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変圧器の並行運転|並行運転の条件と負荷分担、循環電流の求め方

電験三種の変圧器の並行運転を、並行運転の条件と負荷分担を中心に図解で整理します。循環電流が流れる理由、%インピーダンスの逆比で決まる分担、角変位で並べられる結線を、計算の例題4問で確かめながら学びます。

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配電室の床に、同じ形の黒い変圧器が2台並び、上の銅色の母線に太いケーブルでつながっている写真
この記事の目次
  1. 変圧器の並行運転とは?なぜ2台を並べるのか
  2. 並行運転の条件を整理する
  3. 巻数比がちがうと循環電流が流れる
  4. 負荷分担は %Z の逆比で決まる
  5. 並行運転で出せる最大負荷と利用率
  6. 並べられる結線を角変位で見分ける
  7. 並行運転の計算の手順
  8. よくある質問
  9. 並行運転の条件が、少しだけ外れていても運転できますか。
  10. 負荷分担は、なぜ容量の比ではなく %Z の逆比なのですか。
  11. 容量が大きくちがう2台でも、並べられますか。
  12. 単相変圧器どうしと、三相変圧器どうしで、条件はちがいますか。
  13. まとめ
図解でわかる 電験三種 機械 2 変圧器 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 機械 2
変圧器
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前の記事では、単相変圧器を Y や Δ に結線して三相をつくりました。工場の負荷が増えて容量が足りなくなったとき、大きな変圧器に取り替えるのではなく、同じ母線に2台目をつないで並行運転をすることがあります。ただし、何でも並べてよいわけではなく、条件がそろわないと循環電流が流れ、負荷も容量に見合って分かれません。この記事では、並行運転の条件、負荷分担の求め方、並べられる結線を、例題で確かめます。

変圧器の並行運転の全体像
  • 並行運転とは
    • 一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぐ
  • 並行運転の条件
    • 極性・巻数比・%Z・r/x 比(三相は相回転と角変位)
  • 循環電流
    • 二次の電圧差が、2台の中を回る
  • 負荷分担
    • 共通の容量に直した %Z の逆比で分かれる
  • 最大負荷
    • 先に満杯になる1台が上限を決める
  • 並べられる結線
    • 角変位が同じものだけ並べられる

変圧器の並行運転とは?なぜ2台を並べるのか

並行運転は、2台以上の変圧器の一次側どうし、二次側どうしを、それぞれ同じ母線につないで、1つの負荷に供給する運転のことです(図1)。

一次母線 二次母線 変圧器 A 変圧器 B 負荷 2台で1つの負荷を分け合う
図1 並行運転。一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぐ

並べる理由は、おもに次の3つです。

  • 増設:負荷が増えたとき、既設を残したまま2台目を足せる(図2)
  • 信頼性:1台が点検や故障で止まっても、もう1台で供給を続けられる
  • 効率:軽負荷のときは1台を止めて、鉄損を減らせる
工場の敷地に、少し古い灰色の変圧器盤と、新しい明るい灰色の変圧器盤が並んで置かれている写真
  1. 既設 以前からの変圧器
  2. 増設 負荷の増加に合わせて追加
  3. ケーブル 既設の母線につながる
図2 既設の変圧器の隣に増設した変圧器(写真はイメージ)

並行運転の条件を整理する

並行運転の条件は、何のためにそろえるかで2つに分けると覚えやすくなります。

  1. 循環電流を流さないため:極性、巻数比(定格の二次電圧)、三相では相回転の方向と角変位
  2. 負荷を容量に見合って分けるため:%インピーダンス(容量に反比例)、巻線の抵抗とリアクタンスの比
条件そろわないと対策
極性二次が逆向きにつながり短絡する端子の記号をそろえる
巻数比二次電圧の差で循環電流が流れる巻数比を等しくする
%Z容量に見合わない分担になる容量に反比例させる
r/x 比電流の位相がずれ、合計が減るr/x を等しくする
三相の相回転・角変位相どうしが短絡する同じ結線グループを選ぶ

極性は、単相変圧器の一次と二次の端子の向きのことです。つなぐ端子を間違えると、2台の二次が逆向きに母線へつながれて、大きな短絡電流が流れます。

変圧器の上に3本の白い磁器製ブッシングが並び、それぞれの先端に黒いケーブルが接続されている写真
  1. 端子 ケーブルをつなぐ部分
  2. ブッシング 磁器で絶縁する
  3. 本体 油入変圧器のタンク
図3 変圧器のブッシングと端子。並べる2台の端子の対応を、そろえてからつなぐ(写真はイメージ)

巻数比がちがうと循環電流が流れる

巻数比がちがうと、無負荷のときでも二次の電圧に差が出ます。2台の二次は同じ母線につながっているので、その差 ΔV\Delta V が、2台の巻線のインピーダンスを通して電流を流します。これが循環電流で、負荷には流れず、2台の巻線の中だけを回ります(図4)。

変圧器 A VA 高い 変圧器 B VB 低い 循環電流 差 ΔV = VA − VB が電流を流す 負荷が無くても流れ、巻線を発熱させる
図4 循環電流。二次の電圧差が、2台の巻線の中だけに電流を流す

循環電流の大きさは、電圧の差を、2台の%インピーダンスの和で割った値です。

IcIn=ΔV/Vn%ZA+%ZB\dfrac{I_c}{I_n} = \dfrac{\Delta V/V_n}{\%Z_A + \%Z_B}

ここで VnV_n は定格の二次電圧、InI_n は定格電流(2台の容量と%Zが等しいとして)です。電圧のわずかな差でも、%Z が数 % と小さいので、循環電流は定格電流の1割を超えることがあります。この電流は負荷に仕事をせず、巻線を熱するだけの損失になります。%インピーダンスはパーセントインピーダンスの記事で確かめましょう。

解答と解説を見る

2台の%インピーダンスの和は 4+4=8 %4 + 4 = 8\ \% です。

IcIn=18=0.125(12.5 %)\dfrac{I_c}{I_n} = \dfrac{1}{8} = 0.125 \quad (12.5\ \%)

定格電流は、二次側の線間電圧 210 V で求めます。

In=100×1033×210≒274.9 [A]Ic=274.9×0.125≒34.4 [A]\begin{gathered} I_n = \dfrac{100 \times 10^3}{\sqrt{3} \times 210} \fallingdotseq 274.9\ \mathrm{[A]} \\[4pt] I_c = 274.9 \times 0.125 \fallingdotseq 34.4\ \mathrm{[A]} \end{gathered}

答え:定格電流の 12.5 %、約 34.4 A

負荷分担は %Z の逆比で決まる

条件がそろった2台に負荷をかけると、それぞれの電流は、二次側の電圧降下が等しくなるように分かれます。電圧降下は %Z×\%Z \times(負荷の割合)なので、%Z が小さい機ほど、多くの負荷を受け持ちます。

2台の容量が等しいときは、%Z の逆比で分かれます。容量がちがうときは、次のように、まず同じ容量の基準にそろえてから比べます(図5)。

A:75 kV·A %Z = 3.0 % A:150 kV·A 基準 %Z′ = 6.0 % × 2 %Z′ = %Z × 基準容量 ÷ 自分の容量 3.0 × 150 ÷ 75 = 6.0 % B(150 kV·A、4.5 %)はそのまま使う
図5 %Z を共通の容量に直す。容量が半分の機は、同じ電流で電圧降下が 2 倍になる

基準にそろえた後の%Z を %ZA′\%Z_A'、%ZB′\%Z_B' とすると、全負荷 PP のうち、A と B の分担 PaP_a、PbP_b は次のとおりです。

Pa=P×%ZB′%ZA′+%ZB′Pb=P×%ZA′%ZA′+%ZB′\begin{gathered} P_a = P \times \dfrac{\%Z_B'}{\%Z_A' + \%Z_B'} \\[6pt] P_b = P \times \dfrac{\%Z_A'}{\%Z_A' + \%Z_B'} \end{gathered}

自分の%Z が小さいほど、相手の%Z が分子に来るので、分担が大きくなります。

容量が等しい2台(%Z は A 3.0 %、B 4.5 %) A 60 % B 40 % A : B = 1/3 : 1/4.5 = 3 : 2 %Z が小さい A が、多く受け持つ 全負荷を 100 % とした割合
図6 %Z の逆比で分かれる。%Z が小さい機ほど、負荷を多く受け持つ
解答と解説を見る

容量が等しいので、そのまま%Zの逆比で分けます。

Pa=80×4.53.0+4.5=48 [kV⋅A]Pb=80×3.03.0+4.5=32 [kV⋅A]\begin{gathered} P_a = 80 \times \dfrac{4.5}{3.0 + 4.5} = 48\ \mathrm{[kV \cdot A]} \\[4pt] P_b = 80 \times \dfrac{3.0}{3.0 + 4.5} = 32\ \mathrm{[kV \cdot A]} \end{gathered}

A の分担割合が 60 % なので、A が定格 50 kV·A に達する全負荷が上限です。

Pmax⁡=500.6≒83.3 [kV⋅A]P_{\max} = \dfrac{50}{0.6} \fallingdotseq 83.3\ \mathrm{[kV \cdot A]}

答え:A は 48、B は 32 kV·A。上限は約 83.3 kV·A(100 kV·A には届かない)

解答と解説を見る

まず、Aの%Zを 150 kV·A 基準に直します。

%ZA′=3.0×15075=6.0 [%]\%Z_A' = 3.0 \times \dfrac{150}{75} = 6.0\ \mathrm{[\%]}

次に、%Zの逆比で分けます。

Pa=150×4.56.0+4.5≒64.3 [kV⋅A]Pb=150×6.06.0+4.5≒85.7 [kV⋅A]\begin{gathered} P_a = 150 \times \dfrac{4.5}{6.0 + 4.5} \fallingdotseq 64.3\ \mathrm{[kV \cdot A]} \\[4pt] P_b = 150 \times \dfrac{6.0}{6.0 + 4.5} \fallingdotseq 85.7\ \mathrm{[kV \cdot A]} \end{gathered}

答え:A は約 64.3 kV·A(定格の 85.7 %)、B は約 85.7 kV·A(定格の 57.1 %)

並行運転で出せる最大負荷と利用率

分担の割合は負荷の大きさに関係なく一定です。負荷を増やすと、分担の割合に対して定格に先に届く1台が現れ、そこが全体の上限になります。そのとき、もう1台にはまだ余裕があります。2台の容量の和に対する、実際に出せる最大負荷の割合が、並行運転の利用率です。

配電室に、同じ形の灰色の変圧器が2台、母線の下に並んで置かれている写真
  1. ブッシング 高圧の端子
  2. 母線 2台に共通
  3. 1台目 放熱器付き
  4. 2台目 同じ母線につなぐ
図7 並行運転する2台の変圧器。%Z がそろわないと、片方だけが先に満杯になる(写真はイメージ)
解答と解説を見る

150 kV·A 基準で、A の%Zは 6.0 %、B は 4.5 % です。分担比は次のとおりです。

Pa:Pb=16.0:14.5=3:4P_a : P_b = \dfrac{1}{6.0} : \dfrac{1}{4.5} = 3 : 4

全負荷 PP のとき、A は 3P/73P/7、B は 4P/74P/7 を受け持ちます。定格に対する割合は次のとおりです。

A: 3P/775≈0.00571PB: 4P/7150≈0.00381P\begin{gathered} \text{A}:\ \dfrac{3P/7}{75} \approx 0.00571P \\[4pt] \text{B}:\ \dfrac{4P/7}{150} \approx 0.00381P \end{gathered}

A のほうが先に 1(満杯)になります。A が 75 kV·A になるときの全負荷が上限です。

Pmax⁡=75×73=175 [kV⋅A]P_{\max} = 75 \times \dfrac{7}{3} = 175\ \mathrm{[kV \cdot A]}

このとき B は 100 kV·A で、定格 150 kV·A には余裕があります。

17575+150≒0.778(77.8 %)\dfrac{175}{75 + 150} \fallingdotseq 0.778 \quad (77.8\ \%)

答え:最大 175 kV·A、2台の容量の和の約 77.8 %

並べられる結線を角変位で見分ける

三相変圧器では、一次と二次の位相のずれ(角変位)が、並べられるかどうかの決め手になります。角変位がちがう2台を並べると、二次の線間電圧に位相差が生じ、大きな循環電流が流れます。結線の記号の最後の数字(Dd0 の 0、Yd1 の 1 など)で比べます(図8)。

Dd0、Yy0(0°) Yd1(30° 遅れ) Dy11(30° 進み) 同じ色どうしだけ 並べられる
図8 角変位。同じ向きの結線どうしは並べられ、向きがちがうと位相差が生じる

組み合わせの判定は、次の表のとおりです。

組み合わせ角変位の差並行運転
Dd0 と Yy00°できる
Yd1 と Yd10°できる
Dd0 と Yd130°できない
Yd1 と Dy1160°できない

Dd0 と Yy0 は、巻線の結び方がちがっても、角変位が同じなので並べられます。一方、Y-Δ 結線と Δ-Δ 結線は、角変位が 30° ちがうので並べられません。

変電所の屋外に、同じ形の大きな変圧器が2台並び、上の鉄構から電線が引き込まれている写真
  1. 母線 2台に電力を分ける
  2. ブッシング 三相の3線
  3. 1台目 三相変圧器
  4. 2台目 角変位をそろえて並べる
図9 変電所で並んで運転される2台の三相変圧器(写真はイメージ)

並行運転の計算の手順

計算問題は、次の式を順に使えば解けます。

求めるもの式
循環電流の割合ΔV/Vn%ZA+%ZB\dfrac{\Delta V/V_n}{\%Z_A + \%Z_B}
基準容量への換算%Z′=%Z×P基準P自分\%Z' = \%Z \times \dfrac{P_{\text{基準}}}{P_{\text{自分}}}
A の負荷分担P×%ZB′%ZA′+%ZB′P \times \dfrac{\%Z_B'}{\%Z_A' + \%Z_B'}
最大負荷先に満杯になる機で決まる

容量がちがう2台なら、先に基準容量への換算をします。

よくある質問

並行運転の条件が、少しだけ外れていても運転できますか。

巻数比や%Zの差が小さければ、運転できることもあります。ただし、循環電流や分担の偏りが生じるので、電験の問題では「条件を満たす」ことを前提に考えます。極性、相回転、角変位の不一致は、短絡につながるので許されません。

負荷分担は、なぜ容量の比ではなく %Z の逆比なのですか。

並列につながれた2台は、二次の電圧降下が等しくなるように電流が分かれるからです。降下は %Z に比例するので、%Z が大きい機は少しの電流で同じ降下になり、負荷を少ししか受け持ちません。%Z を共通の容量に直せば、容量の違いも含めて、逆比で分かれます。

容量が大きくちがう2台でも、並べられますか。

条件がそろえば並べられますが、容量がかけ離れると、%Z や r/x 比をそろえにくくなります。また、例題4のように、利用率が下がりやすくなります。電験の計算では、条件がそろっているものとして計算します。

単相変圧器どうしと、三相変圧器どうしで、条件はちがいますか。

極性が、三相では相回転と角変位に置き換わる点が、ちがいます。巻数比、%Z、r/x 比は、どちらも同じです。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

並行運転とは、どのような運転ですか?

2台以上の変圧器の一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぎ、1つの負荷に供給する運転です。

循環電流を流さないためにそろえる条件は?

極性、巻数比、三相では相回転の方向と角変位です。

負荷を容量に見合って分けるためにそろえる条件は?

%Z(容量に反比例)と、巻線の r/x 比です。

容量のちがう2台の負荷分担は、どう求めますか?

%Z を共通の容量に直し、その逆比で全負荷を分けます。

並行運転の最大負荷は、何で決まりますか?

分担の割合から、先に定格に達する1台で決まります。

Yd1 と並べられるのは、Dd0 と Dy11 のどちらですか?

どちらも並べられません。Yd1 と同じ角変位(Yd1)のものだけです。

まとめ

  • 並行運転は、一次どうし、二次どうしを同じ母線につなぐ運転で、増設や信頼性のために使う
  • 循環電流を防ぐには、極性、巻数比、相回転、角変位をそろえる
  • 負荷を容量に見合って分けるには、%Z と r/x 比をそろえる
  • 負荷分担は、共通の容量に直した%Zの逆比で決まる
  • 先に満杯になる1台が最大負荷を決め、容量の和には届かない

結線の組み合わせと角変位は、変圧器の結線の記事で確かめられます。%Z の測り方は変圧器の試験、単位の考え方はパーセントインピーダンスに戻って見直しましょう。

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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