変圧器の巻数比の記事では、損失のない理想変圧器を考えました。実物の変圧器には巻線の抵抗や漏れ磁束、鉄心の損失があり、これらを回路の部品として表したものが等価回路です。電験三種の機械では、二次側の抵抗とリアクタンスを a2 倍して一次側へ換算し、励磁回路を電源側へ移した簡易等価回路で解くのが基本です。この記事では、部品の意味、一次換算、簡易等価回路の使い方を、図と例題で順に確認します。
変圧器の等価回路の全体像
- 変圧器の等価回路とは
- 理想変圧器に、実物とのずれを回路の部品として足したもの
- 等価回路の部品
- 直列は巻線抵抗 r と漏れリアクタンス x、並列は励磁回路 g0・b0
- 一次換算・二次換算
- 二次側の r2、x2 は一次側から見ると a2 倍
- 簡易等価回路
- 励磁回路を電源側へ移し、r=r1+a2r2、x=x1+a2x2
- 例題と間違えやすいところ
変圧器の等価回路とは?理想変圧器との違い
変圧器の等価回路とは、実物の変圧器のふるまいを、抵抗・リアクタンス・理想変圧器といった回路の部品に置き換えて表した回路です。鉄心や巻線の中で起きていることを、ふつうの回路計算として扱えるようになります。
理想変圧器は、巻線に抵抗がなく、磁束がすべて鉄心を通り、鉄心の損失もなく、磁束をつくるための電流も要らない、という仮定の変圧器でした。実物はこの 4 点で理想とずれます。そのずれを一つずつ部品に置き換えたものが、等価回路です(図1)。
図1 理想変圧器とのずれを、回路の部品に置き換える
電流の通り道に生じるずれ(巻線の抵抗と漏れ磁束)は、負荷電流が流れる経路に直列に入れます。巻線の抵抗でも漏れ磁束のはたらきでも、電流が流れると電圧が下がるからです。鉄心に関するずれ(磁束をつくる電流と鉄損)は、電圧が加わる鉄心の部分に並列に入れます。鉄心の磁束は加えた電圧で決まり、負荷電流とは別に流れる電流で保たれるためです。
実物の変圧器では、巻線と鉄心で生じた損失はすべて熱になります。大きな変圧器が放熱器を何枚も並べているのは、その熱を逃がすためです(図2)。等価回路の抵抗やコンダクタンスは、この熱の元になる部分を表しています。
1ブッシング2上部の配管3放熱器4本体タンク- ブッシング 巻線と外部の電線をつなぐ端子の碍管
- 上部の配管 本体と放熱器の間で、熱を運ぶ油が通る管
- 放熱器 板状の部品を並べて表面積を広げ、熱を空気へ逃がす
- 本体タンク 鉄心と巻線が入っている部分
図2 変電所の大型変圧器。巻線と鉄心で生じた損失は熱になり、放熱器から逃がす(写真はイメージ)
等価回路の部品:巻線抵抗・漏れリアクタンス・励磁回路
等価回路の部品は 6 つです。添字の 1 は一次側、2 は二次側を表します。
| 部品 | 記号 | 表すもの | つなぎ方 |
|---|
| 巻線抵抗 | r1、r2 | 巻線の導体の抵抗。銅損の原因 | 直列 |
| 漏れリアクタンス | x1、x2 | 相手の巻線と鎖交しない漏れ磁束のはたらき | 直列 |
| 励磁コンダクタンス | g0 | 鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)を表す | 並列 |
| 励磁サセプタンス | b0 | 鉄心に磁束をつくる電流(磁化電流)を表す | 並列 |
g0 と b0 をあわせて励磁回路(励磁アドミタンス)と呼びます。
巻線抵抗と漏れリアクタンス
巻線は導体を巻いたものなので、抵抗があります。電流 I が流れると、I2r の熱(銅損)が生じ、Ir だけ電圧が下がります。
また、一次巻線がつくる磁束のすべてが鉄心を通って二次巻線と鎖交するわけではありません。一部は鉄心の外を通り、相手の巻線と鎖交しません。これが漏れ磁束で、巻線にインダクタンスがあるのと同じはたらきをします。このはたらきを表すのが漏れリアクタンス x1、x2 です。抵抗とリアクタンスをあわせて、巻線のインピーダンス Z˙=r+jx と考えます。
1銅の導体2スペーサ3巻線の内側- 銅の導体 巻線をつくる平たい銅線。この抵抗が r
- スペーサ 縦に並ぶ木片。巻線の間にすき間をつくる
- 巻線の内側 円筒の内側。組み立てると、ここに鉄心の脚が通る
図3 変圧器の巻線。導体の抵抗が r のもとに、漏れ磁束が x のもとになる(写真はイメージ)
励磁回路と励磁電流
二次側を開放して一次巻線に電圧を加えても、一次側には少しだけ電流が流れます。この電流が励磁電流 I0 です。励磁電流は、鉄心に磁束をつくるために流れ、次の二つに分けられます。
- 磁化電流 Iϕ:磁束をつくる電流。電圧 E1 より位相が 90° 遅れる。仕事はしない
- 鉄損電流 Ii:鉄損をまかなう電流。電圧 E1 と同相。熱になるのはこちら
励磁アドミタンスを Y˙0=g0−jb0 とすると、
I˙0=Y˙0E˙1=(g0−jb0)E˙1
です。g0 を流れる電流が鉄損電流、b0 を流れる電流が磁化電流です。
Ii=g0E1Iϕ=b0E1I0=Ii2+Iϕ2
励磁電流は、定格電流に比べるとごく小さい値です(一般に数%以下)。また、鉄損 Pi=g0E12 は、電圧と周波数が決まればほぼ一定で、負荷の大きさによって変わりません。
鉄損を減らすために、鉄心は薄いけい素鋼板を絶縁して重ねた積層鉄心にします。板が薄いほど渦電流が流れにくくなり、渦電流損が減ります(図4)。
1重ね継ぎの段2鋼板の端面3板の上面- 重ね継ぎの段 鋼板を互い違いに重ねた継ぎ目
- 鋼板の端面 薄い鋼板が何枚も重なっている
- 板の上面 けい素鋼板の面。板どうしは絶縁して重ねる
図4 積層鉄心の端面。薄いけい素鋼板を重ねて、鉄損を減らす(写真はイメージ)
励磁電流のベクトルは、図5のように描きます。電圧 E1 を基準にすると、鉄損電流 Ii は同じ向き、磁化電流 Iϕ は 90° 遅れた向きです。この 2 つのベクトル和が I0 で、E1 より θ0 だけ遅れます。
図5 励磁電流は、電圧と同相の鉄損電流と、90° 遅れの磁化電流の和
6 つの部品を理想変圧器とあわせると、図6の等価回路になります。一次側では、電源電圧 V˙1 から r1、x1 の電圧降下を引いたものが誘導起電力 E˙1 になり、励磁回路はこの E˙1 に並列に入ります。理想変圧器で a 分の 1 にした E˙2 から、x2、r2 の電圧降下を引いたものが二次電圧 V˙2 です。
V˙1=E˙1+I˙1(r1+jx1)E˙2=V˙2+I˙2(r2+jx2)
図6 理想変圧器に六つの部品を足した等価回路。励磁回路は一次側に並列に入る
なお、励磁回路の g0、b0 は二次側を開放した無負荷試験から、巻線の r、x は二次側を短絡した短絡試験から求めます。
一次換算・二次換算のやり方
図6には理想変圧器が入っていて、その前後で電圧と電流の大きさが違います。このままでは、一次側と二次側の値を混ぜて計算できません。そこで、二次側の値を「一次側から見た値」に置き換えると、理想変圧器が回路から消えて、ひとつながりの回路になります。これが一次換算です。巻数比 a=N1/N2 のとき、二次側の電圧と電流は、一次側から見ると次の値になります(変圧器の巻数比で扱った関係です)。
V2′=aV2I2′=aI2
二次側のインピーダンス Z2 は、一次側から見ると電圧を電流で割った値になり、a2 倍になります。
Z2′=I2′V2′=I2/aaV2=a2⋅I2V2=a2Z2
抵抗もリアクタンスも同じ比で換算するので、二次側の巻線抵抗とリアクタンスは次のとおりです。
r2′=a2r2x2′=a2x2
換算しても損失は変わりません。二次側の銅損は、換算の前後で次のように一致します。
I22r2=(aI2)2⋅a2r2=I2′2r2′
反対に、一次側の値を二次側へ寄せるのが二次換算です。電圧は 1/a 倍、電流は a 倍、インピーダンスは 1/a2 倍になります。どちらに寄せても答えは同じです。
| 量 | 一次換算 | 二次換算 |
|---|
| 電圧 | V2′=aV2 | V1′=V1/a |
| 電流 | I2′=I2/a | I1′=aI1 |
| 抵抗・リアクタンス・インピーダンス | a2 倍 | 1/a2 倍 |
| 電力・損失 | 変わらない | 変わらない |
二次側を一次換算した等価回路は、図7のようになります。理想変圧器がなくなり、r1、x1 から励磁回路、x2′、r2′、負荷 ZL′ まで、ひとつながりの回路です。この形を T 形等価回路と呼びます。
図7 T 形等価回路。二次側を一次換算すると理想変圧器が消え、ひとつながりの回路になる
換算で a2 倍になるのは、同じ電力でも、高圧側は小さな電流・高い電圧、低圧側は大きな電流・低い電圧になるからです(図8)。同じ巻線の抵抗でも、高圧側から見ると大きな値、低圧側から見ると小さな値になります。
1高圧側の碍管2低圧側の碍管3放熱器- 高圧側の碍管 背が高い。電圧が高く、電流は小さい
- 低圧側の碍管 太く短い。電圧が低く、大きな電流が流れる
- 放熱器 下に並ぶひだ状の部品。損失で生じた熱を逃がす
図8 変圧器の高圧側(上の大きな碍管)と低圧側(手前の太く短い碍管)。同じ電力でも、電圧と電流の大きさが逆になる(写真はイメージ)
簡易等価回路:励磁回路を電源側へ移す
T 形等価回路のままでは、励磁回路が r1、x1 と x2′、r2′ の間にはさまっていて、電流の計算が面倒です。励磁電流は負荷電流に比べてごく小さいので、励磁回路を電源側の端子へ移しても、計算結果はほとんど変わりません。こうして描き直した回路が簡易等価回路です(図9)。L 形等価回路と呼ぶ参考書もあります。
図9 簡易等価回路。励磁回路を電源側へ移すと、r と x を足して一つにできる
励磁回路を移すと、r1、x1 にも負荷電流 I2′ だけが流れることになります。同じ電流が流れる r1 と r2′ は、直列なので足し算できます。リアクタンスも同じです。
r=r1+r2′=r1+a2r2x=x1+x2′=x1+a2x2
合成インピーダンス Z˙=r+jx の大きさは次のとおりです。
Z=r2+x2
抵抗とリアクタンスは電流に対する電圧の位相が 90° ずれているので、単純に足さず、直角三角形の斜辺として求めます。直列回路の電流の求め方は、オームの法則と直列回路の考え方と同じです。
一次電流は、励磁電流と、負荷電流を一次側へ換算した電流の和です。
I˙1=I˙0+I˙2′
この Z は短絡試験で測れる値で、変圧器の定格電流が流れたときの電圧降下と深く関わります。定格電圧に対する、定格電流が流れたときの Z の電圧降下の割合が %インピーダンスです。くわしくは %インピーダンスと短絡電流の計算で確認できます。
例題と間違えやすいところ
簡易等価回路の問題は、次の 3 段階で解きます。まず二次側の値を a2 倍して一次側へ換算し、次に一次側の値と足し合わせ、最後に大きさと電流を求めます(図10)。
図10 簡易等価回路で解く三段階。まず二次側を a² 倍して一次側へ寄せる
解答と解説を見る
巻数比は a=6600/220=30 なので、a2=900 です。二次側の値を a2 倍して、一次側へ換算します。
r2′=a2r2=900×0.0020=1.8 [Ω]x2′=a2x2=900×0.0030=2.7 [Ω]一次側の値と足します。
r=r1+r2′=1.2+1.8=3.0 [Ω]x=x1+x2′=1.3+2.7=4.0 [Ω]合成インピーダンスの大きさは、
Z=r2+x2=3.02+4.02=5.0 [Ω]です。r と x を足して 7.0 [Ω] としないように注意します。
解答と解説を見る
負荷も一次側へ換算します。
RL′=a2RL=900×0.33=297 [Ω]回路全体の抵抗とリアクタンスは、
R=r+RL′=3.0+297=300 [Ω]X=x=4.0 [Ω]なので、全体のインピーダンスの大きさは 3002+4.02≈300.03 [Ω] です。一次電流は、
I1=R2+X2V1=300.036600≈22.0 [A]二次側へ戻して、
I2=aI1=30×22.0=660 [A]V2=RLI2=0.33×660≈217.8 [V]です。無負荷のときの二次電圧は 6600/30=220 [V] なので、負荷電流が流れると約 2.2 [V] 低くなります。この電圧の下がり方を表す電圧変動率は、次の記事で扱います。
間違えやすい点を表にまとめます。
| よくある間違い | 正しくは |
|---|
| r2 に a を掛ける | 抵抗は a2 倍(電圧が a 倍、電流が 1/a 倍だから) |
| r1 にも a2 を掛ける | 一次側の値はそのまま。換算するのは二次側の値だけ |
| r と x を単純に足して Z とする | Z=r2+x2 で求める |
| 励磁回路を r、x の後ろ(負荷側)につなぐ | 簡易等価回路では電源側(r、x の手前)に置く |
よくある質問
簡易等価回路で、励磁回路を電源側へ移してよいのはなぜですか?
励磁電流が負荷電流に比べてごく小さいからです。T 形では励磁電流も r1、x1 を通るため、その分だけ電圧降下が増えますが、わずかなので、励磁回路を電源側へ移しても結果はほとんど変わりません。移すと励磁回路に V1 が直接加わるので、励磁電流と負荷電流を別々に計算できます。
一次換算で、インピーダンスが a2 倍になるのはなぜですか?
電圧が a 倍、電流が 1/a 倍になるので、電圧を電流で割ったインピーダンスは a÷a1=a2 倍になるからです。損失が変わらないこと(I22r2=(I2/a)2⋅a2r2)からも確かめられます。
一次換算と二次換算は、どちらで解けばよいですか?
どちらで解いても結果は同じです。求めたい値がある側に寄せると、あとで元に戻す手間が減ります。問題文に「一次側に換算した」などの指定があるときは、それに従います。
簡易等価回路にすると、励磁電流や鉄損は無視してよいのですか?
無視するのではなく、励磁回路を電源側へ移して残しています。そのため I1=I0+I2′ のように励磁電流を足せますし、鉄損も g0 で表れます。問題文に「励磁電流は無視する」とあるときだけ、励磁回路を省いて解きます。鉄損は負荷の大きさによらず、ほぼ一定です。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
実際の変圧器が理想変圧器と違う点は、等価回路ではどうつなぎますか?
巻線の抵抗と漏れリアクタンス(r1、x1、r2、x2)は直列に、鉄心の磁束と鉄損(b0、g0)は励磁回路として並列につなぎます。
励磁電流は何と何の和で、熱になるのはどちらですか?
磁化電流 Iϕ(E1 より 90° 遅れ)と鉄損電流 Ii(E1 と同相)のベクトル和です。熱になるのは鉄損電流です。
二次側の r2、x2 を一次側へ換算すると、どうなりますか?
r2′=a2r2、x2′=a2x2 です。電圧が a 倍、電流が 1/a 倍になるので、インピーダンスは a2 倍です。
簡易等価回路で、励磁回路はどこに置き、r と x はどう表しますか?
電源側の端子に置きます。r=r1+a2r2、x=x1+a2x2 です。
a=10、r1=2 [Ω]、r2=0.05 [Ω] のとき、一次側に換算した合成抵抗は?
r=2+102×0.05=7 [Ω] です。
r=6 [Ω]、x=8 [Ω] のとき、合成インピーダンスの大きさ Z は?
Z=62+82=10 [Ω] です。足して 14 [Ω] にしてはいけません。
まとめ
- 変圧器の等価回路は、理想変圧器に、直列の巻線抵抗 r・漏れリアクタンス x と、並列の励磁回路 g0・b0 を足した回路
- 励磁電流 I0 は、鉄損電流 Ii(E1 と同相)と磁化電流 Iϕ(90° 遅れ)のベクトル和
- 二次側の抵抗・リアクタンスは、一次換算で a2 倍にする
- 簡易等価回路は、励磁回路を電源側へ移して、r=r1+a2r2、x=x1+a2x2 と足し合わせる
| 求めるもの | 式 |
|---|
| 一次換算した二次側 | r2′=a2r2、x2′=a2x2 |
| 合成抵抗・合成リアクタンス | r=r1+a2r2、x=x1+a2x2 |
| 合成インピーダンス | Z=r2+x2 |
| 一次電流(励磁電流を無視) | 電源電圧 V1 を、回路全体のインピーダンスで割る |
次の記事では、この等価回路を使って電圧変動率を求めます。巻数比と一次換算の基本は、変圧器の巻数比に戻って確かめられます。2台の変圧器を同じ母線に並べるときの条件は、変圧器の並行運転で扱います。誘導電動機も、回転子を二次側とみなすと同じ形の等価回路で表せます(誘導電動機の等価回路)。