変圧器の並行運転|並行運転の条件と負荷分担、循環電流の求め方
電験三種の変圧器の並行運転を、並行運転の条件と負荷分担を中心に図解で整理します。循環電流が流れる理由、%インピーダンスの逆比で決まる分担、角変位で並べられる結線を、計算の例題4問で確かめながら学びます。

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前の記事では、単相変圧器を Y や Δ に結線して三相をつくりました。工場の負荷が増えて容量が足りなくなったとき、大きな変圧器に取り替えるのではなく、同じ母線に2台目をつないで並行運転をすることがあります。ただし、何でも並べてよいわけではなく、条件がそろわないと循環電流が流れ、負荷も容量に見合って分かれません。この記事では、並行運転の条件、負荷分担の求め方、並べられる結線を、例題で確かめます。
- 並行運転とは
- 一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぐ
- 並行運転の条件
- 極性・巻数比・%Z・r/x 比(三相は相回転と角変位)
- 循環電流
- 二次の電圧差が、2台の中を回る
- 負荷分担
- 共通の容量に直した %Z の逆比で分かれる
- 最大負荷
- 先に満杯になる1台が上限を決める
- 並べられる結線
- 角変位が同じものだけ並べられる
変圧器の並行運転とは?なぜ2台を並べるのか
並行運転は、2台以上の変圧器の一次側どうし、二次側どうしを、それぞれ同じ母線につないで、1つの負荷に供給する運転のことです(図1)。
並べる理由は、おもに次の3つです。
- 増設:負荷が増えたとき、既設を残したまま2台目を足せる(図2)
- 信頼性:1台が点検や故障で止まっても、もう1台で供給を続けられる
- 効率:軽負荷のときは1台を止めて、鉄損を減らせる

- 既設 以前からの変圧器
- 増設 負荷の増加に合わせて追加
- ケーブル 既設の母線につながる
並行運転の条件を整理する
並行運転の条件は、何のためにそろえるかで2つに分けると覚えやすくなります。
- 循環電流を流さないため:極性、巻数比(定格の二次電圧)、三相では相回転の方向と角変位
- 負荷を容量に見合って分けるため:%インピーダンス(容量に反比例)、巻線の抵抗とリアクタンスの比
| 条件 | そろわないと | 対策 |
|---|---|---|
| 極性 | 二次が逆向きにつながり短絡する | 端子の記号をそろえる |
| 巻数比 | 二次電圧の差で循環電流が流れる | 巻数比を等しくする |
| %Z | 容量に見合わない分担になる | 容量に反比例させる |
| r/x 比 | 電流の位相がずれ、合計が減る | r/x を等しくする |
| 三相の相回転・角変位 | 相どうしが短絡する | 同じ結線グループを選ぶ |
極性は、単相変圧器の一次と二次の端子の向きのことです。つなぐ端子を間違えると、2台の二次が逆向きに母線へつながれて、大きな短絡電流が流れます。

- 端子 ケーブルをつなぐ部分
- ブッシング 磁器で絶縁する
- 本体 油入変圧器のタンク
巻数比がちがうと循環電流が流れる
巻数比がちがうと、無負荷のときでも二次の電圧に差が出ます。2台の二次は同じ母線につながっているので、その差 が、2台の巻線のインピーダンスを通して電流を流します。これが循環電流で、負荷には流れず、2台の巻線の中だけを回ります(図4)。
循環電流の大きさは、電圧の差を、2台の%インピーダンスの和で割った値です。
ここで は定格の二次電圧、 は定格電流(2台の容量と%Zが等しいとして)です。電圧のわずかな差でも、%Z が数 % と小さいので、循環電流は定格電流の1割を超えることがあります。この電流は負荷に仕事をせず、巻線を熱するだけの損失になります。%インピーダンスはパーセントインピーダンスの記事で確かめましょう。
解答と解説を見る
2台の%インピーダンスの和は です。
定格電流は、二次側の線間電圧 210 V で求めます。
答え:定格電流の 12.5 %、約 34.4 A
負荷分担は %Z の逆比で決まる
条件がそろった2台に負荷をかけると、それぞれの電流は、二次側の電圧降下が等しくなるように分かれます。電圧降下は (負荷の割合)なので、%Z が小さい機ほど、多くの負荷を受け持ちます。
2台の容量が等しいときは、%Z の逆比で分かれます。容量がちがうときは、次のように、まず同じ容量の基準にそろえてから比べます(図5)。
基準にそろえた後の%Z を 、 とすると、全負荷 のうち、A と B の分担 、 は次のとおりです。
自分の%Z が小さいほど、相手の%Z が分子に来るので、分担が大きくなります。
解答と解説を見る
容量が等しいので、そのまま%Zの逆比で分けます。
A の分担割合が 60 % なので、A が定格 50 kV·A に達する全負荷が上限です。
答え:A は 48、B は 32 kV·A。上限は約 83.3 kV·A(100 kV·A には届かない)
解答と解説を見る
まず、Aの%Zを 150 kV·A 基準に直します。
次に、%Zの逆比で分けます。
答え:A は約 64.3 kV·A(定格の 85.7 %)、B は約 85.7 kV·A(定格の 57.1 %)
並行運転で出せる最大負荷と利用率
分担の割合は負荷の大きさに関係なく一定です。負荷を増やすと、分担の割合に対して定格に先に届く1台が現れ、そこが全体の上限になります。そのとき、もう1台にはまだ余裕があります。2台の容量の和に対する、実際に出せる最大負荷の割合が、並行運転の利用率です。

- ブッシング 高圧の端子
- 母線 2台に共通
- 1台目 放熱器付き
- 2台目 同じ母線につなぐ
解答と解説を見る
150 kV·A 基準で、A の%Zは 6.0 %、B は 4.5 % です。分担比は次のとおりです。
全負荷 のとき、A は 、B は を受け持ちます。定格に対する割合は次のとおりです。
A のほうが先に 1(満杯)になります。A が 75 kV·A になるときの全負荷が上限です。
このとき B は 100 kV·A で、定格 150 kV·A には余裕があります。
答え:最大 175 kV·A、2台の容量の和の約 77.8 %
並べられる結線を角変位で見分ける
三相変圧器では、一次と二次の位相のずれ(角変位)が、並べられるかどうかの決め手になります。角変位がちがう2台を並べると、二次の線間電圧に位相差が生じ、大きな循環電流が流れます。結線の記号の最後の数字(Dd0 の 0、Yd1 の 1 など)で比べます(図8)。
組み合わせの判定は、次の表のとおりです。
| 組み合わせ | 角変位の差 | 並行運転 |
|---|---|---|
| Dd0 と Yy0 | 0° | できる |
| Yd1 と Yd1 | 0° | できる |
| Dd0 と Yd1 | 30° | できない |
| Yd1 と Dy11 | 60° | できない |
Dd0 と Yy0 は、巻線の結び方がちがっても、角変位が同じなので並べられます。一方、Y-Δ 結線と Δ-Δ 結線は、角変位が 30° ちがうので並べられません。

- 母線 2台に電力を分ける
- ブッシング 三相の3線
- 1台目 三相変圧器
- 2台目 角変位をそろえて並べる
並行運転の計算の手順
計算問題は、次の式を順に使えば解けます。
| 求めるもの | 式 |
|---|---|
| 循環電流の割合 | |
| 基準容量への換算 | |
| A の負荷分担 | |
| 最大負荷 | 先に満杯になる機で決まる |
容量がちがう2台なら、先に基準容量への換算をします。
よくある質問
並行運転の条件が、少しだけ外れていても運転できますか。
巻数比や%Zの差が小さければ、運転できることもあります。ただし、循環電流や分担の偏りが生じるので、電験の問題では「条件を満たす」ことを前提に考えます。極性、相回転、角変位の不一致は、短絡につながるので許されません。
負荷分担は、なぜ容量の比ではなく %Z の逆比なのですか。
並列につながれた2台は、二次の電圧降下が等しくなるように電流が分かれるからです。降下は %Z に比例するので、%Z が大きい機は少しの電流で同じ降下になり、負荷を少ししか受け持ちません。%Z を共通の容量に直せば、容量の違いも含めて、逆比で分かれます。
容量が大きくちがう2台でも、並べられますか。
条件がそろえば並べられますが、容量がかけ離れると、%Z や r/x 比をそろえにくくなります。また、例題4のように、利用率が下がりやすくなります。電験の計算では、条件がそろっているものとして計算します。
単相変圧器どうしと、三相変圧器どうしで、条件はちがいますか。
極性が、三相では相回転と角変位に置き換わる点が、ちがいます。巻数比、%Z、r/x 比は、どちらも同じです。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
並行運転とは、どのような運転ですか?
2台以上の変圧器の一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぎ、1つの負荷に供給する運転です。
循環電流を流さないためにそろえる条件は?
極性、巻数比、三相では相回転の方向と角変位です。
負荷を容量に見合って分けるためにそろえる条件は?
%Z(容量に反比例)と、巻線の r/x 比です。
容量のちがう2台の負荷分担は、どう求めますか?
%Z を共通の容量に直し、その逆比で全負荷を分けます。
並行運転の最大負荷は、何で決まりますか?
分担の割合から、先に定格に達する1台で決まります。
Yd1 と並べられるのは、Dd0 と Dy11 のどちらですか?
どちらも並べられません。Yd1 と同じ角変位(Yd1)のものだけです。
まとめ
- 並行運転は、一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぐ運転で、増設や信頼性のために使う
- 循環電流を防ぐには、極性、巻数比、相回転、角変位をそろえる
- 負荷を容量に見合って分けるには、%Z と r/x 比をそろえる
- 負荷分担は、共通の容量に直した%Zの逆比で決まる
- 先に満杯になる1台が最大負荷を決め、容量の和には届かない
結線の組み合わせと角変位は、変圧器の結線の記事で確かめられます。%Z の測り方は変圧器の試験、単位の考え方はパーセントインピーダンスに戻って見直しましょう。








