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理論電子理論 / 電子の運動17分で読めます

電子の運動とローレンツ力|加速電圧と速度、円運動の半径を図解

電験三種の理論で扱う電子の運動を図解で整理します。電界での加速と偏向、ローレンツ力による円運動の半径と周期、速度選別、ホール効果までを、例題4問と図・写真で順に確かめ、計算の手順を身につけられます。

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暗い背景の中で、内部の金属の部品がオレンジ色に光るガラス管の真空管の写真
この記事の目次
  1. 電子の運動とは
  2. 電界の中の電子(加速と偏向)
  3. 電界の力は、電界と逆向き
  4. 電圧で加速された電子の速さ
  5. 平行板の間での偏向
  6. 磁界の中の電子(ローレンツ力と円運動)
  7. ローレンツ力の大きさと向き
  8. 磁界に垂直に入ると円運動
  9. 電界と磁界がそろうとき(速度選別とホール効果)
  10. 速度選別
  11. ホール効果
  12. 電子を取り出す方法(4つの放出)
  13. よくある質問
  14. 電子にはたらく電界の力は、電界と同じ向き?
  15. 円運動の周期は、電子の速さで変わる?
  16. ローレンツ力は、電子に仕事をする?
  17. ホール効果で、n 形と p 形はどう見分ける?
  18. まとめ
図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙理論を図解で読む図解でわかる 電験三種 理論 1
直列回路
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前の記事で学んだ電界と電位と磁界は、電荷や電流にはたらく力を調べる道具でした。電子は、電界で押され、磁界で曲げられます。この2つの力を運動方程式に入れると、真空中の電子の運動はほとんど決まります。

電験三種の電子の運動は、「電界で加速する」「磁界で円を描く」「電界と磁界がつり合う」の3つの場面に分けると整理できます。この記事では、電子の電荷と質量、電界中の加速と偏向、ローレンツ力と円運動、速度選別、ホール効果までを図で確かめ、例題4問で計算の手順を身につけます。

電子の運動の全体像
  • 電子の運動とは
    • 電子は電荷 −e、質量 m の粒子
    • 力のもとは、電界の力 eE と磁界の力 evB の2つ
  • 電界の中の電子
    • 電界と逆向きの力 eE を受ける
    • 加速は eV = mv²/2 なので、v = √(2eV/m)
  • 磁界の中の電子
    • ローレンツ力 evB は速度に垂直で、仕事をしない
    • 円運動の半径は r = mv/(eB)、周期は T = 2πm/(eB)
  • 電界と磁界がそろうとき
    • eE = evB のとき直進するので、v = E/B
    • ホール電圧は V_H = IB/(ned)
  • 電子を取り出す方法
    • 熱電子放出・光電効果・二次電子放出・電界放出

電子の運動とは

電子は、負の電気量 −e-e と質量 mm をもつ粒子です。電気量の大きさ ee は電気素量といい、すべての電子で同じです。この記事では、次の値を使います。

量記号値
電気素量ee1.602×10−19 [C]1.602 \times 10^{-19}\,\mathrm{[C]}
電子の質量mm9.109×10−31 [kg]9.109 \times 10^{-31}\,\mathrm{[kg]}
電子の電荷−e-e−1.602×10−19 [C]-1.602 \times 10^{-19}\,\mathrm{[C]}
比電荷e/me/m1.759×1011 [C/kg]1.759 \times 10^{11}\,\mathrm{[C/kg]}

比電荷は、電荷を質量で割った値です。問題では m=9.11×10−31 [kg]m = 9.11 \times 10^{-31}\,\mathrm{[kg]} のように丸めた値が与えられることがあるので、問題文の値を使ってください。

電子にはたらく力は、電界によるものと、磁界によるものの2つです。電子の運動は、この力を運動方程式 ma=Fma = F に入れて決まります。電子の質量は小さく、重力は電気の力に比べてはるかに小さいので、重力は無視します。

場力の大きさ向き
電界 EEeEeEEE と逆向き
磁界 BBevBevBvv、BB に垂直

電荷にはたらく電気の力は、クーロンの法則から導かれます。電界 EE の中の電荷 qq には F=qEF = qE の力がはたらくので、電子では q=−eq = -e を入れたものが、表の eEeE です。

電界の中の電子(加速と偏向)

電界の力は、電界と逆向き

電界 E [V/m]E\,\mathrm{[V/m]} の中の電子は、大きさ eEeE の力を受けます。電子は負の電荷なので、力の向きは電界と逆向きです。正の電荷なら、電界と同じ向きの力を受けます。

+ − E E E F 正電荷 F 電子
図1 電界 E の中で、正電荷の力は E と同じ向き、電子の力は E と逆向き

図1のように、電気力線は正の極板から負の極板へ向かいます。電子はその逆の、正の極板の側へ引かれます。運動方程式 ma=eEma = eE から、加速度は a=eE/ma = eE/m です。電界が一様なら、aa は一定で、電子は等加速度運動をします。

電圧で加速された電子の速さ

静止していた電子が、電位差 V [V]V\,\mathrm{[V]} の2点間を進むと、電界が電子にした仕事 eVeV が、そのまま運動エネルギーになります。

12mv2=eVv=2eVm\begin{aligned} \frac{1}{2}mv^2 &= eV \\ v &= \sqrt{\frac{2eV}{m}} \end{aligned}
陰極 陽極 V − + 静止 v
図2 電子は電位差 V で加速され、陽極の穴から速さ v で出ていく

図2の電子は、陰極から陽極へ向かって速さを増し、陽極の穴から vv で出ていきます。eVeV は、電子が電位差 VV で加速されて得るエネルギーです。電子が 1 V の電位差で得るエネルギーを 1 電子ボルト(1 eV=1.602×10−19 [J]1\,\mathrm{eV} = 1.602 \times 10^{-19}\,\mathrm{[J]})といいます。くわしくは電界と電位で確かめられます。

速さは電圧の平方根に比例します。電圧を4倍にすると、速さは2倍です。数値で覚えるなら、v≈5.93×105V [m/s]v \approx 5.93 \times 10^{5} \sqrt{V}\,\mathrm{[m/s]} です。

解答と解説を見る

運動エネルギーは、電界がした仕事 eVeV に等しくなります。

K=eV=1.602×10−19×500=8.01×10−17 [J]\begin{aligned} K &= eV \\ &= 1.602 \times 10^{-19} \times 500 \\ &= 8.01 \times 10^{-17}\,\mathrm{[J]} \end{aligned}

500 V500\,\mathrm{V} の電位差なので、K=500 [eV]K = 500\,\mathrm{[eV]} です。

速さは K=12mv2K = \dfrac{1}{2}mv^2 から求めます。

v=2Km=2×8.01×10−179.109×10−31=1.759×1014≈1.33×107 [m/s]\begin{aligned} v &= \sqrt{\frac{2K}{m}} \\ &= \sqrt{\frac{2 \times 8.01 \times 10^{-17}}{9.109 \times 10^{-31}}} \\ &= \sqrt{1.759 \times 10^{14}} \\ &\approx 1.33 \times 10^{7}\,\mathrm{[m/s]} \end{aligned}

光速(約 3.0×108 [m/s]3.0 \times 10^{8}\,\mathrm{[m/s]})の約 4% で、光速よりずっと遅い範囲です。

検算します。v≈5.93×105×500v \approx 5.93 \times 10^{5} \times \sqrt{500} に 500≈22.4\sqrt{500} \approx 22.4 を入れると、1.33×107 [m/s]1.33 \times 10^{7}\,\mathrm{[m/s]} で一致します。

平行板の間での偏向

板と平行に入った電子は、平行板の間でどう曲がるでしょうか。板の間の電界は板に垂直で、電子は板に垂直な向きにだけ加速されます。板に平行な向きには力がはたらかないので、速さ v0v_0 の等速運動のままです。

+ − v 蛍光面 y l E
図3 平行板の間で電子は放物線を描いて曲がり、板を出たら直進する

図3のように、電子は板の間で放物線を描き、板を出たあとは電界がないので直進します。板の長さを l [m]l\,\mathrm{[m]} とすると、板の間を通る時間は t=l/v0t = l/v_0 です。この間に板に垂直な向きへ進む距離が、偏向量 yy です。

y=12⋅eEm⋅(lv0)2=eEl22mv02\begin{aligned} y &= \frac{1}{2}\cdot\frac{eE}{m}\cdot\left(\frac{l}{v_0}\right)^2 \\ &= \frac{eEl^2}{2mv_0^2} \end{aligned}

入射の速さが、加速電圧 VaV_a で決まるとき、v02=2eVa/mv_0^2 = 2eV_a/m を入れると、ee と mm が消えます。

y=El24Vay = \frac{El^2}{4V_a}

偏向量は電界 EE に比例し、加速電圧 VaV_a に反比例します。板を出たあとの直進の向きは、板の中央から出たように延ばした直線の向きです。オシロスコープのブラウン管は、この電界による偏向(静電偏向)で電子ビームを動かして、波形を描きます。

解答と解説を見る

板の間の電界は、電圧を間隔で割った値です。

E=1000.020=5000 [V/m]\begin{aligned} E &= \frac{100}{0.020} \\ &= 5000\,\mathrm{[V/m]} \end{aligned}

偏向量の式 y=El2/(4Va)y = El^2/(4V_a) に入れます。

y=5000×0.05024×1000=3.125×10−3 [m]≈3.1 [mm]\begin{aligned} y &= \frac{5000 \times 0.050^2}{4 \times 1000} \\ &= 3.125 \times 10^{-3}\,\mathrm{[m]} \\ &\approx 3.1\,\mathrm{[mm]} \end{aligned}

中央から入射したので、板までの距離は d/2=10 [mm]d/2 = 10\,\mathrm{[mm]} です。3.1 mm3.1\,\mathrm{mm} は 10 mm10\,\mathrm{mm} より小さいので、板に当たらずに出られます。

検算します。入射の速さは v0≈1.88×107 [m/s]v_0 \approx 1.88 \times 10^{7}\,\mathrm{[m/s]}、通過時間は t=l/v0≈2.67×10−9 [s]t = l/v_0 \approx 2.67 \times 10^{-9}\,\mathrm{[s]}、加速度は a=eE/m≈8.79×1014 [m/s2]a = eE/m \approx 8.79 \times 10^{14}\,\mathrm{[m/s^2]} です。y=at2/2≈3.1×10−3 [m]y = at^2/2 \approx 3.1 \times 10^{-3}\,\mathrm{[m]} となり、一致します。

磁界の中の電子(ローレンツ力と円運動)

ローレンツ力の大きさと向き

磁界の中の導線に電流が流れると、電磁力 F=BIlF = BIl がはたらきました。電流は電荷の動きなので、動いている電荷1個にもはたらく力があります。これがローレンツ力です。磁束密度 B [T]B\,\mathrm{[T]} に垂直に、速さ v [m/s]v\,\mathrm{[m/s]} で動く電子が受ける力は、次の大きさです。

F=evBF = evB

磁界と速度のなす角が θ\theta のときは、F=evBsin⁡θF = evB\sin\theta です。磁界と同じ向きに動く電子は、力を受けません。

力の向きは、フレミングの左手の法則で決めます。ここで気をつけるのは、電流の向きです。電流の向きは、正の電荷が動く向きなので、電子の速度と逆向きです。

v F 電流 I
図4 磁界(奥向き)の中で上へ動く電子は、右向きのローレンツ力を受ける

図4では、磁界は紙面の奥向きです。上へ動く電子の電流は下向きなので、左手の法則から、電子は右向きの力を受けます。ローレンツ力は、速度と磁界の両方に垂直で、電子の速度の向きを変えるだけです。力の向きが速度に垂直なので、仕事をせず、電子の速さと運動エネルギーは変わりません。

磁界に垂直に入ると円運動

磁界に垂直に入った電子は、速さ一定のまま、力の向きだけが回り続けます。力は、いつも円の中心を向く向心力になるので、電子は等速円運動をします。

r v F
図5 磁界に垂直に入った電子は、半径 r の円運動をする

図5の円の半径 rr は、円運動の運動方程式から求めます。ローレンツ力 evBevB が、向心力 mv2/rmv^2/r にあたります。

mv2r=evBr=mveB\begin{aligned} \frac{mv^2}{r} &= evB \\ r &= \frac{mv}{eB} \end{aligned}

1周する時間(周期)は、円周を速さで割ります。

T=2πrv=2πmeBT = \frac{2\pi r}{v} = \frac{2\pi m}{eB}

半径 rr は速さ vv に比例しますが、周期 TT には vv が入りません。速い電子は大きな円を描きますが、1周にかかる時間は同じです。磁束密度 BB を大きくすると、rr も TT も小さくなります。

磁界に斜めに入ったときは、磁界に垂直な成分で円運動をし、磁界と平行な成分では力を受けずに等速で進みます。この2つが合わさって、電子は磁界のまわりをらせんを描いて進みます。

荷電粒子がらせんを描く現象は、自然界でも見られます。図6のオーロラは、太陽から届いた荷電粒子が地球の磁界に沿ってらせんを描きながら大気にぶつかって光る現象です。

雪をかぶった針葉樹の森の上に、緑色のオーロラが広がる夜空の写真
  1. オーロラ 緑色に光る帯
  2. 針葉樹 雪をかぶった木
  3. 雪原 地上の雪
図6 オーロラ。荷電粒子が地球の磁界に沿ってらせんを描き、大気にぶつかって光る(写真はイメージ)

円運動の式 r=mv/(eB)r = mv/(eB) は、身のまわりの装置でも使われています。図7のブラウン管(テレビ用)は、首のまわりのコイルがつくる磁界で電子ビームを曲げて、画面を走査します。電子顕微鏡は、磁界のレンズで電子ビームを絞ります。サイクロトロンは、周期 TT が速さによらないことを利用して、一定の周期の電圧でイオンを何度も加速する装置です。

木の机の上に置かれたブラウン管の写真。左に端子のピン、細い首に黒いコイル、右に広がったガラスの先の画面の面が写っている
  1. ピン 端子
  2. コイル 磁界をつくる
  3. ガラス 中は真空
  4. 画面 電子が当たる面
図7 ブラウン管。首のまわりのコイルがつくる磁界で、電子ビームを曲げる(写真はイメージ)
解答と解説を見る

1 mT=1.0×10−3 [T]1\,\mathrm{mT} = 1.0 \times 10^{-3}\,\mathrm{[T]} です。まず半径を求めます。

r=mveB=9.109×10−31×1.0×1071.602×10−19×1.0×10−3=5.69×10−2 [m]\begin{aligned} r &= \frac{mv}{eB} \\ &= \frac{9.109 \times 10^{-31} \times 1.0 \times 10^{7}}{1.602 \times 10^{-19} \times 1.0 \times 10^{-3}} \\ &= 5.69 \times 10^{-2}\,\mathrm{[m]} \end{aligned}

5.69×10−2 m=5.69 cm5.69 \times 10^{-2}\,\mathrm{m} = 5.69\,\mathrm{cm} です。

周期は、vv を使わずに求まります。

T=2πmeB=2π×9.109×10−311.602×10−19×1.0×10−3=3.57×10−8 [s]\begin{aligned} T &= \frac{2\pi m}{eB} \\ &= \frac{2\pi \times 9.109 \times 10^{-31}}{1.602 \times 10^{-19} \times 1.0 \times 10^{-3}} \\ &= 3.57 \times 10^{-8}\,\mathrm{[s]} \end{aligned}

1 ns=10−9 s1\,\mathrm{ns} = 10^{-9}\,\mathrm{s} なので、T≈35.7 [ns]T \approx 35.7\,\mathrm{[ns]} です。

検算します。T=2πr/v=2π×5.69×10−2/(1.0×107)≈3.57×10−8 [s]T = 2\pi r/v = 2\pi \times 5.69 \times 10^{-2} / (1.0 \times 10^{7}) \approx 3.57 \times 10^{-8}\,\mathrm{[s]} で一致します。速さを2倍にすると、rr は2倍の約 11.4 cm11.4\,\mathrm{cm} になりますが、TT は変わりません。

電界と磁界がそろうとき(速度選別とホール効果)

電界の力と磁界の力は、性質が違います。ここで表にまとめておきます。

項目電界の力磁界の力
大きさeEeEevBevB
仕事するしない
速さ変わる変わらない
軌道放物線円

電界と磁界が同時にはたらくとき、電子が受ける力は2つの力の和です。電界の力と磁界の力を合わせて、ローレンツ力ということもあります。この記事では、磁界の力をローレンツ力と呼んでいます。

速度選別

電界 EE と磁界 BB を、直交させて同じ場所にかけます。電界の力 eEeE と、磁界の力 evBevB が逆向きでつり合う速さの電子だけが、まっすぐ進みます。

+ − v eE evB E 速いと下へ 遅いと上へ 直進
図8 電界と磁界が直交する所では、v = E/B の電子だけが直進する

図8では、上の極板が正なので、電界は下向きです。右へ入る電子は、電界と逆の上向きに eEeE を受けます。磁界は紙面の奥向きなので、右へ動く電子は下向きに evBevB を受けます。2つがつり合う条件は、次のとおりです。

eE=evBv=EB\begin{aligned} eE &= evB \\ v &= \frac{E}{B} \end{aligned}

ee や mm が式に入っていないので、この速さは、粒子の電荷や質量によりません。たとえば E=2.0×104 [V/m]E = 2.0 \times 10^{4}\,\mathrm{[V/m]}、B=0.10 [T]B = 0.10\,\mathrm{[T]} なら、v=E/B=2.0×105 [m/s]v = E/B = 2.0 \times 10^{5}\,\mathrm{[m/s]} の粒子だけが直進します。これより速い電子は磁界の力が勝って下へ、遅い電子は電界の力が勝って上へ曲がるので、出口のスリットで速さをそろえられます。

ホール効果

半導体の板に電流 II を流し、板の面に垂直に磁界 BB を加えると、電流と磁界の両方に垂直な向きに電圧が生じます。これがホール効果で、生じる電圧をホール電圧 VHV_H といいます。

n形(電子) − + − + − + I VH d p形(正孔) + − + − + − I VH d ⊗ は磁界 B(奥向き)。奥行きが厚さ d
図9 ホール効果。磁界でキャリアが上の面へ寄り、上下の面の間にホール電圧 VH が生じる

図9のように、電流が右向き、磁界が奥向きのとき、キャリアはローレンツ力で上の面へ寄ります。n 形のキャリアは電子で、電流と逆の左向きに動くので、上へ曲げられて、上の面が負になります。p 形のキャリアは正孔で、電流と同じ右向きに動くので、同じく上へ曲げられて、上の面が正になります。向きが違うので、ホール電圧の符号から、n 形か p 形かを判別できます。

上下の面に寄った電荷は、板の中にホール電界 EHE_H をつくります。この電界がキャリアに及ぼす力が、ローレンツ力とつり合うところで、電荷の移動は止まります。キャリア密度を n [m−3]n\,\mathrm{[m^{-3}]}、磁界の向きの板の厚さを d [m]d\,\mathrm{[m]} とすると、ホール電圧は次の式になります。

VH=IBnedV_H = \frac{IB}{n e d}
半導体キャリア上の面
n 形電子負
p 形正孔正

ホール電圧は磁束密度 BB に比例します。この性質を使ったホール素子は、磁束密度を測る磁気センサーとして使われます。nn が大きいほど VHV_H が小さくなるので、金属より半導体のほうが、大きな電圧が得られます。電子の流れを制御する半導体の素子は、トランジスタ増幅回路で学びます。

解答と解説を見る

単位をそろえます。I=10 mA=1.0×10−2 [A]I = 10\,\mathrm{mA} = 1.0 \times 10^{-2}\,\mathrm{[A]}、d=1.0×10−3 [m]d = 1.0 \times 10^{-3}\,\mathrm{[m]} です。

VH=IBned=1.0×10−2×0.502.0×1021×1.602×10−19×1.0×10−3=5.0×10−30.3204≈1.56×10−2 [V]\begin{aligned} V_H &= \frac{IB}{ned} \\ &= \frac{1.0 \times 10^{-2} \times 0.50}{\begin{matrix}2.0 \times 10^{21} \times 1.602 \times 10^{-19}\\ \times 1.0 \times 10^{-3}\end{matrix}} \\ &= \frac{5.0 \times 10^{-3}}{0.3204} \\ &\approx 1.56 \times 10^{-2}\,\mathrm{[V]} \end{aligned}

1.56×10−2 V=15.6 mV1.56 \times 10^{-2}\,\mathrm{V} = 15.6\,\mathrm{mV} です。VH≈15.6 [mV]V_H \approx 15.6\,\mathrm{[mV]} と求まります。

電流を右向き、磁界を奥向きにすると、電子は左へ動いて上の面へ寄るので、上の面が負になります。

検算します。分母の nedn e d は 2.0×1021×1.602×10−19=320.42.0 \times 10^{21} \times 1.602 \times 10^{-19} = 320.4 に 1.0×10−31.0 \times 10^{-3} をかけた 0.32040.3204 です。分子が 5.0×10−35.0 \times 10^{-3} なので、VH=0.0156 [V]V_H = 0.0156\,\mathrm{[V]} と一致します。

電子を取り出す方法(4つの放出)

真空の中で電子を使うには、まず金属などから電子を外へ出さなければなりません。金属の中の電子は、表面の壁を越えるエネルギー(仕事関数 WW)を与えられて、はじめて外へ出られます。そのエネルギーの与え方で、放出の名前が変わります。

現象与えるもの例
熱電子放出熱真空管の陰極
光電効果光光電管
二次電子放出高速の電子光電子増倍管
電界放出強い電界電界放出形の電子源

熱電子放出は、陰極を熱して、電子を飛び出させます。光電効果は、光の振動数 ν\nu が一定の値より大きいときだけ起こり、飛び出した電子の運動エネルギーの最大値は、プランク定数 hh を使って hν−Wh\nu - W です。二次電子放出は、高速の電子が金属にぶつかって、別の電子をたたき出す現象です。電界放出は、金属の表面に強い電界をかけて、電子を引き出す現象です。

図10の真空管は、熱電子放出で電子を取り出す部品の例です。ガラスの中を真空にしてあるので、放出された電子は空気にぶつからずに、電界の力で陽極へ飛んでいきます。この記事の式は、すべて真空中の電子を前提にしています。

白い背景の前に置かれたガラスの真空管の写真。中央に金属の円筒があり、下に細いコイル状の線と金属のピンが見える
  1. ガラス管 中は真空
  2. 金属円筒 内部の電極
  3. ピン 外とつなぐ足
図10 真空管。ガラスの中は真空で、電極の間を電子が進む(写真はイメージ)

よくある質問

電子にはたらく電界の力は、電界と同じ向き?

逆向きです。電子は負の電荷なので、電界の向きと反対の向きに力を受け、電位の高いほうへ引かれます。正の電荷(陽子や正孔)は、電界と同じ向きの力を受けます。

円運動の周期は、電子の速さで変わる?

変わりません。T=2πm/(eB)T = 2\pi m/(eB) に速さ vv は入っていないからです。速い電子は半径 r=mv/(eB)r = mv/(eB) が大きくなり、遠回りをするぶん、同じ時間で1周します。

ローレンツ力は、電子に仕事をする?

しません。ローレンツ力は、いつも電子の速度に垂直です。力の向きと動く向きが垂直なので仕事は 0 になり、速さと運動エネルギーは変わらず、向きだけが変わります。電界の力は、動く向きの成分があるので、仕事をして速さを変えます。

ホール効果で、n 形と p 形はどう見分ける?

電流と磁界の向きを同じにして、ホール電圧の符号を見ます。n 形はキャリアが電子、p 形は正孔なので、同じ向きに力を受けても、寄る電荷の符号が逆になり、ホール電圧の向きが反対になります。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

電界 EE の中の電子にはたらく力は?

大きさ eEeE で、向きは電界と逆向きです。

電圧 VV で静止から加速された電子の速さは?

eV=mv2/2eV = mv^2/2 から、v=2eV/mv = \sqrt{2eV/m} です。

磁界に垂直に入った電子の、円運動の半径と周期は?

r=mv/(eB)r = mv/(eB)、T=2πm/(eB)T = 2\pi m/(eB) です。周期は速さによりません。

ローレンツ力は、電子の速さを変える?

変えません。力が速度に垂直なので仕事をせず、向きだけを変えます。

電界と磁界が直交する場所で、電子が直進する条件は?

eE=evBeE = evB のときで、速さは v=E/Bv = E/B です。

ホール電圧を表す式と、n 形・p 形のちがいは?

VH=IB/(ned)V_H = IB/(ned) です。電流と磁界の向きが同じなら、n 形と p 形でホール電圧の向きが逆になります。

まとめ

  • 電子は電気量 −e-e、質量 mm の粒子。電界の力は eEeE で電界と逆向き、磁界の力(ローレンツ力)は evBevB で速度と磁界に垂直
  • 電界での加速は eV=mv2/2eV = mv^2/2 から v=2eV/mv = \sqrt{2eV/m}。平行板の偏向量は y=eEl2/(2mv02)y = eEl^2/(2mv_0^2) で、加速電圧 VaV_a で入射したときは y=El2/(4Va)y = El^2/(4V_a)
  • 磁界に垂直に入った電子は等速円運動をし、半径は r=mv/(eB)r = mv/(eB)、周期は T=2πm/(eB)T = 2\pi m/(eB)。ローレンツ力は仕事をしない
  • 電界と磁界が直交してつり合うと、v=E/Bv = E/B で直進する。ホール電圧は VH=IB/(ned)V_H = IB/(ned) で、n 形と p 形で向きが逆になる

電子の運動の基礎は、クーロンの法則、電界と電位、磁界で確かめられます。電子の流れを使って信号を大きくする回路は、次のトランジスタ増幅回路で学びます。半導体のはたらきから見直したいときは、トランジスタの基本も読み返してください。

図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙電験三種 理論を図解で通して読む図解でわかる 電験三種 理論 / 第1巻直列回路電流・電圧・抵抗から内部抵抗・倍率器・コンデンサまで理論の単元を、図と式で1冊ずつ通して読む Kindle 本のシリーズです。例題と練習問題まで入っています。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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