まで図解します。例題5問と解答つきです。

シェア

夕日に照らされた山あいに、山頂の上池の堤、山腹を下る水圧管路、谷底の発電所と送電鉄塔が見える揚水発電所の遠景写真
この記事の目次
  1. 揚水発電とは
  2. ポンプ水車と発電電動機のしくみ
  3. 揚水入力と総合効率の求め方
  4. 総合効率の求め方
  5. 揚水の計算の型 損失水頭が % で与えられるとき、水量や時間が違うとき
  6. 損失水頭が総落差の % で与えられるとき
  7. 揚水量と発電に使う水量が違うとき
  8. 純揚水式と混合揚水式
  9. 可変速揚水とは
  10. 揚水発電の運用 ピークと調整力
  11. よくある質問
  12. 揚水発電は、電気をつくる発電所ですか。
  13. 揚水入力の式で、なぜ効率を割るのですか。
  14. 定速機と可変速機の違いは何ですか。
  15. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
Kindle Unlimited 対象Kindle で読む

調速機と水撃作用とは で、水車の回転を一定に保つしくみまで見てきました。この記事では、水力発電の最後の形として、電気を水の位置エネルギーに換えてためる揚水発電を扱います。揚水発電は、余った電力で下池の水を上池へくみ上げ、必要なときに落として発電するしくみで、くみ上げに使う電力(揚水入力)は P=9.8QH/(ηpηm)P = 9.8QH/(\eta_p \eta_m)、1 往復の効率(総合効率)は 1 より小さくなります。

揚水発電の全体像
  • 揚水発電とは
    • 上池と下池の間で水を行き来させ、電気を水の位置エネルギーとしてためる
  • ポンプ水車と発電電動機
    • 1 組の機械が、発電と揚水の両方を受け持つ
    • 方式は別置式・タンデム式・ポンプ水車式の 3 つ
  • 揚水入力と総合効率
    • P=9.8QH/(ηpηm)P = 9.8QH/(\eta_p \eta_m) と、往復の効率
  • 揚水の計算の型
    • 損失水頭が総落差の % で与えられる/揚水量と発電量が違う
  • 純揚水式と混合揚水式
    • 上池に自然の流入があるかどうかで分ける
  • 可変速揚水
    • 回転速度を変えて、揚水入力を調整できる
  • 揚水発電の運用
    • 夜間にくみ上げ、ピークに発電し、周波数も整える

揚水発電とは

揚水発電は、高さの違う 2 つの池(上池と下池)の間で水を行き来させて、電気を水の位置エネルギーとしてためる発電方式です。電力に余裕があるときは、電動機でポンプを回して下池の水を上池へくみ上げます。電力が足りないときは、上池の水を落として水車を回し、発電します。電気そのものは大量にはためられませんが、水の形でならためておけます。

図1は、水力発電のしくみで見た水の流れの断面に、揚水の向きを足したものです。ふつうの水力発電は上から下への一方通行ですが、揚水発電は同じ道を下から上へも水が戻ります。

上池 水圧管路 発電(水が下る) 揚水 ポンプ水車 発電電動機 下池 実揚程 H 2 つの池の水面の高さの差を、水が往復する
図1 揚水発電の断面。発電では水が下り、揚水では同じ道を水が上る

2 つの池は、どちらも人工の池であることがふつうです。山の上につくる上池は、周囲を堤で囲み、内側の斜面を遮水層(アスファルトなど)で覆って水の漏れを防ぎます。

山頂近くに造られた人工の上池。内側の斜面は黒い遮水層で覆われ、堤の上に管理道路と取水塔が見える
  1. 上池の水面 発電のときの水の出どころ。揚水のときは水が入る
  2. 取水塔 上池と水圧管路の出入口。発電にも揚水にも使う
  3. 遮水層 池の斜面を覆い、水の漏れを防ぐ
  4. 堤の管理道路 池を囲む堤の上の道。点検に使う
図2 山の上の上池。遮水層で囲まれた人工の池(写真はイメージ)

下池は、谷をせき止めたダムの池が使われます。上池との高さの差(実揚程)が大きいほど、同じ水量でためられるエネルギーは大きくなります。

谷をせき止めたコンクリートダムと、手前に広がる下池の水面、ダム脇の取水塔
  1. 洪水吐 増水した水を安全に流すゲートの部分
  2. 取水塔 下池への出入口。揚水のときはここから水を吸い込む
  3. ダム堤体 谷をせき止めて下池をつくる
  4. 下池の水面 発電後の水が入り、揚水のときの水源になる
図3 谷をせき止めた下池のダム。上池の水はここへ落ちる(写真はイメージ)

図4は、1 日の中での 2 つの運転を並べたものです。昼間は水が上池から下り、水の位置エネルギーが電気に変わります。夜間は電気の向きが逆になり、電気が水の位置エネルギーに変わります。

昼間(需要が多い):発電運転 上池 ポンプ水車 発電電動機 系統 夜間(需要が少ない):揚水運転 系統 発電電動機 ポンプ水車 上池 発電は水から電気へ、揚水は電気から水へ。向きが逆になる
図4 昼間の発電運転と夜間の揚水運転。同じ設備で向きだけが逆になる

ポンプ水車と発電電動機のしくみ

揚水発電所では、発電用と揚水用に別々の機械を置く方式もありますが、いまの主流は 1 組の機械で両方をこなす方式です。水の側の機械がポンプ水車、電気の側の機械が発電電動機です。回転の向きを逆にするだけで、水車(発電)とポンプ(揚水)が切り替わります。

機械の組み合わせ方は、次の 3 つの方式に分けられます。

方式構成特徴(一般に)
別置式水車と発電機、ポンプと電動機を、別々の機械として置く水車とポンプをそれぞれ最適に設計できるが、機械の数が多く、建屋も大きくなる
タンデム式1 台の発電電動機の軸に、水車とポンプをつないで直結する機械は別置式より少ない。水車とポンプを別に持つので、それぞれの効率を高めやすい
ポンプ水車式1 台のポンプ水車と 1 台の発電電動機で、回転の向きを逆にして切り替える機械の数が最も少なく、建設費を抑えやすい。国内の揚水発電所の主流

試験では、方式の名前と構成を結びつけて問われます。「水車とポンプを別々に持つ」のが別置式とタンデム式、「ポンプ水車で兼ねる」のがポンプ水車式と覚えます。以降は、主流のポンプ水車式で話を進めます。

ポンプ水車は、水車の種類でいうと、高落差に向くフランシス形に近い形をしています。揚水のときは、下池の水が吸出し管から入ってランナに押し出され、水圧管路を通って上池へ送られます。発電のときは逆に、水圧管路の水がランナを回して吸出し管へ抜けます。

地下の大空洞の床に、縦軸の発電電動機の円形のカバーが一列に並ぶ発電所内部。高い天井に天井クレーンが見える
  1. 発電電動機 床の上に出ている上部。下にポンプ水車がつながる
  2. 2 台目以降の機械 同じ形の機械が一列に並ぶ
  3. 天井クレーン 重い回転子やカバーを吊り上げる
  4. 岩盤の壁 山の中の空洞なので壁は岩盤とコンクリート
図5 地下発電所の大空洞。縦軸の発電電動機が一列に並ぶ(写真はイメージ)

揚水発電所の多くは、山の中に空洞を掘った地下発電所です。落差が大きく、ポンプ水車を深い位置に置く必要があるためです。これは、ポンプ水車を低く据えて水を押し込むように吸い込ませ、キャビテーションを防ぐためでもあります。

点検のため床に置かれた、多数の湾曲した羽根と上下のリングを持つ大きな金属製のフランシス形ランナ
  1. 羽根 水を受けて回り、逆回転では水を押し出す
  2. 中央の穴 主軸がつながる部分
  3. 上側のリング 多数の羽根を上から支える
  4. 下側のリング 羽根を下から支える外周
図6 ポンプ水車のランナ。羽根が水を受けて回り、逆向きに回すと水を押し上げる(写真はイメージ)

2 つの運転で、各部の役割は次のように入れ替わります。

項目発電運転揚水運転
水の向き上池 → 下池下池 → 上池
ポンプ水車水車として回されるポンプとして水を押し上げる
発電電動機発電機(電気を出す)電動機(電気を受ける)
回転の向き一方向逆向き
電気の向き発電所 → 系統系統 → 発電所

揚水入力と総合効率の求め方

揚水に使う電力(揚水入力)は、水を持ち上げるのに必要な動力から逆算します。発電のときは出力が 9.8QHη9.8QH\eta でしたが、揚水は逆向きなので、効率を掛けず、割ります。

水を Q [m3/s]Q\ \mathrm{[m^3/s]} で H [m]H\ \mathrm{[m]} 持ち上げるのに必要な動力は 9.8QH [kW]9.8QH\ \mathrm{[kW]} です。これをポンプの効率 ηp\eta_p と電動機の効率 ηm\eta_m で割ったものが、電動機が系統から受け取る電力になります。

P=9.8 Q Hηp ηm [kW]P = \frac{9.8\,Q\,H}{\eta_p\,\eta_m}\ \mathrm{[kW]}
揚水入力(電動機が系統から受ける電力) P = 9.8QH ÷ (ηp ηm) 電動機(効率 ηm) ポンプの軸動力 P × ηm = 9.8QH ÷ ηp ポンプ(効率 ηp) 水が受け取る動力 9.8QH(H は全揚程) 効率は下へ向かうほど掛かる。逆算なので割り算になる
図7 揚水入力の流れ。水が受け取る動力から、ポンプと電動機の効率で割り戻す

ここで HH は全揚程で、2 つの池の水面の差(実揚程)に、水圧管路などの損失水頭 hh を足したものです。発電のときは損失水頭を引いた有効落差を使い(水力発電の出力の求め方)、揚水のときは足します。

全揚程 H=実揚程+損失水頭 h\text{全揚程}\ H = \text{実揚程} + \text{損失水頭}\ h

総合効率の求め方

揚水発電の総合効率は、同じ水量を上池へ上げて、また落として発電したとき、「発電で得た電力量」を「揚水に使った電力量」で割ったものです。同じ水量 VV で比べると、実揚程を H0H_0、損失水頭を hh(揚水と発電で同じとする)として、次のようになります。

η=発電電力量揚水電力量=H0−hH0+h×ηt ηg ηp ηm\eta = \frac{\text{発電電力量}}{\text{揚水電力量}} = \frac{H_0 - h}{H_0 + h} \times \eta_t\,\eta_g\,\eta_p\,\eta_m

ηt\eta_t は水車効率、ηg\eta_g は発電機効率です。損失水頭を無視できるときは、4 つの効率の積になります。どの効率も 1 より小さいので、総合効率は必ず 1 より小さくなります。

解答と解説を見る

(1) 揚水入力は、

P=9.8×50×4000.90×0.95=1960000.855≒2.29×105 [kW]\begin{aligned} P &= \frac{9.8 \times 50 \times 400}{0.90 \times 0.95} = \frac{196000}{0.855} \\ &\fallingdotseq 2.29 \times 10^5\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(2) 電力量は電力に時間を掛けて、

W=2.29×105×6≒1.38×106 [kWh]\begin{aligned} W &= 2.29 \times 10^5 \times 6 \\ &\fallingdotseq 1.38 \times 10^6\ \mathrm{[kWh]} \end{aligned}

答え:(1) 約 2.29×105 kW2.29 \times 10^5\ \mathrm{kW}(約 229 MW229\ \mathrm{MW})、(2) 約 1.38×106 kWh1.38 \times 10^6\ \mathrm{kWh}。

解答と解説を見る

発電のときの有効落差は 300−10=290 m300 - 10 = 290\ \mathrm{m}、揚水のときの全揚程は 300+10=310 m300 + 10 = 310\ \mathrm{m} です。

η=290310×0.90×0.96×0.90×0.96=0.935×0.746≒0.698\begin{aligned} \eta &= \frac{290}{310} \times 0.90 \times 0.96 \times 0.90 \times 0.96 \\ &= 0.935 \times 0.746 \fallingdotseq 0.698 \end{aligned}

総合効率は約 70 %70\ \%。揚水に 1000 MWh1000\ \mathrm{MWh} を使うと、取り出せるのは 1000×0.698≒700 MWh1000 \times 0.698 \fallingdotseq 700\ \mathrm{MWh} ほどで、残りの約 3 割は損失になります。

図8は、例題2の流れを棒の長さで示したものです。損失は、揚水のときと発電のときの両方で出るので、1 往復すると 3 割ほどが失われます。

揚水に使った電力量 100 上池にたまった水のエネルギー 約 84 水車に入る水のエネルギー 約 81 発電で取り出せる電力量 約 70
図8 揚水に使った電力量を 100 としたときの、各段階のエネルギー(例題2の値)

揚水の計算の型 損失水頭が % で与えられるとき、水量や時間が違うとき

過去問では、損失水頭が「総落差の何 %」で与えられたり、発電に使う水量と揚水でくみ上げる水量が違ったりします。式は前の節と同じなので、与えられた条件をどこに入れるかだけを整理します。

損失水頭が総落差の % で与えられるとき

総落差を H0H_0、損失水頭を総落差の xx 倍(たとえば 2 % なら x=0.02x = 0.02)とすると、損失水頭は h=xH0h = xH_0 です。発電は引き、揚水は足します。

有効落差=H0(1−x)全揚程=H0(1+x)\begin{aligned} \text{有効落差} &= H_0(1 - x) \\ \text{全揚程} &= H_0(1 + x) \end{aligned} Pg=9.8 Qg H0(1−x) ηtηgPp=9.8 Qp H0(1+x)ηpηm\begin{aligned} P_g &= 9.8\,Q_g\,H_0(1 - x)\,\eta_t\eta_g \\ P_p &= \frac{9.8\,Q_p\,H_0(1 + x)}{\eta_p\eta_m} \end{aligned}
解答と解説を見る

損失水頭は 300×0.02=6 [m]300 \times 0.02 = 6\ \mathrm{[m]} です。

(1) 有効落差は 300−6=294 [m]300 - 6 = 294\ \mathrm{[m]} なので、

Pg=9.8×80×294×0.88×0.97≈1.97×105 [kW]\begin{aligned} P_g &= 9.8 \times 80 \times 294 \times 0.88 \times 0.97 \\ &\approx 1.97 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(2) 全揚程は 300+6=306 [m]300 + 6 = 306\ \mathrm{[m]} なので、

Pp=9.8×80×3060.88×0.97≈2.81×105 [kW]P_p = \frac{9.8 \times 80 \times 306}{0.88 \times 0.97} \approx 2.81 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]}

(3) 水量が同じなので、この比は総合効率と同じ値です。

PgPp≈0.700=294306×(0.88×0.97)2\frac{P_g}{P_p} \approx 0.700 = \frac{294}{306} \times (0.88 \times 0.97)^2

発電出力は約 197 MW197\ \mathrm{MW}、揚水入力は約 281 MW281\ \mathrm{MW} で、比は約 70 [%]70\ \mathrm{[\%]} です。

揚水量と発電に使う水量が違うとき

発電で使った水を、後でちょうどくみ戻す運転では、水の量が収支します。発電の水量を QgQ_g、時間を TgT_g、揚水の水量を QpQ_p、時間を TpT_p とすると、

QgTg=QpTp⇒Tp=QgTgQpQ_g T_g = Q_p T_p \quad\Rightarrow\quad T_p = \frac{Q_g T_g}{Q_p}

これで揚水の所要時間が決まります。そのうえで、発電電力量と揚水電力量の比が、変換効率(総合効率)です。

η=PgTgPpTp\eta = \frac{P_g T_g}{P_p T_p}
流量 [m3/s] 60 45 0 発電 60 × 6 h 揚水 45 × 8 h 6 時間 8 時間 発電で使った水の量 = 揚水でくみ上げる水の量
図9 発電と揚水の水量収支。流量が違っても、面積(水の量)が等しくなる時間だけくみ上げる
解答と解説を見る

損失水頭は 350×0.025=8.75 [m]350 \times 0.025 = 8.75\ \mathrm{[m]} です。有効落差は 341.25 [m]341.25\ \mathrm{[m]}、全揚程は 358.75 [m]358.75\ \mathrm{[m]} です。

(1) Pg=9.8×60×341.25×0.88≈1.77×105 [kW]P_g = 9.8 \times 60 \times 341.25 \times 0.88 \approx 1.77 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]}

(2) Pp=9.8×45×358.750.84≈1.88×105 [kW]P_p = \dfrac{9.8 \times 45 \times 358.75}{0.84} \approx 1.88 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]}

(3) Tp=60×645=8 [h]T_p = \dfrac{60 \times 6}{45} = 8\ \mathrm{[h]}

(4) 発電電力量は 1.766×105×6≈1.06×106 [kW⋅h]1.766 \times 10^{5} \times 6 \approx 1.06 \times 10^{6}\ \mathrm{[kW \cdot h]}、揚水電力量は 1.883×105×8≈1.51×106 [kW⋅h]1.883 \times 10^{5} \times 8 \approx 1.51 \times 10^{6}\ \mathrm{[kW \cdot h]} なので、

η=1.059×1061.507×106≈0.703\eta = \frac{1.059 \times 10^{6}}{1.507 \times 10^{6}} \approx 0.703

約 70.3 [%]70.3\ \mathrm{[\%]} です。水量収支が成り立つときは、水量に関係なく η=341.25358.75×0.88×0.84≈0.703\eta = \dfrac{341.25}{358.75} \times 0.88 \times 0.84 \approx 0.703 と求まるので、検算に使えます。

純揚水式と混合揚水式

揚水式の発電所は、上池に自然の川の水が流れ込むかどうかで 2 つに分かれます。

  • 純揚水式: 上池に自然の流入がほとんどなく、揚水でくみ上げた水だけで発電する
  • 混合揚水式: 上池に川の水も流れ込み、揚水した水と自然の流入水の両方で発電する
純揚水式 上池 下池 発電 揚水 自然の流入なし。水は池の間を往復するだけ 混合揚水式 河川からの自然流入 上池 下池 発電 揚水
図10 純揚水式と混合揚水式。違いは上池に自然の流入があるかどうか
項目純揚水式混合揚水式
上池への自然流入なしあり
発電に使う水揚水した水だけ揚水した水 + 自然流入水
発電電力量揚水に使った電力量より少ない(総合効率 < 1)自然流入の分だけ、揚水に使った電力量を超えることがある

可変速揚水とは

ふつうの揚水発電所(定速機)は、発電電動機が同期機で、系統の周波数に同期した一定の速度で回ります。このため、揚水運転のときは入力がほぼ一定で、増やしたり減らしたりできません。

可変速揚水は、発電電動機の回転子に低周波の交流を加える交流励磁(二次励磁)方式を使い、励磁する周波数を変えて回転速度を変えられるようにしたものです。回転速度を変えると、ポンプとして受ける電力(揚水入力)も変わるので、揚水運転中でも入力を調整できます。

定速機の揚水運転 入力 入力は一定。増減できない 時間 可変速機の揚水運転 入力 入力を増減して調整できる 時間
図11 揚水運転中の入力。可変速機は、需給に合わせて入力を増減できる

可変速揚水の特長は、次の 3 つです。

特長内容
揚水運転中の入力調整夜間の揚水中にも、系統の周波数の変動に合わせて入力を増減できる(周波数調整)
効率の改善落差や出力が変わっても、回転速度を合わせて効率のよい運転ができる
系統の安定化有効電力を素早く制御でき、系統の変動を抑えやすい

揚水発電の運用 ピークと調整力

揚水発電の役割は、電気を使う時間帯と、発電の得意な時間帯をずらすことです。夜間は需要が少ないので、火力や原子力のように出力を急に変えにくい発電所の余った電力でくみ上げます。昼間や夕方の需要が多い時間帯には、上池の水を落として発電し、ピークをまかないます。

需要 揚水 発電 この高さに需要をならす 0時 12時 24時 揚水運転(谷間) 発電運転(ピーク)
図12 1 日の需要の概念図。谷間に揚水し、ピークに発電して、需要をならす

揚水発電には、もう 1 つ大きな強みがあります。水車は、停止の状態から短時間で出力を出せるので、需要の急な変化や、ほかの発電所の事故にもすばやく応えられます。この調整力によって、周波数の維持や予備力としても使われます。

解答と解説を見る

正しいのは (ア) と (ウ) です。

  • (イ) は誤り。上池に自然の流入があるのは混合揚水式です。純揚水式は流入がありません。
  • (エ) は誤り。ポンプ、電動機、水車、発電機、管路の損失があるので、総合効率は 100 % より小さくなります。

よくある質問

揚水発電は、電気をつくる発電所ですか。

発電はしますが、新しくエネルギーを生み出してはいません。揚水に使った電力を水の位置エネルギーとして一度ためて、後で取り出すだけで、総合効率が 1 より小さいので、電力量では損をします。それでも役に立つのは、使う時間をずらせて、需要のピークや周波数の調整に応えられるからです。

揚水入力の式で、なぜ効率を割るのですか。

水を持ち上げるのに必要な動力 9.8QH9.8QH は決まっていて、そのうち電動機やポンプで失われる分があるからです。損失の分だけ多くの電力を入れないと、必要な動力が水に伝わらないので、必要な動力を効率で割ります。

定速機と可変速機の違いは何ですか。

定速機は系統の周波数に同期した一定の速度で回り、揚水運転の入力を調整できません。可変速機は交流励磁で回転速度を変えられるので、揚水運転中でも入力を増減できます。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

揚水発電は、どんなしくみで電気をためますか?

余った電力で下池の水を上池へくみ上げ、水の位置エネルギーとしてためる。

揚水の機械の方式は何種類あり、主流はどれですか?

別置式・タンデム式・ポンプ水車式の 3 つ。ポンプ水車式(1 台のポンプ水車と発電電動機で回転の向きを逆にして切り替える)が主流。

揚水入力の式は何ですか?

P=9.8QH/(ηpηm)P = 9.8QH/(\eta_p \eta_m)。H は実揚程に損失水頭を足した全揚程。

揚水量と発電の水量が違うとき、揚水時間と変換効率はどう求めますか?

QgTg=QpTpQ_g T_g = Q_p T_p から TpT_p を出し、η=PgTg/(PpTp)\eta = P_g T_g/(P_p T_p)。損失水頭は揚水で足し、発電で引く(総落差の % なら H0(1±x)H_0(1 \pm x))。

純揚水式と混合揚水式は何が違いますか?

上池に自然の流入がないのが純揚水式、あるのが混合揚水式。

可変速揚水の長所は何ですか?

回転速度を変えられるので、揚水運転中も入力を調整でき、周波数調整に使える。

まとめ

  • 揚水発電は、上池と下池の間で水を往復させ、電気を水の位置エネルギーとしてためる
  • 機械はポンプ水車と発電電動機。回転の向きを逆にして発電と揚水を切り替える
  • 機械の方式は別置式・タンデム式・ポンプ水車式。国内の主流はポンプ水車式
  • 揚水入力は P=9.8QH/(ηpηm)P = 9.8QH/(\eta_p \eta_m)。損失水頭は揚水で足し、発電で引く(総落差の % で与えられたら H0(1±x)H_0(1 \pm x))
  • 揚水量と発電量が違うときは、水量の収支 QgTg=QpTpQ_g T_g = Q_p T_p で揚水時間を出し、η=PgTg/(PpTp)\eta = P_g T_g/(P_p T_p)
  • 総合効率は H0−hH0+hηtηgηpηm\frac{H_0 - h}{H_0 + h}\eta_t\eta_g\eta_p\eta_m で、必ず 1 より小さい
  • 純揚水式は自然の流入なし、混合揚水式は流入あり。可変速機は揚水運転中も入力を調整できる

水力発電の単元はこれで一周しました。次は、過去問の型で練習します。次に読む記事は 水力発電の過去問演習 です。シリーズ全体の流れを読み返したいときは、最初の 水力発電のしくみ に戻ると、各設備がどこの話だったかがつながって見えます。天候で出力が変わる太陽光発電や風力発電も、あわせて読むと電源の役割の違いが見えてきます。

図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で通して読む図解でわかる 電験三種 電力 / 第1巻水力発電水の力と出力の式から水車・調速機・揚水発電までこの記事と同じ図解で、例題と練習問題まで1冊にまとめた Kindle 本です。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

読んだら、すぐ解いて覚える

「水力発電」の問題を
アプリで解いてみよう

読んだ直後に問題で思い出すと、記憶に残りやすくなります。電験三種の問題集アプリ「デンケンラボ」なら、電力の問題を図解つきの解説で確かめられます。

アプリでできることを見る
デンケンラボの問題画面
動画でも見て覚えるYouTube のデンケンラボで、電験三種の解説動画を配信しています

この記事をシェアする

デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

編集方針アプリについて見る