電圧変動率の記事では、百分率抵抗降下 p と百分率リアクタンス降下 q を、与えられた値として使いました。実物の変圧器では、この p、q を試験で測ります。変圧器の試験の中心は、鉄損と励磁電流が分かる無負荷試験と、銅損とインピーダンス電圧が分かる短絡試験の2つです。どちらも「測りたい損失だけが残る条件」をわざと作るのがコツで、2つの結果から等価回路の定数、%Z、短絡電流まで出せます。この記事では、試験のやり方、読み取り方、例題を順に確認します。
変圧器の試験の全体像
- 変圧器の試験とは
- 無負荷試験
- 低圧側に定格電圧、高圧側は開放 → 鉄損と無負荷電流
- 短絡試験
- 低圧側を短絡、高圧側に定格電流 → 銅損とインピーダンス電圧
- %Zと短絡電流
- %Z=Vs/Vn×100、Is=In×100/%Z
- 等価回路の定数と p・q
- 巻線抵抗と温度上昇試験
変圧器の試験とは?4つの試験で分かること
変圧器の試験とは、製品の性能を確かめ、損失やインピーダンスなどの数値を求める検査のことです。電験三種の機械で押さえるのは、次の4つです(図1)。
図1 変圧器の4つの試験。無負荷試験と短絡試験で損失と %Z が分かる
| 試験 | やり方の要点 | 分かるもの |
|---|
| 巻線抵抗測定 | 直流で巻線の抵抗を測る | 巻線の抵抗 |
| 無負荷試験 | 低圧側に定格電圧、高圧側は開放 | 鉄損、無負荷電流 |
| 短絡試験 | 低圧側を短絡、高圧側に定格電流 | 銅損、インピーダンス電圧 |
| 温度上昇試験 | 実際の運転に近い状態で運転 | 巻線や油の温度上昇 |
試験室では、電圧計・電流計・電力計と、電圧を 0 から滑らかに上げられる調整器を組み合わせます(図2)。無負荷試験と短絡試験は、この計器で電圧、電流、電力の3つを読むだけの試験です。
1電圧計2電流計3電力計4調整つまみ- 電圧計 加えた電圧を読む
- 電流計 流れる電流を読む
- 電力計 損失を読む
- 調整つまみ 電圧を0から上げる
図2 試験で使う計器盤のイメージ(写真はイメージ)
2つの試験の考え方は共通で、「測りたい損失だけが残るように、条件を作る」 ことです。変圧器の損失には、鉄心で生じる鉄損と、巻線で生じる銅損があります。両方が同時に起きる状態で電力を測っても、内訳は分かりません。そこで、一方がほぼ0になる状態を作って測ります。
- 無負荷試験:電流が小さいので、銅損がほぼ0 → 電力計の値は鉄損
- 短絡試験:電圧が低いので、鉄損がほぼ0 → 電力計の値は銅損
鉄損と銅損の意味と、効率の計算は次の記事で扱います。ここでは、「測り方」に集中します。
無負荷試験のやり方と鉄損の求め方
無負荷試験は、低圧側に定格電圧を加え、高圧側は開放して行います(図3)。電圧の低い側につなぐほうが、計器が扱いやすく安全だからです。
図3 無負荷試験。低圧側に定格電圧を加え、高圧側は開放する
高圧側が開放なので、負荷電流は流れません。低圧側に流れるのは、鉄心に磁束を作るための励磁電流(無負荷電流)I0 だけです。各計器の値は、次のように読みます。
- 電力計の値 → 鉄損 Pi(無負荷損)
- 電流計の値 → 無負荷電流 I0
- 電圧計の値 → 定格電圧 Vn(これを保つ)
なぜ銅損を無視できるのか
無負荷電流は、定格電流の数 % しかありません。銅損は電流の2乗に比例するので、定格のときの銅損に比べて、ごくわずかです。たとえば無負荷電流が定格電流の 2 % なら、銅損は定格時の 0.022=0.0004、つまり 0.04 % です。しかも銅損は、電流が流れる低圧側の巻線でしか生じません。電力計の値は、ほぼ鉄損とみなせます。
加えるのは定格電圧でなければなりません。鉄損は電圧(磁束)で決まるので、定格より低い電圧で測ると、定格運転のときの鉄損になりません。
無負荷電流と励磁アドミタンス
無負荷電流は、定格電流に対する割合で表すことが多く、これを無負荷電流率 i0 と呼びます。
i0=InI0×100 [%]
等価回路の励磁回路の定数も、この試験の値から出せます。単相で、電圧 Vn、電流 I0、電力 Pi のとき、次のとおりです。
g0=Vn2Pi [S]Y0=VnI0 [S]b0=Y02−g02 [S]
解答と解説を見る
(1) 電力計の値がそのまま鉄損です。Pi=150 [W]
(2) 低圧側の定格電流を求め、無負荷電流を割ります。
In=22020×103≒90.9 [A]i0=90.91.8×100≒2.0 [%](3) 単相なので、g0=Pi/Vn2 です。
g0=2202150≒3.10×10−3 [S]=3.10 [mS]答え:(1) 150 W、(2) 約 2.0 %、(3) 約 3.10 mS
短絡試験のやり方と銅損・インピーダンス電圧
短絡試験は、低圧側を導線で短絡し、高圧側の電圧を 0 から少しずつ上げて、定格電流が流れたところで読む試験です(図4)。
図4 短絡試験。低圧側を短絡し、高圧側の電圧を上げて定格電流を流す
短絡すると、巻線のインピーダンスだけが電流を制限します。そのため、定格電流を流すのに必要な電圧は、定格電圧のわずか数 % です。このとき加えた電圧をインピーダンス電圧 Vs、電力計の値をインピーダンスワットと呼びます。
- 電流計の値 → 定格電流 In(ここまで上げて止める)
- 電圧計の値 → インピーダンス電圧 Vs
- 電力計の値 → 銅損 Pc(インピーダンスワット)
定格電流の確認には、電流計のほか、電線を挟んで測る機器もよく使われます(図5)。
図5 電線を挟んで電流を測る(写真はイメージ)
なぜ鉄損を無視できるのか
加える電圧が定格電圧の数 % しかないので、鉄心の磁束も定格のときの数 % です。鉄損は電圧の2乗にほぼ比例するので、定格電圧の 4 % なら、鉄損は定格時の 0.042=0.0016、つまり 0.16 % です。電力計の値は、ほぼ銅損とみなせます。
2つの試験を並べると、次のようになります。数値は、例題1・2の変圧器(%Z=4 %、i0=2 %)の場合です。
| 無負荷試験 | 短絡試験 |
|---|
| 加える電圧 | 定格電圧(100 %) | 定格の約 4 %(Vs) |
| 流れる電流 | 定格の約 2 %(I0) | 定格電流(100 %) |
| 鉄損は | 定格時と同じ | 定格時の約 0.16 %(無視) |
| 銅損は | 定格時の約 0.04 %(無視) | 定格時と同じ |
| 電力計の値 | 鉄損 Pi | 銅損 Pc |
解答と解説を見る
(1) 電力計の値がそのまま銅損です。Pc=350 [W]
(2) 高圧側の定格電圧は 3300 V です。インピーダンス電圧を定格電圧で割ります。
%Z=VnVs×100=3300132×100=4.0 [%](3) 銅損を定格容量で割ります。
p=PnPc×100=20×103350×100=1.75 [%]答え:(1) 350 W、(2) 4.0 %、(3) 1.75 %
%Zと短絡電流の求め方:インピーダンス電圧から
%Z(%インピーダンス)は、短絡試験のインピーダンス電圧 Vs を、定格電圧 Vn に対する百分率で表したものです。
%Z=VnVs×100 [%]
Vs=ZIn なので、%Z は「定格電流が流れたときに、変圧器の内部で降下する電圧の割合」でもあります。高圧側で測っても低圧側で測っても、同じ値になります。系統の %Z の考え方は、パーセントインピーダンスの記事で詳しく扱っています。
p、q、%Z には、直角三角形の関係があります(図6)。p は銅損から、%Z は Vs から求め、q は三平方の定理で出します。
図6 p、q、%Z は直角三角形の3辺。短絡試験の2つの値から全部決まる
p=PnPc×100 [%]q=%Z2−p2 [%]
短絡電流の求め方
変圧器の二次側の端子で短絡事故が起きたとき、流れる電流を短絡電流 Is といいます。事故のとき、定格電圧 Vn がすべて変圧器のインピーダンスにかかるとすると、次のようになります。
Vn=ZIsVs=ZInInIs=VsVn=%Z100
これより、短絡電流は次の式で求められます。
Is=In×%Z100 [A]
1主幹ブレーカー2分岐ブレーカー3カバー- 主幹ブレーカー 家全体の電気を入り切りする
- 分岐ブレーカー 部屋ごとの回路を守る
- カバー 開けるとブレーカーが並ぶ
図7 ブレーカーの遮断容量は、その場所の短絡電流で決まる(写真はイメージ)
図8 %Z が小さい変圧器ほど、端子を短絡したときの電流は大きい
ブレーカーに「遮断容量 ○ kA」と書いてあるのは、この短絡電流を安全に切れる大きさを表しています。遮断器は、取り付ける場所に流れうる短絡電流より大きな遮断容量が必要です(図7)。
解答と解説を見る
低圧側の定格電流は、三相の式で求めます。
In=3×210300×103≒825 [A]短絡電流は、定格電流の 100/%Z 倍です。
Is=In×%Z100=825×4.0100≒20.6×103 [A]答え:約 20.6 kA
定格電流の 25 倍にもなる値です。
試験の結果から等価回路の定数とp・qを求める
2つの試験の結果を使い分けると、簡易等価回路の定数がすべて出ます(図9)。
図9 簡易等価回路の定数は、2つの試験から分けて求める
- 励磁回路(g0、b0):無負荷試験の値から求める(前の節の式)
- 直列部分(r、x):短絡試験の値から求める
短絡試験は高圧側で行ったので、r と x も高圧側から見た値になります。
r=In2Pc [Ω]z=InVs [Ω]x=z2−r2 [Ω]
例題2の変圧器なら、高圧側の定格電流は 20×103/3300≒6.06 [A] なので、r≒9.53 [Ω]、z≒21.8 [Ω]、x≒19.6 [Ω] となります。低圧側から見た値に直すには、一次換算の逆で、巻数比の2乗で割ります。
そして、p と q が、電圧変動率の近似式にそのまま入ります。
ε≒pcosθ+qsinθ
解答と解説を見る
p は例題2で求めた 1.75 % です。q は三平方の定理で求めます。
q=4.02−1.752≒3.60 [%]力率 0.8 のとき、sinθ=1−0.82=0.6 です。
ε≒1.75×0.8+3.60×0.6=1.40+2.16≒3.56 [%]答え:約 3.56 %
力率が 1 なら ε≒p=1.75 % で、半分ほどに下がります。
巻線抵抗の測定と温度上昇試験
巻線抵抗測定は、直流で巻線の抵抗を測ります。交流ではリアクタンスが混ざってしまうからです。銅の抵抗は温度で変わるので、測った温度 t [∘C] の値 Rt を、基準温度の 75 ℃ の値に直します。
R75=Rt×234.5+t234.5+75 [Ω]
たとえば、30 ℃ で 1.20 Ω なら、R75=1.20×309.5/264.5≒1.40 [Ω] です。温度が上がると抵抗が増えるので、75 ℃ の値は測った値より大きくなります。
温度上昇試験は、変圧器を実際の運転に近い状態で動かし、巻線や油の温度がどれだけ上がるかを調べる試験です。大きな変圧器で本物の負荷をつなぐと、莫大な電力が要ります(工場の受変電設備は図11)。
そこで使われるのが返還負荷法です。同じ変圧器を2台用意して向かい合わせにつなぎ、補助電源で定格電流を循環させます(図10)。電源から取るのは、2台の損失ぶんだけで済みます。
図10 返還負荷法。大きな負荷を用意せず、損失分の電力だけで温度上昇を調べる
1キュービクル2油入変圧器3コンサベータ- キュービクル 受電設備を収める箱
- 油入変圧器 放熱器で冷やす
- コンサベータ 油の膨張を受ける円筒
図11 工場の受変電設備。大型の変圧器は試験でも電力が大きい(写真はイメージ)
よくある質問
無負荷試験は、なぜ低圧側に電圧を加えるのですか。
低圧側のほうが電圧が低く、計器の扱いも絶縁も楽だからです。高圧側から加えても結果の損失は同じですが、高電圧の取り扱いは危険で、設備も大がかりになります。短絡試験で逆に高圧側から加えるのは、定格電流が小さく、電圧を測りやすいためです。
短絡試験で、変圧器は壊れませんか。
壊れません。短絡試験で流すのは定格電流までで、加える電圧もわずか数 % です。事故のときの短絡電流(定格の数十倍)が流れるわけではありません。電圧を上げすぎないことだけが条件です。
鉄損と無負荷損、銅損と負荷損は、同じものですか。
試験では、ほぼ同じものとして扱います。無負荷試験で測った損失を無負荷損(鉄損)、短絡試験で測った損失を負荷損(銅損)と呼びます。電験三種の問題では、どちらの呼び方でも同じ値として計算します。
%Zとインピーダンス電圧は、何が違うのですか。
インピーダンス電圧 Vs は電圧そのもの(単位は V)で、%Z はそれを定格電圧で割った百分率(単位は %)です。変圧器の大きさが違っても比べられるように、割合にしたものが %Z です。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
無負荷試験で、どちらの側にどんな電圧を加え、反対側はどうしますか?
無負荷試験の電力計の値は、何を表しますか?なぜですか?
鉄損です。電流が小さく、銅損が無視できるためです。
短絡試験で、電圧はどこまで上げますか?
短絡試験の電力計の値は、何を表しますか?
%Z を求める式は?
%Z=Vs/Vn×100 です。
短絡電流は、定格電流の何倍ですか?
100/%Z 倍です。Is=In×100/%Z です。
まとめ
- 変圧器の試験は、巻線抵抗測定・無負荷試験・短絡試験・温度上昇試験の4つ
- 無負荷試験は、低圧側に定格電圧、高圧側は開放。電力計の値が鉄損、電流が無負荷電流
- 短絡試験は、低圧側を短絡、高圧側に定格電流。電圧がインピーダンス電圧 Vs、電力計の値が銅損
- %Z=Vs/Vn×100、Is=In×100/%Z、p=Pc/Pn×100、q=%Z2−p2
- 試験の結果から、等価回路の定数と電圧変動率まで求められる
試験で測った鉄損と銅損を使って、変圧器の効率を計算するのが、次の変圧器の損失と効率です。試験の結果をどう使うか迷ったら、電圧変動率と変圧器の等価回路の記事に戻って確かめましょう。