変圧器の等価回路の記事では、巻線の抵抗とリアクタンスを r、x にまとめた簡易等価回路を作りました。この r、x に負荷電流が流れると電圧降下が生じ、遅れ力率の負荷では、二次側の端子電圧が無負荷のときより低くなります。その変わり方を、定格二次電圧に対する百分率で表したものが電圧変動率 ε です。電験三種では、百分率抵抗降下 p、百分率リアクタンス降下 q、負荷の力率 cosθ から、近似式 ε≒pcosθ+qsinθ で求めるのが基本です。この記事では、定義、近似式の導き方、力率による違い、例題を順に確認します。
電圧変動率の全体像
- 電圧変動率とは
- 無負荷電圧 V20 と定格電圧 V2n の差を、V2n に対する百分率で表したもの
- 近似式
- ベクトル図の横成分から ε≒pcosθ+qsinθ
- p・q の求め方
- p=rI/V2n×100、q=xI/V2n×100、%Z=p2+q2
- 力率による違い
- 遅れで大きく、力率 1 で p、進みで小さく(負にもなる)。最大値は %Z
- 例題と間違えやすいところ
- p、q、sinθ、ε、V20 の順に解く
電圧変動率とは?定義と二次電圧が下がる理由
電圧変動率とは、変圧器の一次電圧を一定にしたまま、定格の負荷をつないだ状態から負荷を切り離したとき、二次側の端子電圧がどれだけ変わるかを百分率で表したものです。式で書くと、次のとおりです。
ε=V2nV20−V2n×100 [%]
- V2n:定格負荷(定格電流が流れる負荷)をつないだときの二次電圧。定格二次電圧
- V20:一次電圧はそのままで、負荷を切り離した無負荷のときの二次電圧
分母は V20 ではなく、定格二次電圧 V2n です。
家庭や工場で使う電気は、変圧器の二次側から送られてきます(図1)。使う電気が増えると二次電流が増え、変圧器の巻線の抵抗とリアクタンスによる電圧降下も増えます。そのぶん、負荷をつないだときの端子電圧は、無負荷のときより低くなります。
1柱上変圧器2引込線3引込口- 柱上変圧器 配電用の変圧器
- 引込線 二次側から家へ電気を送る
- 引込口 家の中へ入る位置
図1 柱上変圧器から引込線を通って家へ電気が届く(写真はイメージ)
無負荷のときの電圧 V20 と、定格負荷のときの電圧 V2n を並べると、図2のようになります。この差が小さいほど、負荷が変わっても電圧が安定している変圧器です。
図2 電圧変動率は、負荷を切ったときに二次電圧が上がる分を、定格二次電圧に対する割合で表したもの
身近なところでは、コンセントの電圧をテスターで測ると、使っている電気の量によって値が変わることがあります(図3)。ただし、この変化には、配電線や屋内配線の電圧降下も含まれます。電圧変動率が表すのは、そのうち変圧器の内部で生じる電圧降下の分だけです。
1コンセント2測定棒3テスター- コンセント 電圧を測る場所
- 測定棒 穴に差し込んで測る
- テスター 電圧を読み取る
図3 コンセントの電圧をテスターで測る(写真はイメージ)
電圧変動率の近似式:ベクトル図から導く
電圧変動率は、等価回路とベクトル図から求められます。二次側へ換算した簡易等価回路を、図4に示します。励磁回路は、励磁電流が負荷電流に比べてごく小さいので省いてあります。
図4 二次側から見た簡易等価回路。負荷電流 I が r と x を通るぶん、端子電圧 V2 は V20 より低くなる
定格負荷のとき、負荷電流 I˙ は定格電流で、端子電圧は V˙2n です。無負荷電圧は、この端子電圧に r と x の電圧降下を足したものになります。
V˙20=V˙2n+(r+jx)I˙
これを、V˙2n を基準にしたベクトル図に描きます(図5)。電流 I˙ は、力率角 θ だけ遅れているとします。
- rI は、電流と同じ向き
- xI は、電流より 90° 進んだ向き
図5 V2 を基準にしたベクトル図。V20 は V2 に rI と xI を足したもの。縦成分は小さいので、横成分で近似する
V˙20 は、V˙2n にこの二つを足したものです。その横成分と縦成分は、次のとおりです。
横成分=V2n+rIcosθ+xIsinθ縦成分=xIcosθ−rIsinθ
縦成分は V2n に比べてごく小さいので、V20 の大きさは横成分とほぼ等しいと考えます。すると、V20−V2n≒rIcosθ+xIsinθ です。これを V2n で割って 100 を掛けると、電圧変動率が次のように出ます。
ε≒V2nrIcosθ+xIsinθ×100=V2nrI×100⋅cosθ+V2nxI×100⋅sinθ
ここで、p と q を次のように定めます。
p=V2nrI×100 [%]q=V2nxI×100 [%]
すると、電圧変動率の近似式が得られます。
ε≒pcosθ+qsinθ [%]
縦成分まで含めた厳密な値との差は、後の例題1で確かめます。
百分率抵抗降下 p と百分率リアクタンス降下 q の求め方
p は、定格電流が流れたときの抵抗 r の電圧降下が、定格電圧の何 % にあたるかを表します。q は、リアクタンス x の電圧降下について、同じ割合を表します。それぞれ、百分率抵抗降下、百分率リアクタンス降下といいます。
p と q は、一次側で計算しても二次側で計算しても、同じ値になります。一次換算すると、抵抗は a2 倍、電流は 1/a 倍、電圧は a 倍になり、次のように打ち消し合うからです。
aV2na2r×(I/a)=V2nrI
p と q を直角をはさむ二辺とすると、斜辺が百分率インピーダンス降下 %Z です(図6)。%Z については、パーセントインピーダンスでくわしく扱っています。
図6 p と q は直角をはさむ二辺で、%Z はその斜辺。%Z = √(p² + q²) で求める
%Z=p2+q2
図6の例では、p=1.2 [%]、q=1.6 [%] なので、%Z=1.22+1.62=2.0 [%] です。
問題では、p、q が次のような形で与えられます。
| 与えられるもの | p、q、%Z の求め方 |
|---|
| r、x と定格電流・定格電圧 | p=rI/V2n×100、q=xI/V2n×100 |
| インピーダンスワットと定格容量 | p = インピーダンスワット ÷ 定格容量 × 100 |
| インピーダンス電圧と定格電圧 | %Z = インピーダンス電圧 ÷ 定格電圧 × 100 |
| p と %Z | q=%Z2−p2 |
インピーダンスワットは、短絡試験で定格電流を流したときの電力で、ほぼ巻線の抵抗で消費される銅損 rI2 にあたります。これを定格容量 V2nI で割ると、rI/V2n となり、p に一致します。インピーダンス電圧は、定格電流を流すのに必要な電圧 ZI です。短絡試験は、この p、q を測る試験です。
力率で変わる電圧変動率:遅れ・力率 1・進み
近似式の中で、負荷によって変わるのは θ です。図7は、図5のベクトル図を、力率ごとに並べたものです。
図7 力率によるベクトル図の違い。電流が進むと、V20 の先端が V2 の先端より左へ寄り、ε は小さくなる
- 遅れ力率(誘導電動機など):電流が遅れ、sinθ>0 です。pcosθ も qsinθ も正なので、ε は大きくなり、二次電圧は下がります。
- 力率 1:θ=0、sinθ=0 なので、ε=p です。リアクタンスの影響は出ません。
- 進み力率(進相コンデンサなど):sinθ<0 なので、qsinθ は負です。ε は小さくなり、負になることもあります。
p=1.2 [%]、q=1.6 [%] の変圧器(%Z=2.0 [%])で、力率を変えて計算すると、次のようになります。
| 負荷の力率 | sinθ | ε の計算 | ε [%] |
|---|
| 0.6(遅れ) | 0.8 | 1.2×0.6+1.6×0.8 | 2.0 |
| 0.8(遅れ) | 0.6 | 1.2×0.8+1.6×0.6 | 1.92 |
| 1 | 0 | 1.2×1+1.6×0 | 1.2 |
| 0.8(進み) | −0.6 | 1.2×0.8+1.6×(−0.6) | 0 |
| 0.6(進み) | −0.8 | 1.2×0.6+1.6×(−0.8) | −0.56 |
ε が負のとき、V20<V2n です。負荷をつなぐと、二次電圧はかえって上がります。
電圧変動率が最大になる力率
ε を θ の関数として見ると、遅れ力率のどこかで最大になります。pcosθ+qsinθ は、三角関数の合成で次のように書けます。
pcosθ+qsinθ=%Z(%Zpcosθ+%Zqsinθ)=%Z(cosφcosθ+sinφsinθ)=%Zcos(θ−φ)
φ は図6の三角形の角で、cosφ=p/%Z、sinφ=q/%Z です。θ=φ のとき cos(θ−φ)=1 となり、ε は最大値 %Z になります(図8)。
図8 ε と力率角 θ の関係(p = 1.2 %、q = 1.6 % の例)。θ が約 53°(cosθ = 0.6)のとき ε は最大の 2.0 % になる
負荷が定格より軽いとき
実際の変圧器は、定格より軽い負荷で使うことも多くあります。電流が定格の α 倍(負荷率 α)なら、rI も xI も α 倍になるので、電圧変動率も α 倍です。
εα≒α(pcosθ+qsinθ)
図8の例で力率 0.6(遅れ)のとき、定格の半分の電流(α=0.5)なら、εα=0.5×2.0=1.0 [%] です。
電圧の下がりを抑える方法
電圧が下がる原因は、遅れの電流が r、x を流れることでした。そこで、次の二つで下がりを抑えます。
- 力率を改善する:進相コンデンサをつなぐと、変圧器を流れる遅れ電流が減ります。I が小さくなり、sinθ も小さくなるので、電圧降下が減ります。くわしくは力率改善の記事で確認できます。
- タップで巻数比を変える:ε 自体は p、q で決まる変圧器の性質です。ただし、巻数比を切り換えて二次電圧を持ち上げれば、下がった分を補えます。負荷の変化に合わせてこの切り換えを行う装置を、負荷時タップ切換装置といい、大きな変圧器に取り付けられているものがあります(図9)。巻数比の基本は、変圧器の巻数比で確認できます。
1ブッシング2円筒形容器3操作箱4放熱器- ブッシング 外部の電線と結ぶ端子
- 円筒形容器 切換装置を収める例
- 操作箱 切り換えの操作や制御
- 放熱器 本体の熱を逃がす
図9 大型変圧器の外観の例。負荷時タップ切換装置が付いているものもある(写真はイメージ)
電圧変動率の例題と間違えやすいところ
電圧変動率の問題は、次の手順で解きます(図10)。
図10 電圧変動率の問題の解き方。四つの手順を順に進める
解答と解説を見る
力率 cosθ=0.8(遅れ)なので、sinθ=1−0.82=0.6 です。近似式に入れます。
ε≒pcosθ+qsinθ=1.0×0.8+3.0×0.6=0.8+1.8=2.6 [%]無負荷電圧は V20=V2n(1+ε/100) です。
V20=200×(1+0.026)=205.2 [V]厳密な式では、V2n を 1 とおいて、横成分と縦成分から V20 を求めます。横成分は 1+0.026、縦成分は (qcosθ−psinθ)/100=(3.0×0.8−1.0×0.6)/100=0.018 です。
V2nV20=1.0262+0.0182=1.053≒1.0262厳密な ε は約 2.62 [%](V20≒205.2 [V])で、近似式との差は 0.02 ポイントほどです。近似式で十分に求められます。
答え:ε=2.6 [%]、V20=205.2 [V]
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どの場合も cosθ から sinθ を求め、近似式に入れます。
(1) ε(2) ε(3) ε=2.0×0.6+3.0×0.8=3.6 [%]=2.0×1+3.0×0=2.0 [%]=2.0×0.6+3.0×(−0.8)=−1.2 [%](3) は進み力率なので、sinθ=−0.8 とします。ε が負なので、V20<V2n です。
V20=6600×(1−0.012)=6520.8 [V]負荷をつなぐと、二次電圧は約 6520.8 [V] から 6600 [V] へ、上がります。
答え:(1) 3.6 [%]、(2) 2.0 [%]、(3) −1.2 [%](二次電圧は上がる)
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(1) %Z は、p と q を二辺とする直角三角形の斜辺です。
%Z=0.52+1.22=1.69=1.3 [%](2) 最大になるのは cosθ=p/%Z のときで、最大値は %Z です。
cosθ=1.30.5≒0.385 (遅れ)εmax=%Z=1.3 [%](3) sinθ=0.6 なので、次のようになります。
ε=0.5×0.8+1.2×0.6=1.12 [%]最大値 1.3 [%] より小さい値になっています。
答え:(1) 1.3 [%]、(2) 力率 約 0.385(遅れ)で 1.3 [%]、(3) 1.12 [%]
解答と解説を見る
(1) 巻数比は a=6600/220=30 なので、a2=900 です。一次側へ換算した合成抵抗と合成リアクタンスは、次のとおりです。
rx=r1+a2r2=3.0+900×0.0040=6.6 [Ω]=x1+a2x2=6.0+900×0.0080=13.2 [Ω]一次側の定格電圧 6600 [V]、定格電流 10 [A] で、p と q を求めます。
p=66006.6×10×100=1.0 [%]q=660013.2×10×100=2.0 [%](2) sinθ=0.6 なので、次のようになります。
ε=1.0×0.8+2.0×0.6=2.0 [%](3) 定格負荷のときの二次電圧が V2n=220 [V] なので、次のようになります。
V20=220×(1+0.020)=224.4 [V]答え:(1) p=1.0 [%]、q=2.0 [%]、(2) 2.0 [%]、(3) 224.4 [V]
よく間違える点を、次の表にまとめます。
| 間違い | 正しくは |
|---|
| 進み力率でも qsinθ を足す | 進みのときは sinθ を負にする |
| p に sinθ、q に cosθ を掛ける | p(抵抗)には cosθ、q(リアクタンス)には sinθ を掛ける。力率 1 なら ε=p |
| 分母を V20 にする | 分母は定格二次電圧 V2n |
| %Z と ε を同じものとする | ε は力率で変わり、その最大値が %Z |
よくある質問
電圧変動率が負になることはありますか?
あります。進み力率の負荷では qsinθ が負になり、その大きさが pcosθ を上回ると、ε が負になります。このとき V20<V2n で、負荷をつないだほうが二次電圧は高くなります。たとえば p=1.2 [%]、q=1.6 [%] で力率 0.6(進み)なら、ε=−0.56 [%] です。
電圧変動率は小さいほどよいのですか?
負荷が変わっても二次電圧が安定するので、電圧の面では小さいほうが望ましいです。ただし、ε を小さくするには p、q を小さくします。つまり %Z を小さくします。すると、短絡事故のときに流れる短絡電流が大きくなります。短絡電流は定格電流の 100/%Z 倍なので、電圧変動率と短絡電流は、トレードオフの関係にあります。くわしくはパーセントインピーダンスの記事で確認できます。
近似式と厳密な式の、どちらで解けばよいですか?
問題文に式や条件が書かれていれば、それに従います。書かれていなければ、近似式 pcosθ+qsinθ で解くのが基本です。縦成分を含めた厳密な値との差は、例題1で約 0.02 ポイントでした。
%Z と電圧変動率は、何が違うのですか?
%Z は、定格電流が流れたときの電圧降下の大きさだけを表し、力率には関係しません。電圧変動率は、その電圧降下のうち、電圧の大きさを実際に変える分を表します。力率によって値が変わり、遅れ力率で cosθ=p/%Z のとき、最大値 %Z になります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
電圧変動率 ε の定義式は何ですか? 分母は何ですか?
ε=(V20−V2n)/V2n×100 [%] です。分母は定格二次電圧 V2n です。
電圧変動率の近似式は何ですか? 進み力率ではどう扱いますか?
ε≒pcosθ+qsinθ です。進み力率では sinθ を負にします。
p、q、%Z は、それぞれ何を表し、どう求めますか?
p=rI/V2n×100 は抵抗の電圧降下、q=xI/V2n×100 はリアクタンスの電圧降下の割合です。%Z=p2+q2 です。
力率 1 のとき ε は何になりますか? また、ε が最大になる力率と最大値は?
力率 1 では ε=p です。最大になるのは遅れ力率 cosθ=p/%Z のときで、最大値は %Z です。
p=1.0 [%]、q=2.0 [%] の変圧器に、力率 0.6(遅れ)の定格負荷をつなぐと、ε はいくらですか?
sinθ=0.8 なので、ε=1.0×0.6+2.0×0.8=2.2 [%] です。
ε が負になるのは、どんな負荷のときですか? そのとき二次電圧は無負荷より高いですか、低いですか?
進み力率の負荷のときです。V20<V2n なので、二次電圧は無負荷のときより高くなります。
まとめ
- 電圧変動率 ε は、無負荷電圧 V20 と定格電圧 V2n の差を、V2n に対する百分率で表したもの
- 近似式は ε≒pcosθ+qsinθ。進み力率では sinθ を負にする
- p、q は、定格電流が流れたときの r、x の電圧降下の割合で、一次側でも二次側でも同じ値
- 力率 1 で ε=p。遅れ力率 cosθ=p/%Z のとき最大値 %Z
| 求めるもの | 式 |
|---|
| 電圧変動率 | ε=(V20−V2n)/V2n×100 |
| 近似式 | ε≒pcosθ+qsinθ |
| p、q、%Z | p=rI/V2n×100、q=xI/V2n×100、%Z=p2+q2 |
| 最大の電圧変動率 | cosθ=p/%Z(遅れ)のとき ε=%Z |
| 無負荷電圧 | V20=V2n(1+ε/100) |
次の記事では、変圧器の効率を扱います。簡易等価回路の考え方は、変圧器の等価回路に戻って確かめられます。%Z については、パーセントインピーダンスも合わせて確認してください。