ブリッジ回路は、平衡していれば真ん中の枝を取り除いて、直列と並列だけで合成抵抗が求まりました。ところが、平衡していないと、直列にも並列にもまとめられません。この行き詰まりを抜ける道具が、Δ-Y変換です。
Δ-Y変換は、3つの抵抗を三角形(Δ)につないだ部分を、1点から3本伸ばした星形(Y)に置き換える(またはその逆の)計算です。置き換えたあとの回路は、端子の外から見て同じ働きをします。この記事では、2つの形の読み方、Δ→Y と Y→Δ の公式の覚え方、3辺が等しいときの簡単な関係、不平衡ブリッジの合成抵抗の求め方、対称性の使い方を順に確認します。
Δ-Y変換の全体像
- Δ-Y変換とは
- 3端子の部分を、Δ 形と Y 形のどちらの形でも表せる
- 端子の外から見た抵抗が同じになるように置き換える
- Δ→Y の公式
- Y→Δ の公式
- 3辺(3本)が等しいとき
- 使いどころ
- 不平衡のブリッジを、直列と並列にまとめられる形に直す
- 左右対称なら、置き換えなくても等電位の点が見つかる
Δ-Y変換とは
送電線は、鉄塔から鉄塔へ、3本1組の電線で電気を運んでいます。この3本の電線のように、3つの端子を持つ回路の部分は、電気の分野によく出てきます。
1鉄塔2電線3鉄塔- 鉄塔 送電線を支える
- 電線 3本1組で張られる
- 鉄塔 電線が続く先
図1 送電線は3本1組で張られる。3つの端子を持つ回路の代表例(写真はイメージ)
抵抗でできた3端子の部分には、2つの典型的な形があります。3つの抵抗を三角形につないだ Δ(デルタ)形と、1つの点から3つの抵抗を伸ばした Y(スター)形です。どちらも、外の回路につなぐ端子は3つです。
図2 Δ 形と Y 形。どちらも端子は a、b、c の3つ
この記事では、端子に a、b、c と名前をつけて、次の約束で読みます。
- Δ 形の辺の抵抗は、両端の端子の名前で Rab、Rbc、Rca と書く
- Y 形の枝の抵抗は、つながる端子の名前で Ra、Rb、Rc と書く
2つの形は、端子の外から見て同じ働きをするように、たがいに置き換えられます。「同じ働き」とは、どの2つの端子の間を測っても、抵抗が同じになるということです。これがΔ-Y変換(デルタスター変換)です。
ΔとYの形:見分け方
三角形のトラスは、辺の先にだけ端子(頂点)があるので、Δ 形のイメージです。
1斜めの材2接合部3斜めの材- 斜めの材 辺にあたる
- 接合部 頂点にあたる
- 斜めの材 辺にあたる
図3 三角形に組んだトラス。辺で頂点どうしをつなぐ Δ 形のイメージ(写真はイメージ)
三相モーターの端子箱では、3つの端子を銅の板で渡す向きを変えて、Y 形と Δ 形を切り替える使い方があります。同じ3本の巻き線でも、つなぎ方の違いで形が変わるわけです。
1リード線2銅の板3端子- リード線 外の回路へ
- 銅の板 端子を渡す
- 端子 3つが並ぶ
図4 三相モーターの端子箱。銅の板の渡し方で接続の形を変える(写真はイメージ)
試験の回路図では、形がΔや Y に見えにくいことがあります。「3つの端子の間に抵抗が3つ、輪になってつながっている」ならΔ、「3つの抵抗が1点に集まっている」なら Y と読みます。
Δ→Y変換の公式と覚え方
Δ 形を Y 形に置き換える公式は、次のとおりです。S は Δ の3辺の和です。
図5 Δ → Y:分母は3辺の和、分子は両隣の積
覚え方は、分母は3辺の和、分子は両隣の積です。たとえば Ra は、端子 a につながる2辺 Rab と Rca の積を、3辺の和 S で割ります。a のとなりにない辺 Rbc は、Ra には出てきません。
公式の導き方
端子の外から見て同じ働きをするには、2端子ずつ測った抵抗がすべて等しければ十分です。c を開放して a-b 間を測ると、Δ 形は Rab と (Rbc+Rca) の並列、Y 形は Ra+Rb になります。
| 測る端子 | Δ 形の抵抗 | Y 形の抵抗 |
|---|
| a-b 間 | SRab(Rbc+Rca) | Ra+Rb |
| b-c 間 | SRbc(Rca+Rab) | Rb+Rc |
| c-a 間 | SRca(Rab+Rbc) | Rc+Ra |
3つの式を左右に等号で結んで、3つとも足して2で割ります。
Ra+Rb+Rc=SRabRbc+RbcRca+RcaRab
ここから、b-c 間の式 Rb+Rc を引くと、Ra だけが残ります。
Ra=SRabRbc+RbcRca+RcaRab−SRbcRca+RabRbc=SRabRca
Rb、Rc も同じ手順で求まります。試験では導き方を書く必要はなく、公式を覚えて使えれば足ります。
図6 例題1 の Δ 形(Rab=30 Ω、Rbc=60 Ω、Rca=90 Ω)
解答と解説を見る
3辺の和は S=30+60+90=180Ω です。
RaRbRc=18030×90=15Ω=18030×60=10Ω=18060×90=30Ωa-b 間で確かめます。Δ 形は 30//150=25Ω、Y 形は 15+10=25Ω で、一致します。
Y→Δ変換の公式
逆に、Y 形を Δ 形に置き換える公式は、次のとおりです。T は Y の「枝の積の和」です。
図7 Y → Δ:分子は積の和、分母は向かい側
覚え方は、分子は積の和、分母は向かい側の枝です。辺 Rab の向かい側にある枝は Rc なので、Rab=T/Rc になります。
この公式は、Δ→Y の公式から導けます。RaRb+RbRc+RcRa に Δ→Y の式を入れて整理すると T=SRabRbcRca となり、Rc=SRbcRca で割ると Rab だけが残ります。
解答と解説を見る
枝の積の和は、次のとおりです。
T=15×10+10×30+30×15=150+300+450=900各辺は、T を向かい側の枝で割ります。
RabRbcRca=30900=30Ω=15900=60Ω=10900=90Ω例題1の Y 形を、もとの Δ 形に戻せました。2つの変換は、たがいに逆の操作です。
3辺が等しいときは3倍・3分の1
Δ の3辺がすべて RΔ のとき、Δ→Y の公式の分母は S=3RΔ、分子は RΔ×RΔ になります。
RY=3RΔRΔ×RΔ=3RΔ
3本とも等しい Y を Δ にするときは、逆に RΔ=3RY です。
図8 同じ抵抗の Δ は、3分の1の Y になる(30 Ω → 10 Ω)
3辺が等しい三相回路の問題では、この関係が最もよく使われます。なお、三相交流の負荷でも、Δ 形と Y 形はこの形で出てきます(三相交流回路の計算)。
図9 例題3 の Δ 形(30 Ω)と Y 形(10 Ω)。a-b 間はどちらも 20 Ω
解答と解説を見る
Y 形の1本は、Δ の 3分の1です。
RY=330=10Ωa-b 間は、Δ 形では 30Ω と (30+30)Ω の並列です。
30+6030×60=20ΩY 形では 10+10=20Ω で、一致します。
Δ-Y変換で不平衡ブリッジの合成抵抗を求める
不平衡のブリッジは、そのままでは直列と並列にまとめられません。ブリッジの中の三角形に注目して Y 形に置き換えると、直列と並列だけの回路に変わります。
図10 例題4 の不平衡ブリッジ。色をつけた三角形 a-c-d を Y 形に置き換える
図の色をつけた部分は、R1、R2、R5 が作る三角形(a-c-d)です。この三角形を Y 形に置き換えます。置き換える三角形の頂点(a、c、d)は、そのまま端子として残ります。
解答と解説を見る
まず、R1R4=700、R2R3=1200 で等しくないので、不平衡です。三角形 a-c-d を Y 形に置き換えます。辺は R1(a-c)、R2(a-d)、R5(c-d)で、和は S=100Ω です。
RaRcRd=10020×30=6Ω=10020×50=10Ω=10030×50=15Ω置き換えた回路(下の図11)で、中心点 O から b までは、(Rc+R3)=50Ω と (Rd+R4)=50Ω の並列です。
Rab=6+50+5050×50=6+25=31Ω電源から流れ出す電流は、次のとおりです。
I=3162=2[A]
置き換えた回路を、図11に示します。
図11 置き換え後。6 Ω のあとに、50 Ω の枝と 50 Ω の枝が並列
この回路から、もとの回路の量も求まります。O から b への2本の道は同じ 50Ω なので、1A ずつ流れます。O の電位は 62−6×2=50[V] で、c の電位は 50−10×1=40[V]、d の電位は 50−15×1=35[V] です。したがって R5 には、c から d へ (40−35)÷50=0.1A が流れます。
この問題は、キルヒホッフの法則で連立方程式を立てても解けます(キルヒホッフの法則)。ただ、合成抵抗だけが知りたいときは、Δ-Y変換のほうが式が少なく済みます。R5 の電流など、枝の1本だけの電流がほしいときは、テブナンの定理が向いています。平衡しているブリッジなら、R5 を取り除くだけで済み、変換は要りません。
対称性で等電位の点を見つける
Δ-Y変換を使わずに済む場合もあります。回路を左右に折り返して、ぴったり重なるなら、折り返しで入れ替わる2点は、同じ電位になります。
図12 全部 12 Ω のブリッジ。左右対称なので c と d は同電位
図のブリッジは、R1=R2、R3=R4 なので、a-b を軸にして左右が対称です。c と d は同じ電位なので、R5 の抵抗がいくつであっても、R5 には電流が流れません。R5 を取り除くと、(12+12)Ω の道が2本並列になるので、合成抵抗は 12Ω です。
これは、平衡条件 R1R4=R2R3 の特別な場合です。R1=R2 と R3=R4 なら、両辺が等しくなります。Δ-Y変換で確かめることもできます。三角形 a-c-d の3辺が 12Ω なので、Y 形の1本は 4Ω です。合成抵抗は 4+(4+12)//(4+12)=4+8=12Ω で、一致します。
配電盤の母線のように、3本の導体が同じ形で並んでいる回路は、対称性が使える典型です。3本が同じ形なら、どの2本の間を測っても同じ値になります。
1銅の板2銅の板3銅の板- 銅の板 三相の導体
- 銅の板 同じ形で並ぶ
- 銅の板 どれも同じ寸法
図13 配電盤の三相の母線。3本が同じ形で並ぶ(写真はイメージ)
よくある質問
Δ-Y変換で、Δ から Y にすると、抵抗は大きくなる? 小さくなる?
小さくなります。3辺が等しいときは、Y の1本が Δ の1辺の 3分の1です。同じ端子間の抵抗は変わりませんが、Δ では2つの経路が並列になるぶん、1本あたりの値が大きくなります。
Y-Δ変換のとき、どの枝を分母にする?
求める辺の向かい側にある枝です。Rab なら、a-b の辺のとなりにない枝 Rc が分母です。分子は、どの辺でも同じ T=RaRb+RbRc+RcRa です。
デルタスター変換と、Δ-Y変換は別の変換?
同じです。Δ をデルタ、Y をスターと読んで、デルタスター変換とも呼びます。Y→Δ の向きは、Y-Δ変換やスターデルタ変換と呼ばれます。
三相交流の Δ 結線・Y 結線と同じもの?
形は同じで、考え方もつながっています。ただし、三相交流の結線は、電源や負荷のつなぎ方(線間電圧と相電圧の関係)を扱う話です。この記事のΔ-Y変換は、抵抗の合成を楽にするための置き換えの計算で、同じ値の抵抗なら 3 倍・3分の1の関係が使えます。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
Δ-Y変換で、置き換える2つの形が「同じ」とは、何が同じことですか。
どの2つの端子の間を測っても、抵抗が同じになることです。
Δ→Y の公式の覚え方は、どうですか。
分母は3辺の和 S、分子は端子につながる両隣の辺の積です。
Y→Δ の公式の覚え方は、どうですか。
分子は枝の積の和 T、分母は求める辺の向かい側の枝です。
3辺が等しい Δ を Y に直すと、1本の抵抗はどうなりますか。
不平衡のブリッジの合成抵抗は、どう求めますか。
三角形の部分を Y 形に置き換えて、直列と並列にまとめます。
左右対称のブリッジで、c-d 間の抵抗に流れる電流は?
まとめ
- Δ-Y変換は、3端子の部分を Δ 形と Y 形のあいだで置き換える計算。どの2端子間を測っても、抵抗が同じになる
- Δ→Y は「分母は3辺の和、分子は両隣の積」。Y→Δ は「分子は積の和、分母は向かい側の枝」
- 3辺が等しいとき、Y の1本は Δ の 3分の1(逆は3倍)
- 不平衡のブリッジは、三角形の部分を Y 形に置き換えると、直列と並列の合成抵抗で解ける。左右対称なら、等電位の点を使って変換せずに解ける
平衡するブリッジの条件と測定への応用はブリッジ回路を、直列と並列の合成抵抗や分流の計算で迷ったら並列回路を、見直しましょう。Y と Δ のつなぎ方は、機械科目の変圧器の三相結線でも出てきます。