理論電気理論 / 直流回路9分で読めます
ミルマンの定理の公式と使い方|並列の枝の電圧を一度に求める
電験三種のミルマンの定理を図解で整理します。公式の導き方、電源のない枝や逆向きの電池の扱い、電池を並列にしたときの循環電流の例題、重ね合わせの理やテブナンの定理との使い分けまでを確認できます。
前の記事の重ね合わせの理では、電源を1つずつ残して、電源の数だけ回路を解きました。電源が2つなら2回で済みますが、3つ、4つと増えるたびに、解く回数も増えていきます。
ミルマンの定理は、並列につながった枝を、公式1本でまとめて処理する方法です。上下2つの節点の間の電圧が分かれば、各枝の電流は引き算と割り算で求まります。この記事では、公式の中身と導き方、電源のない枝や逆向きの電池の扱い、例題、電池を並列につないだときの循環電流、ほかの方法との使い分けを順に確認します。
ミルマンの定理の全体像
- ミルマンの定理とは
- 並列の枝がつながる2つの節点の間の電圧 V を、一度に求める
- V=(ΣE/R)÷(Σ1/R)
- 公式の導き方
- 各枝の電流を I=(E−V)/R と書き、節点の電流の和を 0 とおく
- 使い方
- 電源のない枝は E=0、逆向きの電池は E を負にする
- V が決まれば、各枝の電流は (E−V)/R で出る
- 電池の並列
- 起電力の違う電池を並列にすると、負荷がなくても電流が回る
ミルマンの定理とは
ミルマンの定理は、電源と抵抗が直列になった枝がいくつも並列につながった回路で、上下2つの節点の間の電圧 V を求める公式です。
図1 ミルマンの定理の対象。枝が並列で、節点が上下の2つだけの回路
各枝の起電力を E1,E2,…、抵抗を R1,R2,… とすると、電圧 V は次の式で求まります。
V=R11+R21+R31R1E1+R2E2+R3E3
分子は、各枝の「起電力 ÷ 抵抗」の和、分母は、各枝の「抵抗の逆数」の和です。枝が増えれば、分子と分母に項が増えるだけで、形は変わりません。
この形の回路は、身近なところにあります。太陽光発電では、パネルをつないだ系統(ストリング)を何本か並列にして、接続箱で1つにまとめます。蓄電池や非常用電源も、電池を並列にして容量を増やします。
1端子台2ケーブル3出口4ふた- 端子台 枝が集まる共通の線
- ケーブル 4つの枝
- 出口 まとめて送り出す
- ふた 中身を守る
図2 太陽光発電の接続箱。複数の系統が並列に集められる(写真はイメージ)
ミルマンの定理の導き方
公式は暗記だけでなく、導き方を知っておくと、符号の間違いに気づけます。導き方は、キルヒホッフの電流則(節点に入る電流の和は 0)を、節点電圧 V を未知数にして使うだけです。
図3 1本の枝。抵抗にかかる電圧は E−V になり、電流は (E−V)÷R
1本の枝を取り出して考えます。枝の電流 Ik を上向き(節点に入る向き)にとると、抵抗 Rk にかかる電圧は、電池の起電力 Ek から節点電圧 V を引いた値です。
RkIk=Ek−V⟹Ik=RkEk−V
上の節点では、3つの枝から入る電流の和が 0 になります。
I1+I2+I3R1E1−V+R2E2−V+R3E3−V=0=0
V を含む項を右辺に集めます。
R1E1+R2E2+R3E3=V(R11+R21+R31)
両辺を括弧の中で割ると、最初の公式になります。連立方程式を立てずに、未知数が節点電圧 1個の式1本で済むのが、ミルマンの定理の強みです。キルヒホッフの電流則そのものは、キルヒホッフの法則で扱いました。
電源のない枝と、逆向きの電池
公式に入れるときの約束は、次の2つです。
- 枝に電池がないとき(抵抗だけ)は、E=0 とする。分子の項は 0 になり、分母の 1/R だけが残る
- 電池の+が下向きのとき(図の基準と逆向き)は、E を負の値にする
図4 起電力の符号。+が上(基準側)なら正、+が下なら負
負荷の抵抗も、E=0 の枝として公式に入れます。負荷をつないだまま、負荷の電圧と電流を一度に求められます。
1端子台2赤い線3黒い線- 端子台 配線を集める
- 赤い線 プラス側
- 黒い線 マイナス側
図5 端子台。多くの配線を、同じ2本の線に集めてつなぐ(写真はイメージ)
ミルマンの定理の使い方と例題
手順は4つです。
図6 ミルマンの定理の手順。節点電圧 V を先に求め、そこから各枝の電流を出す
図7 例題1 の回路。3つの枝すべてに電池があり、上が+
解答と解説を見る
手順1 節点は、上下の2つです。電池はすべて+が上向きなので、E はすべて正です。
手順2 公式の分子と分母を、別々に計算します。
ΣREΣR1=330+46+612=10+1.5+2=13.5=31+41+61=129=0.75V=0.7513.5=18[V]手順3 各枝の電流は、I=(E−V)/R です。
I1I2I3=330−18=4[A]=46−18=−3[A]=612−18=−1[A]I2 と I3 は負なので、実際の向きは下向きです。E1 の電池が電流を流し出し、E2 と E3 の電池は充電されています。
検算します。4−3−1=0 で、節点の電流の和が 0 になります。
図8 例題1 の答え。V は 18 V で、左の電池は放電、中央と右の電池は充電される
1電池2抵抗3上の棒4下の棒- 電池 枝の電源
- 抵抗 枝の抵抗
- 上の棒 共通の節点
- 下の棒 もう一方の節点
図9 3つの枝が、上下2本の棒の間に並列につながる。ミルマンの定理の形(写真はイメージ)
次は、電源のない枝がある回路です。
図10 例題2 の回路。右の枝は電池がなく、抵抗だけ(E=0)
解答と解説を見る
右の枝は電池がないので、E3=0 として公式に入れます。
V=21+81+51212+818+0=0.8258.25=10[V]R3 にかかる電圧は V=10[V] です。各枝の電流は、次のとおりです。
I1I2I3=212−10=1[A]=818−10=1[A]=50−10=−2[A]R3 には、2[A] が下向きに流れます。検算は 1+1−2=0 です。
電池を並列につなぐと循環電流が流れる
起電力が同じ電池を並列につなぐと、電圧は変わらず、流せる電流が増えます。ところが、起電力が少し違う電池を並列につなぐと、負荷をつないでいなくても、電池の中を電流が回ります。これを循環電流といいます。電池の起電力と内部抵抗の考え方は電池の内部抵抗と端子電圧で確かめられます。
図11 違う電池の並列。負荷がなくても、電池の中を電流が回る
解答と解説を見る
負荷がないので、枝は2本だけです。ミルマンの定理で、端子電圧 V を求めます。
V=0.21+0.410.212.6+0.412=5+2.563+30=12.4[V]I1I2=0.212.6−12.4=1[A]=0.412−12.4=−1[A]起電力の高い電池から 1[A] が流れ出し、起電力の低い電池に逆向きに流れ込んで、輪を回ります。端子電圧は、2つの起電力の間の 12.4[V] です。
ミルマンの定理を使わなくても、一巡の式から求まります。
I=0.2+0.412.6−12=1[A]
循環電流は、何も仕事をせずに電池の中で熱になるだけの電流です。そのため、実際の設備では、電圧のそろった同じ種類の電池だけを並列につなぎます。
1上段の電池2銅の板3下段の電池- 上段の電池 並列の枝
- 銅の板 電池どうしをつなぐ
- 下段の電池 並列の枝
図12 蓄電池の設備。多数の電池を並列につなぎ、大きな電流を取り出す(写真はイメージ)
ミルマンの定理が使える形と、ほかの方法との使い分け
ミルマンの定理が使えるのは、枝がすべて、同じ2つの節点の間に並列につながっている回路です。節点が3つ以上になる回路(橋のように枝が渡る回路)には、そのままでは使えません。
図13 ミルマンの定理が使える形(節点が2つ)と、使えない形(節点が3つ以上)
どの方法を使うかは、回路の形で決まります。
重ね合わせの理の例題1と同じ回路を、ミルマンの定理で解いてみます。E1=30[V]、R1=3Ω、E2=15[V]、R2=3Ω、中央は電池のない R3=6Ω の回路です。
V=31+31+61330+315+0=5/615=18[V]
I1=(30−18)/3=4[A]、I2=(15−18)/3=−1[A]、R3 には 18/6=3[A] が流れて、重ね合わせの理の答えと一致します。2回に分けて解いたものが、1回の割り算で済みました。
なお、ここまでの電源は、理想的な電圧源(内部抵抗が 0)として扱い、内部抵抗は枝の抵抗 R に含めています。電流源がある枝は、公式のままでは入れられません。電流源の電流 J は、分子にそのまま足します。
よくある質問
ミルマンの定理は、どんな回路で使える?
枝がすべて、同じ2つの節点の間に並列につながった回路で使えます。各枝は、電源と抵抗の直列でも、抵抗だけでも構いません。節点が3つ以上ある回路には、そのままでは使えないので、キルヒホッフの法則やテブナンの定理を使います。
電池の向きが逆の枝は、どう扱う?
起電力 E に負の符号を付けて、公式に入れます。基準にした向き(+が上向きのとき、上向きが正)と逆向きの電池は、E を負にします。
ミルマンの定理と重ね合わせの理は、どう使い分ける?
並列の枝がつながる形なら、ミルマンの定理のほうが速く解けます。形が崩れていて、並列の枝にまとめられないときや、電源ごとの寄与を知りたいときは、重ね合わせの理が向きます。
ミルマンの定理は、交流回路でも使える?
使えます。交流では、起電力を電圧に、抵抗をインピーダンスに置き換えて、同じ形の式で計算します。位相も含めた複素数の計算になります(複素数と記号法)。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
ミルマンの定理は、何を求める公式ですか。
並列の枝がつながる、2つの節点の間の電圧 V を求める公式です。
公式を書いてください。
V=Σ(E/R)÷Σ(1/R) です。
電池のない枝(抵抗だけの枝)は、どう扱いますか。
E=0 として扱い、分母の 1/R には入れます。
逆向きの電池の起電力は、どう扱いますか。
V が分かったあと、各枝の電流はどう求めますか。
I=(E−V)/R で求めます。
起電力の違う電池を並列につなぐと、どうなりますか。
まとめ
- ミルマンの定理は、並列の枝がつながる2つの節点の間の電圧を、V=Σ(E/R)÷Σ(1/R) で一度に求める公式
- 公式は、各枝の電流を I=(E−V)/R と書いて、節点の電流の和を 0 とおくと導ける
- 電池のない枝は E=0、逆向きの電池は E を負にする。V を求めたあと、各枝の電流は (E−V)/R で出る
- 起電力の違う電池を並列にすると、負荷がなくても循環電流が流れる。使えるのは節点が2つの回路で、それ以外はほかの方法を使う
電源ごとに分けて解く方法は重ね合わせの理を、連立方程式の立て方はキルヒホッフの法則を、見直しましょう。