理論電気理論 / 直流回路11分で読めます
重ね合わせの理の解き方|電圧源は短絡・電流源は開放して足す
電験三種の重ね合わせの理(重ね合わせの定理)を図解で整理します。電圧源は短絡・電流源は開放する決まり、電流の向きのそろえ方、電源が2つの回路と電流源入りの例題、電力は足せない理由までを確認できます。
前の記事のキルヒホッフの法則では、電源が複数ある回路を、連立方程式で解きました。式を立てる手間はかかりますが、電源が増えるたびに式も増え、計算の見通しが悪くなります。
重ね合わせの理は、この負担を減らす方法です。電源を1つずつ残した簡単な回路を電源の数だけ解き、最後に答えを足せば、元の回路の答えになります。この記事では、定理の中身、電源を 0 にするときの決まり、電源が2つの回路と電流源のある回路の例題、そして電力だけは足せない理由までを順に確認します。
重ね合わせの理の全体像
- 重ね合わせの理とは
- 電源を1つずつ残した回路の答えを足すと、元の回路の答えになる
- 使えるのは、抵抗やコイルなどが電流に比例する線形回路だけ
- 電源を 0 にする決まり
- 電圧源は短絡、電流源は開放
- 電池の内部抵抗は、そのまま残す
- 解き方と例題
- 基準の向きを決め、逆向きの電流は負にして足す
- 電流源のある回路も、同じ手順で解ける
- 電力は足せない
- 電流を足してから、I2R を計算する
重ね合わせの理(重ね合わせの定理)とは
重ね合わせの理は、電源が複数ある回路について、次のことを述べた定理です。回路のある枝の電流(または電圧)は、電源を1つだけ残してほかを 0 にした回路で求めた電流(電圧)を、すべての電源について足し合わせたものに等しくなります。
たとえば電源 A と B がある回路では、「A だけを残して B を 0 にしたときの電流 I′」と「B だけを残して A を 0 にしたときの電流 I′′」を求め、足します。
I=I′+I′′
図1 重ね合わせの理。電源を1つずつ残した答えを足すと、元の回路の答えになる
川の合流にたとえると、イメージがつかめます。2本の川が合流した下流の水量は、それぞれの川の水量の和です。電源も同じで、各電源が流そうとする電流が、枝の中で足し合わさります。
図2 2本の流れが合流する川。下流の水量は、2本の水量の和になる(写真はイメージ)
なぜ足してよいのか。抵抗では、電流と電圧が比例します(オームの法則)。比例する関係だけで組み立てた回路は、原因(電源)を2倍にすれば結果(電流)も2倍になり、2つの原因を同時に与えれば、結果も足し合わせになります。この性質を持つ回路を線形回路といいます。抵抗、コイル、コンデンサだけの回路は、線形回路です。
電源を 0 にする決まり(電圧源は短絡・電流源は開放)
「電源を 0 にする」とは、電源の値を 0 にした状態の回路を描く、ということです。このとき、電源の種類で扱いが変わります。
| 電源 | 0 にしたあとの姿 | 回路での扱い |
|---|
| 電圧源(E=0[V]) | 導線 | 短絡 |
| 電流源(J=0[A]) | 切れた線 | 開放 |
電圧源は、両端の電圧を決める電源です。電圧を 0 にすると、両端に電位差がなくなるので、導線でつないだのと同じになります。電流源は、流れる電流を決める電源です。電流を 0 にすると、電流が通らないので、線を切ったのと同じです。
図3 電源の値を 0 にした後の姿。電圧源は導線、電流源は切れた線、内部抵抗は残す
電池には、内部抵抗 r があります。電池を電圧源として扱うときは、理想的な電圧源と抵抗 r の直列と考えます。電圧源を短絡するのは理想の電圧源の部分だけで、直列の内部抵抗はそのまま残します。
1上の電池2下の電池3赤いリード4黒いリード- 上の電池 電圧源の1つ
- 下の電池 直列につなぐと電圧が足される
- 赤いリード プラス側
- 黒いリード マイナス側
図4 電池ボックス。電池には内部抵抗があり、電圧源の短絡では内部抵抗を残す(写真はイメージ)
重ね合わせの理の解き方(電源が2つの回路)
手順は4つです。電源の数だけ回路を描くので、電源が増えても、1回あたりの計算は簡単なままです。
図5 重ね合わせの理の手順。残す電源を替えて繰り返し、最後に足す
足すときの注意が、向きです。電流は向きを持つので、最初に基準の向きを決め、すべての回路図に同じ基準を書きます。残した回路での電流が基準と同じ向きなら正、逆向きなら負の数として足します。
図6 例題1 の回路。電源が2つあり、基準の電流の向きは I1・I2 が上向き、I3 が下向き
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手順1 E1 だけを残します。E2 は短絡するので、R2 と R3 が並列になります。
R23I1′=3+63×6=2Ω=3+230=6[A]R23 にかかる電圧は 6×2=12[V] なので、R3 は 12/6=2[A] が下向き、R2 は 12/3=4[A] が下向きです。I2 の基準は上向きなので、負にします。
I2′=−4[A],I3′=2[A]手順2 E2 だけを残します。E1 は短絡するので、R1 と R3 が並列で、同じ形の計算になります。
I2′′I1′′I3′′=3+215=3[A]=−2[A]=1[A]手順3 向きをそろえて足します。
I1I2I3=6+(−2)=4[A]=−4+3=−1[A]=2+1=3[A]I2 が負なので、実際の向きは基準と逆の下向きで、1[A] です。E2 の電池は、流し出すのではなく充電されています。
検算します。I1+I2=3=I3 で、節点の電流の和が合います。節点電圧は R3I3=18[V] で、E1−R1I1=30−12=18[V]、E2−R2I2=15+3=18[V] とも一致します。
図7 例題1 を電源ごとに分ける。上は E1 だけ、下は E2 だけを残した回路
電流源がある回路の例題
電流源は、負荷が変わっても決まった電流を流そうとする電源です。完全な電流源は身近にありませんが、近い動きをするものはあります。太陽電池は、光の強さに比例した電流を流す性質があり、電流源に近い電源として扱えます。
1パネル2配線3電柱- パネル 光で電流をつくる
- 配線 屋根から壁を下りる
- 電柱 配電線がつながる
図8 屋根の太陽光パネル。光の強さに比例した電流が流れ、電流源に近い電源として扱える(写真はイメージ)
ノートパソコンやスマートフォンの充電も、同じ考え方が当てはまります。リチウムイオン電池の充電は、はじめのうち電流を一定に保つ制御をします。この間、充電器は電流源のように働きます。
1パソコン2充電器3ケーブル- パソコン 充電される側
- 充電器 電源の役目
- ケーブル 電流を送る
図9 ノートパソコンの充電。はじめの間は電流を一定にして充電する(写真はイメージ)
電流源がある回路でも、手順は変わりません。電流源を残すときは電圧源を短絡し、電圧源を残すときは電流源を開放します。
図10 例題2 の回路。電圧源と電流源が1つずつある
解答と解説を見る
手順1 電圧源 E だけを残します。電流源は開放するので、R1 と R2 の直列回路です。
I2′=3+627=3[A]手順2 電流源 J だけを残します。電圧源は短絡するので、R1 と R2 が並列で、J が分かれて流れます(分流)。
I2′′=J×R1+R2R1=3×93=1[A]手順3 どちらも R2 を下向きに流れるので、そのまま足します。
I2V=3+1=4[A]=R2I2=6×4=24[V]検算します。R1 を上向きに流れる電流は (27−24)/3=1[A] です。節点に入る電流は 1+3=4[A] で、I2 と一致します。
図11 例題2 を電源ごとに分ける。上は電圧源だけ、下は電流源だけを残した回路
電流源の分流の式は、電流源につながる2つの抵抗のうち、相手の抵抗を分子に置きます。R2 に流れる電流が R1/(R1+R2) の割合になるのは、抵抗が小さい R1 のほうに、電流が多く流れるからです。並列回路の分流は、並列回路で扱いました。
重ね合わせの理で電力は足せない
電流と電圧は足せますが、電力は足せません。電力は電流の2乗に比例し、比例の関係ではない(線形ではない)からです。
図12 電流と電圧は比例する直線なので足せる。電力は2乗の曲線なので足せない
例題1の回路で、R3 の電力を確かめます。E1 だけのときの電流は I3′=2[A]、E2 だけのときは I3′′=1[A] でした。
解答と解説を見る
まず、足してはならない方法の結果を見ておきます。
P′P′′P′+P′′=22×6=24[W]=12×6=6[W]=30[W]正しくは、電流を足してから、電力を計算します。
P=I32R3=32×6=54[W]差の 24[W] は、2つの電流が混ざる項です。(I′+I′′)2=I′2+I′′2+2I′I′′ なので、2×2×1×6=24[W] が余分に出ます。
図13 電力は足せない。電流を足してから計算した 54 W は、電力を足した 30 W より大きい
電力が足せないのと同じ理由で、重ね合わせの理が使えるのは線形回路だけです。ダイオードのように、電圧と電流が比例しない部品が入った回路には使えません。
キルヒホッフの法則・テブナンの定理・ミルマンの定理との使い分け
どの方法を使うかは、知りたいものと、回路の形で決まります。
重ね合わせの理は、回路が簡単になるかわりに、電源の数だけ回路を解きます。電源が4つ、5つと増えると、回数が増えて遠回りになります。そのときは、キルヒホッフの法則に切り替えるか、次の記事で扱うミルマンの定理で、並列の枝の電圧を一度に求めるほうが速くなります。知りたいのが1本の枝の電流だけなら、テブナンの定理が向きます。
よくある質問
重ね合わせの理は、どんな回路で使える?
電流と電圧が比例する線形回路で使えます。抵抗、コイル、コンデンサでできた回路は、直流でも交流でも使えます。ダイオードやトランジスタのように、電圧と電流が比例しない部品を含む回路には、そのままでは使えません。
電圧源を短絡して、電池は壊れない?
壊れません。回路図の上で、電源の値を 0 にした回路を新しく描いているだけで、実際の電池を短絡するわけではありません。実物の電池を導線で短絡すると、大きな電流が流れて危険です。
電源を 0 にするとき、内部抵抗はどうする?
そのまま残します。電池は、理想的な電圧源と内部抵抗の直列として扱うので、短絡するのは電圧源の部分だけです。問題に内部抵抗が書かれていないときは、電圧源は理想的(内部抵抗が 0)とみなして構いません。
電源が3つ以上のとき、どうする?
電源の数だけ回路を描き、1つずつ残して解きます。たとえば電源が3つなら3回解いて、3つの答えを足します。ただし、回路を解く回数が増えるので、電源が多いときは、キルヒホッフの法則やミルマンの定理のほうが速いことがあります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
重ね合わせの理とは、どんな定理ですか。
電源が複数ある線形回路で、電源を1つずつ残した回路の電流を求めて足すと、元の回路の電流になる、という定理です。
電源を 0 にするとき、電圧源と電流源はどうしますか。
電圧源は短絡(導線)、電流源は開放(切れた線)にします。
電池の内部抵抗は、電源を 0 にするとき、どうしますか。
残した回路の電流が、基準の向きと逆向きのときは、どう足しますか。
負の数として足します。合計が負なら、実際の向きは基準と逆です。
重ね合わせの理が使えるのは、どんな回路ですか。
電力は、電源ごとの値を足してよいですか。
足せません。電流を足してから、I2R で計算します。
まとめ
- 重ね合わせの理は、電源を1つずつ残した回路の答えを足すと、元の回路の答えになる定理。使えるのは線形回路だけ
- 電源を 0 にするときは、電圧源は短絡、電流源は開放。電池の内部抵抗はそのまま残す
- 基準の向きを全図でそろえ、逆向きの電流は負にして足す。足したあとの検算は、節点の電流の和と、枝の電圧の一致で行う
- 電力は足せない。電流を足してから I2R を計算する(例題では 24+6=30 ではなく 54[W])
連立方程式の立て方で迷ったらキルヒホッフの法則を、1本の枝の電流だけを求める方法はテブナンの定理を、見直しましょう。