ダイオードとは|半導体の n形・p形と pn 接合の電圧電流特性を図解
電験三種のダイオードを図解で整理します。半導体の性質、n形とp形、pn接合と空乏層、順方向と逆方向、電圧電流特性、ダイオード回路の解き方、整流とツェナーダイオードまで、例題つきで確認できます。

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ここまでのオームの法則、キルヒホッフの法則、テブナンの定理は、抵抗と電源でできた直流回路の話でした。ここから先は電子回路です。電子回路の部品はどれも半導体でできていて、その入口にあたるのがダイオードです。
ダイオードは、電流を一方向にだけ流す部品です。中身は p形と n形の半導体を貼り合わせた pn 接合ひとつだけで、順方向なら流れ、逆方向ならほとんど流れません。この記事では、半導体の性質、n形とp形、pn 接合のしくみ、電圧電流特性、回路の解き方、整流とツェナーダイオードまでを順に確認します。
- ダイオードとは
- 電流をアノードからカソードへ、一方向にだけ流す部品
- 半導体の基礎
- n形は自由電子、p形は正孔が多数キャリア
- 貼り合わせた面に、キャリアのいない空乏層ができる
- 順方向と逆方向
- 順方向は流れ、逆方向はほとんど流れない
- シリコンの順方向電圧は約 0.6〜0.7 V
- 回路の解き方
- 順方向なら電圧 V_F の電池、逆方向なら開放に置き換える
- 使い道
- 整流、ツェナーダイオードの定電圧、LED の発光
ダイオードとは
ダイオードは、電流を一方向にだけ流し、逆向きにはほとんど流さない部品です。水道の逆止弁のように、流れる向きが決まっています。2本の端子のうち、電流が入る側をアノード(A)、出る側をカソード(K)といい、電流はアノードからカソードへ流れます。

- 本体 電流を一方向に流す
- 帯 カソード側の印
- はんだ 基板にとめた部分
- 基板 部品をのせる板
図記号は、三角形と棒の組み合わせです。三角形の向きが電流の流れる向きで、三角形の底の側がアノード、棒の側がカソードです。実物のダイオードでは、カソード側に帯が印刷されています。
ダイオードの中身は、p形半導体とn形半導体を貼り合わせた pn 接合です。アノードがp形側、カソードがn形側につながっています。次の節から、そのしくみを順に見ていきます。
半導体とは
物質は、電気の通しやすさで3種類に分けられます。半導体は、導体と絶縁体の中間にあたる物質です。
| 種類 | 電気の通しやすさ | 材料の例 |
|---|---|---|
| 導体 | 通しやすい | 銅・アルミニウム |
| 半導体 | 導体と絶縁体の中間 | シリコン・ゲルマニウム |
| 絶縁体 | ほとんど通さない | ガラス・ゴム |
半導体の材料で最もよく使われるのは、シリコン(Si、ケイ素)です。シリコンの原子は、いちばん外側の電子(価電子)が4個で、これを4価といいます。隣の原子と電子を1個ずつ出し合って共有結合をつくり、結晶になっています。不純物を含まない純粋な結晶は、電子がすべて結合に使われているので、電流をほとんど通しません。
ところが、熱や光を受けると、一部の結合が切れて、電子が自由に動けるようになります。この電子を自由電子といいます。電子が抜けたあとには穴が残り、これを正孔(ホール)といいます。正孔の隣の電子が移ってきて穴を埋めると、穴は反対向きに動きます。そのため、正孔は正の電荷をもつ粒子のように動くものとして扱います。電気を運ぶ自由電子と正孔をまとめて、キャリアといいます。

- ウエハー シリコン結晶の円板
- 切れ目 1個ずつのチップになる
- 反射 虹色に光る表面
- 台 ウエハーをのせる台
温度が上がると結合が切れやすくなり、キャリアが増えて電流が流れやすくなります。つまり、半導体の抵抗は温度が上がると小さくなります。金属は温度が上がると抵抗が大きくなるので、逆の性質です。
n形半導体とp形半導体
純粋なシリコンはキャリアが少ないので、わずかに別の原子(不純物)を混ぜて、電気の通しやすさを調整します。混ぜる原子の価数によって、2種類の半導体ができます。
n形半導体は、5価の原子(リン P、ヒ素 As など)を混ぜたものです。5価の原子は価電子を5個もつので、シリコンと結合すると電子が1個余り、その電子が自由電子になります。電子を提供するので、この不純物をドナーといいます。
p形半導体は、3価の原子(ホウ素 B、インジウム In など)を混ぜたものです。3価の原子は価電子が3個なので、結合に電子が1個足りず、正孔ができます。電子を受け取るので、この不純物をアクセプタといいます。
| 項目 | n形 | p形 |
|---|---|---|
| 加える原子 | 5価(P、As) | 3価(B、In) |
| 不純物の呼び名 | ドナー | アクセプタ |
| 多数キャリア | 自由電子 | 正孔 |
| 少数キャリア | 正孔 | 自由電子 |
数の多いほうのキャリアを多数キャリア、少ないほうを少数キャリアといいます。n形の「n」は負(negative)、p形の「p」は正(positive)のキャリアが主役であることを表しています。
pn接合と空乏層
p形とn形を貼り合わせた接合を pn 接合といいます。貼り合わせた直後の境界では、キャリアの濃度に大きな差があります。そのため、p形の正孔はn形へ、n形の自由電子はp形へ、濃度の高いほうから低いほうへ広がっていきます。これを拡散といいます。
境界を越えたキャリアは、反対の種類のキャリアと出会って結合し、消えます。その結果、境界の付近からキャリアがいなくなります。この、キャリアがほとんどいない領域を空乏層といいます。
空乏層に残るのは、結晶に固定されて動けない不純物のイオンです。p形側にはアクセプタの負イオン、n形側にはドナーの正イオンが残ります。この電荷がつくる電界が内部電界で、n形側からp形側へ向かい、キャリアの拡散を押し戻します。拡散が進んで内部電界が強くなると、やがて拡散と釣り合って、空乏層の広がりが止まります。このとき、n形側の電位がp形側より高い状態になっています。
この電位差を超えるだけの電圧を外からかけないと、キャリアは境界を越えられません。シリコンのダイオードが、約 0.6〜0.7 V を超えるまで電流を流さないのは、このためです。
順方向と逆方向
pn 接合に外から電圧をかけると、空乏層の幅が変わります。
順方向電圧は、p形側(アノード)に電池の正、n形側(カソード)に負をつなぐ向きです。外からの電圧が内部電界を打ち消す向きに働くので、空乏層がせまくなります。電圧が十分に大きくなると、正孔はn形へ、自由電子はp形へ境界を越えて流れ込み続け、電流が流れます。
逆方向電圧は、p形側に電池の負、n形側に正をつなぐ向きです。外からの電圧が内部電界を強める向きに働くので、空乏層が広がります。多数キャリアは境界から遠ざけられて、電流はほとんど流れません。実際には、熱で生じた少数キャリアによる、ごく小さな逆方向電流が流れます。
覚え方は、「アノード(p形)の電位が高ければ流れる」です。電池の正をつないだ側がp形なら順方向、n形なら逆方向です。
ダイオードの電圧電流特性
ダイオードにかける電圧 と、流れる電流 の関係をグラフにしたものが、電圧電流特性です。
順方向では、電圧を 0 から上げていくと、最初はほとんど電流が流れません。シリコンでは約 0.6〜0.7 V を超えたあたりから、電流が急に増え始めます。この電圧を順方向電圧()といいます。
逆方向では、ごくわずかな電流しか流れません。ところが、逆方向の電圧をさらに大きくしていくと、ある電圧(降伏電圧)で突然大きな電流が流れます。この現象を降伏(ブレークダウン)といいます。ふつうのダイオードは、降伏する電圧をかけると壊れるおそれがあります。
順方向の特性は、理想的な場合、次の式で表されます。
は逆方向の飽和電流、 は温度で決まる定数(室温で約 26 mV)です。式の細かい値よりも、電流が電圧に対して指数関数的に増えるという形が大切です。この式で計算すると、電圧が約 0.06 V 上がるたびに電流は10倍になります。たとえば電流が 1 mA から 100 mA へ100倍になっても、電圧の増加は 0.12 V ほどです。実際の素子は、これよりもう少しゆるやかに増えます。
電流が大きく変わっても電圧はほとんど変わらないので、順方向に電流が流れているダイオードの電圧は、ほぼ一定の とみなせます。次の節の解き方は、この性質を使います。
ダイオード回路の解き方
ダイオードを含む回路は、ダイオードを次のように置き換えて解きます。
| ダイオードの状態 | 置き換え | 電流 |
|---|---|---|
| 順方向 | 電圧 の電池 | |
| 逆方向 | 開放(切れた線) |
手順は3つです。まず、電池の正から出た電流が、ダイオードのアノードからカソードの向きに通るかを確かめます。次に、順方向なら の電池、逆方向なら開放に置き換えます。最後に、置き換えた回路をオームの法則で解きます。順方向のときの電流は、抵抗にかかる電圧が なので、次の式で求まります。
問題によっては、「理想ダイオード」と書かれています。理想ダイオードは、順方向の電圧が 0(導線と同じ)で、逆方向の電流も 0(切れた線と同じ)のダイオードです。この場合は として計算します。
整流(交流を直流に)
ダイオードの代表的な使い道が整流、つまり交流を一方向の電流に変えることです。交流電源、ダイオード、抵抗を直列につなぐと、電源の電圧が正の半周期はダイオードが順方向になって電流が流れ、負の半周期は逆方向になって電流が流れません。抵抗には、正の半周期だけの電圧がかかります。これが半波整流です。
ダイオードを4個組み合わせると、負の半周期も同じ向きに折り返して使えます。これを全波整流といい、4個を1つの部品にまとめたものがブリッジダイオードです。出力にはコンデンサをつないで、電圧の波打ちをならします。身近な電源装置の中にも、これらの部品が入っています。出力電圧の平均値の求め方は、整流回路の記事で学びます。

- ブリッジダイオード 全波整流
- 足 基板にはんだ付けする
- コンデンサ 波打ちをならす
- 基板 部品をのせる板
ツェナーダイオード
ふつうのダイオードは、逆方向の降伏で壊れるおそれがあります。ツェナーダイオードは、この降伏を安全に使えるようにしたダイオードです。降伏領域では、電流が大きく変わっても電圧がほぼ一定になります。この電圧をツェナー電圧()といいます。
この性質を使うと、入力電圧や負荷が変わっても出力電圧が一定の定電圧回路がつくれます。ツェナーダイオードは、降伏を使うので、逆向き(カソードを電位の高い側)につなぎます。
電源 から直列抵抗 を通った電流 は、ツェナーダイオードへ流れる と、負荷へ流れる に分かれます。負荷にかかる電圧は で一定なので、次の関係が成り立ちます。
最後の式は、キルヒホッフの法則の電流則()です。負荷電流 が変わると、その分だけ が逆に変わり、 と負荷の電圧は変わりません。負荷が外れたときは になるので、ツェナーダイオードが消費する電力 が許容損失を超えないように選びます。
そのほかのダイオード
pn 接合の性質を生かした、特別な用途のダイオードもあります。
| 種類 | はたらき | 使い方 |
|---|---|---|
| 発光ダイオード(LED) | 順方向に電流を流すと光る | 電流を抑える抵抗と直列に |
| ホトダイオード | 光を受けると電流が流れる | 逆方向電圧をかけて使うことが多い |
| 可変容量ダイオード | 逆方向電圧で静電容量が変わる | 同調回路などに |
| ショットキーバリアダイオード | 順方向電圧が低く、高速 | 電源回路などに |
LED(Light Emitting Diode)は、電流が流れたときに光を出すダイオードです。順方向電圧は光の色によって異なり、ふつうのシリコンダイオードより大きくなります。LED に流す電流は、直列につないだ抵抗で決めます。この抵抗の計算も、前の節と同じ です。

- LED 順方向の電流で光る
- 抵抗 LED の電流を決める
- 電池ボックス 電源
- ブレッドボード 部品をつなぐ板
ダイオードの例題
4つの例題で確認します。例題1は半導体の基本の知識、例題2は直列回路、例題3はツェナーダイオードの定電圧回路、例題4は並列の枝にダイオードがある回路です。
解答と解説を見る
正しいのは (1) です。
(1) 5価の原子を加えると電子が1個余り、自由電子が多数キャリアになります。これがn形です。
(2) p形の多数キャリアは正孔です。自由電子は少数キャリアです。
(3) n形も全体としては電気的に中性です。不純物の原子には、余った電子と同じ量の正電荷があります。
(4) 半導体は、温度が上がるとキャリアが増えるので、抵抗は小さくなります。
解答と解説を見る
手順1 電池の正から出た電流は、ダイオードのアノードからカソードの向きに通るので、順方向です。ダイオードを の電池に置き換えます。
手順2 抵抗にかかる電圧は、 です。
つまり です。
手順3 電池を逆向きにすると、ダイオードは逆方向になります。開放とみなせるので、 です。抵抗には電圧がかからないので、電池の電圧 がそのままダイオードにかかります。
検算として、 の電圧は です。これに を足すと で、 に一致します。
解答と解説を見る
(1) 負荷とツェナーダイオードの電圧は で一定です。 にかかる電圧は なので、
負荷電流は、
電流則 から、
(2) を外すと なので、 です。消費電力は、
負荷があるとき()より大きくなります。ツェナーダイオードは、負荷が外れた場合も考えて選びます。
例題4は、ダイオードが2つあり、片方が逆向きの回路です。2つの枝が並列につながっているので、各枝には電源の電圧 がかかります。考え方は並列回路と同じで、ダイオードの向きを枝ごとに確かめます。
解答と解説を見る
手順1 D1 は、電池の正から出た電流がアノードからカソードの向きに通るので、順方向です。理想ダイオードなので導線とみなします。D2 は向きが逆で、逆方向です。開放とみなします。
手順2 D1 の枝は、 が にそのままかかります。
D2 の枝は開放なので、 です。
手順3 には電流が流れず、電圧降下も 0 です。そのため、D2 の両端には がそのままかかり、D2 の電圧は (逆電圧)です。電源の電流は です。
もし D2 が D1 と同じ向きなら、 が流れ、電源の電流は になります。ダイオードの向きで、答えが変わります。
ダイオードで間違えやすい点
| 間違い | 正しくは | 理由 |
|---|---|---|
| n形は負に帯電 | 全体は中性 | 不純物の電荷が打ち消し合う |
| p形の多数キャリアは電子 | 正孔 | 3価の不純物で電子が不足 |
| 逆方向で電流は完全に 0 | ごくわずか流れる | 少数キャリアの電流がある |
| 温度が上がると抵抗が増える | 半導体では減る | キャリアが増える |
| ツェナーを順向きにつなぐ | 逆向きにつなぐ | 降伏電圧を使うため |
よくある質問
順方向電圧は、なぜ約 0.7 V なの?
pn 接合には、内部電界によって、n形側が高電位になる電位差ができています。外からの順方向電圧がこの電位差を打ち消す大きさに近づくと、キャリアが境界を越えて、電流が急に流れ出します。シリコンでは、これが約 0.6〜0.7 V にあたります。素子や電流によって少し変わるので、計算問題では問題文の値を使います。
理想ダイオードとは何?
順方向では電圧降下が 0 で、逆方向では電流が 0 になる、理想化したダイオードです。順方向は導線、逆方向は切れた線として扱えます。計算を簡単にするため、問題でよく使われます。
正孔は、本当に動いているの?
実際に動いているのは電子です。共有結合の電子が抜けた穴に、隣の電子が次々に移っていくと、穴が反対向きに動いて見えます。この穴を、正の電荷をもつ粒子とみなしたものが正孔です。
ツェナーダイオードは、ふつうのダイオードとどう違う?
つくり方が違い、降伏する電圧が決まった値になるようにしてあります。ふつうのダイオードは、逆方向では電流を流さないで使いますが、ツェナーダイオードは、逆方向の降伏領域で使います。電流が変わっても電圧がほぼ一定なので、定電圧回路に向きます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
ダイオードの電流が流れる向きと、アノード・カソードの関係は?
電流はアノードからカソードへ流れます。実物では、帯のある側がカソードです。
n形とp形の半導体で、多数キャリアは何ですか。
n形は自由電子、p形は正孔です。どちらも、全体としては電気的に中性です。
pn 接合に順方向電圧をかけると、空乏層はどうなりますか。
せまくなって、電流が流れます。逆方向電圧では広がり、電流はほとんど流れません。
ダイオードを含む回路は、どう置き換えて解きますか。
順方向なら電圧 の電池に置き換え、 です。逆方向なら開放にして です。
ツェナーダイオードは、どんな向きにつないで、何に使いますか。
逆向きにつなぎます。降伏領域で電圧がほぼ一定の になるので、定電圧回路に使います。
半導体の抵抗は、温度が上がるとどうなりますか。
キャリアが増えるので、小さくなります。金属とは逆です。
まとめ
- ダイオードは、電流をアノードからカソードへ一方向にだけ流す部品。中身は p形とn形を貼り合わせた pn 接合
- n形は5価の不純物で自由電子が、p形は3価の不純物で正孔が多数キャリアになる。どちらも全体は電気的に中性。半導体は温度が上がると抵抗が小さくなる
- 順方向電圧で空乏層がせまくなって電流が流れ、逆方向電圧では空乏層が広がって電流はほとんど流れない。シリコンの順方向電圧は約 0.6〜0.7 V
- 回路は、順方向なら の電池(理想なら導線)、逆方向なら開放に置き換えて解く。ツェナーダイオードは、逆向きにつないで降伏領域の一定電圧 を使う
pn 接合を2つ重ねると、小さな信号で大きな電流を操る部品になります。次の記事のトランジスタで確認します。








